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暴露
しおりを挟む「なんだよアレ……自分で教科書を破ってるじゃないか」
「うわ~、自分でバケツの水を被ったくせに、王子たちに虐められたって泣きついてるぞ」
「あ、足かけられたってキャサリン様たちを責めてた時のだわ。明らかに待ち伏せしてわざと倒れてるじゃない。白々しい。やっぱり嘘だったのね」
「見てください。さっきの破落戸たちとリック様とデイジー様ですわ。やっぱりキャサリン様たちは冤罪だったのですね。浮気したうえに婚約者たちに冤罪をかけて罰しようだなんて、なんて卑劣な人たちなのかしら……っ」
デイジーの自作自演の映像を見ながら、周りが次々とデイジーへの非難の声を上げる。
それを聞きながら私はもう一つの証拠である録音装置に魔力を流し、再生した。
『お前たち、ご苦労だったな。護衛からうまくあの女を部屋に連れ込んだと報告は受けている。どうだ? あの女との情事は楽しめたか?』
『は、はい! さ、ささ、最高でした。び、媚薬がまだ少し残っているのでお返しします』
『ああ、ご苦労。これはアイツが用意したことにするから、お前たちは媚薬の被害者として振る舞え。すべて俺の筋書き通りに進めるから心配するな。これであの女を蹴落として愛するデイジーを妻にできる。お前たちには礼を言うぞ。俺の治世では俺の直属の家臣として迎えてやろう』
『あ、あ、ありがとうございます……っ』
『それで? あの女はどんな風に善がっていたんだ? 性格は気に入らないが、容姿だけは男好きする豊満な体だからな。投獄したら俺も一度くらいお情けで抱いてやってもいいかもな。あの女の具合はどうだったんだ? 詳しく教えろ』
そこから先は下種な会話だったので音声を止めた。王族とは思えない会話内容に周りも驚愕している。
「ちょっとコンラッド様! 今の会話なんなの!? なんで悪役令嬢まで抱こうとしてるのよ! 愛する女は私だけだって言っていたくせに! 信じらんない!」
「お前だって虐められてたなんて嘘じゃないか! なんだあの自作自演の無様な映像は! 王族に嘘をつくことがどういうことかわかっているのか!? 首を刎ねられても文句は言えないのだぞ!」
壇上ではコンラッド第一王子とデイジーが醜い言い争いを始め、他の側近たちは呆然と立ち尽くしていた。
「殿下、これでワタクシたちの無実は証明されたも同然ですね」
キャサリン様の言葉に、コンラッド第一王子はギリギリと奥歯を噛みしめながら睨みつけている。
「婚約破棄については殿下有責になりますので覚悟なさいませ。今まで散々好き勝手やってきたツケは払っていただきますわ」
「うるさい! そもそもお前に可愛げがないから悪いんだろうが! 愛せる要素が何もない! せっかく王族に生まれたのに、嫌いな女と結婚しなきゃいけないなんて不幸でしかないだろ!」
「あら、気が合いますわね。ワタクシも貴方が大嫌いです。場所も弁えず昼間から他の女と盛ってる男なんて気持ち悪いったらないですわ。ワタクシこそ嫌悪感しかない男と結婚しなければならない人生に絶望していましたもの。ですから貴方から婚約破棄を言い出してくれて、とても感謝していますのよ」
「なんだと! 貴様……っ」
侮辱されたのが許せないのか、顔を真っ赤にして怒りで震えている。今にも殴り掛かりそうな勢いを察知した護衛がキャサリン様の前に出た。
「あ、そうそう。デイジー様を妻にとのことですが、両陛下はお認めにならないと思いますよ? だって彼女、誰の種を仕込んでいるのかわかりませんもの。ねえ、デイジー様?」
そう言いながらキャサリン様はこてんと首をかしげ、壇上にいるデイジーに微笑みかけた。
その花のような笑顔とは見合わないキツイ質問に、デイジーは青褪めながら口をパクパクと動かすが、動揺しすぎて言葉が出てこないようだ。
先程の動画を見て、キャサリン様の言葉の裏に隠された思惑に気づいたのだろう。
泣きそうな顔で首を横に振り続け、懇願するようにキャサリン様を見た。
残念。映像を映す権利は私にあるのよ。これから別件の罪を暴くためにも証拠は開示しなければならないの。
「デンゼル公爵、壇上にいる彼らによって非合法の媚薬がもう一つ使われた可能性があるのですが、その証拠映像を流してもよろしいでしょうか?」
「許可します」
「カーライル侯爵令嬢!貴様は何を言ってるんだ!? 私たちを侮辱するつもりか!? 言いがかりも甚だしい!」
「やめろ!やめてくれ!」
「うわー!!なんでこんな事に!!」
「俺は何も知らない! 騙されたんだ!!」
コンラッド第一王子に続き、側近たちも我を失ったように喚き出した。多分彼らは私の発言が何を指しているのか気づいたのだろう。
「そちらの皆様、今は彼女たちの証拠品を開示をしている最中です。裁判の進行を妨げるのも罪になりますよ。今は発言を控えてください」
「く……っ」
デンゼル公爵の注意を受けて、壇上にいる男たちの顔が絶望に染まる。
さあ、今まで散々私の友を侮辱した罪を思い知りなさい。
「エゼル」
「了解」
大スクリーンに映し出された映像を見て、今日一番のどよめきが起こった。
嫁入り前の令嬢には些か刺激が強いと思うけど、結合部分はモザイク入れたから許して欲しい。
そう、映し出された映像はアレ。
学園内で情事に耽る彼らの姿。
一人ずつ見ていくのは気持ち悪くて苦行でしかないので、画面を四分割にして四人の情事を一気に流してやった。
四つの画面に映るデイジーの嬌声がうるさい。
そして小瓶に入ったピンクの液体をお互いに口移しで飲みながら情事に耽る姿が映像に収められている。
「どういうことだデイジー!! 貴様は私の側近たちにも体を許していたのか!!」
「ち、違うのコンラッド様!私この人たちに脅されて仕方なく……っ」
「ふざけるな!お前から誘ってきたんだろうが!」
「そうですよ!王子の権力に逆らえないから言うこと聞いているだけで、本当に愛しているのは俺だけだって言ってたのに!ここにいる全員とヤッてんじゃねーか!」
「俺もそう言われたぞ? ふざけるな!全部嘘だったのか!こんな阿婆擦れのために俺は婚約破棄までしたのか……っ」
壇上ではギャーギャーと五人が罵り合い、それを会場の観客が軽蔑した眼差しで見物している。
動画の音が下品で気持ち悪いので、媚薬を摂取してる画面で一時停止させた。
「あの媚薬と思われる液体が我が国では認可が下りていないものです。私の元婚約者であるイアン・ハネスからもあれと同じものだと思われる媚薬の成分が検出されたので、その成分表を証拠品として提出させていただきます」
「確かに受け取りました。ですが現物が手に入らないと成分の照合ができませんね」
「それについては問題ない。本日バロー男爵邸を家宅捜査して、既に違法薬物は押収してある」
マライア様の発言に、デイジーが発狂した。
「どういうこと!? お父様たちに何をしたのよ!」
「おやおや、王太女である私に食ってかかるとは、どこまでも愚かな女だな。コンラッド、こんな下品で頭の悪い女のどこが良かったのだ?」
「なんですってぇ!?」
「バロー男爵家は本日をもって取り潰しだ。お前の親は王宮の地下牢に捕えられているぞ」
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