おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

文字の大きさ
187 / 232
日常編 王都への旅

しおりを挟む

 お節介な女神様の謀略を寸でのところで阻止することに成功した俺は冒険者ギルドに顔を出していた。

「よぅ! グレイズ、いいところに来たな」

 受付窓口にはアルマの命令で王都に出張していたはずのジェイミーの顔があった。

「あれ? 王都に出張だったんじゃないのか? 例の色々な許認可をもらいに王都のギルド本部に顔を出してたはずじゃ……」

「いやー、そのつもりで行ったんだがな。最近、冒険者ギルド本店で人事異動があったらしくてな。トップに座った奴が、『王様が認可したギルドマスターであろうが、本部に顔出ししない上に前例のない施策を独断で実施するとはけしからん』って頭の固い発言するやつになっちまってな。俺程度じゃ話にならんと門前払いされたのさ」

「いや、でもさジェネシスって一応アレでも王様なわけだろ。その王様が直接任命したギルドマスターにケチを付ける本店のトップもマズいんじゃないか?」

「酷いっすね。『一応』じゃなくて『ちゃんと』王様っすよ。今は宰相のサイアスに国事行為を代行させてますけど、修行期間が終われば正式に王として戻るつもりですし、俺は舐められてるんですかね? この場合、キッチリしめた方がいいっすか?」

 ファルブラウ王国の最高権力者である国王の認可を受け、冒険者ギルドも営業活動を行っているため、今回の本店の仕打ちは彼の顔に泥を塗る行為ではある。

 とはいえ、就任から一度たりとも顔を出さないギルドマスターを放置すれば、本店としての面子が立たないという相手側の事情も分かる気がした。

 王様が直々に任命したギルドマスターなんて王国内でも俺一人くらいだろう。

 多くのギルドマスターはその地の冒険者ギルドの職員から選ばれるか、本店から派遣された者が勤めるのが本来の姿だとアルマとジェイミーに聞いている。

 イレギュラーな存在の俺が色々と新たな施策の案を持ち込めば拒否反応が強いのは予想できた。

「ジェネシス様、申し訳ありません。本店のやつらは頭硬いのが多いんで……。俺も国王陛下の任命したギルドマスターの代理だとお伝えしたのですがね。それが癪に障ったのか、相手の態度が硬化しましてギルドマスター本人が直接説明しに来ないと話は聞かないと駄々をこねられました」

「ほぅ、その本店のトップになったやつを『余』自らが顔を出して成敗してやろうか。『余』が任命したグレイズ殿をないがしろにする行為をしよって」

 それまでのお調子者の駆け出し冒険者風の装いを捨て、本来の姿である王の姿が出てきていた。

「おい、ジェネシス。落ち着け、王様が一時の感情に流されて私刑を行うのは短慮が過ぎるぞ」

「嫌だなぁ、冗談っすよ。冗談。さぁて、今日はグレイズさんたち潜らないから警護のやつらと潜ってくるかぁ。窓口のお嬢さんなんか実入りのいい依頼ないっすか」

 地金の王様の姿が出かかったジェネシスであったが、すぐに仮面を被り直し、冒険者の顔に戻って窓口の受付嬢と話を始めていた。

「とはいえ、やっぱり一度俺が顔を出した方が何事もスムーズに動くみたいだから、ちょっくら王都に顔を出してくるしかないかぁー。実施予定の施策も早いところ冒険者ギルドの認可ももらいたいところだし」

「あー、悪いがそうしてもらえるとありがてぇ。アルマがお前にどう報告しようか頭を抱えてたからな。お前が直接出向くと言ってくれれば万事解決だ」

「おぅ、そうするとしよう。アルマは上か?」

「ああ、上でお前に何て報告するか悩んでるはずだ」

 俺はジェイミーに礼を言うと、二階の執務室へ足を運んだ。


「グ、グレイズさん~!! すみません、すみません。なんか色々とすみません!!」

 部屋に入るとアルマがぺこぺこと頭を下げていた。

「まぁ、事情をジェイミーに聞いているので、アルマが謝る必要はない。とりあえず、俺が王都の本店に顔を出せばいいんだろ?」

「え、ええ。はい、そうですね。誠に申し訳ありませんが、人事異動があったようでトップになったハリアーさんが反王国派で冒険者ギルドの独立運営にこだわってる方らしいと、モーラッド一族のヨシュアさんが教えてくれました」

 ジェネシスの耳目となったヨシュアのやつも王都やこっちを往ったり来たりして色々と忙しそうだな。

 だが、色々と情報を流してくれるのはありがたい。

「ふむ、冒険者ギルドに反王国派って考えるやつなんているのか? 仮にも国から認可受けてるやってる商売だろ?」

「私も詳しくは知らないのですが、ヨシュアさん情報によれば本店には結構いるみたいですよ。王国に支払う税額が上がる度に反王国派が増えるらしいです」

「ああ、そういう意味か……。税金は稼げば持っていかれるのは仕方ないだろう。確かに税の支払いが無くなれば、その金は自由に使えるようにはなるがな……」

「ですね。このブラックミルズの冒険者ギルドも膨大な税金を国と領主に支払ってますけど、領主の分は投資資金として還元されてますからね。余所とはちょっと事情が違うかも」

 領主の税の取り分に関してはメラニアが直接アルマに投資還元をすると通告してあるため、帳簿の上での徴税はされているが実際は手元に残ることになっていた。

 そのため、その金も一部が色々な施策への資金源となっていた。

「もしかして、うちの特例措置も気に入らないってやつか?」

「かもしれませんね。本店から見れば、ブラックミルズ支店は税負担が極端に軽いですから、やっかみもあるのかもしれません」

「やはり一度きちんと話をつけてきた方がいいな。王都までは馬車で二週間だったな」

「え、ええ。はい、二週間ほどかかります。でも、グレイズさん抜けたら『追放者アウトキャスト』の探索やダンジョン販売店の方に支障が出るのではないですか?」

「まぁ、出るだろうけどもさ。俺が行かないことには話が進まないだろ?」

「え、ええ……そうですね。私が出向いても同じことを言われるでしょうし……」

「なら行くしかないだろ。みんなにはその間お休みしておいてもらうか、ダンジョン販売店のお手伝いをしてもらっておくつもりだ」

 今のメンバーたちなら俺が居なくても中層階に潜って難なく探索は果たせそうだが、でもやはり彼女らだけで探索に出すのに一抹の不安を感じるのは過保護過ぎるだろうか。

「す、すみません……。グレイズさんが来てくれるなら、私がお供して相手方に施策のご説明をさせてもらいます。冒険者ギルドの方はジェイミーさんがしばらくなら面倒見てくれるだろうし」

「そうか、アルマが説明してくれるなら俺はご挨拶しに行くだけだからな。それに実は俺はこの歳まで王都まで行ったことがないんだ。地理不案内なんで案内人がいると助かる」

「え? グレイズさんって商人でしたよね? 仕入れとかで王都とか訪れませんでしたか?」

 俺が王都に行ったことがないと言うと、アルマが驚いた顔をしてこちらを見ていた。

「商人って言っても、俺は雇われ商人でそれも鑑定専門だったし、仕入れは店の主人がほとんどやってたからな。近隣の村や街は行ったことがあるが、王都まで足を伸ばすことは全くなかったぞ」

「へぇ、じゃあ私が美味しい食事の店を教えますね。旅の楽しみは食事と風景くらいしかないですから」

「ああ、そうしてくれ。じゃあ、今からみんなに王都に行くことを伝えてくるから、出立は明日の朝早くでいいな?」

「はいっ! 私もすぐに準備しておきますね」

 そう言うと俺は執務室を去り、メンバーたちが待つ自宅に帰ることした。
しおりを挟む
感想 1,071

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。