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最終章 そして、伝説へ
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コーリアンに戻ると、王国軍の本隊を率いたサイアスが対策本部に到着していた。
「サイアス、遅かったな。あと一日遅ければ余はそちの首を取れとヨシュアたちに申し渡すところであったぞ」
ジェネシスの姿を見つけたサイアスは駆け寄ると、即座に額を地面に擦り付けて土下座をしていた。
「へ、陛下! 私はクレストン家の残党討伐を準備していたので、そちらの対処を終わらせて駆けつけた次第。王国軍を動員すれば、クレストン家の残党に王都を明け渡しかねない事態に陥る可能性もあったのでお許しください」
「そのような理由は余のあずかり知らぬところだ。遅れた理由にはならん! 遅延の責任を取ってその首を差し出せ」
「へ、陛下!? それはあんまりな申し分ではありませんか!」
「と、言いたいところだが。クレストン家の残党に疑心暗鬼の種を植え付けお互いを牽制させ動けなくしてから、こちらに駆け付けたことに免じてその罪は許してやろう。首は取らんでおいてやる。その代わりこの対策本部は全部サイアス、お前が仕切れ。余はグレイズ殿と一緒にブラックミルズ側に渡る。王国軍と冒険者を使い本街道、枝街道、ハーベイ村を防衛せよ。一箇所でも突破されれば、その首もらい受ける」
土下座しているサイアスの首に自らの剣を突き付けていた。
首に剣を突き付けられたサイアスはカタカタと身体を震わせている。
あんまりサイアスをギリギリに追い込んでこき使うと、あとで復讐されるぞ。
でも、まぁヨシュアたちがそれをさせないと思うが……。
王としては臣下に慈悲を示すのも大事なことだと思う。
このままだと、ジェネシスに恐怖だけ感じて仕える臣下が増えてしまいそうだしな。
俺はそっとジェネシスの剣を取り上げる。
「グレイズ殿?」
「ジェネシス、臣下に命を下すのに剣はいらんぞ。恐怖は人を委縮させるだけだからな。その能力を限界まで引き出すなら功績は功績として褒めねばならん」
「グ、グレイズ殿……貴殿の命を狙った私を庇い立てしてくれるとは……」
「サイアス、グレイズ殿に感謝しておけ」
「ははっ! 陛下とグレイズ殿のご厚情に感謝いたします。では、早速仕事に取りかかります」
サイアスは地面から起き上がると、すぐに対策本部となっているコーリアンの冒険者ギルドへ入っていった。
「相変わらずグレイズさんは甘いわねー。あのサイアス宰相があれくらいで改心するとは思えないけど」
「メリーさんの言う通りっすよ。あいつの性根はねじくれまくってますからね。もっと、厳しくいかないと将来の禍根になるっす」
メリーやジェネシスは俺が甘いと言うが、強権的な王は皆から嫌われるからな。
ジェネシスは人の心の機微も分かる良い王の素質も持ち合わせているから、あんまりサイアスを苛めてる様子を皆に見せるわけにもいかないってこともある。
「ジェネシスが王として、宰相を苛める姿を皆に見せたくないって思いがあっただけだ」
俺の言葉にジェネシスがハッとした顔になった。
どうやらその視点には思い至らなかったようだ。
「さ、さすがっす! グレイズさん! やっぱグレイズさんが王様やりませんか! 今すぐ王位を譲ってもいいっす。姉上の婿だから譲位も問題ないし」
「お、おいっ! そういう話をしているわけじゃない! 王はジェネシスの仕事だからなっ!」
俺はジェネシスに剣を返すと、ブラックミルズへ向かうための準備に取りかかることにした。
数日後、コーリアンの対策本部をサイアスに引継ぎ、メンバーとアルマ、セーラ、ジェネシスを率いて俺はブラックミルズの街に戻ってきていた。
「荷車がバリケード代わりしてあるとはな……長くブラックミルズに住んでいたが、こんな様子は初めて見た」
冒険者たちが行き交っていたブラックミルズの大通りは、バリケード代わりの荷車がいたるところで横倒しにされていた。
普段とは違い物々しい雰囲気が街を覆っている。
「グ、グレイズさんっ! グレイズさんだっ! おいっ! グレイズさんたちが帰ってきたぞ!!」
高い建物の屋上で見張りをしていた冒険者が俺の姿を見つけて、大騒ぎをしている。
すぐに街の方からみんなが駆けだしてきて、あっという間に人だかりができていた。
「グレイズっ! よく戻ってきたな! いやぁ、絶望都市から魔物が溢れだしてくるなんて初めての事態だ。どうなることかと思ったが、グレイズが戻ってきたなら一安心だな」
人だかりの中からジェイミーが、ぬっと現れると、俺の肩を叩いて喜んでいた。
ブラックミルズでの長年の友人であり、元ギルドマスター、そして『ヒッグス・マイヤー』の組織の一員の男であった。
「お前が簡単にくたばるとは思ってなかったし、それにブラックミルズの住民も簡単に魔物の蹂躙を許すとは思わなかったしな」
「なんとか、魔物は住民と冒険者たちが協力しあって撃退してくれてるさ。以前のギスギスした関係のままだったら守り切れなかったかもしれんが、グレイズが繋いでくれた絆のおかげで結束できた」
冒険者と住民が反目しあっていた時に、今回の事態が起きたかと思うと背筋がゾッとする。
「それにしても、こんな大規模な魔物流出が起きるとは……一体どうなっているんだか」
「グレイズが旅に出て一週間後くらいだったか、やたらと魔物の姿を見ると近郊の村から話が入ってきてな……。冒険者たちを派遣して捜索していったら、魔物たちが最近発見された絶望都市のダンジョンから溢れていると判明したんだ。俺が報告を受けた時にはもう絶望都市の監獄は陥落していた。その後は一気に流出する数が増えてこの通りの有様だ」
ジェイミーが魔物流出した経緯を簡単に報告してくれていた。
やっぱり溢れ出した経緯を聞いていると、ダンジョン主が他の神器の所有者を喰らって、一気に強くなったことで階層の成長よりも先に、魔物が大量発生してダンジョンに収容しきれずに溢れ出したってことかもしれんな。
やはり根本原因のダンジョン主を討たないと、事態の収束は見られないかもしれないぞ。
俺はブラックミルズに帰ってきた安堵よりも、これから行うべきことへ向けての不安の方が強くなっていた。
「サイアス、遅かったな。あと一日遅ければ余はそちの首を取れとヨシュアたちに申し渡すところであったぞ」
ジェネシスの姿を見つけたサイアスは駆け寄ると、即座に額を地面に擦り付けて土下座をしていた。
「へ、陛下! 私はクレストン家の残党討伐を準備していたので、そちらの対処を終わらせて駆けつけた次第。王国軍を動員すれば、クレストン家の残党に王都を明け渡しかねない事態に陥る可能性もあったのでお許しください」
「そのような理由は余のあずかり知らぬところだ。遅れた理由にはならん! 遅延の責任を取ってその首を差し出せ」
「へ、陛下!? それはあんまりな申し分ではありませんか!」
「と、言いたいところだが。クレストン家の残党に疑心暗鬼の種を植え付けお互いを牽制させ動けなくしてから、こちらに駆け付けたことに免じてその罪は許してやろう。首は取らんでおいてやる。その代わりこの対策本部は全部サイアス、お前が仕切れ。余はグレイズ殿と一緒にブラックミルズ側に渡る。王国軍と冒険者を使い本街道、枝街道、ハーベイ村を防衛せよ。一箇所でも突破されれば、その首もらい受ける」
土下座しているサイアスの首に自らの剣を突き付けていた。
首に剣を突き付けられたサイアスはカタカタと身体を震わせている。
あんまりサイアスをギリギリに追い込んでこき使うと、あとで復讐されるぞ。
でも、まぁヨシュアたちがそれをさせないと思うが……。
王としては臣下に慈悲を示すのも大事なことだと思う。
このままだと、ジェネシスに恐怖だけ感じて仕える臣下が増えてしまいそうだしな。
俺はそっとジェネシスの剣を取り上げる。
「グレイズ殿?」
「ジェネシス、臣下に命を下すのに剣はいらんぞ。恐怖は人を委縮させるだけだからな。その能力を限界まで引き出すなら功績は功績として褒めねばならん」
「グ、グレイズ殿……貴殿の命を狙った私を庇い立てしてくれるとは……」
「サイアス、グレイズ殿に感謝しておけ」
「ははっ! 陛下とグレイズ殿のご厚情に感謝いたします。では、早速仕事に取りかかります」
サイアスは地面から起き上がると、すぐに対策本部となっているコーリアンの冒険者ギルドへ入っていった。
「相変わらずグレイズさんは甘いわねー。あのサイアス宰相があれくらいで改心するとは思えないけど」
「メリーさんの言う通りっすよ。あいつの性根はねじくれまくってますからね。もっと、厳しくいかないと将来の禍根になるっす」
メリーやジェネシスは俺が甘いと言うが、強権的な王は皆から嫌われるからな。
ジェネシスは人の心の機微も分かる良い王の素質も持ち合わせているから、あんまりサイアスを苛めてる様子を皆に見せるわけにもいかないってこともある。
「ジェネシスが王として、宰相を苛める姿を皆に見せたくないって思いがあっただけだ」
俺の言葉にジェネシスがハッとした顔になった。
どうやらその視点には思い至らなかったようだ。
「さ、さすがっす! グレイズさん! やっぱグレイズさんが王様やりませんか! 今すぐ王位を譲ってもいいっす。姉上の婿だから譲位も問題ないし」
「お、おいっ! そういう話をしているわけじゃない! 王はジェネシスの仕事だからなっ!」
俺はジェネシスに剣を返すと、ブラックミルズへ向かうための準備に取りかかることにした。
数日後、コーリアンの対策本部をサイアスに引継ぎ、メンバーとアルマ、セーラ、ジェネシスを率いて俺はブラックミルズの街に戻ってきていた。
「荷車がバリケード代わりしてあるとはな……長くブラックミルズに住んでいたが、こんな様子は初めて見た」
冒険者たちが行き交っていたブラックミルズの大通りは、バリケード代わりの荷車がいたるところで横倒しにされていた。
普段とは違い物々しい雰囲気が街を覆っている。
「グ、グレイズさんっ! グレイズさんだっ! おいっ! グレイズさんたちが帰ってきたぞ!!」
高い建物の屋上で見張りをしていた冒険者が俺の姿を見つけて、大騒ぎをしている。
すぐに街の方からみんなが駆けだしてきて、あっという間に人だかりができていた。
「グレイズっ! よく戻ってきたな! いやぁ、絶望都市から魔物が溢れだしてくるなんて初めての事態だ。どうなることかと思ったが、グレイズが戻ってきたなら一安心だな」
人だかりの中からジェイミーが、ぬっと現れると、俺の肩を叩いて喜んでいた。
ブラックミルズでの長年の友人であり、元ギルドマスター、そして『ヒッグス・マイヤー』の組織の一員の男であった。
「お前が簡単にくたばるとは思ってなかったし、それにブラックミルズの住民も簡単に魔物の蹂躙を許すとは思わなかったしな」
「なんとか、魔物は住民と冒険者たちが協力しあって撃退してくれてるさ。以前のギスギスした関係のままだったら守り切れなかったかもしれんが、グレイズが繋いでくれた絆のおかげで結束できた」
冒険者と住民が反目しあっていた時に、今回の事態が起きたかと思うと背筋がゾッとする。
「それにしても、こんな大規模な魔物流出が起きるとは……一体どうなっているんだか」
「グレイズが旅に出て一週間後くらいだったか、やたらと魔物の姿を見ると近郊の村から話が入ってきてな……。冒険者たちを派遣して捜索していったら、魔物たちが最近発見された絶望都市のダンジョンから溢れていると判明したんだ。俺が報告を受けた時にはもう絶望都市の監獄は陥落していた。その後は一気に流出する数が増えてこの通りの有様だ」
ジェイミーが魔物流出した経緯を簡単に報告してくれていた。
やっぱり溢れ出した経緯を聞いていると、ダンジョン主が他の神器の所有者を喰らって、一気に強くなったことで階層の成長よりも先に、魔物が大量発生してダンジョンに収容しきれずに溢れ出したってことかもしれんな。
やはり根本原因のダンジョン主を討たないと、事態の収束は見られないかもしれないぞ。
俺はブラックミルズに帰ってきた安堵よりも、これから行うべきことへ向けての不安の方が強くなっていた。
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