162 / 176
第九章【セントラル】
9-59 魔剣士
しおりを挟む・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――同時刻、砂国のテイルの部屋にて。
魔剣士「……だーっはっはっはっ!!!」
テイル「ちょ、きゃああっ!!」
二人の心配を他所に、魔剣士は砂国の王城で日々を過ごしていた。
テイル「毎日、毎日!!いい加減に追い出すわよ!」
魔剣士「お前が喧嘩ふっかけてくるからだ。それに、お前の健康的な肉体を触ることは、男女の仲としても……」
テイル「真面目にいうことかっ!!」
"ミシッ…!"
近くにあった銅像が、魔剣士の顔面にヒットし、崩れ落ちる。
テイル「話を聞いて匿ったのは良いけど、そんなことばっかりするのは止めてくれる!」
魔剣士「へーへー…。感謝してるよ。本当に世話になってるよ」
痛む鼻を抑えながら起き上がり、感謝を述べる。
テイル「……まぁ良いけど。いい加減、白姫ちゃんに会ってあげたら?」
魔剣士「今更、会う顔はないっての。世界の悪魔が、世界を担う女王に会うなんて…あっちゃいけないことなんだよ」
テイル「ふーん。女王の冠式には隠れて見に行った癖にね」
魔剣士「うるせっ」
魔剣士はベッドに寝転がり、大きなため息を吐いた。
テイル「これからどうするの。うちに来てから、これからのことを考えてはいるのは分かってる。だけど……」
魔剣士「分かってるよ。だけど、何かを探しても、何をしたらいいか分からないんだよ……」
テイル「魔剣士……」
彼は自分を犠牲にして世界を救った。もう、この世界において彼の名を知らない人間はいないし、誰もが死んだ人間だと思ってる。世界に立場がなくなった人間の想いは、想像を絶する辛さに違いない。だが、魔剣士はそれでも明るく振る舞って、何か目的を見つけようと必死になっていることも分かった。何て…強い人なんだろう。
テイル「うーん、アンタが望むならいくらでも居ていいけどね。私も退屈はしないし」
フフッと笑って言う。
魔剣士「……いつまでも、か。なら、いっそのこと俺と結婚でもするか?」
テイル「は、はいっ!?」
魔剣士「冗談だよ。世界最強の女王が、世界最悪の男と一緒になるなんて想像もしたくねぇだろう」
ごろりとベッドで転がって、テイルに背を向ける。すると、魔剣士の背中にテイルはそっと触れた。
テイル「世界が敵になっても、私は魔剣士の味方だから」
魔剣士「…」
テイル「私の国を救って、世界を救った。この恩は忘れないし、魔剣士が望むなら本当は…私……」
魔剣士「……一緒に寝てくれるのか?女王たるお前が、災厄の男と」
テイル「!」
"どきり"とした。
魔剣士がそう言いながらこちらを向いた顔が、何より真剣だったから。
テイル「ま、魔剣士が望む…なら……。私の年齢なら、もう…結婚しててもおかしくなくて……」
それでも、彼が望むなら。少し、素直に…言ってしまった……。
魔剣士「…」
テイル「…」
二人は、しばらく見つめ合った。
…しかし、魔剣士は真面目な顔をすぐにやめて、ニヤっと笑ってテイルの脇に手を伸ばした。
テイル「やっ!?」
テイルは思わず身体を引っ込める。そして、「何するの馬鹿っ!」と枕を投げた。
魔剣士「……ハッハッハ、お前の憂い顔は卑怯だぜ」
テイル「うるっさい!!私だって本当は怖いのに、それでも覚悟を決めたのに!」
涙目になって、魔剣士を睨んだ。
魔剣士「……そうか。それはゴメンな…。だけど、テイルみたいに俺のことを考えてくれてる奴がいるんだって思うと…少し、元気が出てくるんだよ」
体勢を整え、ベッドに腰掛ける。
テイル「魔剣士、私…」
魔剣士「……そうだなぁ。そろそろ、そういう時期なのかもしれねぇなぁ!」
テイル「え?」
魔剣士は軽く背伸びしてから立ち上がり、部屋の隅に仕舞っていた荷物を纏め始める。
テイル「どこかに行くの?」
魔剣士「……少し、長旅だ。今まで泊めてくれて有難うな」
テイル「えっ!?」
魔剣士「自由が俺のモットーだ!。そろそろ、出かけないといけない時期だと思ってたんだ」
テイル「もしかして、白姫ちゃんの所に……?」
魔剣士「――…違う」
それだけはハッキリと断った。
テイル「じゃあどこに行くの?ここ以外に、今の世界に魔剣士の居場所は……」
魔剣士「……宛てがないわけじゃない。最近、思い出したんだ」
テイル「何を?」
魔剣士「ま、阿呆みたいなことで終わるかもしんねーけど、もしそうなら戻ってくるわ。だけど、多分なんか…割と長い別れになる気がするんだよな」
テイル「一体、どこに行く気なの?それだけは教えてよ!」
魔剣士「……冒険さ」
笑みを浮かべ、意味の分からないことを言った。
テイル「冒険?まさか…こんな状況で!?」
魔剣士「お前はさ、この世界の果てに何があると思う?」
テイル「果て?どういうこと?」
魔剣士「実は最近、北の果てに、何かがあるかって噂を聞いたんだ」
テイル「どういうこと。詳しく教えて」
テイルが詰め寄る。
魔剣士「簡単な話だ。砂国に居た冒険者を裏で聞いてたんだが、氷山帝国の豪雪連峰を抜けた先に魔力の歪みが観測されてたらしい。今は入山規制をされてるんだが、それは多くの人が命を落とすからで、俺なら……不死の身体ならその先を見て生きても戻ってこれるだろ?」
自信満々に言った。確かに危険極まりないが、今の魔剣士なら豪雪を抜けるくらいはワケないだろう。
魔剣士「ってなわけで、俺は飛ぶぜ。また会いに来るからよ!」
テイル「あっ、ちょっと!?」
魔剣士「有難うな。お前ほど優しい奴もいなかったぜ。本当に嬉しかったよ」
テイル「え…ちょ!」
魔剣士は、部屋の机に置かれていた陣のゲートを使ってあっという間に氷山帝国へと飛んで行った。もちろん、残されたいテイルが「この恩知らず!!」と一人叫んだ。
………
…
0
あなたにおすすめの小説
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています
木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。
少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが……
陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。
どちらからお読み頂いても話は通じます。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる