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第三章 〜魔力覚醒 / 陰謀〜
51. 謁見
しおりを挟む「皆顔を上げて楽にしてくれ。今この時間は私的なものだ。ただしこの部屋での話は他言無用とする」
皇帝の言葉に皆顔を上げ、体勢を楽にする。
現在、皇城の王族専用会議室に皇帝と魔法士団団長、ジル、そしてヴィオラ達とエイダンが机を囲み、座っている。
「この度は謁見を賜り、恐悦至極に存じます。陛下におかれましては──」
「良い、エイダン。其方は私の恩人ではないか。そんな堅苦しい挨拶はいらん。また久しぶりに会えて嬉しいぞ。早々にレオンが振り回したらしいな。苦労かけたな」
「ええ。本当に」
「何それ!俺が迷惑かけたみたいじゃんよ。失礼な!」
「「・・・・・・・・・」」
ジト目でレオンハルトを見やる2人に大柄の男がプリプリと頬を膨らませてる様は何とも異様な光景だった。
それよりも皇帝と父が気安いやり取りをしている事にヴィオラ達は驚く。どうやら以前から顔見知りらしい。
もっと張り詰めた空気になるのかと思い緊張していたヴィオラだったが、陽気なレオンハルト達の雰囲気に当てられてだんだん体の強張りが解けてきた。
初めて会う皇帝はレオンハルトに似た色を持っていた。
白銀の髪に褐色の肌、琥珀色の瞳をしているが、皇帝の雰囲気はどちらかというと父エイダンに近い。
目にかかる程の長さの髪は後ろに流し、切れ長の瞳が端正な顔立ちに色気を演出している。
想像よりもずっと若い。父と同じくらいの年齢だろうか。
「我が従兄弟は昔から常識の枠を超えた男だからな。優秀な魔法士でなければつまみ出しているところだ」
「おい、俺の悪口言うために謁見の場を儲けたのか?」
どうやら彼らは従兄弟だったらしい。
「本当に、今回はいろいろ配慮していただき助かりました。ここに来なければ、正直陛下達には二度と会えなかったかもしれません。この御恩は帰国するまでにこちらの医師たちへの技術提供で恩返しさせていただきます」
「お前の医師としての腕は我が身を持って知っているからな。よろしく頼む。それから新しい魔道具の開発にも力を貸してくれたと聞いた。あれは我が国にとって必要な道具なのだ。礼を言う。何か欲しいものはあるか?褒美をやろう」
「いえ、対価ならレオンハルトからいただける予定ですのでお構いなく」
「ほう。レオンが?」
父がそう話を振ると、レオンハルトとジルが苦笑いをした。
「ええ。この親子達に今こき使われているところですよ」
実はヴィオラ達は今、レオンハルトとジルにあるお願いをしている。
魔力が覚醒してからヴィオラとエイダンは鑑定魔法を、クリスフォードは闇魔法を彼等に学んでいた。
その中でヴィオラは通常の鑑定魔法にプラスアルファをレオンハルトに希望したのだ。
状態異常の鑑定をもっと詳しく、体の疾患や異常を来たしている場所の特定ができるようにして欲しいと注文をつけた。医療に役立てるにはそこまでわからないとダメだと。
敵のステータスや、毒や魔草など、麻薬使用の判定にしか使用していなかったレオンハルトは、鑑定魔法を医療の現場で使うというヴィオラの発想に最初はとても興味を抱いた。
──が、いざ魔法陣の書き換えをしてみると予想以上に難しく、現在ジルと頭を悩ましながら試行錯誤している。
そして最近では双子達が魔法陣の書き方を覚えたいということで4人で制作していたが、その間、レオンハルトとジルは双子達のチート級の魔術のポテンシャルの高さに驚きを隠せなかった。
そのレオンハルト達の報告を受け、皇帝が改めてヴィオラ達に視線を向ける。
ピリッとした緊張感に、机の下でヴィオラとクリスフォードは手を握り合った。
「エイダンにとてもよく似ているな。お前たちの話はレオンから聞いている。幼い身で重すぎる荷を背負っていると。我が国も関わっているだけに、申し訳ない」
頭を下げる皇帝を慌ててエイダンは止める。
「おやめください陛下!頭を上げてください。私達にそのような謝罪は必要ありません。助けていただいたのはむしろこちらです」
「良い、エイダン。私はレオンから精霊たちの話を聞いて、己の業を再確認した」
皇帝はエイダンから視線を再びヴィオラ達に戻した。
「ヴィオラ、クリスフォード。頼む。上級精霊を呼んでくれるか?」
ヴィオラとクリスフォードはお互いに顔を見合わせ、頷き合う。
そして彼らを呼んだ。
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