魔剣士「お姫様の家出に付き合うことになった」【現在完結】

Naminagare-波流-

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第三章【決別】

3-3 ルール

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――――【 1時間後 】

猛竜騎士「ん~…!」
猛竜騎士「我ながら、良い味付けだった!」

白姫「す、すっごく美味しかったです!」パァァ
魔剣士「まぁまぁだな」

猛竜騎士「…」
猛竜騎士「……で、食べて落ち着いたところでちょっと話をしておくが……」
猛竜騎士「冒険者はな、貪欲でないといかん」

魔剣士「ん?」

猛竜騎士「歩いていて、昼なのは既に知っていた」
猛竜騎士「あれだけ歩けば腹も減るし、二人がどう動くか見ていたが、あれじゃダメだぞ……」
猛竜騎士「何事にも貪欲に動き、素直に言え。何度も言うが、分かったな?」

魔剣士「わかったっつーの!」
魔剣士「さっきからうるせぇな、いちいち小言はいらねーよ!」

猛竜騎士「…素直な欲は、悪いこともあるが良いこともあるんだぞ」
魔剣士「あ?」
猛竜騎士「いざという時、動けるようになるからだ」
魔剣士「ん?」
猛竜騎士「食べ物にも、休憩も、男と女の欲も、全ての欲が結局最後に行きつくところがどこかわかるか?」
魔剣士「…何だよ」
猛竜騎士「"命"だよ」

魔剣士「!」
白姫「!」

猛竜騎士「食うこと、遊ぶこと、人間の欲求の行き着く全ての最後は、"命"に直結している」
猛竜騎士「…かっこつけんな。落ち着け。素直になれ」
猛竜騎士「命に関係する欲に対し、普段が普段では、最後の最後で"命"への欲が薄れるんだ」
猛竜騎士「特に、俺ら冒険者は危険が伴う」
猛竜騎士「たとえば強大な敵を前にした時、諦めて命を捨てる奴と、生きようと足掻く奴がいる」
猛竜騎士「それはかっこつける奴より、意外と普通の"素直"な人間のほうが足掻きやすいんだぜ」

魔剣士「…」
 
猛竜騎士「普段の何気ない行動が、いつかの決断へと繋がる経験の糧になっている」
猛竜騎士「何事にも意識しないで行動してるのなら、何かを意識して行動しろ」
猛竜騎士「冒険者として、世界を見たい者として、大人の階段として、身体的な強さではなく精神力を磨け」
猛竜騎士「魔剣士はその強がりと己の力を見極め、素直になること」
猛竜騎士「姫様は浮いた足を地に着け、自分を知ること」
猛竜騎士「……いいな?」

魔剣士「…わかった」
白姫「は、はい…」

猛竜騎士「…ま、そんだけさ」ニカッ
猛竜騎士「いざという時と、こうして足りないところは俺が教えていくつもりだ」
猛竜騎士「大船に乗ったつもりで安心しとけ!」

魔剣士「泥舟の間違いだろ」ケッ
猛竜騎士「お、お前は言ったそばから暴言を……」ピクピク
魔剣士「ふん…」
猛竜騎士「……はぁ」

白姫「あ、あはは……」
白姫「…」
白姫「……あっ!?」ハッ


ふと、白姫が何かに気付く。


魔剣士「ん…」
猛竜騎士「どうした?」
白姫「あ、あれ……!あそこっ!」バッ!
魔剣士「あれって…」チラッ
猛竜騎士「ん……」

…ザッ!
ワーグの群れ『…グルッ』


向こう側には、狼のような獣の群れが見えた。
腹を空かせているのか、その目つきはこちらへ向けられている。


白姫「お、狼…さん……!?」
魔剣士「いや…あれは……」
猛竜騎士「…ワーグだな。ただの獣じゃない、魔狼の名を持つ魔獣の一種だ」


………


ワーグの群れ『ガァッ!!』
ワーグの群れ『グルッ…ッ!!』ギロッ
ザッ…ザッ……


………


白姫「わ、わわっ!こっちにくるよ!?」
魔剣士「…俺らを標的にする気か」チャキッ
猛竜騎士「…」

ワーグの群れ『ガァァアッ!!』クワッ!

魔剣士「…おもしれぇっ!食後の運動といこう…!」バッ!
猛竜騎士「待て」スッ
魔剣士「…んあ?」

猛竜騎士「姫様、リュックの食料から干し肉があるだろ?」
猛竜騎士「それを適当にとって、あいつらに投げてやれ」

白姫「えっ?」
魔剣士「な、なんで!」
猛竜騎士「早くしないと、俺らがエサになるぞ?」
白姫「わ、わかりましたっ!」アセッ
ゴソゴソ…スッ、ギュッ
白姫「こ、このくらい掴めばいいです…か?」

ワーグの群れ『…ッ!』クンクン…

猛竜騎士「そうだな。あとはポイっと」
白姫「え、えいっ!」ポイッ!


ヒュウゥゥッ…ポスッ!
ワーグの群れ『ッ!』
ワーグの群れ『……グルッ!』
ザザザザッ…
ワーグの群れ『ハグッ……』パクッ
ガツッ…ガツガツ……!!モグッ…


猛竜騎士「おーおー、よう食ってるわ。腹ぁ空かせてるんだろうな」ククク

魔剣士「…」プルプル
魔剣士「……オッサン、おい!」

猛竜騎士「ん?」
魔剣士「なんであのクソ狼にエサなんてやるんだよ!」
猛竜騎士「クソ狼て」
魔剣士「面倒くせーな、さっさと斬ればいいだろうが!」
猛竜騎士「…」
魔剣士「つーか、かなりの食料を買ったのってまさか……!」
猛竜騎士「そーいうこと」ニカッ

白姫(こうやって、魔獣にあげるため……)

猛竜騎士「…それより、ほれ。満足して帰ってくぞ」


ワーグの群れ『グルッ……』
ワーグの群れ『…』クルッ
ザッザッザッザッ……
………



魔剣士「…な、なんで」
魔剣士「……なんでわざわざ!殺せばいいじゃねえか!」

猛竜騎士「無駄な殺生もすることねーだろ」
魔剣士「はぁ!?相手は、俺らを殺そうと!」
猛竜騎士「つーか、そこで殺られると困る」
魔剣士「何がだっつーの!」

猛竜騎士「あのな、お前……」
猛竜騎士「……ってそうか、勉強もしてないから分かるわけなかったんだな」

魔剣士「何がだっつってんだろ!!」
猛竜騎士「…困るのは他の人なんだよ」
魔剣士「あァ!?」
猛竜騎士「何で、あの狼たちが"魔狼"の魔獣の名を持つか知ってるか」
魔剣士「んなの、魔力を保持した獣だからだろ!」
猛竜騎士「魔法の力を持つ…と、いうことは?」
魔剣士「あ?」
猛竜騎士「ということは、どういうことだ?」
魔剣士「…普通の狼より、頭がいいとかそんなんだろ」
猛竜騎士「つ、ま、り?」
魔剣士「…何が言いたいかわからねーよ!」
猛竜騎士「ここは、人が通る道だ。獣道や、森の中ならまだしも…人が行き来する道。分からないか?」
魔剣士「それが何だよ!」

白姫「…」
白姫「あっ…!」ハッ

魔剣士「ん?」
白姫「…も、もしかして!」
猛竜騎士「なんだい?」
白姫「に、人間に復讐しようとする……とか?」

魔剣士「…はぁ?低知能なやつらがまさか」

猛竜騎士「正解♪」ニコッ
白姫「やったっ!」

魔剣士「」

猛竜騎士「頭の良さは、姫様のほうが圧倒的に上なようで」ククク
魔剣士「…」ピクピク
猛竜騎士「お前な、普段から狼狩りをして俺に売りつけてたのに、分からないのか?」
魔剣士「んだよ!?」イライラ
猛竜騎士「普通の狼っつーのは、基本…群れで行動しないんだよ」
魔剣士「!」
猛竜騎士「縄張り意識が強くてな、普通の狼たちは絶対に群れをなして行動をしないんだ」
魔剣士「そ、そういえば…。俺が倒してた狼も1匹ばかりの相手で……」
猛竜騎士「な?」
魔剣士「じゃあ、さっきの群れは……」
猛竜騎士「だから、"魔狼" だ」
魔剣士「!」

猛竜騎士「あいつらは群れを成して行動し、仲間意識が非常に強い。」
猛竜騎士「この周辺に生息し、いくつもパーティのように集まり、行動をしている…。」
猛竜騎士「どこかで仲間がやられれば、その倒した対象を追って復讐する習性を持ってるのさ」
 
魔剣士「じゃ、じゃあもし…。さっき俺が剣であいつらを切り刻んでたら……」
猛竜騎士「他の群れが叫びを聞きつけ、人の匂いだと知り、俺らだけじゃない"他の人を"も襲うだろう」
魔剣士「いっ……」
猛竜騎士「その相手が冒険者ならいいが…。もし、力のない商人や一般人だったら?」
魔剣士「…」

猛竜騎士「……強い者ほど、弱い者には手を出さないものさ。」
猛竜騎士「その弱者は、やがて更なる弱者へと手をだし、負の連鎖へと繋がるんだ」

魔剣士「…っ」
魔剣士「そ、そうだったのか……」
魔剣士「お、俺はその…。だけど、知らなかった…から仕方ねーっつーか……」

猛竜騎士「そりゃ当然だ。こうして、俺のような経験者と新人が勉強し、知識となっていく」
猛竜騎士「今日の覚えを、明日に活かせ。明日に覚えたことを明後日へ活かせ」
猛竜騎士「別に知らないことを責める気はないし、そういったこともあるんだって覚えておけばいいさ」ニコッ

魔剣士「…わ、わかった」コクン
白姫「…はいっ」コクン

猛竜騎士「無論、中には問題がある魔獣もいる。アウルベアとか、何もなしに人を襲う連中とかな」
猛竜騎士「その辺は見かけ次第、ぶっとばしちゃってオッケーだけど」アハハ

魔剣士「…お、おう!」
魔剣士「そういうのなら任せてくれ、いくらでもやってやるよ!!」

猛竜騎士「出てきたら任せてみよっかねー」
猛竜騎士「ただ、魔剣士のことだからスマートにはいかないんじゃねーかな」ハッハッハ

魔剣士「な、なんだと!?」

猛竜騎士「ま、勉強会はこれにて一旦閉幕!ご飯も食べたし歩くぞ!」
猛竜騎士「荷物をしまって、リュックを背負って、南方港へ出発だ!」

魔剣士「…へいへい」
白姫「おーっ!」

…………
……


・・・・・・・・・・・・・・・
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・・・・
・・・
・・




……魔剣士らが去ったすぐ後……


……

……


…………


ヒュオオオ……

……


………ザシュッ!!……
……ドサッ!
ワーグ『…』ピクピク

ワーグの群れ『グッ…!グルルッ……!?』
ワーグの群れ『ガァァァアアッ!!』

???「…」
???「……そんな甘い考えで、冒険なんかできるわけないでしょ~……」

ワーグの群れ『…ッ!』ギロッ


その男、魔剣士とそこまで変わらない歳のように見えた。
両腕に片手剣を持ち、無害であるはずのワーグを切殺し……


???「だけど、白姫様と魔剣士っていう男の二人だけって聞いてたけど…」
???「ちょーっと出来そうな人が付いてるなんて、聞いてないんだよなぁ~……」
???「ま…それでも美味しい賞金首。見逃す手はないわけで……」ペロッ…


…………
……


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