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第4章 冬
第4話 二番門の激闘
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二番門の戦いは壮絶を極めていた。斬っても斬っても敵の兵がわいてきていた。紅之介の周りに屍が転がり血の海ができていた。
「敵は小勢ぞ! 押せ!」
敵の武将の声が聞こえていた。その声に叱咤され敵の兵たちは門を抜けて突っ込んでくる。だが、
(ここで押されてはならぬ! ここを抜かれてはならぬ!)
と紅之介は刀を構え直して次々に斬り捨てていった。その刀は血で真っ赤に染まっていた。そしてその体も血しぶきで紅く染まっていた。向かってくる敵の兵に紅之介は鬼の形相になって叫んだ。
「紅剣! 二神紅之介だ! 命がいらぬ者はかかって来い!」
「く、紅剣!」
敵の兵たちの中にはもう紅剣のうわさが広まっていた。恐るべき殺人剣で辺りを血で染めるという。その剣に出会えばもう斬られるしかないと・・・。だから実際に紅之介の紅剣を見て、恐れおののいて逃げる兵も多くいた。そのため門の近くは進んでくる兵と逃げる兵でごった返して身動きができなくなっていた。だが中には恐れを知らずに向かって来る兵も少なからずいた。その者たちは次々に紅之介の刀で斬られ、血しぶきをあげていった。紅之介によって二番門から先に敵兵を通さなかった。
その姿を遠くから三郎は見ていた。彼ら忍びたちは門を開けたのち、土塀の上から戦況を見守っていたのだ。
(ここにあの男が・・・。確か二神紅之介とか言ったな。紅剣の使い手という。この分ではあの男がいる限りこの門から先には進めぬ。ムキになって兵をつぎ込めば損害は大きくなろう。ここが潮時だと思うが・・・)
三郎は右手を上げて配下の忍びに合図した。そして彼らはその場から引き上げていった。
しばらく時がたったのに二番門を兵がまだ突破できないでいたことは、兵助のいるの本陣に伝えられていた。
「まだ落ちぬのか! どうして門を突破できないのだ!」
兵助が爪を噛んでいた。二番門はとうに開けられ、大勢の兵が突入したはずだ。どうしてそこから進めないのだ。本来なら砦は落ちていてよいはずなのに・・・。いつまで待ってもよい報告は届かなかった。
(何が起きておるのだ? ここに何か不思議な力でもあるというのか?)
兵助は立ち上がって砦の方を見た。暗闇にうっすらとその輪郭を浮かび上げる砦は何かしら不気味に感じられた。だが今、攻撃を中止することは避けたい。もう一押しで二番門を突破するに違いないという裏付けのない期待が彼にはあった。
「とにかく兵をつぎ込め!」
兵助はイライラしながら大声で叫んだ。今夜の彼は目前の勝利を焦るあまり、冷静さを欠いていた。
二番門での激しい戦いはさらに続いていた。あれから新手、新手と敵の兵が押し寄せてきた。いくら斬ろうが、追い払おうが紅之介の前には敵の兵であふれていた。
ふと気が付くと、共にここを守っていた味方の地侍と兵はとうにすべて討たれていた。紅之介は一人で獅子奮迅の戦いをしていた。彼の前には多くの屍と血に満たされていた。だが敵の兵がそれを乗り越えて大挙して紅之介に襲い掛かってくるのである。
紅之介は無心になり体の動くままに敵の兵を斬り倒していた。その心は櫓にいる葵姫の元にあった。
(姫様。私はあなたにお会いできて幸せでした。あなたとともに過ごす日々がこの上なく楽しゅうございました。剣しか知らぬ武骨な私に、あなたは明るい光を与えてくださった。
私はあなたのため、命のある限り戦います。それがあなたの愛に報いるただ一つの方法だからです。しかし・・・できるならもう一度お会いしたかった・・・。だがそれははかない夢になりそうです・・・。姫様。いつまでも私の心はあなたの元にあります・・・)
紅剣神一刀流は無敵だ。しかし自分の体はそうではない。そのうちに体は動かなくなり、意識は飛ぶだろう。それが最期の時だ・・・紅之介はそう思った。
敵の猛攻は続いていた。多くの犠牲を顧みず、兵をどんどんつぎ込んでいた。しかし二番門のところで手間取っているうちに、続々と砦の救援の兵が集まってきていた。
「それ! 追い返せ!」
救援に来た侍大将は叫んだ。その声に味方の兵が次々に敵の兵に襲い掛かっていった。その激しい勢いにさすがに敵の兵は逃げ始めた。
「追え! 追え!」
ついに砦の兵たちは敵の兵を駆逐して二番門の前から追い払った。そして開けられた門を閉めた。ようやく敵の攻撃をしのいで防ぐことができたのである。
「ふうっ! 間に合ったか!」
その侍大将は額の汗を拭いた。目の前に血で紅く染まり、多くの屍が転がっていた。そこはまるで地獄のような光景だった。朝日が差してくるとますますその悲惨な状況が目についた。ともかく次の戦いに備えなければならない。兵たちが激闘の後を片付け始めていた。
「おい!」「あれはどうしたんだ?」「この者は生きているのか?」
兵たちが門のところに集まって何やら騒いでいた。
「何だ? 何を騒いでおる?」
その侍大将はその場所に近づいて見た。そこには真っ赤な血の海に仰向けに倒れている一人の地侍の姿があった。
「敵は小勢ぞ! 押せ!」
敵の武将の声が聞こえていた。その声に叱咤され敵の兵たちは門を抜けて突っ込んでくる。だが、
(ここで押されてはならぬ! ここを抜かれてはならぬ!)
と紅之介は刀を構え直して次々に斬り捨てていった。その刀は血で真っ赤に染まっていた。そしてその体も血しぶきで紅く染まっていた。向かってくる敵の兵に紅之介は鬼の形相になって叫んだ。
「紅剣! 二神紅之介だ! 命がいらぬ者はかかって来い!」
「く、紅剣!」
敵の兵たちの中にはもう紅剣のうわさが広まっていた。恐るべき殺人剣で辺りを血で染めるという。その剣に出会えばもう斬られるしかないと・・・。だから実際に紅之介の紅剣を見て、恐れおののいて逃げる兵も多くいた。そのため門の近くは進んでくる兵と逃げる兵でごった返して身動きができなくなっていた。だが中には恐れを知らずに向かって来る兵も少なからずいた。その者たちは次々に紅之介の刀で斬られ、血しぶきをあげていった。紅之介によって二番門から先に敵兵を通さなかった。
その姿を遠くから三郎は見ていた。彼ら忍びたちは門を開けたのち、土塀の上から戦況を見守っていたのだ。
(ここにあの男が・・・。確か二神紅之介とか言ったな。紅剣の使い手という。この分ではあの男がいる限りこの門から先には進めぬ。ムキになって兵をつぎ込めば損害は大きくなろう。ここが潮時だと思うが・・・)
三郎は右手を上げて配下の忍びに合図した。そして彼らはその場から引き上げていった。
しばらく時がたったのに二番門を兵がまだ突破できないでいたことは、兵助のいるの本陣に伝えられていた。
「まだ落ちぬのか! どうして門を突破できないのだ!」
兵助が爪を噛んでいた。二番門はとうに開けられ、大勢の兵が突入したはずだ。どうしてそこから進めないのだ。本来なら砦は落ちていてよいはずなのに・・・。いつまで待ってもよい報告は届かなかった。
(何が起きておるのだ? ここに何か不思議な力でもあるというのか?)
兵助は立ち上がって砦の方を見た。暗闇にうっすらとその輪郭を浮かび上げる砦は何かしら不気味に感じられた。だが今、攻撃を中止することは避けたい。もう一押しで二番門を突破するに違いないという裏付けのない期待が彼にはあった。
「とにかく兵をつぎ込め!」
兵助はイライラしながら大声で叫んだ。今夜の彼は目前の勝利を焦るあまり、冷静さを欠いていた。
二番門での激しい戦いはさらに続いていた。あれから新手、新手と敵の兵が押し寄せてきた。いくら斬ろうが、追い払おうが紅之介の前には敵の兵であふれていた。
ふと気が付くと、共にここを守っていた味方の地侍と兵はとうにすべて討たれていた。紅之介は一人で獅子奮迅の戦いをしていた。彼の前には多くの屍と血に満たされていた。だが敵の兵がそれを乗り越えて大挙して紅之介に襲い掛かってくるのである。
紅之介は無心になり体の動くままに敵の兵を斬り倒していた。その心は櫓にいる葵姫の元にあった。
(姫様。私はあなたにお会いできて幸せでした。あなたとともに過ごす日々がこの上なく楽しゅうございました。剣しか知らぬ武骨な私に、あなたは明るい光を与えてくださった。
私はあなたのため、命のある限り戦います。それがあなたの愛に報いるただ一つの方法だからです。しかし・・・できるならもう一度お会いしたかった・・・。だがそれははかない夢になりそうです・・・。姫様。いつまでも私の心はあなたの元にあります・・・)
紅剣神一刀流は無敵だ。しかし自分の体はそうではない。そのうちに体は動かなくなり、意識は飛ぶだろう。それが最期の時だ・・・紅之介はそう思った。
敵の猛攻は続いていた。多くの犠牲を顧みず、兵をどんどんつぎ込んでいた。しかし二番門のところで手間取っているうちに、続々と砦の救援の兵が集まってきていた。
「それ! 追い返せ!」
救援に来た侍大将は叫んだ。その声に味方の兵が次々に敵の兵に襲い掛かっていった。その激しい勢いにさすがに敵の兵は逃げ始めた。
「追え! 追え!」
ついに砦の兵たちは敵の兵を駆逐して二番門の前から追い払った。そして開けられた門を閉めた。ようやく敵の攻撃をしのいで防ぐことができたのである。
「ふうっ! 間に合ったか!」
その侍大将は額の汗を拭いた。目の前に血で紅く染まり、多くの屍が転がっていた。そこはまるで地獄のような光景だった。朝日が差してくるとますますその悲惨な状況が目についた。ともかく次の戦いに備えなければならない。兵たちが激闘の後を片付け始めていた。
「おい!」「あれはどうしたんだ?」「この者は生きているのか?」
兵たちが門のところに集まって何やら騒いでいた。
「何だ? 何を騒いでおる?」
その侍大将はその場所に近づいて見た。そこには真っ赤な血の海に仰向けに倒れている一人の地侍の姿があった。
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