おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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日常編 キマイラ討伐へ

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「毎度ありがとうございます。グレイズさん、メリーさん。これで冒険者ギルドの本部にも顔が立ちます。王様直営の冒険者ギルドとはいえ、本部からのお達しには逆らえませんからね。グレイズさんたちが持ち込んでくれたレアドロップ中心に本部に送ってご機嫌を取っておきますね」

 キマイラ探索を終えた俺たちは地上に帰還すると、ダンジョン販売店で買い取ったドロップ品や自分たちが探索中に倒した魔物のドロップ品をアルマに卸していた。

「そういえば、ギルドマスターになって一度も王都にある冒険者ギルドの本店に顔を出したことがないが、顔は出さなくても大丈夫なものなのか?」

 俺はふと、アルマの前のギルドマスターであるジェイミーが度々、領主のところや王都に出張していたことを思い出し、自分も顔を出した方がいいのか、冒険者ギルドを任せているアルマに聞いてみた。

「グレイズさんは他のギルドマスターと違って特殊ですからねー。本部もジェネシス王が直接任命したギルドマスターを王都にまで呼びつける勇気はないんじゃないでしょうか。本部への報告は治安部門の担当者に返り咲いたジェイミーさんにお任せしてます」

「それでたまにジェイミーの顔が見えなくなることがあったのか……」

「ですねー。私が行くより強面のジェイミーさんの方が無理を通せますので。グレイズさんの施策を通すには色々と本部との調整もありますからね」

 領主の方の許認可は、メラニアから全て委託されている俺がいるため問題ないが、冒険者ギルドとしての認可は本部から受けなければならないらしく、色々と面倒をかけている様子であった。

「すまんな。迷惑をかける」

「いいですよ。エンシェントドラゴンの逆鱗一つ頂ければ。全然、迷惑じゃないですから」

 アルマよ。

 それは幻のレアドロップ品で今までに数個しか出回ってないやつだろ。

 オークションにかければ一個で百億ウェルとかする、超一級品のレアドロップだと知って言っているだろ。

「わふう(今のあたしたちなら、エンシェントドラゴンもよゆーですよ。よゆー)」

 足元にまとわりついていたハクが、危険なお誘いをしてきていた。

 ブラックミルズの第三〇階層のボスモンスターでかなりの強さを誇る魔物に挑めと唆されてもなぁ。

 ムエルたちとの時は、状態異常にさせる毒矢やポーション、それに回復ポーションも魔力回復ポーションも山のように俺が持ち込んで、ギリギリの勝ちを拾った相手だ。

 腕輪の力を外して、魔法もフルパワーで使えば、ソロでも勝てると思うが、それはそれで冒険者としての枠を外れた存在になりそうな気がするぞ。

「無理。俺の力はレアドロップ出すのと、街を守る以外にあてにしたらダメだぞ」

「ですよねー。グレイズさんはそういう人だって知ってますから、冗談ですよ」

「オレもいつかエンシェントドラゴンをソロ狩りしてみたいっすね。古龍種狩り達成したソロ冒険者は未だにいないっすからねー。やってみたいわー」

 ジェネシスがまた無謀なことを企んでいた。

 エンシェントドラゴンとタイマン勝負するには、経験を重ね、色々と装備も戦略も立てて万全の状態を作り出してから挑まないと、高熱の炎により一瞬でこの世とオサラバしてしまう。

「んんっ! 実力をつけてから挑んだ方がいいぞ。エンシェントドラゴンの炎は耐熱の付与がかかった防具しか防げないからな。普通の装備で受けたら一瞬で身体ごと溶かされる」

「強い相手、装備大事。やっぱり、お金必要」

「対エンシェントドラゴン装備かー。結構なお値段しそうね。いっぱい稼がないと」

「ファーマも頑張るー。ハクちゃん、エンシェントドラゴンって強そうだねー。たのしみー」

「皆さん、あ、あのエンシェントドラゴンは深層階三〇階層のボスですよ。今回戦ったキマイラの強さとは段違いなはず。ダンジョン内で近寄るなって言われるノーライフキングと同程度の強さだと聞いてますけど!?」

 やる気が漲り過ぎるうちのメンバーの中で、ただ一人アウリースだけが、エンシェントドラゴンの強さを理解してくれ、みんなに説明をしてくれていた。

 いずれ挑むとは思うが、今はまだ早い。

「みんなのやる気はありがたいが、俺たちはまだBランクだからな。今度は深層階への扉を守るゴブリンキングを倒し、深層階に挑めるようにならないと」

「おおぉ、深層階に潜れるようになれば、妾の寝所に帰れる時もくるのぅ。今はメラニアの召喚獣だが里帰りは一度しておきたいところじゃ」

 俺たちがBランクに昇格し、深層階に近づいたことでクィーンが実家である不死王の宮殿ノーライフキングパレスに帰れることを喜んでいる。

 そういえば、忘れていたがクィーンは実家から魂集めにふらっと上に階層にまできたところ、俺にぶっ倒されて力を失い帰れなくなったところをメラニアに召喚されたんだったな。

 ボスモンスターは倒されない限り、再配置されないはずなんで、不死王の宮殿ノーライフキングパレスはボス不在が続いているのだろうか。

 それはちょっと覗いてみたいな。

「メラニアちゃんのお家はずっと留守にしてましたからね。お掃除した方がいいのかしら?」

「再配置された妾の部下たちが庭園管理とお掃除はしてくれておると思うが……。半分生身にされたことで地上の方が妾としては住みやすい環境になっておる。ここなら、メラニアのご飯や街のみんながお菓子をくれるし、ダンジョンで魔物から魂を補充できて満足しておる。あっちは別宅じゃな」

 ボス魔物としてそれでいいのかクィーンよ。

 完全に街のアイドルと化して、餌付けされているぞ。

 そのうちメリーあたりが『ノーライフキングに餌付けできる街、ブラックミルズ』とか観光看板を立てそうな気がしてならないんだが。

「クィーン、街の人から色々ともらうのはいいが、あまり目立っちゃダメだからな。召喚主のメラニアに迷惑がかかることもあるし」

「わかっておるのじゃ。だから、こうやって名札をつけておる」

 クィーンがメラニアに買ってもらった服につけられた名札を誇らしげに見せてきた。

 名札には『クィーンがご迷惑をおかけしましたら、メラニア・ブラックミルズまでご連絡頂ければ幸いです』と書かれている。

 これを見せられて領主の館に怒鳴り込む人はほとんどいないだろうが。

「なら、いいが」

「それよりも、ダンジョンから帰ってきたのじゃからご飯にしよう。妾はお腹空いたのじゃー」

「ファーマもお腹すいたー」

「わふう(あたしもご飯欲しいですー)」

「わかった。わかった。清算もそろそろ終わるから、飯にすっかー。アルマも仕事あがったらこいよー。セーラにも伝えてあるし」

「あ、はーい。メリーさんと細かい打ち合わせ終わったらあとでお伺いしますね。場所はいつもの酒場ですね」

「おう、ダンジョンから帰還した日はメラニアも疲れてるだろうし、外食ですませることにしてるからな。いつもの酒場で食ってるぞ。じゃあ、先に行ってるからな」

「ちぇー今日は姉上の飯が食えないのかー」

「なら、ジェネシスは自分の屋敷でぼっち飯決定だな」

「ぜってー嫌っす。グレイズさんが嫌がっても一緒に飯食いますから!」

 我がパーティーの欠食児童たちが、空腹を訴え始めたので、俺たちはメリーに清算を任せ、先に商店街の酒場に行くことにした。
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