【完結】惚れ薬の調合に失敗したので、何故か花嫁のフリして白銀王子に溺愛された魔女の話。

ゆいレギナ

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ご機嫌なお茶会①

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「口付けって、甘くないのですね……」
「ご自身の唇を舐めたことないのかしら? よほど甘い物を食べた直後じゃない限り、味がする方が問題かと思いますの」

 気がつくと、朝日が昇っていた。
 私が目覚めた時には、すでに殿下はおらず。代わりに枕元にいたのは、『公務があるから先に出る。また茶会で。可愛い寝顔だった』という置き手紙。そして、その手紙の脇でちょこんと座っていたスカーレット様だ。

「そもそも、その体たらくはなんですか。どうして殿下が目覚める前に起きませんの? 公務に出る殿下をお見送りするのもあなたの務めでしょう?」
「でも公務って……ただの書類仕事なんですよね?」
「えぇ、本来なら花嫁が行うべき礼状書きですわっ!」

 どうなら、偉い人の結婚式は挙げて騒いで終わりではないらしい。その後も来てくれたことに対する感謝状を送ったり、残ってくれた相手と別件の会談ごとをしたり、場合によっては直接相手の所に赴いてお礼を行ったり。もちろん普段の業務 (詳しい仕事はわからないけれど)もあるから、結婚式の前も後も大忙しらしい。なので、そのうちの『奥』の仕事であるお手紙は通常奥方である新婦が行うとのこと。

 だけど、有り難いことにルーファス殿下は言った。

『え、そんなの全部俺がやるに決まってるじゃないか。好きな女に苦労させたい男がいると思う?』

 なので殿下が忙しく働く一方、私は夫婦とも参加しなければならない場所以外は、このお部屋で食っちゃ寝していればいいらしい。
 まぁ……さっそく今日の午後から、その『夫婦一緒に参加するお茶会』とやらがあるんだけどね。

「まったく……幸先が不安ですわ……」

 やれやれと首を振るネズミのスカーレット様に「ははは」と乾いた笑いを返した時、扉がトントンとノックされた。女の人の声がする。

「スカーレット様。身支度を始めさせていただいて宜しいでしょうか?」

 すると、本物のスカーレット様は急いで枕の下に隠れて。

「はい、お願いします」
 
 と応じながら、私も枕の下に手を忍ばせる。その小さく震えている背中を、私はそっと撫で付けた。
 うん、がんばらないと。
 入ってきたベテランメイドのマリアさんに、私はにっこりと笑顔を向ける。
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