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第九章【セントラル】
9-59 魔剣士
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―――同時刻、砂国のテイルの部屋にて。
魔剣士「……だーっはっはっはっ!!!」
テイル「ちょ、きゃああっ!!」
二人の心配を他所に、魔剣士は砂国の王城で日々を過ごしていた。
テイル「毎日、毎日!!いい加減に追い出すわよ!」
魔剣士「お前が喧嘩ふっかけてくるからだ。それに、お前の健康的な肉体を触ることは、男女の仲としても……」
テイル「真面目にいうことかっ!!」
"ミシッ…!"
近くにあった銅像が、魔剣士の顔面にヒットし、崩れ落ちる。
テイル「話を聞いて匿ったのは良いけど、そんなことばっかりするのは止めてくれる!」
魔剣士「へーへー…。感謝してるよ。本当に世話になってるよ」
痛む鼻を抑えながら起き上がり、感謝を述べる。
テイル「……まぁ良いけど。いい加減、白姫ちゃんに会ってあげたら?」
魔剣士「今更、会う顔はないっての。世界の悪魔が、世界を担う女王に会うなんて…あっちゃいけないことなんだよ」
テイル「ふーん。女王の冠式には隠れて見に行った癖にね」
魔剣士「うるせっ」
魔剣士はベッドに寝転がり、大きなため息を吐いた。
テイル「これからどうするの。うちに来てから、これからのことを考えてはいるのは分かってる。だけど……」
魔剣士「分かってるよ。だけど、何かを探しても、何をしたらいいか分からないんだよ……」
テイル「魔剣士……」
彼は自分を犠牲にして世界を救った。もう、この世界において彼の名を知らない人間はいないし、誰もが死んだ人間だと思ってる。世界に立場がなくなった人間の想いは、想像を絶する辛さに違いない。だが、魔剣士はそれでも明るく振る舞って、何か目的を見つけようと必死になっていることも分かった。何て…強い人なんだろう。
テイル「うーん、アンタが望むならいくらでも居ていいけどね。私も退屈はしないし」
フフッと笑って言う。
魔剣士「……いつまでも、か。なら、いっそのこと俺と結婚でもするか?」
テイル「は、はいっ!?」
魔剣士「冗談だよ。世界最強の女王が、世界最悪の男と一緒になるなんて想像もしたくねぇだろう」
ごろりとベッドで転がって、テイルに背を向ける。すると、魔剣士の背中にテイルはそっと触れた。
テイル「世界が敵になっても、私は魔剣士の味方だから」
魔剣士「…」
テイル「私の国を救って、世界を救った。この恩は忘れないし、魔剣士が望むなら本当は…私……」
魔剣士「……一緒に寝てくれるのか?女王たるお前が、災厄の男と」
テイル「!」
"どきり"とした。
魔剣士がそう言いながらこちらを向いた顔が、何より真剣だったから。
テイル「ま、魔剣士が望む…なら……。私の年齢なら、もう…結婚しててもおかしくなくて……」
それでも、彼が望むなら。少し、素直に…言ってしまった……。
魔剣士「…」
テイル「…」
二人は、しばらく見つめ合った。
…しかし、魔剣士は真面目な顔をすぐにやめて、ニヤっと笑ってテイルの脇に手を伸ばした。
テイル「やっ!?」
テイルは思わず身体を引っ込める。そして、「何するの馬鹿っ!」と枕を投げた。
魔剣士「……ハッハッハ、お前の憂い顔は卑怯だぜ」
テイル「うるっさい!!私だって本当は怖いのに、それでも覚悟を決めたのに!」
涙目になって、魔剣士を睨んだ。
魔剣士「……そうか。それはゴメンな…。だけど、テイルみたいに俺のことを考えてくれてる奴がいるんだって思うと…少し、元気が出てくるんだよ」
体勢を整え、ベッドに腰掛ける。
テイル「魔剣士、私…」
魔剣士「……そうだなぁ。そろそろ、そういう時期なのかもしれねぇなぁ!」
テイル「え?」
魔剣士は軽く背伸びしてから立ち上がり、部屋の隅に仕舞っていた荷物を纏め始める。
テイル「どこかに行くの?」
魔剣士「……少し、長旅だ。今まで泊めてくれて有難うな」
テイル「えっ!?」
魔剣士「自由が俺のモットーだ!。そろそろ、出かけないといけない時期だと思ってたんだ」
テイル「もしかして、白姫ちゃんの所に……?」
魔剣士「――…違う」
それだけはハッキリと断った。
テイル「じゃあどこに行くの?ここ以外に、今の世界に魔剣士の居場所は……」
魔剣士「……宛てがないわけじゃない。最近、思い出したんだ」
テイル「何を?」
魔剣士「ま、阿呆みたいなことで終わるかもしんねーけど、もしそうなら戻ってくるわ。だけど、多分なんか…割と長い別れになる気がするんだよな」
テイル「一体、どこに行く気なの?それだけは教えてよ!」
魔剣士「……冒険さ」
笑みを浮かべ、意味の分からないことを言った。
テイル「冒険?まさか…こんな状況で!?」
魔剣士「お前はさ、この世界の果てに何があると思う?」
テイル「果て?どういうこと?」
魔剣士「実は最近、北の果てに、何かがあるかって噂を聞いたんだ」
テイル「どういうこと。詳しく教えて」
テイルが詰め寄る。
魔剣士「簡単な話だ。砂国に居た冒険者を裏で聞いてたんだが、氷山帝国の豪雪連峰を抜けた先に魔力の歪みが観測されてたらしい。今は入山規制をされてるんだが、それは多くの人が命を落とすからで、俺なら……不死の身体ならその先を見て生きても戻ってこれるだろ?」
自信満々に言った。確かに危険極まりないが、今の魔剣士なら豪雪を抜けるくらいはワケないだろう。
魔剣士「ってなわけで、俺は飛ぶぜ。また会いに来るからよ!」
テイル「あっ、ちょっと!?」
魔剣士「有難うな。お前ほど優しい奴もいなかったぜ。本当に嬉しかったよ」
テイル「え…ちょ!」
魔剣士は、部屋の机に置かれていた陣のゲートを使ってあっという間に氷山帝国へと飛んで行った。もちろん、残されたいテイルが「この恩知らず!!」と一人叫んだ。
………
…
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