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第九章【セントラル】
9-60 新世界への道
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―――氷山帝国、マスター・ルーム。
数時間後、魔剣士は"豪雪連峰"の入山許可を求め、セージのもとを訪れていた。
セージ「豪雪連峰の入山許可ね……」
魔剣士「どうせ世界にゃ俺の居場所がないし、危険地帯を一人でブラブラするのも悪くはないと思ってんだ」
セージ「成る程…。そうねぇ、悪いことじゃないわね……」
魔剣士「どうだ?良いだろ?」
乗り気の魔剣士だったが、対するセージは大きなため息を吐いた。
セージ「……あのねぇ、魔剣士」
魔剣士「何だよ」
セージ「尽きない探求心とか、普通の人間がいけない場所の探索結果には大いに関心はある。だけど、やるべきことがあるでしょう?」
魔剣士「やるべきこと?」
セージ「白姫ちゃんに会いに行ってあげたの?」
魔剣士「また…それかよ」
それを聞いた魔剣士は、わざと後頭部をボリボリ!と音を出して掻いた。
セージ「もう2か月よ。世界が貴方を敵として、災厄としても、白姫ちゃんや猛竜騎士は違うでしょう」
魔剣士「……立場が違う。あいつらは国を生き返らせるんだろ」
セージ「そうじゃない。1年の冒険は、貴方にとってその程度のものだったの?」
魔剣士「元々俺は一人だった。今更だ。今更、会わなくても…良い……」
魔剣士は魔剣士なりに考えて行動をしているが、魔剣士たちを知っている周りの人間たちは、二人が会うことを望んでいた。
セージ「……まぁ、私がとやかく言う問題でもないけどね。しかし魔剣士、貴方は本当に凄い人間なんだって分かってる?」
魔剣士「あ?」
セージ「この世界で、世界最高峰の技術先進国の氷山帝国。そして世界最高峰の武力を持つ砂国。それを淘汰することも可能なセントラル。全てを救い、全ての頂点に気軽に話かけられる。よもや、貴方に頼まれたらその国を動かすことだってできなくはないのよ」
魔剣士「何が言いたいんだ
セージ「幻惑を入手し、名実とともに知る人ぞ知る覇王のような存在なの。自分がどれほどに凄い立場か分かってないでしょう」
魔剣士「世界に淘汰された人間に、名実もクソもねーだろうが」
セージ「……そうね」
上手く励ますことや、白姫へ顔を出せるように言えないことにセージは少し落ち込む。
魔剣士「つか、そんなことどうでも良い。いつか気が向いたら顔は出すから、まずは入山許可証を出してくれねーか」
セージ「……そんなに豪雪連峰へ登りたいの?」
魔剣士「人が入らない場所に、何があるか。考えただけで面白いだろ?きちんと、見てきたものは報告すっからよ!」
セージ「はぁ…。全く、言い出したら止まることを知らないんだから……」
セージは近くの机にあった白紙に、自分のサインを記載して魔剣士に渡す。
セージ「はい。これを国の極北地帯にいる守衛に渡して。それで通れるはずよ」
魔剣士「おぉ、ありがとさん!」
紙を受け取ると、大事そうに折り畳んでポケットに仕舞った。
セージ「本当に行きたいのね……」
魔剣士「あぁ、暫くは気ままに旅生活だ」
セージ「……旅は結構なことよ。だけど、豪雪連峰を選ぶなんて…しばらくは…」
魔剣士「何?」
セージ「いえ…。それじゃ、豪雪連峰に行く前に私の父がやってる錬金術のお店に行きなさい」
魔剣士「セージの親父の店だって?」
セージ「そこで、私から話を聞いたって言って。それで分かると思うから」
魔剣士「やだよ面倒くさい」
断った魔剣士に、セージはジトっとした目をして頬をつねった。
セージ「い、き、な、さ、い」
魔剣士「あがっ!あががだだだっ!わ、わわ…わかっがわかっが!!」
セージ「お店は通りの"サクラ"の花の…、私が着けてる花のブローチの形をした看板があるから」
魔剣士「……わかっが!あがが、あがげっげ!」
セージは頬を離すと、やれやれと言って椅子に座る。
魔剣士「いてて…、なんて奴だ……」
セージ「こっちの台詞よ」
魔剣士「ま、とりあえずは行ってみるか…。色々あんがとさん」
セージ「はいはい。また…会えたら会いましょうね」
魔剣士「何?」
セージ「何でもない。ほら、早く行って」
魔剣士「へいへい」
魔剣士は不機嫌そうな顔をしながら、セージの部屋から出て行った。
セージ「さてと、どうなるかしらねぇ……」
………
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――10分後、錬金術師のお店。
意外にも素直な魔剣士は、言われた通りセージの父親が経営している錬金術師の店へとやってきた。だが、外観とドアを開いた感じに、過去に来たような覚えがある。
魔剣士(なんかここ、前に来たことあるような……)
すると、カウンターの奥から、のっそりと…面倒くさそうに"アルク"と名札の付けた錬金術師が現れた。
魔剣士「……あ」
アルク「ん……」
お互いに顔を見つめ合い、思い出す。
魔剣士「……思い出した。お前、適当なやっすいライター売ろうとした汚い錬金術師だろ!」
アルク「な、何!?あっ、お前は女と来てたひやかし野郎じゃねーか!」
魔剣士「ふざけやがって、そうか…セージの父親ってそうだったか!?」
アルク「セージだと?」
魔剣士「あぁ、セージからアンタに会いに行くように言われたんだよ。どうしてこんな借金の多そうな汚い店に……」
アルク「お、お前な……」
"ぴくぴく"と顔をヒクつかせる。
アルク「借金が多かったのは昔の話だ!ほっとけ!」
魔剣士「あったのかよ!?」
アルク「借金がない店のほうが珍しいんだよ!」
魔剣士「知るか!」
アルク「そうかよ!」
何とも似ている二人。お互いに譲る様子はないが、会話は続けた。
アルク「で、何の用だ!セージに何を言われたんだ!」
魔剣士「豪雪連峰を抜けたいって言ったらここへ行けって言われたんだよ!」
アルク「……何?」
アルクの顔色が変わった。
アルク「本当にそう言われたのか」
魔剣士「あぁそうだよ」
アルク「いや、あそこは入山禁止区域だろう。それに、普通の人間が……」
"普通の人間が…"一人でぶつぶつと言っていると、アルクは思い出した。
アルク「あ…なるほどな。思い出したぞ。お前、世界のタブーの存在になったんだったな?」
魔剣士「……今さらか!?」
アルク「ハッハッハ、なるほどなるほど。ふむ、そういうことか…思い出したぞ……。闇魔術師とか、そういうのだったっけ…たぶん……」
話は聞いていたようだが、どうにもこのオッサンは色々と疎い気がした。
魔剣士「で、何でセージがアンタんところに案内したか教えてほしいんだけどね」
アルク「フハハ、まぁ落ち着け。取り敢えず…そうだな」
魔剣士「ん?」
アルクは棚にしまってあった小皿に盛り付けられたピーナツを取り出し、カウンターに置いた。
アルク「一先ず落ち着いて、食えばいい」
魔剣士「いらねぇよ!?」
突然のピーナツ。このオッサンの先の行動が全く読めない。
アルク「バターピーナツだぞ。旨いんだぞ」
魔剣士「いや要らないから。セージは俺にピーナツを食わせるためにここに行けっつったのか?」
アルク「馬鹿言うな。やれやれ、話の聞かない奴だなお前は……」
魔剣士「突然ピーナツを食えと言われるほうがビビると思うが」
至って冷静なツッコミを入れる。
だがアルクは、このピーナツがキモなんだなぁと話を続けた。
魔剣士「どういうことだ?」
アルク「お前はさ、世界ってどこまで広いか知ってるか?」
魔剣士「……いや、知らん。だからこうして、俺は見ようとしてるんだがな」
アルク「まぁ、そうか……」
アルクは笑って、また戸棚から何かを取り出して机に置く。
それは、各大地の地図を球体状に描いた"星儀"を呼ばれるものであった。
アルク「これを知ってるか?」
魔剣士「いや、これは…世界地図だろ……?」
アルク「正確には地図じゃなく、星儀っていう地図を球形に…この"星"を現したものだ。氷山帝国はココだ」
星儀の北の位置を指す。
アルク「ここから周囲には海があったり、陸続きだったり、北から南大地、東大地、西大地、そしてセントラルがある」
順々に指して、説明を続ける。
魔剣士「で、これがどうしたんだよ」
アルク「星儀を見りゃ分かるんだが、海繋がりで世界は一週できる。これが世界踏破って呼ばれる冒険者たちの夢なんだが……」
魔剣士「あぁ、それで?」
アルク「問題は極南と、極北の2つ。星儀のいっちばん北と、いっちばん南の中心に問題がある」
両手の人差し指をてっぺんと真下で、挟むように差す。
魔剣士「何が問題なんだよ」
アルク「フフ…、謎の強い魔力の歪みが観測されてるわけだ」
魔剣士「謎の強い魔力…だと?」
アルク「あぁ。謎の塊、研究者のロマンだ。しかしな、その観測の詳細を調査することは出来ないんだ。何故か分かるか?」
魔剣士「いや……」
指差していた手を開き、パーの状態にして極北地点をパン!と叩いた。
アルク「……危険なんだ。人が立ち入れる場所じゃない。北は入るだけで永久に凍り付く大地。南は触れるだけで骨と化す燃える砂。人が立ち入れる場所じゃないんだよ」
彼は目を見開き、面白そうに言った。
魔剣士「そ、それで…?」
アルク「魔力の観測地点。それは余りにも強力で、歪みの質までは判明している」
魔剣士「質って何だ」
アルク「質とは"どのような状態か"という意味だ」
魔剣士「どんな状態なんだ」
アルク「……吸い込んでいるんだ。大気に浮く魔力たちを」
魔剣士「吸い込むだって?」
アルク「あぁ、そうだ。つまりな……」
話によれば、星の頂点同士に強い魔力の吸い込みが発生し、それにより極北と極南に強烈な天候の変化をもたらしているという。
アルク「激しい魔力。天候の変化。滅ぶ肉体に、簡単に人間が立ち入れる場所じゃない」
魔剣士「そうことか。…だけど、俺なら魔法化した肉体で余裕でその地点まで行くことが出来るな」
アルク「セージの話通りの肉体なら、魔力の吸い込みに面白いことが起きるだろうな」
魔剣士「何?」
アルク「……世界は1つじゃない。この世界はまだまだ小さい世界ってことだ」
魔剣士「どういうことだ」
アルクは立ち上がり、店の棚に並んだ"サクラ"のブローチを投げた。
魔剣士「ん?」
アルク「……それはサクラだ。知ってるだろう」
魔剣士「あぁ、架空の花だろ?」
アルク「それは違う」
魔剣士「あ?」
アルク「サクラは実在している。ここではない、もう1つの世界…大陸と呼ばれる世界がある」
魔剣士「大陸?大地じゃなくてか?」
にやりと笑うアルク。
アルク「冒険者にとってのユートピアだ。……ゴブリン、イフリート、クラーケン、アンバー、イエティ、スライム。この世界には存在しない、未知なる生命体が大勢居る」
子供が楽しそうな玩具を見つめるような瞳で、キラキラとした表情を浮かべて言った。
魔剣士「冗談だろ?」
アルク「冗談じゃないんだな」
魔剣士「それが仮に本当だとしても、その証拠がない」
アルク「俺がいる」
魔剣士「…は?」
アルク「俺が、その別世界から来た住人だ」
魔剣士「……待て。何を言ってる?」
アルクは再びカウンターに戻ると、椅子に腰かけ、ピーナツを食べながら言った。
アルク「俺は元々、大陸側に住んでいた錬金術師だ」
魔剣士「嘘つけよ」
アルク「いいから聞け。あっちの世界でな、ある日・・冒険者たちの装備を造ることになってな。完成した時、店員の銃遣いがいたんだが、自分が試すと言ったんだ」
真剣な顔のアルク。どうにも、嘘というにはあまりにも真剣すぎた。
アルク「俺も調整のために調べたかったし、二人で猛雪山っていう雪山に登ろうって話になった時、他の店員二人が危険だから止めろと言ってきた」
魔剣士「それで」
アルク「止めるわけがない。俺だって絶対の自信があったしな。それで、それでも心配な二人は俺らについてきた。山小屋まで登って、そこでアイスタイガー相手に銃遣いが奮闘した」
魔剣士「……どうなったんだ」
アルク「俺の整備が強すぎた。猛雪山の強い魔力の歪みに反応し、俺たちは山小屋ごと吹き飛ばされたんだ」
魔剣士「は…」
アルク「その時の木板は、この店を建てた時に使ってる。ほれ、そこの棚の木とかもそうだ」
魔剣士「…これか」
傍にあった木棚。至って普通の木造りで、不思議な点は見当たらない。
魔剣士「冗談も大概にしろよ」
アルク「魔法に長けたお前なら分かるはずだ。触れてみろ」
魔剣士「あ…?」
渋々、言われたとおりに棚の木板に触れる。
すると、魔剣士の感知が"感じたことのない魔力"を認識した。この世界には感じたことがない、知らない感覚。
魔剣士「うっ!?」
アルク「……何か、感じたか?」
魔剣士「この木板…、何か仕掛けて……」
アルク「馬鹿言え。しかし、もう触れないと分からないまで魔力が薄れたか。店を造った当時は、相当に強かったんだがな……」
ぽいぽいとピーナツを食べながら言った。
魔剣士「待てよ…。この魔力…じゃあ、さっきの話は本当に……」
アルク「だから言ってるだろ。飛ばされた後、錬金術の技量を活かして、当時ランク制度が強かったこの国に来て、セージを拾った。あとはまぁ…育てて…色々あった」
魔剣士「…!」
セージの境遇に突っ込むことはなかった。
しかし、アルクの話が本当である可能性が出てきたことに、魔剣士はアルクに詰め寄る。
魔剣士「だとしたら、俺もその世界に行けるのか?」
アルク「可能性の一つだ。しかし、行ける可能性は高い」
魔剣士「どうすればいい」
アルク「……それがこのピーナツだと言ったんだ」
魔剣士「へ?」
そういえば、さっきも"ピーナツがキモだ"とか言っていた。
アルク「これは、向こう側の素材で造ったピーナツ製造機の道具さ」
魔剣士「それで?」
アルク「これの部品を渡す。それに染みついた魔力に、吸い込む魔力が反応して"ゲート"を作るかもしれん」
魔剣士「……可能性は」
アルク「さっきも言った通り、かなり高い」
魔剣士「…!」
魔剣士は顔を熱くする。まだ見ぬ新世界の話に、心を躍らせた。
―――だが。
アルク「大事な人には、挨拶をしておけよ」
魔剣士「ん?」
アルク「俺らのいた世界に行っても、戻る手段がない。あっちには、あっちの優秀な錬金術師がいるが、こっちに戻れるとは限らん」
魔剣士「えっ」
アルク「ま、"この世界に立場がなくなった"お前だからこそ、この選択を選ばせたんだろう。セージの奴は…な」
最後のピーナツを口に入れた。
魔剣士「セージ……」
アルク「そんじゃまぁ、部品解体の時間もあるから部品を渡すのは3日後にしよう」
魔剣士「3日……」
アルク「それまでに準備をしておけ。色々とあるんだろう」
魔剣士「準備…か……」
アルク「もう1度言う。お前はこの世界に、もう…戻ってこれないかもしれない。それを聞いて決断するんだな」
魔剣士「…」
アルクは小皿をカウンター下に入れると、ハっとした顔で「やべ、アイツに怒られる」と小皿を慌てて流し台に持って行った。
魔剣士(戻ってこれない…。世界に居場所がなくて…、だけど…決断とか…俺は…………)
気軽に考えていた"冒険の扉"が、予期せぬ形で一変した。
魔剣士は目を閉じて、今やるべきことが何かを、改めて見つめ直した。
覚悟を、決めると。
…………
……
…
―――氷山帝国、マスター・ルーム。
数時間後、魔剣士は"豪雪連峰"の入山許可を求め、セージのもとを訪れていた。
セージ「豪雪連峰の入山許可ね……」
魔剣士「どうせ世界にゃ俺の居場所がないし、危険地帯を一人でブラブラするのも悪くはないと思ってんだ」
セージ「成る程…。そうねぇ、悪いことじゃないわね……」
魔剣士「どうだ?良いだろ?」
乗り気の魔剣士だったが、対するセージは大きなため息を吐いた。
セージ「……あのねぇ、魔剣士」
魔剣士「何だよ」
セージ「尽きない探求心とか、普通の人間がいけない場所の探索結果には大いに関心はある。だけど、やるべきことがあるでしょう?」
魔剣士「やるべきこと?」
セージ「白姫ちゃんに会いに行ってあげたの?」
魔剣士「また…それかよ」
それを聞いた魔剣士は、わざと後頭部をボリボリ!と音を出して掻いた。
セージ「もう2か月よ。世界が貴方を敵として、災厄としても、白姫ちゃんや猛竜騎士は違うでしょう」
魔剣士「……立場が違う。あいつらは国を生き返らせるんだろ」
セージ「そうじゃない。1年の冒険は、貴方にとってその程度のものだったの?」
魔剣士「元々俺は一人だった。今更だ。今更、会わなくても…良い……」
魔剣士は魔剣士なりに考えて行動をしているが、魔剣士たちを知っている周りの人間たちは、二人が会うことを望んでいた。
セージ「……まぁ、私がとやかく言う問題でもないけどね。しかし魔剣士、貴方は本当に凄い人間なんだって分かってる?」
魔剣士「あ?」
セージ「この世界で、世界最高峰の技術先進国の氷山帝国。そして世界最高峰の武力を持つ砂国。それを淘汰することも可能なセントラル。全てを救い、全ての頂点に気軽に話かけられる。よもや、貴方に頼まれたらその国を動かすことだってできなくはないのよ」
魔剣士「何が言いたいんだ
セージ「幻惑を入手し、名実とともに知る人ぞ知る覇王のような存在なの。自分がどれほどに凄い立場か分かってないでしょう」
魔剣士「世界に淘汰された人間に、名実もクソもねーだろうが」
セージ「……そうね」
上手く励ますことや、白姫へ顔を出せるように言えないことにセージは少し落ち込む。
魔剣士「つか、そんなことどうでも良い。いつか気が向いたら顔は出すから、まずは入山許可証を出してくれねーか」
セージ「……そんなに豪雪連峰へ登りたいの?」
魔剣士「人が入らない場所に、何があるか。考えただけで面白いだろ?きちんと、見てきたものは報告すっからよ!」
セージ「はぁ…。全く、言い出したら止まることを知らないんだから……」
セージは近くの机にあった白紙に、自分のサインを記載して魔剣士に渡す。
セージ「はい。これを国の極北地帯にいる守衛に渡して。それで通れるはずよ」
魔剣士「おぉ、ありがとさん!」
紙を受け取ると、大事そうに折り畳んでポケットに仕舞った。
セージ「本当に行きたいのね……」
魔剣士「あぁ、暫くは気ままに旅生活だ」
セージ「……旅は結構なことよ。だけど、豪雪連峰を選ぶなんて…しばらくは…」
魔剣士「何?」
セージ「いえ…。それじゃ、豪雪連峰に行く前に私の父がやってる錬金術のお店に行きなさい」
魔剣士「セージの親父の店だって?」
セージ「そこで、私から話を聞いたって言って。それで分かると思うから」
魔剣士「やだよ面倒くさい」
断った魔剣士に、セージはジトっとした目をして頬をつねった。
セージ「い、き、な、さ、い」
魔剣士「あがっ!あががだだだっ!わ、わわ…わかっがわかっが!!」
セージ「お店は通りの"サクラ"の花の…、私が着けてる花のブローチの形をした看板があるから」
魔剣士「……わかっが!あがが、あがげっげ!」
セージは頬を離すと、やれやれと言って椅子に座る。
魔剣士「いてて…、なんて奴だ……」
セージ「こっちの台詞よ」
魔剣士「ま、とりあえずは行ってみるか…。色々あんがとさん」
セージ「はいはい。また…会えたら会いましょうね」
魔剣士「何?」
セージ「何でもない。ほら、早く行って」
魔剣士「へいへい」
魔剣士は不機嫌そうな顔をしながら、セージの部屋から出て行った。
セージ「さてと、どうなるかしらねぇ……」
………
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―――10分後、錬金術師のお店。
意外にも素直な魔剣士は、言われた通りセージの父親が経営している錬金術師の店へとやってきた。だが、外観とドアを開いた感じに、過去に来たような覚えがある。
魔剣士(なんかここ、前に来たことあるような……)
すると、カウンターの奥から、のっそりと…面倒くさそうに"アルク"と名札の付けた錬金術師が現れた。
魔剣士「……あ」
アルク「ん……」
お互いに顔を見つめ合い、思い出す。
魔剣士「……思い出した。お前、適当なやっすいライター売ろうとした汚い錬金術師だろ!」
アルク「な、何!?あっ、お前は女と来てたひやかし野郎じゃねーか!」
魔剣士「ふざけやがって、そうか…セージの父親ってそうだったか!?」
アルク「セージだと?」
魔剣士「あぁ、セージからアンタに会いに行くように言われたんだよ。どうしてこんな借金の多そうな汚い店に……」
アルク「お、お前な……」
"ぴくぴく"と顔をヒクつかせる。
アルク「借金が多かったのは昔の話だ!ほっとけ!」
魔剣士「あったのかよ!?」
アルク「借金がない店のほうが珍しいんだよ!」
魔剣士「知るか!」
アルク「そうかよ!」
何とも似ている二人。お互いに譲る様子はないが、会話は続けた。
アルク「で、何の用だ!セージに何を言われたんだ!」
魔剣士「豪雪連峰を抜けたいって言ったらここへ行けって言われたんだよ!」
アルク「……何?」
アルクの顔色が変わった。
アルク「本当にそう言われたのか」
魔剣士「あぁそうだよ」
アルク「いや、あそこは入山禁止区域だろう。それに、普通の人間が……」
"普通の人間が…"一人でぶつぶつと言っていると、アルクは思い出した。
アルク「あ…なるほどな。思い出したぞ。お前、世界のタブーの存在になったんだったな?」
魔剣士「……今さらか!?」
アルク「ハッハッハ、なるほどなるほど。ふむ、そういうことか…思い出したぞ……。闇魔術師とか、そういうのだったっけ…たぶん……」
話は聞いていたようだが、どうにもこのオッサンは色々と疎い気がした。
魔剣士「で、何でセージがアンタんところに案内したか教えてほしいんだけどね」
アルク「フハハ、まぁ落ち着け。取り敢えず…そうだな」
魔剣士「ん?」
アルクは棚にしまってあった小皿に盛り付けられたピーナツを取り出し、カウンターに置いた。
アルク「一先ず落ち着いて、食えばいい」
魔剣士「いらねぇよ!?」
突然のピーナツ。このオッサンの先の行動が全く読めない。
アルク「バターピーナツだぞ。旨いんだぞ」
魔剣士「いや要らないから。セージは俺にピーナツを食わせるためにここに行けっつったのか?」
アルク「馬鹿言うな。やれやれ、話の聞かない奴だなお前は……」
魔剣士「突然ピーナツを食えと言われるほうがビビると思うが」
至って冷静なツッコミを入れる。
だがアルクは、このピーナツがキモなんだなぁと話を続けた。
魔剣士「どういうことだ?」
アルク「お前はさ、世界ってどこまで広いか知ってるか?」
魔剣士「……いや、知らん。だからこうして、俺は見ようとしてるんだがな」
アルク「まぁ、そうか……」
アルクは笑って、また戸棚から何かを取り出して机に置く。
それは、各大地の地図を球体状に描いた"星儀"を呼ばれるものであった。
アルク「これを知ってるか?」
魔剣士「いや、これは…世界地図だろ……?」
アルク「正確には地図じゃなく、星儀っていう地図を球形に…この"星"を現したものだ。氷山帝国はココだ」
星儀の北の位置を指す。
アルク「ここから周囲には海があったり、陸続きだったり、北から南大地、東大地、西大地、そしてセントラルがある」
順々に指して、説明を続ける。
魔剣士「で、これがどうしたんだよ」
アルク「星儀を見りゃ分かるんだが、海繋がりで世界は一週できる。これが世界踏破って呼ばれる冒険者たちの夢なんだが……」
魔剣士「あぁ、それで?」
アルク「問題は極南と、極北の2つ。星儀のいっちばん北と、いっちばん南の中心に問題がある」
両手の人差し指をてっぺんと真下で、挟むように差す。
魔剣士「何が問題なんだよ」
アルク「フフ…、謎の強い魔力の歪みが観測されてるわけだ」
魔剣士「謎の強い魔力…だと?」
アルク「あぁ。謎の塊、研究者のロマンだ。しかしな、その観測の詳細を調査することは出来ないんだ。何故か分かるか?」
魔剣士「いや……」
指差していた手を開き、パーの状態にして極北地点をパン!と叩いた。
アルク「……危険なんだ。人が立ち入れる場所じゃない。北は入るだけで永久に凍り付く大地。南は触れるだけで骨と化す燃える砂。人が立ち入れる場所じゃないんだよ」
彼は目を見開き、面白そうに言った。
魔剣士「そ、それで…?」
アルク「魔力の観測地点。それは余りにも強力で、歪みの質までは判明している」
魔剣士「質って何だ」
アルク「質とは"どのような状態か"という意味だ」
魔剣士「どんな状態なんだ」
アルク「……吸い込んでいるんだ。大気に浮く魔力たちを」
魔剣士「吸い込むだって?」
アルク「あぁ、そうだ。つまりな……」
話によれば、星の頂点同士に強い魔力の吸い込みが発生し、それにより極北と極南に強烈な天候の変化をもたらしているという。
アルク「激しい魔力。天候の変化。滅ぶ肉体に、簡単に人間が立ち入れる場所じゃない」
魔剣士「そうことか。…だけど、俺なら魔法化した肉体で余裕でその地点まで行くことが出来るな」
アルク「セージの話通りの肉体なら、魔力の吸い込みに面白いことが起きるだろうな」
魔剣士「何?」
アルク「……世界は1つじゃない。この世界はまだまだ小さい世界ってことだ」
魔剣士「どういうことだ」
アルクは立ち上がり、店の棚に並んだ"サクラ"のブローチを投げた。
魔剣士「ん?」
アルク「……それはサクラだ。知ってるだろう」
魔剣士「あぁ、架空の花だろ?」
アルク「それは違う」
魔剣士「あ?」
アルク「サクラは実在している。ここではない、もう1つの世界…大陸と呼ばれる世界がある」
魔剣士「大陸?大地じゃなくてか?」
にやりと笑うアルク。
アルク「冒険者にとってのユートピアだ。……ゴブリン、イフリート、クラーケン、アンバー、イエティ、スライム。この世界には存在しない、未知なる生命体が大勢居る」
子供が楽しそうな玩具を見つめるような瞳で、キラキラとした表情を浮かべて言った。
魔剣士「冗談だろ?」
アルク「冗談じゃないんだな」
魔剣士「それが仮に本当だとしても、その証拠がない」
アルク「俺がいる」
魔剣士「…は?」
アルク「俺が、その別世界から来た住人だ」
魔剣士「……待て。何を言ってる?」
アルクは再びカウンターに戻ると、椅子に腰かけ、ピーナツを食べながら言った。
アルク「俺は元々、大陸側に住んでいた錬金術師だ」
魔剣士「嘘つけよ」
アルク「いいから聞け。あっちの世界でな、ある日・・冒険者たちの装備を造ることになってな。完成した時、店員の銃遣いがいたんだが、自分が試すと言ったんだ」
真剣な顔のアルク。どうにも、嘘というにはあまりにも真剣すぎた。
アルク「俺も調整のために調べたかったし、二人で猛雪山っていう雪山に登ろうって話になった時、他の店員二人が危険だから止めろと言ってきた」
魔剣士「それで」
アルク「止めるわけがない。俺だって絶対の自信があったしな。それで、それでも心配な二人は俺らについてきた。山小屋まで登って、そこでアイスタイガー相手に銃遣いが奮闘した」
魔剣士「……どうなったんだ」
アルク「俺の整備が強すぎた。猛雪山の強い魔力の歪みに反応し、俺たちは山小屋ごと吹き飛ばされたんだ」
魔剣士「は…」
アルク「その時の木板は、この店を建てた時に使ってる。ほれ、そこの棚の木とかもそうだ」
魔剣士「…これか」
傍にあった木棚。至って普通の木造りで、不思議な点は見当たらない。
魔剣士「冗談も大概にしろよ」
アルク「魔法に長けたお前なら分かるはずだ。触れてみろ」
魔剣士「あ…?」
渋々、言われたとおりに棚の木板に触れる。
すると、魔剣士の感知が"感じたことのない魔力"を認識した。この世界には感じたことがない、知らない感覚。
魔剣士「うっ!?」
アルク「……何か、感じたか?」
魔剣士「この木板…、何か仕掛けて……」
アルク「馬鹿言え。しかし、もう触れないと分からないまで魔力が薄れたか。店を造った当時は、相当に強かったんだがな……」
ぽいぽいとピーナツを食べながら言った。
魔剣士「待てよ…。この魔力…じゃあ、さっきの話は本当に……」
アルク「だから言ってるだろ。飛ばされた後、錬金術の技量を活かして、当時ランク制度が強かったこの国に来て、セージを拾った。あとはまぁ…育てて…色々あった」
魔剣士「…!」
セージの境遇に突っ込むことはなかった。
しかし、アルクの話が本当である可能性が出てきたことに、魔剣士はアルクに詰め寄る。
魔剣士「だとしたら、俺もその世界に行けるのか?」
アルク「可能性の一つだ。しかし、行ける可能性は高い」
魔剣士「どうすればいい」
アルク「……それがこのピーナツだと言ったんだ」
魔剣士「へ?」
そういえば、さっきも"ピーナツがキモだ"とか言っていた。
アルク「これは、向こう側の素材で造ったピーナツ製造機の道具さ」
魔剣士「それで?」
アルク「これの部品を渡す。それに染みついた魔力に、吸い込む魔力が反応して"ゲート"を作るかもしれん」
魔剣士「……可能性は」
アルク「さっきも言った通り、かなり高い」
魔剣士「…!」
魔剣士は顔を熱くする。まだ見ぬ新世界の話に、心を躍らせた。
―――だが。
アルク「大事な人には、挨拶をしておけよ」
魔剣士「ん?」
アルク「俺らのいた世界に行っても、戻る手段がない。あっちには、あっちの優秀な錬金術師がいるが、こっちに戻れるとは限らん」
魔剣士「えっ」
アルク「ま、"この世界に立場がなくなった"お前だからこそ、この選択を選ばせたんだろう。セージの奴は…な」
最後のピーナツを口に入れた。
魔剣士「セージ……」
アルク「そんじゃまぁ、部品解体の時間もあるから部品を渡すのは3日後にしよう」
魔剣士「3日……」
アルク「それまでに準備をしておけ。色々とあるんだろう」
魔剣士「準備…か……」
アルク「もう1度言う。お前はこの世界に、もう…戻ってこれないかもしれない。それを聞いて決断するんだな」
魔剣士「…」
アルクは小皿をカウンター下に入れると、ハっとした顔で「やべ、アイツに怒られる」と小皿を慌てて流し台に持って行った。
魔剣士(戻ってこれない…。世界に居場所がなくて…、だけど…決断とか…俺は…………)
気軽に考えていた"冒険の扉"が、予期せぬ形で一変した。
魔剣士は目を閉じて、今やるべきことが何かを、改めて見つめ直した。
覚悟を、決めると。
…………
……
…
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