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第4章 冬
第3話 開けられた門
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月のない暗い夜だった。昼間の激闘から一転して辺りはしんと静まり返っていた。その暗闇の中を密かにうごめく複数の影があった。門の上には不寝番の兵がいるがその動きに全く気付いていなかった。その影の集団は2番門の近くの土塀に近づくと動きを止め、辺りをうかがった。やはりまだ砦の者には見つかっていない。その影の者たちは規律だった動きで下になる者、上になる者に分かれて高い土塀を次々に越えて行った。そして向こう側に静かに着地した。
彼らの前に門を守る兵がいる。かがり火をごうごうと燃やして辺りを見渡して立っていた。彼らはお互いに目で合図をして静かにその兵たちに忍び寄っていく。
「コトン・・・」
かすかな音がした。兵の一人がそちらの方に顔を向けるとそこには黒ずくめの者が忍び寄っていた。その兵は大声を出そうとしたが、すぐにその者が駆け寄って口をふさがれ、刀で首を斬られた。
「うぐっ!」
殺された兵はわずかに声を発した。その声に他の兵も異変を感じただ、時すでに遅かった。兵たちはすべて口をふさがれ後ろから首を斬られていた。後には、
「ドサッ!」
という兵たちの倒れる音しかしなかった。これで邪魔する者はいなくなった。忍びたちは2番門の閂に手をかけて門を静かに開いた。そして飛び出した忍びの一人がかがり火から松明を抜き取って大きく回した。これが合図となった。
「うおーっ!」
外で待ち構えた兵助の兵は声を上げて砦になだれ込こうとした。その声は二番門の近くで休んでいる地侍たちの耳に入った。
「敵襲だ!」
あわてて地侍たちは飛び起きて二番門に向かった。すると門は大きく開けはなたれ、今や敵がそこから侵入しようとしていた。
「いかん!門が開けられて敵がなだれ込んでいる! 押し返すぞ!」
地侍たちはすぐに敵兵に向かっていった。ここで押しとどめなければ大変なことになると・・・だが敵の数は多かった。まるで濁流の様に門からあふれ出してきた。地侍たちはその勢いに飲み込まれようとしていた。
だがその二番門の守備隊には紅之介がいた。彼は息を止め呼吸を整えると、まるで鬼になったかのように刀を振るっていった。彼に近づく兵は次々に斬り倒されていった。
二番門での激闘は瞬く間に砦中に伝わった。それを聞いて加勢に駆け付ける者、敵の襲来を恐れて隠れる者、浮足立って動けなく者・・・砦の中は騒然としていた。もちろん櫓にいる葵姫のもとにも、
「二番門で戦いが起こっております。死傷者がかなり出ている模様。」
と知らせが届けられた。
(二番門? そこは確か、紅之介がいるところ・・・)
葵姫は茫然とした。紅之介は無事なのかと・・・。もう砦中に二番門での戦いの激しい音が響き渡っている。傍らにいた百雲斎が尋ねた。
「どういう状況なのだ?」
「門がすでに開かれ敵がなだれ込んでおります。二番門の守備隊が押さえておりますが、敵の数が多すぎて次々に斬り倒されております。」
「いかん! 他の守備隊から兵を回す。」
急転した事態に慌てながら、百雲斎がそう言って立ち上がって行ってしまった。葵姫が櫓から外を見ると、確かに激しく人の影が動き回っていた。暗闇ではっきりわからないが、二番門にまだまだ敵の兵が殺到してきている。このままでは二番門の守備隊は全滅かも・・・悪い予感を覚えていた。
(お願いです。紅之介。どうか無事で・・・)
葵姫は祈るような気持だった。しかし彼女はその感情を押し殺して評定の場に向かった。葵姫には上に立つ者としてやらねばならなかった。
彼らの前に門を守る兵がいる。かがり火をごうごうと燃やして辺りを見渡して立っていた。彼らはお互いに目で合図をして静かにその兵たちに忍び寄っていく。
「コトン・・・」
かすかな音がした。兵の一人がそちらの方に顔を向けるとそこには黒ずくめの者が忍び寄っていた。その兵は大声を出そうとしたが、すぐにその者が駆け寄って口をふさがれ、刀で首を斬られた。
「うぐっ!」
殺された兵はわずかに声を発した。その声に他の兵も異変を感じただ、時すでに遅かった。兵たちはすべて口をふさがれ後ろから首を斬られていた。後には、
「ドサッ!」
という兵たちの倒れる音しかしなかった。これで邪魔する者はいなくなった。忍びたちは2番門の閂に手をかけて門を静かに開いた。そして飛び出した忍びの一人がかがり火から松明を抜き取って大きく回した。これが合図となった。
「うおーっ!」
外で待ち構えた兵助の兵は声を上げて砦になだれ込こうとした。その声は二番門の近くで休んでいる地侍たちの耳に入った。
「敵襲だ!」
あわてて地侍たちは飛び起きて二番門に向かった。すると門は大きく開けはなたれ、今や敵がそこから侵入しようとしていた。
「いかん!門が開けられて敵がなだれ込んでいる! 押し返すぞ!」
地侍たちはすぐに敵兵に向かっていった。ここで押しとどめなければ大変なことになると・・・だが敵の数は多かった。まるで濁流の様に門からあふれ出してきた。地侍たちはその勢いに飲み込まれようとしていた。
だがその二番門の守備隊には紅之介がいた。彼は息を止め呼吸を整えると、まるで鬼になったかのように刀を振るっていった。彼に近づく兵は次々に斬り倒されていった。
二番門での激闘は瞬く間に砦中に伝わった。それを聞いて加勢に駆け付ける者、敵の襲来を恐れて隠れる者、浮足立って動けなく者・・・砦の中は騒然としていた。もちろん櫓にいる葵姫のもとにも、
「二番門で戦いが起こっております。死傷者がかなり出ている模様。」
と知らせが届けられた。
(二番門? そこは確か、紅之介がいるところ・・・)
葵姫は茫然とした。紅之介は無事なのかと・・・。もう砦中に二番門での戦いの激しい音が響き渡っている。傍らにいた百雲斎が尋ねた。
「どういう状況なのだ?」
「門がすでに開かれ敵がなだれ込んでおります。二番門の守備隊が押さえておりますが、敵の数が多すぎて次々に斬り倒されております。」
「いかん! 他の守備隊から兵を回す。」
急転した事態に慌てながら、百雲斎がそう言って立ち上がって行ってしまった。葵姫が櫓から外を見ると、確かに激しく人の影が動き回っていた。暗闇ではっきりわからないが、二番門にまだまだ敵の兵が殺到してきている。このままでは二番門の守備隊は全滅かも・・・悪い予感を覚えていた。
(お願いです。紅之介。どうか無事で・・・)
葵姫は祈るような気持だった。しかし彼女はその感情を押し殺して評定の場に向かった。葵姫には上に立つ者としてやらねばならなかった。
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