おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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最終章 そして、伝説へ

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「動きはノロいからハクちゃんも陽動してね。もうすぐ、グレイズさんたちがくるから」

「わふう(大失敗です。たかが魔法生物にこんな醜態を晒すとはアクセルリオン神様に見られたら、裸で折檻されちゃいますよ……トホホ」

「妾の魔法が効かぬ……これだから、ミスリルとかアイアンのゴーレムは嫌いなのじゃ。美味しくもないし。あー、めんどくさいのじゃ」

 先行したファーマが加わったことで、アイアンゴーレムに防戦一方だったハクとクィーンもやる気を取り戻したように見えた。

 堅くて魔法も効かず耐久力が高いアイアンゴーレムを討伐するには、ただひたすらに打撃攻撃でダメージを蓄積するしかない。

 アウリースがアイアンゴーレムを魔術士キラーと言ったのは殴り合いしか倒す手段がないからなのだ。

「いやー、久し振りに堅そうな相手が出てきてくれてお仕事する気になるわね」

 隣を一緒に進むメリーが、本に書かれている女蛮族らしい笑みを浮かべメイスを振って打撃攻撃の素振りをしてやる気を見せている。

 メリー、そんな姿を色々な人には見せられないと思うぞ。

 それと、素振りは危ないんと思うんだが。

「メリー、やる気は戦う時までとっておいた方がいい」

「分かってます。でもね、久しぶりにストレス発散ができると思うと嬉しくてね。ほら、軟らかい子たちだと、ハクとファーマちゃんたちがすぐに倒しちゃうでしょ。骨のある子だといいんだけど」

「相手はいちおう深層階に出るボスクラスなんだから用心に用心を重ねてくれ」

「了解っ! メリー吶喊しますっ!」

 そう言ったメリーが走るスピードを更にあげてアイアンゴーレムの方へ駆けだしていった。

 色々と本来は俺のやるべき仕事を頼んでるし、メリーのやつあれで色々とストレスが溜まってるんだろうか。

 無理をしないで欲しいところなんだがな。

「メリーさん、きっと欲求不満っすね。ちゃんと、グレイズさんが発散させてあげないとブラックミルズが血の海に染まるかもしれませんっすよ」

 メリーとのやり取りを見ていたジェネシスが茶々を入れてきたので思わず言い返してしまう。

「その場合、まっさきにジェネシスが血祭りにあげられるだろうな。メリーのメイスは骨身に染みるぞ」

「ハハハ、嫌だなぁ。冗談っすよ。冗談。いや、参った。参った」

 メイスの打撃を受けた自分を想像したのか、顔色を青く染めたジェネシスが視線を逸らして誤魔化し笑いをしていた。

 俺はふぅと軽くため息を吐くと、元気よくアイアンゴーレムに駆け出していったメリーをみんなと追い駆けていく。

「よっし! ファーマちゃん、ハク、クィーン。私が来たからにはもう勝利は確定よ。どぉおおっせいっ!!」

 メリーはアイアンゴーレムの足元を駆け抜けざまに、膝裏へ強烈なメイスの一撃を放っていた。

 その一発でアイアンゴーレムの膝が崩れて地面に膝を突く。

 相変わらず、パワーだけだと腕輪を外した俺と同等に近い威力をだしてくれる。

「メリーさん、すごいっ! 一発でアイアンゴーレムさんの膝が崩れたよー。よーし、ハクちゃん、ファーマたちはメリーさんに攻撃がいかないようにターゲットになるよ」

「わふう(ドジっ子ワンコの汚名返上の機会! あたしはやってみせるっ!)」

 地面に膝を突きさらに動きが鈍ったアイアンゴーレムに、ファーマとハクが陽動を兼ねたかく乱攻撃を繰り出すと、メリーへの敵の注意が散漫になった。

 このコンビネーションは相変わらず、手堅いというか、熟成されてきてるかもしれんな。

 深層階のボスクラスでも、ファーマとハクの動きを捉えられる者は少ないだろうし。

「ふぁぁ、妾は魔法も効かねば、素手の攻撃も通らん相手とは戦わぬのじゃ。ここで観戦するからみんな頑張れーなのじゃ」

 クィーンは自分の攻撃が通じないと見て、やる気を失い観戦モードに入っていた。

「クィーンちゃん、ちゃんとお仕事しないと夕食のおかず減らしますよー」

 召喚主であるメラニアが、さぼっているクィーンの姿を見つけ、おかずを餌に仕事をさせようとしていた。

 最近、メラニアもクィーンが太ってきてることを気にして何かと運動させようと必死なっているのだ。

「な!? メラニア、それは勘弁して欲しいのじゃ! おかずが減らされたら、夜のおやつを増やすしかないのじゃ。じゃが、それだと妾のおやつコレクションが減ってしまう。それは嫌なのじゃー」

 おかずが減らされると聞いたクィーンが急にやる気をみせて、メリーの援護攻撃を始めた。

 素手であるためダメージが入るかは不明だが、意外に肉弾攻撃もイケる方なので、もしかしたらがあるかもしれない。

「もらったぁあああっ!! どっせいいっ!!」

 ファーマとハクによって気を取られていたアイアンゴーレムの反対側の膝裏にメリーの会心ともいえる一撃が入る。

 一発で堅いとされてるアイアンゴーレムの身体にヒビが入ったぞ。

 ヒビが入り両ひざを地面に突いたアイアンゴーレムは、尚もメリーの存在より身体に取りついてくるハクとファーマの方を気にして腕を振り回していた。

 この分だと、俺の出番はない可能性の方が高い。

 今のパーティーなら、ボスクラスの連戦が続くダンジョン主がいる階層でもなんら問題なく戦っていけるかもしれないな。

「ウガガガっ!」

「次は両肩を壊すわよ。そうすれば、ただの練習台に成り下がるわ」

「りょーかい。ハクちゃん、メリーさんが両肩を攻撃しやすいよう、今度は膝を突いてるアイアンゴーレムの股下をくぐるように攻撃するよ」

「わふう(了解!! 駆け抜けますっ!)」

 ファーマとハクが股下を駆け抜けると、アイアンゴーレムは二人を掴まえようと腕を伸ばした。

 その瞬間を狙いすましたように、メリーがアイアンゴーレムの前に出る。

「もらったわね。その腕砕いてあげるわよ」

 ニヤリと妖しく笑うメリーは、やはり本に書かれている女蛮族のように見えてしまう。

 メリーの放ったメイスの打撃はアイアンゴーレムの肩を捉え、堅い皮膚をぐしゃぐしゃに押しつぶして使い物にならなくしていた。

「ギギギ、ギギギ」

 腕が動かなくなったことに気付いたアイアンゴーレムであったが、すでに移動手段である足も、攻撃手段である手も動かせず、ただもがくように胴体と顔を動かすことしかできなかった。

 それからはまさにメリーの殲滅攻撃とも言うべき、メイスの殴打の前にさすがのアイアンゴーレムもなすすべなく鉄の塊と戻されてしまっていた。

「俺が手を出す暇もなかったな……」

「ですね。ほんとメリーさんがいると固くて魔法が効かない相手には余裕ですよね。私が最初にいたパーティーはあのアイアンゴーレムが倒せなくて解散になりましたし」

 アウリースが最初にいたパーティーは、天啓子の能力開花してた彼女の魔法がメイン戦闘力だったらしいからそうなるのも無理はないな。

 それくらいの対応ができるようなパーティーじゃないと、Sランク認定は中々されないところだし。

 特化パーティーはAランクで終わるところも多いと聞いてるからな。

「それにしても、あの様子を街の連中には見せられんだろ……」

 勝利の雄たけびをあげているメリー、ファーマとハクとクィーンを見てため息が出た。

 アイアンゴーレムに勝利した後、あらためて探索をすると、広場の隅に水場が設置されているのが発見され、水場問題も解決の目処が立った。

 そして、簡易補給拠点設置がされると、この広場を出発点として神器の所有者を喰ったダンジョン主が居る絶望都市への探索行が開始されることなったのであった。
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