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第10章 王様に似た男 ーアール国ー
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やがて準備が整い、広間で儀式が執り行われようとしていた。
「ではこれから儀式を執り行う。まず・・・」ダジャル大臣が言いかけた時、
「待て!」と大きな声が広間に響き渡った。
「何者だ!儀式を邪魔するのは!」ダジャル大臣が辺りを見渡すと、広間の扉がバーンと開いた。
「お、王様!」そこに立っているのはトーネル王だった。その後ろには見知らぬ老人と一人の青年がいた。
「この儀式、あいならぬ。」トーネル王が言った。
「お、王様・・・。一体・・・。」ダジャル大臣は狼狽していた。高い塔の上に幽閉したはずの王様がまさかここに来るとは思っていなかった。だがトーネル王が目の前に現れた以上、取り繕わねばならなかった。
「王様。お元気なお姿を拝見して私めは安心しました。ただ我が国が混乱させまいとの思いで、急いで独断でこの儀式を執り行おうと致しました。しかしこれは我ら家来の総意でございます。」ダジャルはいかにもこの国のためという風に言った。だがトーネル王はそんなダジャル大臣を無視して、
「私の後継者はジール公ではない!」トーネル王はその場にいるものに向かって言った。
「恐れながら、それでは誰を後継者に迎えようとするのですか?」そばにいた家来の一人が尋ねた。
「ここにいる兄ヤコブの子のジャストとする。儀式は準備ができ次第、行うものとする。村すぐに準備をせよ。」トーネル王はそう言うと、老人と青年を連れて出て行った。
あとに残された家来たちの多くは、王様の無事な姿を拝見して胸をなでおろしてほっとしていた。
「よかった。ご無事だ。」
「それに後を継ぐ王子も明日にも決まる。これでアール国は安泰だ。」家来たちは口々に話していた。
だがダジャル大臣だけが苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
(折角の企てが無駄に・・・王様を確かに監禁したはずだが・・・。いや、待てよ。あの塔から簡単に抜け出せるわけがない。もしかしたら奴は偽物。よく似ている王様の兄のヤコブでは・・・)
ダジャル大臣が執務室に戻るとそこにナザルが控えていた。
「ナザル。広間に王様が現れた。」ダジャル大臣は言った。
「えっ! そんなはずは。今朝、塔で顔を見ましたが・・・」ナザルは驚いてそう言った。
「そうか。偽物かもしれぬ。お前はもう一度確認に行って来い。このままではジール公ではなく別の者が跡継ぎの王子になってしまう。」
「はっ!」ナザルは慌てて執務室を出て行った。
トーネル王と老人とジャストは王の部屋に入った。そこには3人以外、誰もいなかった。
「ふうっ!」トーネル王は椅子にどっかりと座った。
「いかがですかな?」老人が尋ねた。
「こんなに緊張するとは思いませんでした。一気に何歳も年をとったようです。」そのトーネル王はヤコブが化けたものだった。ジール公が跡継ぎになるのを阻止しようと、老人が思いついたものだった。
「父上、私もです。」ジャストも疲れた顔をしていた。
「何を言っておられるのです。本番はこれからですぞ。さあ、しっかりするのじゃ。この国の行く末はあなた方にかかっているのですぞ。」老人はそう励ました。
ナザルはすぐに塔を登って幽閉している部屋に向かった。そこには確かにトーネル王がいた。
「王様はここから出ておらぬ。やはり偽物か! ならばダジャル大臣に報告しなければ・・・」ナザルは塔の上から降りてきた。すると警備の兵が何者かに倒されていた。
「一体、誰が!」ナザルは辺りを見渡した。すると鳥が木の枝にとまるかのように、朱色の服を着た若い娘が梁の上にいた。
「やっと見つけたわ。ここだったのね。」それはスザクだった。
「ではこれから儀式を執り行う。まず・・・」ダジャル大臣が言いかけた時、
「待て!」と大きな声が広間に響き渡った。
「何者だ!儀式を邪魔するのは!」ダジャル大臣が辺りを見渡すと、広間の扉がバーンと開いた。
「お、王様!」そこに立っているのはトーネル王だった。その後ろには見知らぬ老人と一人の青年がいた。
「この儀式、あいならぬ。」トーネル王が言った。
「お、王様・・・。一体・・・。」ダジャル大臣は狼狽していた。高い塔の上に幽閉したはずの王様がまさかここに来るとは思っていなかった。だがトーネル王が目の前に現れた以上、取り繕わねばならなかった。
「王様。お元気なお姿を拝見して私めは安心しました。ただ我が国が混乱させまいとの思いで、急いで独断でこの儀式を執り行おうと致しました。しかしこれは我ら家来の総意でございます。」ダジャルはいかにもこの国のためという風に言った。だがトーネル王はそんなダジャル大臣を無視して、
「私の後継者はジール公ではない!」トーネル王はその場にいるものに向かって言った。
「恐れながら、それでは誰を後継者に迎えようとするのですか?」そばにいた家来の一人が尋ねた。
「ここにいる兄ヤコブの子のジャストとする。儀式は準備ができ次第、行うものとする。村すぐに準備をせよ。」トーネル王はそう言うと、老人と青年を連れて出て行った。
あとに残された家来たちの多くは、王様の無事な姿を拝見して胸をなでおろしてほっとしていた。
「よかった。ご無事だ。」
「それに後を継ぐ王子も明日にも決まる。これでアール国は安泰だ。」家来たちは口々に話していた。
だがダジャル大臣だけが苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
(折角の企てが無駄に・・・王様を確かに監禁したはずだが・・・。いや、待てよ。あの塔から簡単に抜け出せるわけがない。もしかしたら奴は偽物。よく似ている王様の兄のヤコブでは・・・)
ダジャル大臣が執務室に戻るとそこにナザルが控えていた。
「ナザル。広間に王様が現れた。」ダジャル大臣は言った。
「えっ! そんなはずは。今朝、塔で顔を見ましたが・・・」ナザルは驚いてそう言った。
「そうか。偽物かもしれぬ。お前はもう一度確認に行って来い。このままではジール公ではなく別の者が跡継ぎの王子になってしまう。」
「はっ!」ナザルは慌てて執務室を出て行った。
トーネル王と老人とジャストは王の部屋に入った。そこには3人以外、誰もいなかった。
「ふうっ!」トーネル王は椅子にどっかりと座った。
「いかがですかな?」老人が尋ねた。
「こんなに緊張するとは思いませんでした。一気に何歳も年をとったようです。」そのトーネル王はヤコブが化けたものだった。ジール公が跡継ぎになるのを阻止しようと、老人が思いついたものだった。
「父上、私もです。」ジャストも疲れた顔をしていた。
「何を言っておられるのです。本番はこれからですぞ。さあ、しっかりするのじゃ。この国の行く末はあなた方にかかっているのですぞ。」老人はそう励ました。
ナザルはすぐに塔を登って幽閉している部屋に向かった。そこには確かにトーネル王がいた。
「王様はここから出ておらぬ。やはり偽物か! ならばダジャル大臣に報告しなければ・・・」ナザルは塔の上から降りてきた。すると警備の兵が何者かに倒されていた。
「一体、誰が!」ナザルは辺りを見渡した。すると鳥が木の枝にとまるかのように、朱色の服を着た若い娘が梁の上にいた。
「やっと見つけたわ。ここだったのね。」それはスザクだった。
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本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
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アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
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