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しおりを挟む「お友達……です? わたくしと?」
コーデリアはフロースからの『友達』という言葉に心地よさを感じていた。
今のコーデリアには、以前とは違い地位も名誉もお金すらもない。
何も持たざるただのコーデリアである。
そんな自分を『友達』と言ってくれるフロースの優しい心根に触れ、自分が選んだアルテシオン大神殿での再出発が間違ってなかったと喜びを感じる。
「うん。これから同じ部屋で暮らすし……も、もしかして迷惑です?」
「わ、わたくし、叛乱首謀者として国外追放された身ですが……こちらこそ、ご迷惑では……」
「そんなのここじゃあ関係ないよ。コーデリアはあたしと一緒の神官見習いになるんだもの。ここに来る前に何があったなんて気にしてないから。あ、でも夜会とか貴族の衣装とかちょっと興味が……いやだいぶ興味があるかも。でもね、でもね、そういうのも全部含めてコーデリアと仲良くしたいです! ダメですか?」
人懐っこいフロースから与えられる飾らない言葉の数々に、コーデリアは心が温かくなっていくのを感じていた。
裏の意味を推察する必要のない本音のみの言葉。
それが、コーデリアの心をドンドンと突き動かしていく。
そして気付いたら自然とコーデリアの眼から涙が滴となって溢れていた。
「はわわっ! ヴァリエさん、どうしようコーデリア泣いちゃった。あたし何か悪いことしたかな?」
「一つ考えられるのは無断でおっぱい揉んだことかしらね」
「ひえぇえ! ごめんね、ごめん。あた、あたし採寸は手でじゃないとできないからっ! そんなに嫌だった?」
コーデリアが突然泣き出したことで、慌てたフロースがヴァリエに助けを求めたが、事態はより一層混沌としていた。
その様子を見たコーデリアは目元を指で拭うと、慌てるフロースを抱きしめていた。
「いえ、『友達』って言ってもらえてとっても嬉しくて泣いてしまったのです。フロース、改めて確認したいのですが、こんなわたくしとお友達になってくれますか?」
「うん、いいよ。こちらこそよろしくね。コーデリア。あー、よかったぁ。嫌われたらどうしようって考えちゃったよ」
全てを失い、追放され、人類最果ての土地と呼ばれる未開地でできた初めてとも言える友達。
打算も計算もなく、思ったことを言い合える仲になれそうな子との出会いに、ほんの少しばかりこの地への追放を選択肢として与えてくれたグスタフに感謝をしているコーデリアがいた。
神殿に着いて早々に気の合う友達を得たことで、案外、言われているよりも、この地での生活が楽しいものになりそうな予感をひしひしと感じているコーデリアであったのだ。
「あらあら、二人とも仲良くやれそうね。じゃあ、あとはフロースに任せるわ。神官服とお部屋の説明はよろしく」
「わっかりました~。コーデリアのことはお任せしてください」
抱き合って喜んでいる二人を見ていたヴァリエは、後をフロースに任せると告げると、部屋から早々に立ち去っていった。
その後、二人はコーデリアの神官服を作りながら、神殿での決まり事や、生活する上での注意事項など、ありとあらゆることを話続け、部屋の火は夜遅くまで灯ることとなった。
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