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白銀王子との再会②

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「髪を元に戻してしまったんだね……俺は黒髪の方が好きだったなぁ」
「あ、あれは変装でしたので」

 今のスカーレット様への変装は、魔法で行なっている。特別な魔法薬で、服薬すると丸一日好きな姿になれるのだ。声も同様。それらの薬の原料である鉱石は海を渡った島国の限られた鉱山でしか取れず……おばあちゃんからの貴重な遺産のひとつ。手持ちで作れたのは二週間分だから……明後日結婚式を挙げて、十日夜を過ごしてギリギリ。崖っぷちである。

 とりあえずふわふわと頭を撫でられ、たまに耳を弄られては……もう色んな意味で崖っぷちなんだけどね! 
 そんな私の顔を覗き込んで、ルーファス殿下は小さく笑う。

「あぁ、そんな可愛い顔をしないでおくれ。……今すぐ食べてしまいたくなる」

 その時、こほんと咳払いが聞こえた。眼鏡の奥から冷たい視線で睨んでくるのは、ルーファス殿下と一緒にいらした藍色髪をひとつに束ねた青年。煤色の瞳は元より切長なのだろう。涼やかな顔付きの長身に燕尾服と騎士の軽装を合わせたような服装がとても似合っている。

 ……こちらの人の方が、よほど“冷徹”そうだけど。
 その側近さんは淡々と忠告する。

「殿下……公務が滞っておりますので」
「あぁ、わかってる。すまない、スカーレット。急に結婚式を挙げることになったから、何かと仕事が立て込んでいてね。結婚式までなかなか会えないと思うけど……我慢できる?」

 殿下の青い瞳がうっそりと細まる。たとえ“冷徹王子”じゃないとしても……これが魅惑の王子様。うっ、確かにその瞳に見つめられるだけで、思わず思考が溶けてしまいそう……。
 だから思わず目を逸らす。すると殿下はくすくすと笑った。

「可愛い。俺の方が我慢出来なくなりそうだ」
「殿下」
「はいはい……あ、このうるさいのが俺の右腕のクルトだ。何かと顔を合わせる機会も多くなると思う。ごめんね、姑が二人いると思っておいて」
「殿下!」

 クルトと紹介された側近さんは、私をギロッと睨みつけてから、

「この度はご結婚おめでとうございます」

 と、恭しく頭を下げた。
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