婚約破棄された元公爵令嬢は、辺境で聖女としてしたたかに生きることにした。

シンギョウ ガク

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 グスタフ王太子。
 歳はコーデリアと同じ一八歳。
 王と王妃の嫡男でこのアルガン王国の王位継承第一位の男性。
 異母兄フェルディナンドが側近となった王太子の名を聞いたコーデリアは頭を抱えて悩んでいた。
 彼とは、王立貴族学院の同窓生であるからだ。
 そのため、彼の素行の悪さも噂も性格もすべてほとんど言っていいくらい知っている。

 なぜ、コーデリアが詳しく知っているかといえば、貴族の子女たちが寄宿舎生活を送る王立貴族学院は、アルガン王国の社交界の縮図であるからだ。
 そのため、女性貴族たちが常に興味が持つのは、どこの誰がどの貴族の家の何人目の子であるかで、家産はどれくらいあるのかも話の種にされている。
 公爵家の令嬢であったコーデリアとしては、そんな女性貴族たちが必死に結婚相手を探すことにあまり興味がなかった。
 けれど、趣味で講義を受けていた政治学の講師から、貴族女性たちとは話を合わせ色々な情報を手に入れることが重要と学んだため、取り巻きの女性貴族たちとその手の話も色々としていた。

 そんな女性貴族たちとの話の中で一番話題にのぼったのが、グスタフ王太子だった。
 家柄でいけば、王国最高の家柄を誇る彼は、女性貴族たちの憧れの的である。
 顔も王国一の美女と言われた母親の容姿を受け継ぎ、癖のないサラサラとした輝くような金髪とスッキリと、スッとした切れ長の碧眼により整った顔立ちをしており、女性の受けは非常に良い見目をしていた。
 ただし、金遣いは荒い上、女性癖は非常に悪く、毎日隣に寝る女性が違うと言われたり、彼を巡って常に女性同士が喧嘩するといった悪い噂に事欠かない存在なのだ。

 問題児である異母兄フェルディナンドが、同じく問題児のグスタフ王太子の側近になった。
 類は友を呼ぶ。
 誰かが言った言葉ではあるが、放蕩生活をしていた異母兄フェルディナンドが、同じ気質を持ち合わせているグスタフ王太子と意気投合して側近入りしたのは想像に難くなかった。

 けれど、一介の公爵令嬢であるコーデリアにはどうすることもできなかった。
 当主はすでにフェルディナンドであり、その異母妹であるコーデリアは当主の付属物に過ぎないからである。
 政治的権力は皆無であり、発言力はないに等しい状況なのだ。

 コーデリアが唯一、アルガン王国で政治的な発言をできるようになる手段は、他家に嫁ぎ伴侶の男性貴族を通しての発言である。
 けれど、相手が王太子と公爵ともなれば、意見できる者は大幅に限られてしまう。
 なので、実質的にコーデリアは何もできないのだ。
 ただ、行く末を黙って見届けるしかできない身であった。

 父が長年命を懸けて守ったアルガン王国の行く末を考え、悶々とした日々を半年ほど過ごした頃、突然、異母兄フェルディナンドから王都に来るようにとコーデリアのもとに手紙が届いたのであった。
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