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第二部 第二章 おっさんずパーティー
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「内緒話は終わったか?」
黙って成り行きを見ていたグレイが、メリーとの話を終えた俺に話しかけてきた。
彼としては助けてもらった恩義があるため、俺とメリーの内緒話を律儀に待ってくれていたようだ。
「ああ、すまん。話はついた。実はグレイたちに俺から提案したいことがあってな。怒らずに冷静に聞いてもらえるとありがたい。けして、君たちを馬鹿にした提案ではないし、損はしないはずの提案だ」
俺の言葉にグレイの仲間たちも近寄ってきていた。
「『商人』グレイズの提案か。わしは聞くだけの耳はもっているつもりだ」
長身の探索者のデイビスは、短躯なグレイの肩に肘を掛けている。
「儲かる話ならいいが。グレイほどじゃないがうちも借金でかみさんを泣かせているからな」
同じく戦士のモローも真剣な顔でこちらを見ていた。
「君ら『おっさんず』をメリーが代表を務める『ブラックミルズ商店街連合会』が運営するダンジョン販売店の販売員にスカウトしたいと思ってね」
「はぁ!? 俺らを販売員にスカウトだと!? 何を馬鹿なことを言っているんだ」
グレイもデイビスもモローも、ありえないって言いたげに目が点になっていた。
「まぁ、驚くのも仕方ないと思うが。俺の話をキチンと聞いてくれ。うちとしては販売を担当してくれる人物を探していて、販売場所も考えるとある程度のレベルの冒険者が担当してもらいたいと思っていて、今回のグレイたちの動きを見てスカウトしたいと思った次第だ」
「ダンジョンの第一〇階層のあの店の販売員か。確かにある程度の実力がないと、潜れないか」
デイビスは顎に手を当てつつ、俺の提案を熟考していた。
「だがな。オレらは借金が嵩んでいて、より深く潜って一獲千金でもしない限りは帳消しできないくらいまで、追い込まれているんだ」
「その件だがな。借金はうちが肩代わりして一旦全部精算させてもらい、改めて俸給から返済してもらう形はどうだろうか。もちろん、返済額は生活が苦しくならない程度に抑えるつもりだ」
借金を俺たちが肩代わりするという話を聞くと、身を乗り出して話の続きを促していた。
「それだと、グレイズたちにメリットがないんじゃないのか?」
「うちは真面目に働いてくれる従業員を手に入れられるメリットがある。それは、とても大事なことだ。そのための投資は怠らない」
「だが、俺は販売員などやったことないぞ。グレイもデイビスも冒険者一筋だしな」
「大丈夫だ。基本は店の警備員としての採用だし、もう一人採用したいと思っている人物が会計責任者をする予定だから、『おっさんず』は万引き、強盗に対する護衛係だと思ってもらえば。それと、二〇年の冒険者としての知識を生かした商品提案って形で若い冒険者たちに品物を勧めてくれると助かる」
「もう一人? 俺ら以外に?」
俺がもう一人採用すると話すと、『おっさんず』たちの顔に疑問符が浮かんでいた。
「ああ、グレイの娘さんであるセーラも採用しようとメリーと話し合っていたんだ。回復魔法アレルギーが発症していないが、父親のことを考えるといつ発症してもおかしくないし、すでに中堅クラスの冒険者の実力を持っているなら、第一〇階層の販売員としてもやっていけるはずだ。それに低層階ならポーション代も嵩まずに済むからな」
「セーラも雇うだと!? た、たしかに低層階までなら、ポーションの使用量も少ないし稼ぎ次第では、冒険者よりもいい仕事かもしれん」
グレイは、冒険者稼業をしている娘のセーラが発症することを極度に恐れているし、自分たちと行動を共にして低層階であれば苦戦することもないと判断をしているようだ。
回復魔法アレルギーの潜在キャリアーは、上級冒険者を目指すには致命的な弱点であり、グレイが娘を心配するのも頷ける。
「一応、給料は日当制だが、一日一人一五〇〇〇ウェルで半月の開催は予定している。半日で第一〇階層まで往復し、半日勤務、翌日は休息日って形だ。だいたい月に二〇万ウェル程度の稼ぎにはなるはずだと思う。これなら。中堅冒険者が月に稼ぐ額にはちょっと足らないくらいだが、危険度を差し引けばいい稼ぎになると思うそ」
「低層階に潜って店の護衛をするだけで、月に二〇万ウェルか。それも個人でか」
グレイは提示した報酬の額に顔色を変えていた。ポーション代で四苦八苦している彼らからすれば、低層階で店番するだけで月に二〇万ウェルを稼げるのは魅力的な仕事であるようだ。
「グレイたちが、冒険者としてダンジョンの最奥に到達したいと思うなら、この話は無かったことにしたいが、冒険者としての限界を感じているなら、是非この話に乗って欲しい」
「うむむ、確かにグレイズの言う通り、わしらは回復アレルギー持ちだしのぅ。それに年も重ねてきているから、これ以上深く潜るのは……」
「デイビスの言う通りだな。グレイ、この話は俺たちの苦境を脱する最後のチャンスかもしれんぞ」
モローもデイビスも俺たちの申し出にとても興味を示していた。
一方、グレイも提案に興味があるものの、娘も採用すると言われたことに一抹の不安を感じている様子であった。
「オレとしては願ったり叶ったりの話だが、セーラの奴が何というか……。そこだけは、オレも何とも言いようがない」
「そっちは、本人を見つけた時に聞いてみることにするさ。もし、無理だと言われたら、その時はまた考えよう」
「そう言ってもらえるとありがたい。じゃあ、まずはセーラを探すことにしよう」
セーラの件についての対応に納得したグレイは握手を求めてくる。
俺はその手を握り返すと、話を聞いていたメンバーたちの方に振り返り、セーラたちのパーティーを探すことを伝えた。
黙って成り行きを見ていたグレイが、メリーとの話を終えた俺に話しかけてきた。
彼としては助けてもらった恩義があるため、俺とメリーの内緒話を律儀に待ってくれていたようだ。
「ああ、すまん。話はついた。実はグレイたちに俺から提案したいことがあってな。怒らずに冷静に聞いてもらえるとありがたい。けして、君たちを馬鹿にした提案ではないし、損はしないはずの提案だ」
俺の言葉にグレイの仲間たちも近寄ってきていた。
「『商人』グレイズの提案か。わしは聞くだけの耳はもっているつもりだ」
長身の探索者のデイビスは、短躯なグレイの肩に肘を掛けている。
「儲かる話ならいいが。グレイほどじゃないがうちも借金でかみさんを泣かせているからな」
同じく戦士のモローも真剣な顔でこちらを見ていた。
「君ら『おっさんず』をメリーが代表を務める『ブラックミルズ商店街連合会』が運営するダンジョン販売店の販売員にスカウトしたいと思ってね」
「はぁ!? 俺らを販売員にスカウトだと!? 何を馬鹿なことを言っているんだ」
グレイもデイビスもモローも、ありえないって言いたげに目が点になっていた。
「まぁ、驚くのも仕方ないと思うが。俺の話をキチンと聞いてくれ。うちとしては販売を担当してくれる人物を探していて、販売場所も考えるとある程度のレベルの冒険者が担当してもらいたいと思っていて、今回のグレイたちの動きを見てスカウトしたいと思った次第だ」
「ダンジョンの第一〇階層のあの店の販売員か。確かにある程度の実力がないと、潜れないか」
デイビスは顎に手を当てつつ、俺の提案を熟考していた。
「だがな。オレらは借金が嵩んでいて、より深く潜って一獲千金でもしない限りは帳消しできないくらいまで、追い込まれているんだ」
「その件だがな。借金はうちが肩代わりして一旦全部精算させてもらい、改めて俸給から返済してもらう形はどうだろうか。もちろん、返済額は生活が苦しくならない程度に抑えるつもりだ」
借金を俺たちが肩代わりするという話を聞くと、身を乗り出して話の続きを促していた。
「それだと、グレイズたちにメリットがないんじゃないのか?」
「うちは真面目に働いてくれる従業員を手に入れられるメリットがある。それは、とても大事なことだ。そのための投資は怠らない」
「だが、俺は販売員などやったことないぞ。グレイもデイビスも冒険者一筋だしな」
「大丈夫だ。基本は店の警備員としての採用だし、もう一人採用したいと思っている人物が会計責任者をする予定だから、『おっさんず』は万引き、強盗に対する護衛係だと思ってもらえば。それと、二〇年の冒険者としての知識を生かした商品提案って形で若い冒険者たちに品物を勧めてくれると助かる」
「もう一人? 俺ら以外に?」
俺がもう一人採用すると話すと、『おっさんず』たちの顔に疑問符が浮かんでいた。
「ああ、グレイの娘さんであるセーラも採用しようとメリーと話し合っていたんだ。回復魔法アレルギーが発症していないが、父親のことを考えるといつ発症してもおかしくないし、すでに中堅クラスの冒険者の実力を持っているなら、第一〇階層の販売員としてもやっていけるはずだ。それに低層階ならポーション代も嵩まずに済むからな」
「セーラも雇うだと!? た、たしかに低層階までなら、ポーションの使用量も少ないし稼ぎ次第では、冒険者よりもいい仕事かもしれん」
グレイは、冒険者稼業をしている娘のセーラが発症することを極度に恐れているし、自分たちと行動を共にして低層階であれば苦戦することもないと判断をしているようだ。
回復魔法アレルギーの潜在キャリアーは、上級冒険者を目指すには致命的な弱点であり、グレイが娘を心配するのも頷ける。
「一応、給料は日当制だが、一日一人一五〇〇〇ウェルで半月の開催は予定している。半日で第一〇階層まで往復し、半日勤務、翌日は休息日って形だ。だいたい月に二〇万ウェル程度の稼ぎにはなるはずだと思う。これなら。中堅冒険者が月に稼ぐ額にはちょっと足らないくらいだが、危険度を差し引けばいい稼ぎになると思うそ」
「低層階に潜って店の護衛をするだけで、月に二〇万ウェルか。それも個人でか」
グレイは提示した報酬の額に顔色を変えていた。ポーション代で四苦八苦している彼らからすれば、低層階で店番するだけで月に二〇万ウェルを稼げるのは魅力的な仕事であるようだ。
「グレイたちが、冒険者としてダンジョンの最奥に到達したいと思うなら、この話は無かったことにしたいが、冒険者としての限界を感じているなら、是非この話に乗って欲しい」
「うむむ、確かにグレイズの言う通り、わしらは回復アレルギー持ちだしのぅ。それに年も重ねてきているから、これ以上深く潜るのは……」
「デイビスの言う通りだな。グレイ、この話は俺たちの苦境を脱する最後のチャンスかもしれんぞ」
モローもデイビスも俺たちの申し出にとても興味を示していた。
一方、グレイも提案に興味があるものの、娘も採用すると言われたことに一抹の不安を感じている様子であった。
「オレとしては願ったり叶ったりの話だが、セーラの奴が何というか……。そこだけは、オレも何とも言いようがない」
「そっちは、本人を見つけた時に聞いてみることにするさ。もし、無理だと言われたら、その時はまた考えよう」
「そう言ってもらえるとありがたい。じゃあ、まずはセーラを探すことにしよう」
セーラの件についての対応に納得したグレイは握手を求めてくる。
俺はその手を握り返すと、話を聞いていたメンバーたちの方に振り返り、セーラたちのパーティーを探すことを伝えた。
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