【完結】惚れ薬の調合に失敗したので、何故か花嫁のフリして白銀王子に溺愛された魔女の話。

ゆいレギナ

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白銀王子との再会①

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 そんなこんなで目まぐるしく登城した私 (と、ドレスの下に隠れているネズミのスカーレット様)。カーテシー……だっけ? ただお辞儀するだけがあんなに大変だと思わなかった……。太ももが痛い……。

 それに正直寝不足だ。マナーの勉強はもちろん、お城での過ごし方も一通り頭に叩き込まれた。着替えからお風呂まで、身の回りのことも全てメイドさんに頼まなければならないんだって。しかもメイドさんにもそれぞれ専門があるから、服装などからそれを見極めて頼まないと非効率だとか。さらに挨拶や声掛けは身分の高いものからしないといけないから、廊下でお仕事中のお貴族様などとすれ違ったら、主に私から声を掛けないといけないとのこと。でもたまに来賓の他国の王族がいたりもするから、その場合は両国の関係性を鑑みて……などと、私にはちんぷんかんぷんで。

 結果、その都度近くでスカーレット様が隠れて指示してくれることなった。

 やたら豪華な馬車でガタガタと揺られること一刻。定期的な揺れは、本来なら疲れた身体に眠気を誘うのだろうけど……緊張で目は冴えていた。だって華奢な体躯。金のまっすぐな髪。そんな『スカーレット嬢』である自分に対して、違和感しかないんだもの。

 私は思わずつぶやく。

「わ、私……大丈夫ですか? ちゃんとスカーレット様らしく──」
「お黙りなさい。わたくしに独り言の悪癖はないわ。御者に聞かれたらどうしますの?」

 胸元に隠れたネズミのスカーレット様は辛辣だ。うぅ、少しぐらい愚痴らせてよ……。

 そうこうしていると、どんどん白亜の城が近づいてくる。もちろん、間近でお城を見上げるのは初めてだ。乗る時もそうだったけど、降りる時も手を貸してもらえるの? 
 
 お城の中とか当然初めてだから、キョロキョロしたくなるけど……がまんがまん。それでも目に飛び込んでくるのが全部キラキラで眩しいの。

「こちらでお待ちください」

 と、通された応接間も……怖くてどれにも触れられそうにない。ソファはふかふか。出された紅茶のカップからは芳醇な香りがするけど……飲むのはやめておこう。この豪奢な細い持ち手が折れてしまったら大変だ。

 そうこうしている内に「お待たせしました」と扉が開かれる。そこには、見覚えのあるキラキラ王子様と見覚えのないクールそうな人。雰囲気からして側近ってやつかな。この方は私より多分少し年下。雰囲気から殿下と変わりない年齢に見えなくもないけど、肌の質感からしてその実二十歳前後だろう。スカーレット様が、ルーファウス殿下のそばにいつも側近がいたと言っていた気がする。

「あぁ、スカーレット。会いたかったっ!」

 銀の王子様ことルーファス殿下は開口早々、私を抱きしめてきた。う、良い匂い……。殿下は私を腕の中に入れたまま、なにかモゾモゾしている。え、口で白手袋を外しているの? そしてあたたかな素手で、私の金の髪をすいた。

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