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第九章【セントラル】
9-34 世界戦争
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―――そして、王室地下。
猛竜騎士たちが地下を目指している頃、魔剣士とバンシィ、リッター、ブレイダーは剣を交えていた。
その戦いは常人がついていけるようなものではなく、動けば目に捉えることも出来ず、魔法を放つのが見えれば次には死を迎えるような、そんな戦い――…。
魔剣士「バンシィ、低くしろォッ!!」
魔剣士の片腕から具現化した火炎が直線状に超速で飛び、リッターを狙う。だが、寸前にブレイダーは剣に纏わせた雷でそれを弾き返す。
バンシィ「隙…みつけた……」
弾いたタイミングで、足元から地面を這うように触れただけで凍結される"氷走"をリッターら目がけて具現化する。
ブレイダー「このくらい、何ともないね!」
"ダンッ!"と氷を踏み抜くと同時に火炎魔法を放ち、それを溶解させる。驚いて隙を晒すバンシィに、リッターは太刀を振り下ろすが、既に読んでいた魔剣士は縮地でバンシィのカバーを行い、剣撃でそれを強く弾いた。
リッター「やるなっ…!」
魔剣士「……見様見真似になるがな!」
リッター「むっ!」
散々喰らった"太刀の型クロイツシュナイデン"を、予想から十字を描くようにして斬り入れる。
ほぼ十字を描くのが同時だったことから、腕に風もしくは無属性の物理魔力を利用して放っていたのだろう。
"ビュ…ビュオンッ!!"
リッターほど完璧ではなく、風切る音も二回聞こえるくらい不完全だったが、リッターの胸板に十字の傷が出来て鮮血が舞う。
リッター「油断……!」
魔剣士「このまま押し切るッ!!」
更に追撃を試みるが、ブレイダーは横から魔剣士に蹴りを入れながら"ヒール"を唱え、リッターに付けた傷を一瞬で癒した。
魔剣士「ちっ……!」
リッター「恩に着るぞ!」
ブレイダー「さっさと体勢を立て直してくれるかい、リッター。こんなのに手間取っていられないんだよ」
バンシィ「……次の攻撃の準備は…させないっ…!この距離なら…!」
両手の人差し指と親指に魔力を込めたバンシィは、指先から"氷剣"をハサミのように具現化し、ブレイダーとリッターそれぞれを挟むように展開した。内側に鋭い刃を宿したそれは、バンシィが両手の指を閉じると"バチン!"とハサミのように共に閉じたが、間に二人の姿はなかった。
バンシィ「逃がした……!?」
その瞬間、バンシィの後方から殺意の気配。右脇に鋭い感覚を感じ取った彼女は、氷壁を作り出した。
"…ガキャンッ!!"
いつの間にか後方にいたリッターから払った太刀が、氷壁と衝突する。
リッター「むっ、いい防御だ!よくぞ、反応出来たな!」
バンシィ「舐めないで…。それより、近づかないで……」
このタイミング、この位置、十字斬が迫ると思い一気に後方へと飛ぶバンシィ。だが、その位置にはブレイダーが待機していた。
ブレイダー「先読みくらい、しておくものだよ?」
バンシィ「あっ……!」
縮地からすぐに連続して行動することはバンシィにとって筋力が足りず、反応が鈍る。
ブレイダーは雷装した剣で首を狙うが、魔剣士は遠くから矢のように炎を飛ばし、剣撃を寸前で弾き飛ばした。
ブレイダー「つっ……!」
魔剣士「そう簡単にやらせるかよ!」
ブレイダー「意のままに操れる魔法は、本当に厄介だね……!」
ブレイダーが怯むのを見て、その隙にバンシィは縮地で魔剣士のもとへと移動する。
また、リッターもブレイダーの隣へと縮地し太刀を地面へと突き刺して「面白いな」と笑った。
バンシィ「お兄ちゃん、ありがとう…また助けられた……」
魔剣士「なぁに、お前も着いてきてるじゃねーか。充分に頼りになるぜ」
ブレイダー「……フフン、中々やるみたいだけどまだまだだね。君の闇の力はそんなものなの?」
リッター「楽しい、楽しいぞ!久しぶりだ、手ごたえのある戦いは!」
距離を置いた位置で、お互い一旦の休息を図る。
一見すれば互いの戦力は均衡しているように思えたが、実際はそうでもなかった。
魔剣士(……不味いな)
こと僅かにだが、バンシィの息が少しばかり荒い。対してブレイダーたちは余裕を見せており、戦いが長引くほど不利になっていくことが分かる。
魔剣士(くそっ、面倒くせぇ……!)
全身全霊を持って、この地下、王城を吹き飛ばすことも出来るだろうが、それでは関係のない人々まで巻き込んでしまう。限られた力のみを発揮できない、これほどに戦いづらいことはない。
リッター「どうした、やらないのか?」
魔剣士「……うっせぇ!今、考え事をしてるところなんだよ!」
リッター「戦いのさ中に考え事など、甘い奴だ」
魔剣士「ちっ…、俺をあまり怒らせるんじゃねえ…。やろうと思えばこの王城を……いや、セントラル全てを吹き飛ばせるんだからな……?」
リッター「それが闇の力か。笑わせる」
魔剣士「お前らなんて、俺が本気を出せば一瞬で消し炭になるって分かってんのかコラ」
リッター「……バカが」
魔剣士「ンだとコラァ!」
話の途中で、リッターは「フン」と鼻で笑いながら一気に魔剣士の目の前に飛んだ。
リッター「それが出来ないのだから、貴様は弱いというんだ」
魔剣士「…っ!」
リッター「―――太刀の型、ヴィント・ヴィルヴェル」
魔剣士「うっ!?」
振り上げた太刀に風が宿り、突風を生む。魔剣士とバンシィの身体は後方へと吹き飛ばされ、そのまま壁へと叩きつけられる。
バンシィ「あぐっ!?」
魔剣士「がっ……!」
"ドサドサッ!"
二人は背中に激痛を受けて、そのまま地面に腰から落下した。
リッター「……笑わせるな。闇の力を見せて良い気になっていて、それで終わりか?」
魔剣士「くそ…が……!」
リッター「お前の身体は魔法化しているようだが、触れなければこうやって風にも飛ばされる。それにダメージも身体に痛みをもたらすようだな?」
魔剣士「くっ…!」
リッター「殺しが出来ない身体でも、死を感じさせ、精神を殺すことも出来る。不死が死なないと思っているのか?」
魔剣士「……ッ!」
完全に相手のペースに飲まれる。
魔剣士(……どいつも、こいつもよぉ…!)
出会った頃のオッサンにも、当時のブレイダーにも、エルフの村でも、アサシンにも、敗北感ばかり味わって来た。
魔剣士(何で次から次へと、俺の得た力より強い面子が現れるんだよ……ッ!)
もっと簡単に世界を救わせてはくれないのか。それとも、これが世界の望むことなのだろうか。
魔剣士「……面倒くせぇな」
細く呟いた。
リッター「面倒……?」
魔剣士「何でいっつも、面倒なことばっかなのか…。つーかよぉ、俺は面倒なことがだいっきらいなんだわ……」
リッター「ほう、冒険者向きの思考だな」
魔剣士「それなのにブリレイとかオッサンとか、あーだーこーだ、作戦がどうだこうだと……今の今までかかっちまった……」
リッター「何を言っているのか分からないがな」
魔剣士「……とどのつまり、俺が言いたいのは」
リッター「何だ」
魔剣士「アンタら殺すのが、平和の第一歩なら、今がチャンスってことだ」
リッター「ふむ、出来るのか?」
魔剣士「……今がチャンスだっつっただろ」
リッター「ほう」
魔剣士「今が、チャンスなんだよ……」
リッター「好機をものに出来るのか、お前は」
魔剣士「……ククッ」
リッター「どうした…?」
魔剣士「今が……チャンスなんだよ……!俺の力を発揮できるのはなッ!」
リッター「むっ!」
先ほどまで接戦だったため、バンシィを巻き込み危険があったが、今は隣にいる。また、バンシィが見せた"ハサミ"の技で、二人だけを倒す技を思いついたのだ。
魔剣士「……おらぁぁあっ!!!」
火炎化した両腕を伸ばし、暗がりの向こう側の壁に届くまで具現化する。更にそれを縦まで伸ばし、ブレイダーとリッターを挟むように、火炎の壁を作り出された。
リッター「これは……っ!」
ブレイダー「ちょっと、不味いんじゃないかな……!」
ただでさえ闇魔力による強烈な火力だというのに、それが炎の壁となって両脇に存在、徐々に迫りくるのだ。
魔剣士「……ッ!」
しかし、魔剣士とてここまでの範囲、イメージで具現化した火炎を操った経験がない。
このまま壁を閉じて挟み燃やし尽くせば終わるのだろうが、両腕から伸びているとはいえ、いかんせんとにかく"重い"のだ。
魔剣士「お…もっ……いっ…………!!」
"グググッ……!"
"ゴォッ…!"
両腕を必死に閉じるが、手前からゆっくりと閉じていくばかりで、スピードが足りない。
ブレイダー「……一回、一番後方へ行くしかないか…!」
リッター「退くぞ!」
最も閉じるのが遅延する、最後方へと縮地で飛ぶ。二人の眼からは、火炎の壁がどんどん迫りくる状況であり、苦い表情に曇らせる。
ブレイダー「こ、こんな……!」
リッター「同じ闇魔法同士で、水魔法を放つことは!」
ブレイダー「やってみる…けど……!」
水魔法の詠唱から、無詠唱よりも遥かに強い水力を生み出し、火炎の壁へと放つ。
しかし"ジュワッ!"という湯気が立つばかりで、壁が消える様子はない。
ブレイダー「やっぱり…!」
リッター「効かないのか……!?」
ブレイダー「闇魔力同士でもレベルが違うんだ!魔剣士クンの魔法は身体自体から発しているけど、僕のはまだ体内に具現化する工程がいるから!」
リッター「既に具現化しきっている魔法に対して、ワンクッション挟む魔法では厚みが違うのか…!」
そう話をしている間にも、炎壁はいよいよ目の前に迫る。二人は耐え難い熱さに益々顔を歪ませるが、諦める様子はない。
魔剣士「ぐ、ぐぅぅぅうっ…………!!」
バンシィ「お兄ちゃん……!」
魔剣士「こ…、このまま……!このまま終わらせる!良いんだろう…、バンシィッ……!」
バンシィ「うんっ…!」
魔剣士「う…うぐぉぉおっ!!」
魔剣士とバンシィの位置からは、巨大な炎壁を閉じていく中、遠くにブレイダーたちが抵抗を見せるも何もできないでいる様子が映っていた。
魔剣士「終わりだッ!!」
力を振り絞り、壁を閉じる。
ブレイダー「ぐっ、こ…こんな……!こんなこと…!許されるもんかぁぁああっ!!」
敗北を恐れるブレイダーは、壁に向かって水流を幾度も放つが、蒸発するばかりで意味をなさず、やがて迫りくる炎に触れた腕は燃え上がり、熱さと痛みで悲鳴をあげた。
ブレイダー「うあぁああああああっ!!」
リッター「これ…は……ッ!ぐっ…、ぐぉぉおおオォォっ!!!」
目を背けたくなるほど残忍な光景。
だが、魔剣士もバンシィもそれから目は離さない。
魔剣士「うらぁぁあああァッ!!!」
ついに火炎の壁は閉じられる。赤く燃え上がる炎の中、遠くでは二人の影が揺らめきの中で悶え続ける様子が見えた。
魔剣士「……ッ!」
バンシィ「……っ!」
これで象徴は堕ちる。騎士団の要が消えるだろうと、安心する。
―――…ところが。
魔剣士「……何ッ!!?」
展開していた火炎の壁が、急に"ゴッ!"という暴風が吹いたかと思うと一気にかき消されたのだ。
何故、どうして、何が起きたのか。
魔剣士「炎が消えた!?」
バンシィ「お、お兄ちゃんが消したんじゃないの…?」
魔剣士「違う!俺は、そんなことするわけが……」
バンシィ「……誰かいる…!」
魔剣士「何、誰かいるだと?」
彼女が指差した方向は、地下の出入り口。先ほど、暴風が吹いていったその方向だが、そこに誰かが立っていた。
魔剣士「……誰だ?」
バンシィ「えっと、あれは……」
見覚えのあるシルエット。
「……やぁ、魔剣士さん」
聞き覚えのある声。
「いやはや、魔剣士さんがここまで強いものとは予想しておりませんでした……」
知っている、この低姿勢さ。
魔剣士「……ブリレイッ!!」
ブリレイ「さて、如何したものでしょうか……」
魔剣士「てめぇ……!」
ブリレイ「…」
魔剣士(いや、落ち着け…。ブリレイが来たとはいえ、今…あいつは何をしやがった……!?)
……何が起きたのか、分からなかった。
覚悟をもってブレイダーたちを焼き尽くそうとしていた炎が、ふいに"暴風"によってかき消されたのだ。
魔剣士(俺の炎が、魔法化した闇魔力が完全にかき消されたのは確かだが……)
現在のスタイルである魔法化による魔法は普通、何ものにも干渉しない効果を持っているはずなのだが。どうやら"ブリレイの何か"によって無へと帰されたらしい。
魔剣士(中途半端に倒したブレイダーたちは……!)
目をこらすと、暗がりの奥でわずかに身体を動かしている。どうやら、生きているようだった。
魔剣士「……ッ!」
生きているとはいえ、大火傷を負っている彼らは激痛を伴い、とてつもない苦しみだろう。
魔剣士は一旦魔法化を解くと、ブリレイへと近づく。
魔剣士「おい、ブリレイ!」
ブリレイ「お、おっとっと……」
魔剣士「テメェ、何しやがった!俺の火炎を止めやがったな!」
ブリレイ「ま、まぁそれは……」
魔剣士「邪魔ばっかりしやがって……!この間も、お前が来なかったらブレイダーを倒せていたっつーに……!」
ブリレイ「それは申し訳ないことを……」
魔剣士「うるせぇ、つーか何をしやがった!どうやって俺の炎を止めたんだ!」
ブリレイ「えーと…、それはその……」
魔剣士「ンだコラァ!」
ブリレイ「……まぁ良いじゃないですか!そ、それより魔剣士さんにお話しがあってですね!」
全く話を聞かないというか、話を逸らすブリレイ。
イラついた魔剣士は、胸元を掴みあげて壁へと叩きつけた。
魔剣士「いい加減にしろよ、殺すぞ……」
今までの鬱憤が、ブリレイへの怒りに変わる。
ブリレイ「い、痛いですよ……」
魔剣士「説明しろ。話を逸らすんじゃねぇ、何をどうしやがった……!」
ブリレイ「何を、どうしろと…!何をどうやって説明しろと……」
魔剣士「シラァ切るんじゃねぇ!このまま、燃やしてやろうか…あァ!?」
このまま魔法化すれば、ブリレイの胸から上は炎に包まれる。
その気迫から本気であると分かったのか、ブリレイは「わ、分かりました!」と慌てて口を開く。
ブリレイ「あ、改めて説明をさせていただきます!だからこの手を!」
魔剣士「最初っからそうすりゃいいんだよ!この状態で話せ!俺の魔法をどうやって消した、どうしていつも邪魔をする!」
ブリレイ「そ、それはですね……」
魔剣士「ンだ…!」
ブリレイ「それは……」
魔剣士「…ッ!」
どうも、話が続かない。もどかしさに、魔剣士の締める力も強くなっていく。
魔剣士「……燃やす」
ブリレイ「ま、待ってください!え、えぇと……!」
押し問答のさ中、すると、出入り口の階段のほうが急に騒がしくなる。
魔剣士「ん…!」
バンシィ「お兄ちゃん、誰か…来る……」
バンシィは魔剣士の援護にまわるため、出入り口の傍に立って構えを取った。
だが、数秒後に現れたのは猛竜騎士と白姫だった。
バンシィ「えっ…」
魔剣士「お、オッサン!白姫!?」
現れるはずがない二人に、魔剣士は目を丸くする。
白姫「魔剣士っ!」
猛竜騎士「ここで正解だったか…!それと魔剣士、その男の腕を離すな!」
魔剣士「お、おう……!?」
その瞬間、ブリレイは何かを悟ったのか、苦い表情を浮かべる。
魔剣士「二人ともどうしてここに来たんだ!つーか、よく地下室が分かったな!?割と複雑だったのに……」
猛竜騎士「城内の兵士の首を刎ねんと脅かしたら、兵士の一人が"またこんな役割ですか!?"と怯えながら話をしてくれてな!」
魔剣士「……まさか」
白姫をさらった時に脅かした兵士じゃないだろうか。
いや、今はそれよりも……。
魔剣士「って、そんなことぁどうでも良い!何でここにいるんだよ!」
猛竜騎士「それは簡単なことだ。そこの男が、ブリレイが敵であると分かったからだ……!」
魔剣士「何っ!」
猛竜騎士「ブリレイ、お前はもう言い逃れは出来ん…。その目的を吐け!」
ブリレイ「……ちょっと待ってください、僕が敵などと!」
情けない声で慌ててそれを否定するが、猛竜騎士は一枚の紙を取り出した。
猛竜騎士「既にお前のやったことは、直接セージから連絡をもらっている。お前が瞳に宿した闇魔力によって、セージを操作していたとな……」
ブリレイ「せ、セージ様から……?」
また声色が変わる。
猛竜騎士「字を見れば分かるだろう。これはセージが記載したメッセージだ」
ブリレイ「……確かに、それはセージ様の字…ですね…」
猛竜騎士「お前の目的は何だ。どうしてセージを操り、単独的な行動を目論んだ。全てを答えろ!」
ブリレイ「どうして、セージが……」
猛竜騎士「シュトライト!」
ブリレイ、万事休す。隠していた野望が、ついに姿を現す時が来た。
ブリレイ「……仕方ない、か」
魔剣士「!」
猛竜騎士「!」
白姫「!」
バンシィ「…!」
全員が気付くほど、雰囲気が変化し、ザワつく悪寒。
ブリレイ「どうしてセージが俺の幻惑を解いたのか分からないが、こうなっては仕方ない……」
魔剣士「テメ、動くな!」
ブリレイ「動く気もない。全て上手くいくと行動をしていたんだが、闇魔力の幻惑とはいえ限界があるらしいな。…いや、そもそも俺の闇魔力は不完全であるからして、ただ瞳で幻惑を放つことが出来るといった効果に過ぎないのだが」
魔剣士「……変な考察なんかいらないんだよ!さっさと目的を言え!」
ブリレイ「そう騒ぐな」
"はぁ"とため息をついて、ブリレイも"一枚の紙"を取り出した。
魔剣士「あ…?」
猛竜騎士「……あれは」
折りたたまれた紙は、裏側から薄っすらと"陣"が描いてあることが分かる。ブリレイはそれをゆっくりと拡げていく。
魔剣士「なんだそりゃ……」
猛竜騎士「いかん!魔剣士、その紙を抑えろ!それは結界陣だ!!」
魔剣士「は、何?」
猛竜騎士「……くっ!!」
猛竜騎士は、縮地と同時に槍をブリレイに向けて突っ込んだ。
しかし、ブリレイは全身に無属性の物理強化を経て、回転し、抑えていた魔剣士と猛竜騎士の槍撃を同時に弾き飛ばす。
魔剣士「ぐぁっ!?」
猛竜騎士「ぐぅっ!」
バンシィ「お兄ちゃんっ!」
白姫「魔剣士!猛竜騎士さんっ!」
"ズザザッ…!"
何とか体勢を整え、地面を滑りながら着地する。
だが、既にその間にブリレイは"紙"を展開し、こちら側に向けていた。
魔剣士「な、何だよオッサン!あの紙がなんかあんのか!?」
猛竜騎士「……あ、あれは恐らく魔法結界陣だ!しかも、お前の闇魔力に反応し、それを封じることが出来るらしくてな……!」
魔剣士「はい?俺の闇魔力を封印するだって?」
猛竜騎士「お前が氷山帝国で実験をした時に黒魔石に吸収効果があったとセージが思い出し、闇魔法を封印できるよう生成した陣だそうだ……」
魔剣士「おいおい…!そ、そういうことかよ……」
先ほど魔剣士の火炎がかき消された理由もこれで納得した。
猛竜騎士「だが、結界とはいえお前に影響を及ぼすと決まったわけじゃないから安心を……」
魔剣士「ハハッ…!そ、それが決まってるんだよなぁ……!」
猛竜騎士「何?」
魔剣士「実はさっき、今まで展開したことのないレベルの魔法をぶっ放したんだ」
猛竜騎士「それで……」
魔剣士「ものの見事に全部かき消された。両腕が持ってかれたと思ってヒヤヒヤしたが、身体が何とか回復してくれて……」
猛竜騎士「……そ、それは聞きたくなかった話だ…!」
あの紙が闇魔力を吸収する効果があるのなら、全身を魔法化できる、体内にそれを宿す魔剣士はどうなるのか考えたくもなかった。
ブリレイ「……落ち着いたか?」
魔剣士「嫌でもな……」
ブリレイ「そうか。では、ようやく話が出来るな」
魔剣士「ちっ…!」
二人は武器を仕舞うと、バンシィと白姫を守るようにして前に立つ。
ブリレイはそれを見て「ふぅ」と大きなため息をついた。
魔剣士「で、何をお話ししてくれるんだ?ブリレイさんよ……」
ブリレイ「……もう、何を言っても無駄だと分かっている。俺の計画がここまで崩されるとは予想外だった」
魔剣士「計画だと?テメェ、やっぱり何か裏で計画を!」
ブリレイ「吠えるな。この力を手に入れてから、万事うまくいくはずだった。お前とブレイダーの存在さえなければな」
魔剣士「どういうことだ……」
ブリレイ「だから計画を立てた。だが、今さらながら不完全だったと思うさ。よもやこんな状況に陥るなどと、誰が思ったものか……」
魔剣士「何を言ってやがる……」
ブリレイ「……お前らが気になるのは俺の真の目的。今までの行動についてだろう?」
魔剣士「そうだ!さっさと話せクソ野郎が!!」
ブリレイ「そうだな、簡単に言えば……」
魔剣士「言えば…!」
簡単に言えば。
"「世界戦争をしたかった……かな?」"
魔剣士「……な…に…!?」
猛竜騎士「何だと!?」
白姫「今、なんて……」
バンシィ「世界…戦争……?」
とんでもない言葉が、彼の口から飛び出した。
魔剣士「おい、おい……」
いつかのデジャヴ。
アサシンの抱いた野望に近い、気分が悪くなる最悪の一言。
ブリレイ「あぁ、世界戦争を望んでいる」
魔剣士「な、何を言って…、何を言ってんだテメェは!!」
……ブリレイの真実。
魔剣士たちは、彼の目的は"王の座"につきたいなど、支配者になりたいのだろうと…、それが目的なのだろうと思っていた。
しかし、彼の口から出た言葉は……。
ブリレイ「何度言えば分かる?俺は世界戦争をしたいんだ」
世界戦争をしたいなどと、ふざけた夢を見ていた。
魔剣士「ふ、ふざけんじゃねぇぞブリレイ!!」
ブリレイ「ふざけてなどいない。俺が俺であるために、世界を混乱の世にしたいだけだ」
魔剣士「お、お前の夢は王の座につきたいとか、支配者になりたいとかじゃないのか!」
ブリレイ「興味はある。と、いうよりも…俺はそうなりたいとも願っているが」
魔剣士「だったら王を倒して、お前が"世界の指導者となる"って俺らを説得すりゃよかったじゃねえか!正義の心だって少しはあったんだろ!?お前がもっとも怪しい行動をしなけりゃ、その地位くらい……」
ブリレイ「―――おいおい、違うぞ?」
魔剣士「なぬ?」
ブリレイ「最終的にそうはなりたくても、俺は"混乱の世で俺の名を知らしめたかっただけだ"。もちろん、世界を救うという意味でな」
魔剣士「……な、何言ってんのか分からないぜ…?」
彼の目的は分かっても、どうして戦争を引き起こしたいのかが理解できない。
そこで口を開いたのは猛竜騎士だった。
猛竜騎士「……悔しい話だが、俺は少しばかり分かる気はする」
魔剣士「オッサン?」
猛竜騎士「違う。俺はそんな世は望んじゃいない。だけど、ブリレイの言い分も同じ"冒険者"として分かるんだ」
ブリレイ「……ほう?」
猛竜騎士はしかめた顔をして、苦しいように話を続ける。
猛竜騎士「アサシンが望んだ戦乱は、世界全土が混乱するばかりの世だった。しかし、ブリレイは"冒険者"として混乱の世に、英雄として立ちたいんだろう……」
魔剣士「は、はい?」
猛竜騎士「冒険者として世界を救う。熱狂する人々は、名を叫ぶ。そんな人間に、アイツは英雄という存在になりたかったんだろう…」
魔剣士「そ、そんなこと……」
猛竜騎士「恐らくはそうさ。……そうなんだろう、ブリレイ!」
名を呼ぶと、彼はニンマリと笑い返事をした。
「さすが同じ時代を生きていた冒険者だ」と。
魔剣士「マジで…、言ってんのか……」
ブリレイ「あぁ、あの時代は良かった。少しの魔法が出来て、世界各地で多少の力を見せるだけで、人は熱狂したんだ……」
魔剣士「熱狂って……」
ブリレイ「だが、時代は進む。魔法や戦いの技術は上がり、錬金道具なんてのも生まれ、気軽に冒険が楽しめる時代になった。すると、必然的に俺の名も薄れていった。それが、許せなかった……」
魔剣士「だからってなぁ、お前、そりゃ世界戦争を起こすのとは違うだろ……」
ブリレイ「違うものか。魔剣士よ、もしお前が闇魔法を失い、周りがどんどん強い者ばかりで囲まれていったらどうする?悔しくはないか?」
魔剣士「それは悔しいかもしれねぇけど……」
ブリレイ「そんなある日、再び闇魔法を会得するチャンスを見出したら?また強さを戻す技術を知ったら、お前は冒険者としてどうする?」
魔剣士「そ、それは……」
当時、ブリレイの魔法技術は誰よりも未来を進んでいた。同時属性を放つことだけじゃない、戦う技術だって、近接技術だって、無詠唱だって、着いてくるものはいなかった。
ブリレイ「だが、時代は進むにつれ住みづらくなった……」
誰よりも光を浴びていたあの頃。
進む技術により、自分の存在はいつか忘れ去られていった。
ブリレイ「俺は、その道でしか人に認められなかった。それでおいて、徐々に見向きもされなくなる気持ちが分かるか?」
魔剣士「…っ」
ブリレイ「そりゃ俺だって、自分のために努力はしたさ。魔法学の研究連合なんて大層なものが出来て、俺は自身の技術を高めるために加入した。もしかすると、時代を取り戻せるのではないかと思ってな」
魔剣士「そういうことか……」
ブリレイ「だが、若さには勝てなかった。どんどん周りは強くなり、俺は老いていく。これほど悔しいことがあるか!?」
魔剣士「…」
ブリレイ「諦めかけていたその時、チャンスを得た。たまたま事故が起きて、この瞳に宿った闇魔法。これを利用しない手はないだろう!」
魔剣士「気持ちは…、分かるけどよ……」
ブリレイ「いや、この時の俺の本心を理解できるには、お前はまだ若すぎる!」
輝く人生をもう一度だけ取り戻したい。
若さへの妬みが、彼の中では沸いていた。いくら強くなろうとしたところで、若い人間たちには勝てないのだから。光を浴びる人間は、若者ばかりなのだからと。
ブリレイ「だから戦いを起こすまで。それには、王と騎士団、このセントラルは充分過ぎる舞台だったよ。王が世界を混乱させるというんだ。混乱ののち、騎士団を俺の幻惑を使い配下において謀反すれば、それで世界は俺に注目するだろう?」
魔剣士「ふ、ふっざけんな!!それでどんだけ犠牲が出ると思ってるんだ!!だったら最初から阻止しても英雄になれるだろうが!!」
ブリレイ「人は絶望の中に光を見る。絶望に差す一筋の光は、何よりも強く未来を照らす。その光こそ、俺の存在……」
魔剣士「そんな考えで、お前が英雄になれると思ってんのか……!」
ブリレイ「だから王を上手く操り、一度、世界を破滅に導くつもりだった。それがどうして、お前があの時…地下室に現れなければ……!」
魔剣士「あの時?」
ブリレイ「そうだ。ブレイダーは、バンシィの魔力を受けて破裂するはずだったんだ。生命の幹の強化方法すら知らない人間がドレインしようとして、死なないわけがないからな」
魔剣士「あ、あの時か……」
魔剣士がブレイダーと対峙しようとした、バンシィを救出した時のことだ。
ブリレイ「あれで王が俺の考えに勘付いた。そのせいで、幻惑を使わざるを得なくなり、計画は更に狂った……」
歯を強く食いしばり、悔しそうに言う。それを見た猛竜騎士は、分かったぞと口を開く。
猛竜騎士「なるほどな、だから急いだというわけか」
ブリレイ「ふむ、さすがに鋭い」
猛竜騎士「急に王城へ呼ばれ、仲間になれといった理由。地下室でこのようなことを行わせた理由。納得がいった」
全ては明かされた。ブリレイの目的と、彼が急いだ理由の全て。
猛竜騎士「だが、どうして俺らを仲間にしようとしたんだ。お前にとって、何のメリットも生むことはないはずだ」
ブリレイ「この国は腐っている。白姫が賞金首にされたことも、騎士団の悪行も、あらゆることに人々は苦しんでいる。そこに必要なのは、希望だ」
猛竜騎士「希望、それがお前ということか…?」
ブリレイ「違う…。俺は英雄だ。希望とは、光である存在。この国、世界に名を持つ者が…そこにいるだろう?」
静かに腕を上げ、白姫を指差す。
魔剣士「何!?」
白姫「わ、私……?」
猛竜騎士「希望…、そうか!お前は白姫を希望にしようとしたんだな!」
ブリレイ「ご名答。いきなりが俺が世間に出て行っても納得はしない。だったら、共に旅をして成長した白姫と猛竜騎士、氷山帝国や砂国に認められた二人の存在は一時的な"光"になる」
猛竜騎士「例えそうだったとしても、俺らが世界戦争に加担すると思うのか!」
ブリレイ「本来、それも準備をしていたはずだった。そこの魔剣士が死んで、完成するはずだったんだ……」
魔剣士「……は?」
きょとんとする魔剣士。
ブリレイ「いくら闇魔法の会得者とはいえ、脳天をかち割られて生きてはいない。地下室で殺し、リッターと数名を魔剣士殺しとして賞金首にし、別国へ逃がすつもりだった。そうすれば、猛竜騎士や白姫は怒り、戦いに赴くだろうと思った……」
猛竜騎士「なるほど、周到な計画だ。ついでに闇魔法の会得者も消せるうえに、俺らも利用できる。一石二鳥だな」
ブリレイ「失敗したブレイダーを殺すことについては、俺を信用していることもあって殺すのは簡単だ。だったら、魔剣士から潰すしかないだろう」
猛竜騎士「……ところが、魔剣士は生きている。闇魔法の神髄を持った男が、そう簡単には死ななかったか」
ブリレイ「その通り。何もかも、俺の計画は破たんしたよ……ハハハハッ!!」
"ハハハハッ!"
四人の前で、ブリレイは大声で笑う。すると、会話を聞いて我慢し続けていた白姫が、彼に対し問いを投げた。
白姫「……ブリレイさん!」
ブリレイ「あ?何だ」
白姫「私、貴方の眼を見ていてずっと本当に平和を願ってると思ってました…。それも、貴方の幻術のせいなんですか…?」
ブリレイ「何度、君の眼を見つめて話をしていた?さすがハイルの娘ということもあって、深層部分までは操れなかったけどね」
白姫「そんな…!じゃ、じゃあ王は!王は今、どうなっているんですか!」
ブリレイ「ハイルは自分の部屋で遊んでいるな。年齢を戻し過ぎて、幼児のようになっているが……」
白姫「ッ!?」
…………
ハイル「だぁ…、うーっ……」
…………
ブリレイ「さっきは参ったよ。突然に泣き出すし、王はしばらく指揮者として適度に年齢を上下させようと思っててね。代わりに壊れるのも早いが、仕方ないことだ」
白姫「ブリレイ…さん……!そんな…こと……!」
魔剣士「人を玩具のようにして……!」
猛竜騎士(……な、なんて…、なんて…呆気ないんだ…………)
なんて、呆気ない。
最大の敵だと思っていた"王"という存在が、既に壊されていた。
ブリレイ「まぁ、それは良い。ともかく、こうなってしまっては致し方ないことだ」
魔剣士「どうするつもりだ、テメェ……」
ブリレイ「この状況となってしまったのなら、まず魔剣士には消えてもらうしかない」
魔剣士「……出来んのか?テメェによ」
ブリレイ「魔剣士クンがいると、相当な厄介過ぎる存在だと分かっている。だから、最初に消えてもらうしかない」
魔剣士「やってみろよ」
拡げていた紙に掌を当てると、魔力を込め始めた。
ブリレイ「この結界で、魔法化できる君の身体はどうなると思う?」
魔剣士「や、やべっ!!そうだった!?」
猛竜騎士「……させるかっ!!」
バンシィ「させないっ……!」
猛竜騎士、バンシィはともに動く。ブリレイの脇にそれぞれ位置を取り、槍撃と氷結魔法を零距離から放つ。
猛竜騎士「はぁッ!!」
バンシィ「凍って……!」
しかし、どちらの攻撃も"防御壁"の展開によって音をたてて弾かれた。
バンシィ「あうっ…!?」
猛竜騎士「両脇に…そ、それも物理と魔法の抵抗壁の同時展開だと!?」
すると、その隙を逃さまいと魔剣士は瞬時に魔法化、火炎となって剣を前に突き出しながら一気に突進する。
だが、火炎の一撃も、ブリレイは余裕をもって姿勢をサっと低くしてそれを避ける。
魔剣士「何ィッ!」
ブリレイ「相変わらず、甘い……」
攻撃の回避に姿勢を低くしたブリレイは、脚を伸ばし身体を横に一回転する。円を描くような足払いに、猛竜騎士とバンシィはその場に転ぶ。
猛竜騎士「うっ!」
バンシィ「痛っ…!」
そして、勢いあまって壁に"ボン!"と衝突した魔剣士は、そのまま壁を蹴り返し再びブリレイへと向かうが――。
魔剣士「うっ!?」
ブリレイ「情けない、それでも冒険者かお前は……」
向かって来ることを想定済みで、紙の陣を魔剣士に向けていた。
バンシィ「お、お兄ちゃんっ!!」
"パァッ!"
バンシィは慌てて氷の刃をブリレイに飛ばすが、防御壁に防がれるばかりで意味はない。
ブリレイ「これで邪魔ものは消える……」
魔剣士「あら、あらららっ!?ちょっ、これ不味い……!!」
白姫「ま、魔剣士ッ!!」
魔剣士の魔力に、陣は発動し、強く発光する。光は波状になって火炎化した魔剣士を包み込む。
そして、魔剣士の身体は光を受けている頭部側から、一瞬のうちに"ボシュボシュ"と鈍い爆発音をあげながら、光は収束し、輝きが陣の中へと消えて行った。もちろん、魔剣士の身体ごと。
白姫「あっ……?」
猛竜騎士「お、おい……」
バンシィ「お兄…ちゃん……?」
"からんからんっ…"
魔剣士の姿は消えた。空中で、手放したことによって魔法化が解除された剣が空しい音をたてて落下する。
猛竜騎士(き、消えた!?い、いや!違うだろうッ!!これはアサシンの時と一緒で、魔力の残り香で復活を……!)
―――そんなものは、無い。
あれから随分と鋭くなった猛竜騎士の感覚でさえ、魔剣士の魔力を捉えることは出来なかった。
つまりこの時点で、"魔剣士"という男の存在はこの地上から……。
白姫「消え…たの…………?」
バンシィ「え……?お兄ちゃん……?」
結界に飲み込まれ、魔剣士の肉体は消失したのだった。
猛竜騎士「……違うッ!!!まだだ、その紙を寄越せシュトライトォォォッ!!!」
ブリレイ「おっとっと、怖い怖い」
もし結界に飲み込まれただけならば、復活する余地はあるはずだ!
何年かかっても、蘇る可能性があること以上、諦めることはしない!
ブリレイ「……させると思うか?」
"パチンッ!"
指を鳴らすと、持っていた魔法陣の紙は燃え上がり、黒い煙をあげて紙は完全に消え去った。
猛竜騎士「シュ……、シュトライトォォオッ!!!」
白姫「そんな…こと…。魔剣士……」
バンシィ「お兄…ちゃん……、お兄ちゃん、お兄ちゃんっ!!!」」
悲鳴と悲しみ、怒りが地下でこだまする。
ブリレイ「クククッ、あとはお前たちだけだ。恨みを晴らしに戦うか?ん?」
猛竜騎士「……諦めることはない!お前をここで殺し、全てを終わらせるっ!!もう、諦めねぇんだよ、俺はよぉっ!!」
バンシィ「許さない…、許さない、許さない、許さない、許さないっ!!!」
白姫「魔剣士……、いつも…助けてくれたもん……。きっと、大丈夫…だから……。信じてるから……っ」
魔剣士が敗れた今、怒りに満ちた彼らがブリレイへの勝負を挑む。
それぞれが構え、これから始まる戦いに赴こうと、気合を入れ直す。
しかし、この時。
互いに興奮状態にあって気付くことがなかった出来事が一つあった。
そう、"ブレイダーの姿が消えていた"ことを。
…………
……
…
―――そして、王室地下。
猛竜騎士たちが地下を目指している頃、魔剣士とバンシィ、リッター、ブレイダーは剣を交えていた。
その戦いは常人がついていけるようなものではなく、動けば目に捉えることも出来ず、魔法を放つのが見えれば次には死を迎えるような、そんな戦い――…。
魔剣士「バンシィ、低くしろォッ!!」
魔剣士の片腕から具現化した火炎が直線状に超速で飛び、リッターを狙う。だが、寸前にブレイダーは剣に纏わせた雷でそれを弾き返す。
バンシィ「隙…みつけた……」
弾いたタイミングで、足元から地面を這うように触れただけで凍結される"氷走"をリッターら目がけて具現化する。
ブレイダー「このくらい、何ともないね!」
"ダンッ!"と氷を踏み抜くと同時に火炎魔法を放ち、それを溶解させる。驚いて隙を晒すバンシィに、リッターは太刀を振り下ろすが、既に読んでいた魔剣士は縮地でバンシィのカバーを行い、剣撃でそれを強く弾いた。
リッター「やるなっ…!」
魔剣士「……見様見真似になるがな!」
リッター「むっ!」
散々喰らった"太刀の型クロイツシュナイデン"を、予想から十字を描くようにして斬り入れる。
ほぼ十字を描くのが同時だったことから、腕に風もしくは無属性の物理魔力を利用して放っていたのだろう。
"ビュ…ビュオンッ!!"
リッターほど完璧ではなく、風切る音も二回聞こえるくらい不完全だったが、リッターの胸板に十字の傷が出来て鮮血が舞う。
リッター「油断……!」
魔剣士「このまま押し切るッ!!」
更に追撃を試みるが、ブレイダーは横から魔剣士に蹴りを入れながら"ヒール"を唱え、リッターに付けた傷を一瞬で癒した。
魔剣士「ちっ……!」
リッター「恩に着るぞ!」
ブレイダー「さっさと体勢を立て直してくれるかい、リッター。こんなのに手間取っていられないんだよ」
バンシィ「……次の攻撃の準備は…させないっ…!この距離なら…!」
両手の人差し指と親指に魔力を込めたバンシィは、指先から"氷剣"をハサミのように具現化し、ブレイダーとリッターそれぞれを挟むように展開した。内側に鋭い刃を宿したそれは、バンシィが両手の指を閉じると"バチン!"とハサミのように共に閉じたが、間に二人の姿はなかった。
バンシィ「逃がした……!?」
その瞬間、バンシィの後方から殺意の気配。右脇に鋭い感覚を感じ取った彼女は、氷壁を作り出した。
"…ガキャンッ!!"
いつの間にか後方にいたリッターから払った太刀が、氷壁と衝突する。
リッター「むっ、いい防御だ!よくぞ、反応出来たな!」
バンシィ「舐めないで…。それより、近づかないで……」
このタイミング、この位置、十字斬が迫ると思い一気に後方へと飛ぶバンシィ。だが、その位置にはブレイダーが待機していた。
ブレイダー「先読みくらい、しておくものだよ?」
バンシィ「あっ……!」
縮地からすぐに連続して行動することはバンシィにとって筋力が足りず、反応が鈍る。
ブレイダーは雷装した剣で首を狙うが、魔剣士は遠くから矢のように炎を飛ばし、剣撃を寸前で弾き飛ばした。
ブレイダー「つっ……!」
魔剣士「そう簡単にやらせるかよ!」
ブレイダー「意のままに操れる魔法は、本当に厄介だね……!」
ブレイダーが怯むのを見て、その隙にバンシィは縮地で魔剣士のもとへと移動する。
また、リッターもブレイダーの隣へと縮地し太刀を地面へと突き刺して「面白いな」と笑った。
バンシィ「お兄ちゃん、ありがとう…また助けられた……」
魔剣士「なぁに、お前も着いてきてるじゃねーか。充分に頼りになるぜ」
ブレイダー「……フフン、中々やるみたいだけどまだまだだね。君の闇の力はそんなものなの?」
リッター「楽しい、楽しいぞ!久しぶりだ、手ごたえのある戦いは!」
距離を置いた位置で、お互い一旦の休息を図る。
一見すれば互いの戦力は均衡しているように思えたが、実際はそうでもなかった。
魔剣士(……不味いな)
こと僅かにだが、バンシィの息が少しばかり荒い。対してブレイダーたちは余裕を見せており、戦いが長引くほど不利になっていくことが分かる。
魔剣士(くそっ、面倒くせぇ……!)
全身全霊を持って、この地下、王城を吹き飛ばすことも出来るだろうが、それでは関係のない人々まで巻き込んでしまう。限られた力のみを発揮できない、これほどに戦いづらいことはない。
リッター「どうした、やらないのか?」
魔剣士「……うっせぇ!今、考え事をしてるところなんだよ!」
リッター「戦いのさ中に考え事など、甘い奴だ」
魔剣士「ちっ…、俺をあまり怒らせるんじゃねえ…。やろうと思えばこの王城を……いや、セントラル全てを吹き飛ばせるんだからな……?」
リッター「それが闇の力か。笑わせる」
魔剣士「お前らなんて、俺が本気を出せば一瞬で消し炭になるって分かってんのかコラ」
リッター「……バカが」
魔剣士「ンだとコラァ!」
話の途中で、リッターは「フン」と鼻で笑いながら一気に魔剣士の目の前に飛んだ。
リッター「それが出来ないのだから、貴様は弱いというんだ」
魔剣士「…っ!」
リッター「―――太刀の型、ヴィント・ヴィルヴェル」
魔剣士「うっ!?」
振り上げた太刀に風が宿り、突風を生む。魔剣士とバンシィの身体は後方へと吹き飛ばされ、そのまま壁へと叩きつけられる。
バンシィ「あぐっ!?」
魔剣士「がっ……!」
"ドサドサッ!"
二人は背中に激痛を受けて、そのまま地面に腰から落下した。
リッター「……笑わせるな。闇の力を見せて良い気になっていて、それで終わりか?」
魔剣士「くそ…が……!」
リッター「お前の身体は魔法化しているようだが、触れなければこうやって風にも飛ばされる。それにダメージも身体に痛みをもたらすようだな?」
魔剣士「くっ…!」
リッター「殺しが出来ない身体でも、死を感じさせ、精神を殺すことも出来る。不死が死なないと思っているのか?」
魔剣士「……ッ!」
完全に相手のペースに飲まれる。
魔剣士(……どいつも、こいつもよぉ…!)
出会った頃のオッサンにも、当時のブレイダーにも、エルフの村でも、アサシンにも、敗北感ばかり味わって来た。
魔剣士(何で次から次へと、俺の得た力より強い面子が現れるんだよ……ッ!)
もっと簡単に世界を救わせてはくれないのか。それとも、これが世界の望むことなのだろうか。
魔剣士「……面倒くせぇな」
細く呟いた。
リッター「面倒……?」
魔剣士「何でいっつも、面倒なことばっかなのか…。つーかよぉ、俺は面倒なことがだいっきらいなんだわ……」
リッター「ほう、冒険者向きの思考だな」
魔剣士「それなのにブリレイとかオッサンとか、あーだーこーだ、作戦がどうだこうだと……今の今までかかっちまった……」
リッター「何を言っているのか分からないがな」
魔剣士「……とどのつまり、俺が言いたいのは」
リッター「何だ」
魔剣士「アンタら殺すのが、平和の第一歩なら、今がチャンスってことだ」
リッター「ふむ、出来るのか?」
魔剣士「……今がチャンスだっつっただろ」
リッター「ほう」
魔剣士「今が、チャンスなんだよ……」
リッター「好機をものに出来るのか、お前は」
魔剣士「……ククッ」
リッター「どうした…?」
魔剣士「今が……チャンスなんだよ……!俺の力を発揮できるのはなッ!」
リッター「むっ!」
先ほどまで接戦だったため、バンシィを巻き込み危険があったが、今は隣にいる。また、バンシィが見せた"ハサミ"の技で、二人だけを倒す技を思いついたのだ。
魔剣士「……おらぁぁあっ!!!」
火炎化した両腕を伸ばし、暗がりの向こう側の壁に届くまで具現化する。更にそれを縦まで伸ばし、ブレイダーとリッターを挟むように、火炎の壁を作り出された。
リッター「これは……っ!」
ブレイダー「ちょっと、不味いんじゃないかな……!」
ただでさえ闇魔力による強烈な火力だというのに、それが炎の壁となって両脇に存在、徐々に迫りくるのだ。
魔剣士「……ッ!」
しかし、魔剣士とてここまでの範囲、イメージで具現化した火炎を操った経験がない。
このまま壁を閉じて挟み燃やし尽くせば終わるのだろうが、両腕から伸びているとはいえ、いかんせんとにかく"重い"のだ。
魔剣士「お…もっ……いっ…………!!」
"グググッ……!"
"ゴォッ…!"
両腕を必死に閉じるが、手前からゆっくりと閉じていくばかりで、スピードが足りない。
ブレイダー「……一回、一番後方へ行くしかないか…!」
リッター「退くぞ!」
最も閉じるのが遅延する、最後方へと縮地で飛ぶ。二人の眼からは、火炎の壁がどんどん迫りくる状況であり、苦い表情に曇らせる。
ブレイダー「こ、こんな……!」
リッター「同じ闇魔法同士で、水魔法を放つことは!」
ブレイダー「やってみる…けど……!」
水魔法の詠唱から、無詠唱よりも遥かに強い水力を生み出し、火炎の壁へと放つ。
しかし"ジュワッ!"という湯気が立つばかりで、壁が消える様子はない。
ブレイダー「やっぱり…!」
リッター「効かないのか……!?」
ブレイダー「闇魔力同士でもレベルが違うんだ!魔剣士クンの魔法は身体自体から発しているけど、僕のはまだ体内に具現化する工程がいるから!」
リッター「既に具現化しきっている魔法に対して、ワンクッション挟む魔法では厚みが違うのか…!」
そう話をしている間にも、炎壁はいよいよ目の前に迫る。二人は耐え難い熱さに益々顔を歪ませるが、諦める様子はない。
魔剣士「ぐ、ぐぅぅぅうっ…………!!」
バンシィ「お兄ちゃん……!」
魔剣士「こ…、このまま……!このまま終わらせる!良いんだろう…、バンシィッ……!」
バンシィ「うんっ…!」
魔剣士「う…うぐぉぉおっ!!」
魔剣士とバンシィの位置からは、巨大な炎壁を閉じていく中、遠くにブレイダーたちが抵抗を見せるも何もできないでいる様子が映っていた。
魔剣士「終わりだッ!!」
力を振り絞り、壁を閉じる。
ブレイダー「ぐっ、こ…こんな……!こんなこと…!許されるもんかぁぁああっ!!」
敗北を恐れるブレイダーは、壁に向かって水流を幾度も放つが、蒸発するばかりで意味をなさず、やがて迫りくる炎に触れた腕は燃え上がり、熱さと痛みで悲鳴をあげた。
ブレイダー「うあぁああああああっ!!」
リッター「これ…は……ッ!ぐっ…、ぐぉぉおおオォォっ!!!」
目を背けたくなるほど残忍な光景。
だが、魔剣士もバンシィもそれから目は離さない。
魔剣士「うらぁぁあああァッ!!!」
ついに火炎の壁は閉じられる。赤く燃え上がる炎の中、遠くでは二人の影が揺らめきの中で悶え続ける様子が見えた。
魔剣士「……ッ!」
バンシィ「……っ!」
これで象徴は堕ちる。騎士団の要が消えるだろうと、安心する。
―――…ところが。
魔剣士「……何ッ!!?」
展開していた火炎の壁が、急に"ゴッ!"という暴風が吹いたかと思うと一気にかき消されたのだ。
何故、どうして、何が起きたのか。
魔剣士「炎が消えた!?」
バンシィ「お、お兄ちゃんが消したんじゃないの…?」
魔剣士「違う!俺は、そんなことするわけが……」
バンシィ「……誰かいる…!」
魔剣士「何、誰かいるだと?」
彼女が指差した方向は、地下の出入り口。先ほど、暴風が吹いていったその方向だが、そこに誰かが立っていた。
魔剣士「……誰だ?」
バンシィ「えっと、あれは……」
見覚えのあるシルエット。
「……やぁ、魔剣士さん」
聞き覚えのある声。
「いやはや、魔剣士さんがここまで強いものとは予想しておりませんでした……」
知っている、この低姿勢さ。
魔剣士「……ブリレイッ!!」
ブリレイ「さて、如何したものでしょうか……」
魔剣士「てめぇ……!」
ブリレイ「…」
魔剣士(いや、落ち着け…。ブリレイが来たとはいえ、今…あいつは何をしやがった……!?)
……何が起きたのか、分からなかった。
覚悟をもってブレイダーたちを焼き尽くそうとしていた炎が、ふいに"暴風"によってかき消されたのだ。
魔剣士(俺の炎が、魔法化した闇魔力が完全にかき消されたのは確かだが……)
現在のスタイルである魔法化による魔法は普通、何ものにも干渉しない効果を持っているはずなのだが。どうやら"ブリレイの何か"によって無へと帰されたらしい。
魔剣士(中途半端に倒したブレイダーたちは……!)
目をこらすと、暗がりの奥でわずかに身体を動かしている。どうやら、生きているようだった。
魔剣士「……ッ!」
生きているとはいえ、大火傷を負っている彼らは激痛を伴い、とてつもない苦しみだろう。
魔剣士は一旦魔法化を解くと、ブリレイへと近づく。
魔剣士「おい、ブリレイ!」
ブリレイ「お、おっとっと……」
魔剣士「テメェ、何しやがった!俺の火炎を止めやがったな!」
ブリレイ「ま、まぁそれは……」
魔剣士「邪魔ばっかりしやがって……!この間も、お前が来なかったらブレイダーを倒せていたっつーに……!」
ブリレイ「それは申し訳ないことを……」
魔剣士「うるせぇ、つーか何をしやがった!どうやって俺の炎を止めたんだ!」
ブリレイ「えーと…、それはその……」
魔剣士「ンだコラァ!」
ブリレイ「……まぁ良いじゃないですか!そ、それより魔剣士さんにお話しがあってですね!」
全く話を聞かないというか、話を逸らすブリレイ。
イラついた魔剣士は、胸元を掴みあげて壁へと叩きつけた。
魔剣士「いい加減にしろよ、殺すぞ……」
今までの鬱憤が、ブリレイへの怒りに変わる。
ブリレイ「い、痛いですよ……」
魔剣士「説明しろ。話を逸らすんじゃねぇ、何をどうしやがった……!」
ブリレイ「何を、どうしろと…!何をどうやって説明しろと……」
魔剣士「シラァ切るんじゃねぇ!このまま、燃やしてやろうか…あァ!?」
このまま魔法化すれば、ブリレイの胸から上は炎に包まれる。
その気迫から本気であると分かったのか、ブリレイは「わ、分かりました!」と慌てて口を開く。
ブリレイ「あ、改めて説明をさせていただきます!だからこの手を!」
魔剣士「最初っからそうすりゃいいんだよ!この状態で話せ!俺の魔法をどうやって消した、どうしていつも邪魔をする!」
ブリレイ「そ、それはですね……」
魔剣士「ンだ…!」
ブリレイ「それは……」
魔剣士「…ッ!」
どうも、話が続かない。もどかしさに、魔剣士の締める力も強くなっていく。
魔剣士「……燃やす」
ブリレイ「ま、待ってください!え、えぇと……!」
押し問答のさ中、すると、出入り口の階段のほうが急に騒がしくなる。
魔剣士「ん…!」
バンシィ「お兄ちゃん、誰か…来る……」
バンシィは魔剣士の援護にまわるため、出入り口の傍に立って構えを取った。
だが、数秒後に現れたのは猛竜騎士と白姫だった。
バンシィ「えっ…」
魔剣士「お、オッサン!白姫!?」
現れるはずがない二人に、魔剣士は目を丸くする。
白姫「魔剣士っ!」
猛竜騎士「ここで正解だったか…!それと魔剣士、その男の腕を離すな!」
魔剣士「お、おう……!?」
その瞬間、ブリレイは何かを悟ったのか、苦い表情を浮かべる。
魔剣士「二人ともどうしてここに来たんだ!つーか、よく地下室が分かったな!?割と複雑だったのに……」
猛竜騎士「城内の兵士の首を刎ねんと脅かしたら、兵士の一人が"またこんな役割ですか!?"と怯えながら話をしてくれてな!」
魔剣士「……まさか」
白姫をさらった時に脅かした兵士じゃないだろうか。
いや、今はそれよりも……。
魔剣士「って、そんなことぁどうでも良い!何でここにいるんだよ!」
猛竜騎士「それは簡単なことだ。そこの男が、ブリレイが敵であると分かったからだ……!」
魔剣士「何っ!」
猛竜騎士「ブリレイ、お前はもう言い逃れは出来ん…。その目的を吐け!」
ブリレイ「……ちょっと待ってください、僕が敵などと!」
情けない声で慌ててそれを否定するが、猛竜騎士は一枚の紙を取り出した。
猛竜騎士「既にお前のやったことは、直接セージから連絡をもらっている。お前が瞳に宿した闇魔力によって、セージを操作していたとな……」
ブリレイ「せ、セージ様から……?」
また声色が変わる。
猛竜騎士「字を見れば分かるだろう。これはセージが記載したメッセージだ」
ブリレイ「……確かに、それはセージ様の字…ですね…」
猛竜騎士「お前の目的は何だ。どうしてセージを操り、単独的な行動を目論んだ。全てを答えろ!」
ブリレイ「どうして、セージが……」
猛竜騎士「シュトライト!」
ブリレイ、万事休す。隠していた野望が、ついに姿を現す時が来た。
ブリレイ「……仕方ない、か」
魔剣士「!」
猛竜騎士「!」
白姫「!」
バンシィ「…!」
全員が気付くほど、雰囲気が変化し、ザワつく悪寒。
ブリレイ「どうしてセージが俺の幻惑を解いたのか分からないが、こうなっては仕方ない……」
魔剣士「テメ、動くな!」
ブリレイ「動く気もない。全て上手くいくと行動をしていたんだが、闇魔力の幻惑とはいえ限界があるらしいな。…いや、そもそも俺の闇魔力は不完全であるからして、ただ瞳で幻惑を放つことが出来るといった効果に過ぎないのだが」
魔剣士「……変な考察なんかいらないんだよ!さっさと目的を言え!」
ブリレイ「そう騒ぐな」
"はぁ"とため息をついて、ブリレイも"一枚の紙"を取り出した。
魔剣士「あ…?」
猛竜騎士「……あれは」
折りたたまれた紙は、裏側から薄っすらと"陣"が描いてあることが分かる。ブリレイはそれをゆっくりと拡げていく。
魔剣士「なんだそりゃ……」
猛竜騎士「いかん!魔剣士、その紙を抑えろ!それは結界陣だ!!」
魔剣士「は、何?」
猛竜騎士「……くっ!!」
猛竜騎士は、縮地と同時に槍をブリレイに向けて突っ込んだ。
しかし、ブリレイは全身に無属性の物理強化を経て、回転し、抑えていた魔剣士と猛竜騎士の槍撃を同時に弾き飛ばす。
魔剣士「ぐぁっ!?」
猛竜騎士「ぐぅっ!」
バンシィ「お兄ちゃんっ!」
白姫「魔剣士!猛竜騎士さんっ!」
"ズザザッ…!"
何とか体勢を整え、地面を滑りながら着地する。
だが、既にその間にブリレイは"紙"を展開し、こちら側に向けていた。
魔剣士「な、何だよオッサン!あの紙がなんかあんのか!?」
猛竜騎士「……あ、あれは恐らく魔法結界陣だ!しかも、お前の闇魔力に反応し、それを封じることが出来るらしくてな……!」
魔剣士「はい?俺の闇魔力を封印するだって?」
猛竜騎士「お前が氷山帝国で実験をした時に黒魔石に吸収効果があったとセージが思い出し、闇魔法を封印できるよう生成した陣だそうだ……」
魔剣士「おいおい…!そ、そういうことかよ……」
先ほど魔剣士の火炎がかき消された理由もこれで納得した。
猛竜騎士「だが、結界とはいえお前に影響を及ぼすと決まったわけじゃないから安心を……」
魔剣士「ハハッ…!そ、それが決まってるんだよなぁ……!」
猛竜騎士「何?」
魔剣士「実はさっき、今まで展開したことのないレベルの魔法をぶっ放したんだ」
猛竜騎士「それで……」
魔剣士「ものの見事に全部かき消された。両腕が持ってかれたと思ってヒヤヒヤしたが、身体が何とか回復してくれて……」
猛竜騎士「……そ、それは聞きたくなかった話だ…!」
あの紙が闇魔力を吸収する効果があるのなら、全身を魔法化できる、体内にそれを宿す魔剣士はどうなるのか考えたくもなかった。
ブリレイ「……落ち着いたか?」
魔剣士「嫌でもな……」
ブリレイ「そうか。では、ようやく話が出来るな」
魔剣士「ちっ…!」
二人は武器を仕舞うと、バンシィと白姫を守るようにして前に立つ。
ブリレイはそれを見て「ふぅ」と大きなため息をついた。
魔剣士「で、何をお話ししてくれるんだ?ブリレイさんよ……」
ブリレイ「……もう、何を言っても無駄だと分かっている。俺の計画がここまで崩されるとは予想外だった」
魔剣士「計画だと?テメェ、やっぱり何か裏で計画を!」
ブリレイ「吠えるな。この力を手に入れてから、万事うまくいくはずだった。お前とブレイダーの存在さえなければな」
魔剣士「どういうことだ……」
ブリレイ「だから計画を立てた。だが、今さらながら不完全だったと思うさ。よもやこんな状況に陥るなどと、誰が思ったものか……」
魔剣士「何を言ってやがる……」
ブリレイ「……お前らが気になるのは俺の真の目的。今までの行動についてだろう?」
魔剣士「そうだ!さっさと話せクソ野郎が!!」
ブリレイ「そうだな、簡単に言えば……」
魔剣士「言えば…!」
簡単に言えば。
"「世界戦争をしたかった……かな?」"
魔剣士「……な…に…!?」
猛竜騎士「何だと!?」
白姫「今、なんて……」
バンシィ「世界…戦争……?」
とんでもない言葉が、彼の口から飛び出した。
魔剣士「おい、おい……」
いつかのデジャヴ。
アサシンの抱いた野望に近い、気分が悪くなる最悪の一言。
ブリレイ「あぁ、世界戦争を望んでいる」
魔剣士「な、何を言って…、何を言ってんだテメェは!!」
……ブリレイの真実。
魔剣士たちは、彼の目的は"王の座"につきたいなど、支配者になりたいのだろうと…、それが目的なのだろうと思っていた。
しかし、彼の口から出た言葉は……。
ブリレイ「何度言えば分かる?俺は世界戦争をしたいんだ」
世界戦争をしたいなどと、ふざけた夢を見ていた。
魔剣士「ふ、ふざけんじゃねぇぞブリレイ!!」
ブリレイ「ふざけてなどいない。俺が俺であるために、世界を混乱の世にしたいだけだ」
魔剣士「お、お前の夢は王の座につきたいとか、支配者になりたいとかじゃないのか!」
ブリレイ「興味はある。と、いうよりも…俺はそうなりたいとも願っているが」
魔剣士「だったら王を倒して、お前が"世界の指導者となる"って俺らを説得すりゃよかったじゃねえか!正義の心だって少しはあったんだろ!?お前がもっとも怪しい行動をしなけりゃ、その地位くらい……」
ブリレイ「―――おいおい、違うぞ?」
魔剣士「なぬ?」
ブリレイ「最終的にそうはなりたくても、俺は"混乱の世で俺の名を知らしめたかっただけだ"。もちろん、世界を救うという意味でな」
魔剣士「……な、何言ってんのか分からないぜ…?」
彼の目的は分かっても、どうして戦争を引き起こしたいのかが理解できない。
そこで口を開いたのは猛竜騎士だった。
猛竜騎士「……悔しい話だが、俺は少しばかり分かる気はする」
魔剣士「オッサン?」
猛竜騎士「違う。俺はそんな世は望んじゃいない。だけど、ブリレイの言い分も同じ"冒険者"として分かるんだ」
ブリレイ「……ほう?」
猛竜騎士はしかめた顔をして、苦しいように話を続ける。
猛竜騎士「アサシンが望んだ戦乱は、世界全土が混乱するばかりの世だった。しかし、ブリレイは"冒険者"として混乱の世に、英雄として立ちたいんだろう……」
魔剣士「は、はい?」
猛竜騎士「冒険者として世界を救う。熱狂する人々は、名を叫ぶ。そんな人間に、アイツは英雄という存在になりたかったんだろう…」
魔剣士「そ、そんなこと……」
猛竜騎士「恐らくはそうさ。……そうなんだろう、ブリレイ!」
名を呼ぶと、彼はニンマリと笑い返事をした。
「さすが同じ時代を生きていた冒険者だ」と。
魔剣士「マジで…、言ってんのか……」
ブリレイ「あぁ、あの時代は良かった。少しの魔法が出来て、世界各地で多少の力を見せるだけで、人は熱狂したんだ……」
魔剣士「熱狂って……」
ブリレイ「だが、時代は進む。魔法や戦いの技術は上がり、錬金道具なんてのも生まれ、気軽に冒険が楽しめる時代になった。すると、必然的に俺の名も薄れていった。それが、許せなかった……」
魔剣士「だからってなぁ、お前、そりゃ世界戦争を起こすのとは違うだろ……」
ブリレイ「違うものか。魔剣士よ、もしお前が闇魔法を失い、周りがどんどん強い者ばかりで囲まれていったらどうする?悔しくはないか?」
魔剣士「それは悔しいかもしれねぇけど……」
ブリレイ「そんなある日、再び闇魔法を会得するチャンスを見出したら?また強さを戻す技術を知ったら、お前は冒険者としてどうする?」
魔剣士「そ、それは……」
当時、ブリレイの魔法技術は誰よりも未来を進んでいた。同時属性を放つことだけじゃない、戦う技術だって、近接技術だって、無詠唱だって、着いてくるものはいなかった。
ブリレイ「だが、時代は進むにつれ住みづらくなった……」
誰よりも光を浴びていたあの頃。
進む技術により、自分の存在はいつか忘れ去られていった。
ブリレイ「俺は、その道でしか人に認められなかった。それでおいて、徐々に見向きもされなくなる気持ちが分かるか?」
魔剣士「…っ」
ブリレイ「そりゃ俺だって、自分のために努力はしたさ。魔法学の研究連合なんて大層なものが出来て、俺は自身の技術を高めるために加入した。もしかすると、時代を取り戻せるのではないかと思ってな」
魔剣士「そういうことか……」
ブリレイ「だが、若さには勝てなかった。どんどん周りは強くなり、俺は老いていく。これほど悔しいことがあるか!?」
魔剣士「…」
ブリレイ「諦めかけていたその時、チャンスを得た。たまたま事故が起きて、この瞳に宿った闇魔法。これを利用しない手はないだろう!」
魔剣士「気持ちは…、分かるけどよ……」
ブリレイ「いや、この時の俺の本心を理解できるには、お前はまだ若すぎる!」
輝く人生をもう一度だけ取り戻したい。
若さへの妬みが、彼の中では沸いていた。いくら強くなろうとしたところで、若い人間たちには勝てないのだから。光を浴びる人間は、若者ばかりなのだからと。
ブリレイ「だから戦いを起こすまで。それには、王と騎士団、このセントラルは充分過ぎる舞台だったよ。王が世界を混乱させるというんだ。混乱ののち、騎士団を俺の幻惑を使い配下において謀反すれば、それで世界は俺に注目するだろう?」
魔剣士「ふ、ふっざけんな!!それでどんだけ犠牲が出ると思ってるんだ!!だったら最初から阻止しても英雄になれるだろうが!!」
ブリレイ「人は絶望の中に光を見る。絶望に差す一筋の光は、何よりも強く未来を照らす。その光こそ、俺の存在……」
魔剣士「そんな考えで、お前が英雄になれると思ってんのか……!」
ブリレイ「だから王を上手く操り、一度、世界を破滅に導くつもりだった。それがどうして、お前があの時…地下室に現れなければ……!」
魔剣士「あの時?」
ブリレイ「そうだ。ブレイダーは、バンシィの魔力を受けて破裂するはずだったんだ。生命の幹の強化方法すら知らない人間がドレインしようとして、死なないわけがないからな」
魔剣士「あ、あの時か……」
魔剣士がブレイダーと対峙しようとした、バンシィを救出した時のことだ。
ブリレイ「あれで王が俺の考えに勘付いた。そのせいで、幻惑を使わざるを得なくなり、計画は更に狂った……」
歯を強く食いしばり、悔しそうに言う。それを見た猛竜騎士は、分かったぞと口を開く。
猛竜騎士「なるほどな、だから急いだというわけか」
ブリレイ「ふむ、さすがに鋭い」
猛竜騎士「急に王城へ呼ばれ、仲間になれといった理由。地下室でこのようなことを行わせた理由。納得がいった」
全ては明かされた。ブリレイの目的と、彼が急いだ理由の全て。
猛竜騎士「だが、どうして俺らを仲間にしようとしたんだ。お前にとって、何のメリットも生むことはないはずだ」
ブリレイ「この国は腐っている。白姫が賞金首にされたことも、騎士団の悪行も、あらゆることに人々は苦しんでいる。そこに必要なのは、希望だ」
猛竜騎士「希望、それがお前ということか…?」
ブリレイ「違う…。俺は英雄だ。希望とは、光である存在。この国、世界に名を持つ者が…そこにいるだろう?」
静かに腕を上げ、白姫を指差す。
魔剣士「何!?」
白姫「わ、私……?」
猛竜騎士「希望…、そうか!お前は白姫を希望にしようとしたんだな!」
ブリレイ「ご名答。いきなりが俺が世間に出て行っても納得はしない。だったら、共に旅をして成長した白姫と猛竜騎士、氷山帝国や砂国に認められた二人の存在は一時的な"光"になる」
猛竜騎士「例えそうだったとしても、俺らが世界戦争に加担すると思うのか!」
ブリレイ「本来、それも準備をしていたはずだった。そこの魔剣士が死んで、完成するはずだったんだ……」
魔剣士「……は?」
きょとんとする魔剣士。
ブリレイ「いくら闇魔法の会得者とはいえ、脳天をかち割られて生きてはいない。地下室で殺し、リッターと数名を魔剣士殺しとして賞金首にし、別国へ逃がすつもりだった。そうすれば、猛竜騎士や白姫は怒り、戦いに赴くだろうと思った……」
猛竜騎士「なるほど、周到な計画だ。ついでに闇魔法の会得者も消せるうえに、俺らも利用できる。一石二鳥だな」
ブリレイ「失敗したブレイダーを殺すことについては、俺を信用していることもあって殺すのは簡単だ。だったら、魔剣士から潰すしかないだろう」
猛竜騎士「……ところが、魔剣士は生きている。闇魔法の神髄を持った男が、そう簡単には死ななかったか」
ブリレイ「その通り。何もかも、俺の計画は破たんしたよ……ハハハハッ!!」
"ハハハハッ!"
四人の前で、ブリレイは大声で笑う。すると、会話を聞いて我慢し続けていた白姫が、彼に対し問いを投げた。
白姫「……ブリレイさん!」
ブリレイ「あ?何だ」
白姫「私、貴方の眼を見ていてずっと本当に平和を願ってると思ってました…。それも、貴方の幻術のせいなんですか…?」
ブリレイ「何度、君の眼を見つめて話をしていた?さすがハイルの娘ということもあって、深層部分までは操れなかったけどね」
白姫「そんな…!じゃ、じゃあ王は!王は今、どうなっているんですか!」
ブリレイ「ハイルは自分の部屋で遊んでいるな。年齢を戻し過ぎて、幼児のようになっているが……」
白姫「ッ!?」
…………
ハイル「だぁ…、うーっ……」
…………
ブリレイ「さっきは参ったよ。突然に泣き出すし、王はしばらく指揮者として適度に年齢を上下させようと思っててね。代わりに壊れるのも早いが、仕方ないことだ」
白姫「ブリレイ…さん……!そんな…こと……!」
魔剣士「人を玩具のようにして……!」
猛竜騎士(……な、なんて…、なんて…呆気ないんだ…………)
なんて、呆気ない。
最大の敵だと思っていた"王"という存在が、既に壊されていた。
ブリレイ「まぁ、それは良い。ともかく、こうなってしまっては致し方ないことだ」
魔剣士「どうするつもりだ、テメェ……」
ブリレイ「この状況となってしまったのなら、まず魔剣士には消えてもらうしかない」
魔剣士「……出来んのか?テメェによ」
ブリレイ「魔剣士クンがいると、相当な厄介過ぎる存在だと分かっている。だから、最初に消えてもらうしかない」
魔剣士「やってみろよ」
拡げていた紙に掌を当てると、魔力を込め始めた。
ブリレイ「この結界で、魔法化できる君の身体はどうなると思う?」
魔剣士「や、やべっ!!そうだった!?」
猛竜騎士「……させるかっ!!」
バンシィ「させないっ……!」
猛竜騎士、バンシィはともに動く。ブリレイの脇にそれぞれ位置を取り、槍撃と氷結魔法を零距離から放つ。
猛竜騎士「はぁッ!!」
バンシィ「凍って……!」
しかし、どちらの攻撃も"防御壁"の展開によって音をたてて弾かれた。
バンシィ「あうっ…!?」
猛竜騎士「両脇に…そ、それも物理と魔法の抵抗壁の同時展開だと!?」
すると、その隙を逃さまいと魔剣士は瞬時に魔法化、火炎となって剣を前に突き出しながら一気に突進する。
だが、火炎の一撃も、ブリレイは余裕をもって姿勢をサっと低くしてそれを避ける。
魔剣士「何ィッ!」
ブリレイ「相変わらず、甘い……」
攻撃の回避に姿勢を低くしたブリレイは、脚を伸ばし身体を横に一回転する。円を描くような足払いに、猛竜騎士とバンシィはその場に転ぶ。
猛竜騎士「うっ!」
バンシィ「痛っ…!」
そして、勢いあまって壁に"ボン!"と衝突した魔剣士は、そのまま壁を蹴り返し再びブリレイへと向かうが――。
魔剣士「うっ!?」
ブリレイ「情けない、それでも冒険者かお前は……」
向かって来ることを想定済みで、紙の陣を魔剣士に向けていた。
バンシィ「お、お兄ちゃんっ!!」
"パァッ!"
バンシィは慌てて氷の刃をブリレイに飛ばすが、防御壁に防がれるばかりで意味はない。
ブリレイ「これで邪魔ものは消える……」
魔剣士「あら、あらららっ!?ちょっ、これ不味い……!!」
白姫「ま、魔剣士ッ!!」
魔剣士の魔力に、陣は発動し、強く発光する。光は波状になって火炎化した魔剣士を包み込む。
そして、魔剣士の身体は光を受けている頭部側から、一瞬のうちに"ボシュボシュ"と鈍い爆発音をあげながら、光は収束し、輝きが陣の中へと消えて行った。もちろん、魔剣士の身体ごと。
白姫「あっ……?」
猛竜騎士「お、おい……」
バンシィ「お兄…ちゃん……?」
"からんからんっ…"
魔剣士の姿は消えた。空中で、手放したことによって魔法化が解除された剣が空しい音をたてて落下する。
猛竜騎士(き、消えた!?い、いや!違うだろうッ!!これはアサシンの時と一緒で、魔力の残り香で復活を……!)
―――そんなものは、無い。
あれから随分と鋭くなった猛竜騎士の感覚でさえ、魔剣士の魔力を捉えることは出来なかった。
つまりこの時点で、"魔剣士"という男の存在はこの地上から……。
白姫「消え…たの…………?」
バンシィ「え……?お兄ちゃん……?」
結界に飲み込まれ、魔剣士の肉体は消失したのだった。
猛竜騎士「……違うッ!!!まだだ、その紙を寄越せシュトライトォォォッ!!!」
ブリレイ「おっとっと、怖い怖い」
もし結界に飲み込まれただけならば、復活する余地はあるはずだ!
何年かかっても、蘇る可能性があること以上、諦めることはしない!
ブリレイ「……させると思うか?」
"パチンッ!"
指を鳴らすと、持っていた魔法陣の紙は燃え上がり、黒い煙をあげて紙は完全に消え去った。
猛竜騎士「シュ……、シュトライトォォオッ!!!」
白姫「そんな…こと…。魔剣士……」
バンシィ「お兄…ちゃん……、お兄ちゃん、お兄ちゃんっ!!!」」
悲鳴と悲しみ、怒りが地下でこだまする。
ブリレイ「クククッ、あとはお前たちだけだ。恨みを晴らしに戦うか?ん?」
猛竜騎士「……諦めることはない!お前をここで殺し、全てを終わらせるっ!!もう、諦めねぇんだよ、俺はよぉっ!!」
バンシィ「許さない…、許さない、許さない、許さない、許さないっ!!!」
白姫「魔剣士……、いつも…助けてくれたもん……。きっと、大丈夫…だから……。信じてるから……っ」
魔剣士が敗れた今、怒りに満ちた彼らがブリレイへの勝負を挑む。
それぞれが構え、これから始まる戦いに赴こうと、気合を入れ直す。
しかし、この時。
互いに興奮状態にあって気付くことがなかった出来事が一つあった。
そう、"ブレイダーの姿が消えていた"ことを。
…………
……
…
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