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第10章 王様に似た男 ーアール国ー
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「これでよし。それでは今度はあなたの番じゃ。今もジャストを跡継ぎにすることに変わりはないかの?」ハークレイ法師は尋ねた。
「はい。私には子がありませぬ。ジャストを次の王にしたいと思います。」トーネル王は言った。
「そうか。ではジャストよ。王様にご挨拶するのだ。」ハークレイ法師はジャストの方を向いて行った。
「王様。お初にお目にかかります。ヤコブの子、ジャストと申します。」ジャストはしっかりした声でトーネル王に申し上げた。トーネル王はじっとこの青年を見た。彼の目にはジャストはしっかりした優れた者として映った。
「ハークレイ法師様。ジャストなら申し分ありません。きっと良い王になってくれるでしょう。さすがに兄上の子。兄上に似て立派でございます。」トーネル王は言った。
「私に似ているということは王様にも似ているということです。」ヤコブは笑顔で言った。その言葉の意味をトーネル王はわからず、きょとんとしていた。さらにヤコブは言葉をつづけた。
「そしてもう一人、似ている者があるでしょう?」
トーネル王はジャストを今一度見て見た。するとその顔にある者の面影があることに気付いた。
「まさか・・・」トーネル王は信じられないという風だった。
「そうです。メレダが産んだ子です。あなたのもとを去る時、メレダは身ごもっていたのです。彼女は私の村に来て密かに子を産みました。しかし産後の肥立ちが悪く、すぐに亡くなってしまったのです。そこで生まれたばかりの私の子と一緒にして双子ということで育ててきました。ただしこのことは秘密として私たち夫婦しか知らず、王様にもお知らせしなかった。それはこの国の王の跡継ぎ問題が絡んでいたからです。しかし私はこのジャストがいつの日か、あなたに会うことができてその跡継ぎになればよいと思っていました。」ヤコブが言った。
「しかしそれでは・・・」トーネル王が言いかけたが、それをハークレイ法師は遮った。
「確かに人の世の摂理では、弟のあなたが王になったことは合わないのかもしれぬ。それであなたは兄の子を跡継ぎにしようと考えたのだろう。しかし人には運命というものがある。あなたが王になったのも運命なら、ヤコブが村の男になったのもまた運命。そしてここにいるジャストがここで父のあなたと会い、次の王になるのも運命と思わぬか?」ハークレイ法師は優しく言った。
「王様。私のことを考えていただき、お気持ちはうれしく思います。しかしこのジャストは育てた私が言うのもなんですが、優れた者と思います。きっと良い王となってくれるでしょう。どうか、ジャストを自分の子としてお迎えください。」ヤコブも言い添えた。
「兄上。ありがとうございます。なんとお礼を申したらいいか・・・。」トーネル王はヤコブに深く頭を下げた。そしてジャストの方を見た。その目には優しさが宿っていた。
「ジャストよ。いきなりのことでお前も戸惑っていることであろう。だが私はうれしい。さあ、こちらに来てくれ」トーネル王は両手を広げた。
「さあ、行くがよい。王様がお前の本当の父だ。」ヤコブが言った。2人の言葉にジャストはトーネル王のそばに行った。
「お前にはメレダの面影が見える。知らぬこととは言え、すまなかった。これからは私がお前の父になる。」トーネル王はジャストの肩に手をかけ、優しく言葉をかけた。
「父上!」ジャストは自然にそう言葉が出た。それで今まで何か心に固まっていたわだかまりが溶けていった気がした。父と呼ばれたトーネル王は感涙し、
「これからはお前のために父としての務めを果たしていくつもりだ。今までの分以上に。」ジャストの肩を抱きしめてそう言った。
「よかった。これで私も肩の荷が下ります。これで王様の苦しみはなくなりましょう。すべてハークレイ法師様のおかげです・・。おっと私まで涙が出てしまうとは・・・。」ヤコブは流れている涙をぬぐった。
「よいよい。これがあなたたちの正直な心じゃ。兄は弟を思い、弟は兄を思い、このハークレイ、心動かされましたぞ。この上はこの国をなお一層、栄えさせてくだされよ。」ハークレイ法師は2人にやさしく言った。
「はっ。」トーネル王とヤコブは答えた。
ハークレイ法師はまた旅立とうとしていた。街道にはヤコブが息子のモーリとカイグを連れて見送りに来ていた。
「ハークレイ法師様。おかげさまで王家は安泰。王様の心も晴れやかになり、私もうれしゅうございます。」ヤコブが言った。
「いやいや、あなたの弟を思う心がすべてを解決したのじゃ。それよりジャストさんがいなくなって少し寂しかろう。」ハークレイ法師が言った。
「それは・・・しかしジャストが次の王として立派になっていくのをうれしく思っております。それにモーリとカイグも外の国に勉学に出そうと思います。従弟だったとはいえ、2人にとってジャストは兄のような存在には変わりませぬ。この国に帰って来るころには、ジャストの力となりましょう。」ヤコブは言った。
「うむ。それはよい。では儂は楽しみにしているぞ。では。」ハークレイ法師は旅立っていった。
「道中、ご無事で。」ヤコブたちは頭を下げてその後ろ姿を見送っていた。
双子でありながら生まれながらに引き裂かれてしまった兄と弟。それぞれの運命は違ったが、兄弟のお互いへの思いはその絆を結ばせた。その2人が、そしてその家族が幸せになり、この国を支えてくれるだろうと思いながらハークレイ法師は旅を続けるのであった。
「はい。私には子がありませぬ。ジャストを次の王にしたいと思います。」トーネル王は言った。
「そうか。ではジャストよ。王様にご挨拶するのだ。」ハークレイ法師はジャストの方を向いて行った。
「王様。お初にお目にかかります。ヤコブの子、ジャストと申します。」ジャストはしっかりした声でトーネル王に申し上げた。トーネル王はじっとこの青年を見た。彼の目にはジャストはしっかりした優れた者として映った。
「ハークレイ法師様。ジャストなら申し分ありません。きっと良い王になってくれるでしょう。さすがに兄上の子。兄上に似て立派でございます。」トーネル王は言った。
「私に似ているということは王様にも似ているということです。」ヤコブは笑顔で言った。その言葉の意味をトーネル王はわからず、きょとんとしていた。さらにヤコブは言葉をつづけた。
「そしてもう一人、似ている者があるでしょう?」
トーネル王はジャストを今一度見て見た。するとその顔にある者の面影があることに気付いた。
「まさか・・・」トーネル王は信じられないという風だった。
「そうです。メレダが産んだ子です。あなたのもとを去る時、メレダは身ごもっていたのです。彼女は私の村に来て密かに子を産みました。しかし産後の肥立ちが悪く、すぐに亡くなってしまったのです。そこで生まれたばかりの私の子と一緒にして双子ということで育ててきました。ただしこのことは秘密として私たち夫婦しか知らず、王様にもお知らせしなかった。それはこの国の王の跡継ぎ問題が絡んでいたからです。しかし私はこのジャストがいつの日か、あなたに会うことができてその跡継ぎになればよいと思っていました。」ヤコブが言った。
「しかしそれでは・・・」トーネル王が言いかけたが、それをハークレイ法師は遮った。
「確かに人の世の摂理では、弟のあなたが王になったことは合わないのかもしれぬ。それであなたは兄の子を跡継ぎにしようと考えたのだろう。しかし人には運命というものがある。あなたが王になったのも運命なら、ヤコブが村の男になったのもまた運命。そしてここにいるジャストがここで父のあなたと会い、次の王になるのも運命と思わぬか?」ハークレイ法師は優しく言った。
「王様。私のことを考えていただき、お気持ちはうれしく思います。しかしこのジャストは育てた私が言うのもなんですが、優れた者と思います。きっと良い王となってくれるでしょう。どうか、ジャストを自分の子としてお迎えください。」ヤコブも言い添えた。
「兄上。ありがとうございます。なんとお礼を申したらいいか・・・。」トーネル王はヤコブに深く頭を下げた。そしてジャストの方を見た。その目には優しさが宿っていた。
「ジャストよ。いきなりのことでお前も戸惑っていることであろう。だが私はうれしい。さあ、こちらに来てくれ」トーネル王は両手を広げた。
「さあ、行くがよい。王様がお前の本当の父だ。」ヤコブが言った。2人の言葉にジャストはトーネル王のそばに行った。
「お前にはメレダの面影が見える。知らぬこととは言え、すまなかった。これからは私がお前の父になる。」トーネル王はジャストの肩に手をかけ、優しく言葉をかけた。
「父上!」ジャストは自然にそう言葉が出た。それで今まで何か心に固まっていたわだかまりが溶けていった気がした。父と呼ばれたトーネル王は感涙し、
「これからはお前のために父としての務めを果たしていくつもりだ。今までの分以上に。」ジャストの肩を抱きしめてそう言った。
「よかった。これで私も肩の荷が下ります。これで王様の苦しみはなくなりましょう。すべてハークレイ法師様のおかげです・・。おっと私まで涙が出てしまうとは・・・。」ヤコブは流れている涙をぬぐった。
「よいよい。これがあなたたちの正直な心じゃ。兄は弟を思い、弟は兄を思い、このハークレイ、心動かされましたぞ。この上はこの国をなお一層、栄えさせてくだされよ。」ハークレイ法師は2人にやさしく言った。
「はっ。」トーネル王とヤコブは答えた。
ハークレイ法師はまた旅立とうとしていた。街道にはヤコブが息子のモーリとカイグを連れて見送りに来ていた。
「ハークレイ法師様。おかげさまで王家は安泰。王様の心も晴れやかになり、私もうれしゅうございます。」ヤコブが言った。
「いやいや、あなたの弟を思う心がすべてを解決したのじゃ。それよりジャストさんがいなくなって少し寂しかろう。」ハークレイ法師が言った。
「それは・・・しかしジャストが次の王として立派になっていくのをうれしく思っております。それにモーリとカイグも外の国に勉学に出そうと思います。従弟だったとはいえ、2人にとってジャストは兄のような存在には変わりませぬ。この国に帰って来るころには、ジャストの力となりましょう。」ヤコブは言った。
「うむ。それはよい。では儂は楽しみにしているぞ。では。」ハークレイ法師は旅立っていった。
「道中、ご無事で。」ヤコブたちは頭を下げてその後ろ姿を見送っていた。
双子でありながら生まれながらに引き裂かれてしまった兄と弟。それぞれの運命は違ったが、兄弟のお互いへの思いはその絆を結ばせた。その2人が、そしてその家族が幸せになり、この国を支えてくれるだろうと思いながらハークレイ法師は旅を続けるのであった。
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本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
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