死の餞ヲ、君ニ

弋慎司

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第1部

#07 グレイの場合

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 俺はなんと不幸な男だろう。よりにもよって、自ら地雷を踏み抜いてしまうなんて。
「ここはどこだーー!! ……まあ俺が悪いんだけど、悪いんだけど……ぎゃああああぅ!!」
 長くて長い渡り廊下を歩いていると、何かが遠くで倒れたり天井から落ちたりと、まるで幻聴のように鳴り響いた。その度に俺が叫ぶ。
 数えてはいないが、もし数えたらこれで十回目くらいだと思う。
 出口を探して彷徨っているうちに、迷子になってしまったのだ。
 こんなに叫んでいるのに、アクアやレイセンは助けに来てくれない。冷たい奴らだなぁ。いやいや、自業自得だった。
「なんで外に出なかったんだよぉ、俺……」
 悔やんでも「時、既に遅し」である事はわかっている。しかし、悔やまずにいられなかった。
 こんな事なら最初からここへ来るなどと言わなければよかったのだ。一人で大人しく留守番を任せられていればよかったんだ。
「はあぁぁ……。ん? アクアとレイセン、か……?」
 数多くある部屋を繋ぐ廊下を歩いていた俺は、変わらない景色に一つだけ違う場所を見つける。
 白い花が一輪、床に落ちている。艶のある白だ。花を拾い上げると、正面のドアが幾らか開いている事に気がついた。
「……行くか」
 俺はやけに冷静さを取り戻していた。
 この花がそうさせるのだろうか、恐怖という心情は和らいでいった。そして、開きかけたドアを一気に引いた。
「……あれ? 何もいな……っ!?」
 一呼吸置こうとした瞬間、何かがどさりと落ちる音がした。
 まさか、誰か居る? いや待て。ここには俺と、アクアとレイセンしかいないはずだ。
 消えかけた恐怖と不安が舞い戻ってくるのを感じた。だが、俺の足は動いた。音がした方へ、ゆっくりと。
「ひいっ……!!」
 女の人が、倒れている。俺が手に持っている花のように白くて長い髪。綺麗な女性がまるで人形のように、眠っている。
 周りの様子を見ると、どうやら彼女はクローゼットの中から出てきたようだった。
 こんな所に、なぜ。浮かび上がる疑問を振りきり、近くに置かれていたベッドに女性を運んだ。
 窓辺のカーテンが靡いている。俺は、彼女が目覚めるまで傍にいようと決心した。
「ん……」
「……!」
 女性は目蓋を開けた。エメラルドグリーンの瞳と、目が合った。
 すると俺の心臓は大きく高鳴る。それは恐怖の最骨頂か、或いは恋に落ちた音か──。
「だ、大丈夫? さっき、そこで倒れたのを、たまたま見かけて、それで……」
「……て……」
「え?」
「早く、逃げて……!!」
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