おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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第二部 第一章 商売と探索

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 ダンジョンに潜った俺たちは、いつものようにまずは第一〇階層で、ダンジョン販売店の開店準備を始める。

 今回の探索もダンジョン往復一日、お店の開店時間を半日、探索一日という割り当てで予定し、二日半の予定で潜ってきているのだ。

 これは、無理なく探索し、商売としての利益も出せる行程として、幾たびかの試行錯誤を通して導き出した行程表である。

 ただ、もっと深く潜るようになってくれば、再度の修正を要するだろうが、今しばらくはこのパターンで探索を進めていきたい。

「グレイズさーん。もう、みんな並んでるよー。急いで準備しないとー」

「おう、今すぐに荷ほどきして陳列していくことにしよう。アウリース、メリー、カーラ、手伝ってくれ」

「了解、最速で開店準備する」

「心得ました。お待たせしては可哀想ですからね」

「さぁ、銭闘準備を急いでしましょう。お釣りのお金の準備は任せて」

 俺が荷ほどきを始めた時点で、すでに第一〇階層の入り口の広間には、前に潜っていた冒険者たちと、俺たちが潜るのに合わせて降りてきた冒険者で混雑をし始めていた。

 俺たちの開くダンジョン販売店は、冒険者たちの間にあっと言う間に知れ渡り、不定期の開店であるにも関わらず、開店待ちしている冒険者の数は日が進むにつれ増えているのだ。

 最近では、俺たちの潜るパターンを解析するパーティーもチラホラと出て来ており、補給ポイントとして探索行程に組み込みダンジョンに潜るパーティーも出てきている。

 ただ、うちも女性主体のパーティーで体調面から潜れない時もあるため、そういった時は探索をせずに俺が降りて店を開いていく時もあるのだ。

 だから、現状としてはあまり頼りにされると、待ちぼうけという事態も発生しかねない。ダンジョン内に常設の販売場所も検討しているが、販売を司る人員の確保ができていないので、検討段階から進められずにいる。

「そろそろ、販売員欲しいなぁ。販売の時間を移動に充てられれば、常設もできそうだけど」

「そうね。でも、常に開けてるとなると、防犯上の建物や、販売員も最低三人は確保しないと。お金を任せられるというのがネックだけどね」

「引退間近の中堅冒険者でいい人いないかな。潜るのには、ある程度腕っぷしもいるし、冒険者をあしらうには、それなりの人生経験もいるだろうし。年長の落ち着いた冒険者が担ってくれるといいんだが」

 開店準備のために忙しく手を動かしながら、店の今後のことをメリーと話し合っている。

 メリーがこの店のまとめ役であり、俺はその店から物資の運搬と販売の手伝いを委託されているという形なので、運営方針を決めるのはメリーとの話し合いが不可欠なのだ。

「売り上げ利益もグレイズさんが持ち込む荷量を増やしてくれたおかげで、一回で七〇〇万ウェルを超えて来てるしね。そろそろ、人を雇わないと……探索が進められないわね。鑑定については、私のこの指輪を使ってもらえば、買い取り査定まではできるだろうしね」

「そうだな。その指輪で鑑定も任せられるようになるのはデカイな。鑑定ができるジョブの商人は普通ダンジョンに潜らないからな。他のジョブで鑑定が使えるようになる、その指輪の存在はありがたい」

 メリーの親父さんが残した形見の指輪は、実に優秀な性能を誇るレアアイテムであった。

 あの指輪さえあれば、誰でも呪い鑑定まで使用することができるのだ。商売をやる者にとっては垂涎のアイテムだと言わざるを得ない。

「アルマさんにもめぼしい冒険者がいるなら教えてって頼んでいるけどねぇ。なかなか見つからないみたいだし」

「こっちでも探してみるしかないさ。店に来る客で良さげな人物がいたらスカウトしてみてもいいだろうしな」

「そうね。ちょっと気を付けて見ておくわ」

 開店準備のため手を動かしながら、メリーと販売員の確保のことを話し合っている間に、陳列を終えて開店準備が整っていた。

 準備を終えたところで、メリーやそのほかのメンバーがお揃いのエプロンを付けて、開店準備が整っていく。

 開店準備を見ていた冒険者たちが、すでに自主的に列を作り、店の前に並び始めていた。

 つい最近、横柄に横入りしたAランク冒険者を、メリーがグーパンチでのしたことが、冒険者に知れ渡ってからは、自主的に列を作り、整理の呼びかけをするようになっていた。

 腕力S+のグーパンチは伊達じゃないってことだな。

「さて、今日も開店することにしましょう。銭闘開始します!!」

 メリーの宣言で、ダンジョン販売店が開店された。

 呼子役の三人が自主的に列を作っていた冒険者たちに開店を告げていく。

「『ブラックミルズ商店街連合会、ダンジョン販売支店』が開店したよー!」

「ポーション、武具、食料、雑貨、何でもある。『有って良かった』の『ブラックミルズ商店街連合会、ダンジョン販売支店』開店した」

「五〇〇〇ウェル以上、お買い上げで鑑定無料券が付いてきます。この機会に色々とお買い上げくださいませー」

 呼子の三人が声を掛けると、列が動き始め、客は陳列された商品を品定めしたり、以前に手に入れた無料鑑定券を使ってドロップ品を鑑定してもらったりし始め、第一〇階層の広間は一気に喧騒に包まれていった。

 そして、休憩を取る暇もなく、ひっきりなしに客の対応をすることで、半日を過ぎたところで、持ち込んだ品物はほぼ完売になった。

 今回もドロップ品買い取りは結構多く、冒険者ギルドから納品依頼物や商店街からの依頼されたドロップ品も結構集まっている。

 これらは、お金になったり、新たな武具、魔法書、雑貨などの原料として冒険者ギルドや商店街に利幅を抑えた値段で卸されることが決まっている。

 それ以外のドロップ品は、メリーが地上に新たに借りた倉庫に一時保管され、新たな納品依頼が来た際に放出される運びとなっている。

 それらのドロップ品買い取りの費用を抜いた、今回の売り上げ純利益は記録更新の八〇〇万ウェルを叩き出していた。

 増量した荷物の分は、今まで少な目にしていた高級品を中心にラインナップを増やした分が、見事に当たり、売り上げが跳ね上がってきているのだ。

「グレイズさん、今回も売れに売れたわね。鑑定料無くても、これなら十分にやっていけそうよ。みんなもお手伝いご苦労様。日当はマシマシでお支払いしておくわね」

 メリーが素早く利益計算を終えて、日当分を入れた革袋を呼子役の三人に手渡していた。

 ちなみに俺はパーティー用の分配資金が懐に落ちるから、日当の受け取りはご辞退している。パーティー資金の方も、この二ヶ月でかなり額が溜まっており、冒険者としての稼ぎも合わせれば、数年後には貴族ばりの資産が築けそうな勢いであった。

「グレイズさーん! 日当が一〇〇〇〇ウェルもー。もがーー」

「ファーマ、お金の話は大っぴらにしない、商売の鉄則」

 メリーに手渡された日当もマシマシであったようだ。純粋なお小遣いになるお金なので、増えたら喜ぶのは悪い事じゃない。

 けど、パーティー資金の方もキチンと個人口座を作って、報酬は五等分にして入れてあるんで、結構な額が貯まり始めてる。装備や魔法書は俺の貯めた金から出す予定だし、溜まった個人口座の金は、みんながSランク冒険者として立派に独り立ちした時にお祝いとしてあげようと思っているのだ。

 お金はいくらあっても困らないが、無ければ困ることも多い。

 Sランク冒険者になったとしても、生活が必ずしも保障されるわけではないので、少しずつでも貯めておく方がみんなのためになるだろう。

 そんなことを思いながら、お金の話をしようとしたファーマを、カーラが口止めしていたのを見て、仲の良い姉妹だと錯覚しそうになるが、彼女たちは生まれも育ちも違う他人同士であった。

 けれど、姉妹だと言われたら、それはそれで納得していまうかも知れないほど、彼女たちは全員仲が良い。

 女性四人いれば、派閥くらいできそうだけど、最年長のメリーを筆頭に四人は姉妹のように仲が良いのであった。

「そうね。カーラの言う通り、お金の話は内緒でした方がいいわよ」

「はーい。じゃあ、内緒ー」

「ファーマちゃんは、メリーさんに運用してもらってるから、もっといっぱい増えてそうだけどね」

 お金の話をしていた三人を見ていたアウリースが言う通り、ファーマは使い道が無いからと言って、日当をメリーに渡して運用してもらっている。

 メリーの運用先は、このダンジョン販売店への出資増額であると思うので、このままでいけば分配金がどえらいことになりそうな気もしていた。

 もしかしたら、引退する頃にはファーマが一番の大金持ちってこともあり得るな。

『年若い金持ち嫁に老後を養ってもらう、ヒモ亭主っての案外いいもんじゃないですか?』

 馬鹿な! それはマズいだろ。完全にダメ男の典型だと思うぞ!

 ハクの茶化しが現実化しないように、俺もしっかりと稼いでおかないとな。引退後に嫁に食べさせてもらうとか……。

『あれぇー。ついに嫁と認めましたか? 認めちゃいました?』

 ち、ちげえよ。言葉のあやだ。言葉の。

 ハクが茶化してきたので、必殺の可愛がり攻撃で、その口を止めることにした。

『あっ、あっ、あ~! グレイズ殿、そこはらめぇええ~!!』

 ハクの弱点であるお腹の辺りをワシャワシャで撫でて可愛がりを行い、口を封じると、完売した店の後片付けをすることにした。

「さて、商売の方はこれにて終了して、一休憩したら、次は冒険者として探索に勤しむことにしよう」

「「「「はい」」」」

 皆から元気よい返事が返ってくる。若い分、疲れた様子はまだないようだ。ただ、唯一、ハクだけがだらしなくお腹を晒してビクン、ビクンとして寝そべっていたのが見えた。
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