魔剣士「お姫様の家出に付き合うことになった」【現在完結】

Naminagare-波流-

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第八章【東方大地】

8-16 闇夜の衝突「後編」

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魔剣士「白姫を離せアサシンッ!!!!ふっざけんじゃねぇぇぇえっ!!!」

白姫「あれ…、わ、私……?」

アサシン「なるほどな……」

猛竜騎士「目で追えない…縮地だと…………」

アサシンと衝突した魔剣士は、その強さに圧倒されていた。
どの魔法も、技術も、あらゆる手はアサシンに対して通用することはなかった。
更に、アサシンは瞬時の動きで馬車の中にいた"白姫"を奪い去り、魔剣士の作った氷のタワーの上で白姫の首に二本指の手刀をあてがう。
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魔剣士「ふっざけんな…!何をしやがったぁぁあっ!!!」
アサシン「縮地を知らないか?」
魔剣士「し、縮地だと!?」
アサシン「てっきり、目で追えるものかと思ったが……分からなかったか」
魔剣士「ぐっ……!?」

強がりを言いたいが、実際にアサシンの動きは全く持って追うことができなかった。

アサシン「ところで、この娘は白姫……か」
白姫「ふぇっ…!」

手刀の手をひらき、そっと頬に触れる。

魔剣士「て、てめぇ!白姫に手を出してみろ、本気でぶち殺すぞコラァ!!」
アサシン「お前に出来るのか?」
魔剣士「あ、当たり前だろうがぁ!や、やってやれねぇことは…ねぇ……!手を出したら…マジに…殺す……ッ!!!」
アサシン「……そんなことはどうでもいい。それより、また聞きたいことが出来た」
魔剣士「なんだコラァ!?」
アサシン「……答えないのか?」
魔剣士「……え、あ、いや…」

人質となった白姫を前に、答えないわけにはいかない。

アサシン「思い出した。お前らは、セントラルから旅立った賞金首の三人だな?」
魔剣士「何でそれを……!」
アサシン「一度は世界中に手配された身。知らないほうがおかしいと思うのだがな」
魔剣士「そ、そうか……」
アサシン「では次の質問だ。素直に答えろ」
魔剣士「こ、今度はなんだ……!」
アサシン「どうしてそこに寝ている砂の姫と一緒にいる。話を聞けば、お前らが砂の姫を助けたと聞くが」
魔剣士「うっ…」
アサシン「……答えられないのか」
魔剣士「い、いや…!成り行きで、その……」
アサシン「全て答えろ。嘘偽りを匂わせた瞬間、この首は飛ぶものと思え」
魔剣士「いっ……」
アサシン「二度目だ。話せ」
魔剣士「……だ、だから成り行きだ。砂国に用事があって訪れた東方大地で、奴隷馬車を見たから助けてやっただけだ!」
アサシン「……嘘はないように思える。分かった」
魔剣士「当たり前だ…!」

アサシンは少し考え込むと、次の質問を振る。

アサシン「……では、お前たちは砂国に何の用事がある?」
魔剣士「っ!」

核心へと迫る質問に、どう切り返すものかと悩む。
まさか氷山帝国との締結状や、闇魔法の会得方法がばら撒かれた可能性があるなどと話せるわけがない。もしも、世界戦争になるであろう未来を伝えることは、アサシン盗賊団にとって何よりの愉悦、世界にとって新たな敵が誕生するきっかけとなるやもしれないのだ。

魔剣士(嘘も…通じない相手だろう……)

観光だ、冒険だと言って嘘と見抜かれれば白姫の命はない。

魔剣士(……だけど、どのみち)

アサシンたちが望むであろう"世界戦争"を制止させるためと言っても、彼らにとって不利益になることと知り、暴れられてしまう。

魔剣士(これじゃ…八方ふさがり……か…)

何を答えても未来はなかった。魔剣士はガクリと肩を落とし、膝をつく…が。

白姫「ま、魔剣士ぃっ!」
魔剣士「白姫……」
白姫「……大丈夫。覚悟はあるんだって、いつでも思ってたから!」
魔剣士「お、お前!?」
アサシン「……ほう」

白姫はアサシンの腕の中で、薄らと笑い、それを口にした。

白姫「何度も何度も迷惑をかけちゃうけど、テイルさんのためにも…ダメだよ!私が犠牲になればいいだけなんだから……!」
魔剣士「そんなこと言うなとエルフの里の時にも!」
白姫「覚悟はいつでもある。お父様を敵だって思った時から、そういったはずだよ……」
魔剣士「し、白姫……!」

「お父様を敵に。」
その言葉に、アサシンがわずかに反応するが、周りの誰も気づく様子はない。

白姫「魔剣士なら、闇魔法でパッパッって倒しちゃうもん!」
魔剣士「や、やめろ…!そんなことを言うんじゃねぇよ!!」
白姫「いいんだ…!いいの……!」
魔剣士「よくねぇっ!!」

この事態に、黙っていた猛竜騎士はようやくその足を動かす。一歩前に歩み、アサシンに向かって予想外な言葉を発した。

猛竜騎士「……締結状だ」
―――と。

魔剣士「お、おいッ!?」
白姫「猛竜騎士さん!?」
アサシン「締結状…何のことだ」

興味をそそられたアサシンは、身を乗り出す。

魔剣士「オッサン、それは……!」
猛竜騎士「この状況で、言わない理由はない。お前だって、白姫を見捨てたくはないだろう?」
魔剣士「だけど、それじゃ世界が……!俺らだって……!」
猛竜騎士「違う。アサシンはきっと、この話を聞いて手は出さないはずだ」
魔剣士「何を根拠に!」
猛竜騎士「良いんだ。聞いていろ」
魔剣士「え、いや……」

氷のタワーの目の前でアサシンを見上げ、話を続ける。

猛竜騎士「今、世界は危機に瀕している…瀕しようとしているんだ」
アサシン「どういうことだ」
猛竜騎士「闇魔法の簡易たる会得方法が、セントラルへと向かった。既に王の手に渡った頃だろう」
アサシン「何……?」
猛竜騎士「元はといえば、俺たちのせいだ。西方大地で会得した闇魔法を、氷山帝国で研究材料とし、それがセントラルへと伝えられたんだ」
アサシン「……どうしてセントラルへ闇魔法の会得法が氷山帝国より伝わる?」
猛竜騎士「氷山帝国は既にセントラルの手中だった。何とか打破をした俺たちは、新たな指導者のもと、砂国へと締結状を持ってきたというわけだ」

アサシン「―――なるほど」
アサシン「あの王のことだ。恐怖政治のため、闇魔法による世界戦争が勃発する可能性が出てきたために砂国へ共同戦線の締結状を…そういうことか」

猛竜騎士「……察しが良くて助かるよ」
アサシン「ふむ……」

全てを話した猛竜騎士。魔剣士と白姫は目を丸くしてそれを聞いていた。

魔剣士「お、オッサンッ!!」
猛竜騎士「何だ?」
魔剣士「白姫が命を張って守ろうとした情報なのに、ア、アンタは……!!」
猛竜騎士「あのまま白姫が殺されて良かったのか?」
魔剣士「そうは言わねぇ!だけど、セージの想いとか、す、全て…無駄に……!あんな簡単に、世界が…世界を……ッ!!」
猛竜騎士「……いいから落ち着け」
魔剣士「落ち着いていられるかっ!!」
猛竜騎士「落ち着け。落ち着いて、アサシンを見てみろ」
魔剣士「あァ!?」

ふと、アサシンを見る。すると、彼はタワーのてっぺんで、意外にもそれに"悪くない"反応を示していた。

アサシン「セントラル…世界戦争……。それと…戦いか……」
魔剣士「……え?」

寡黙な雰囲気だったアサシンの態度が変わったことは一目瞭然であった。

アサシン「…………面白い、な」
魔剣士「な、何?」
アサシン「少なくとも、この姫と砂の姫。お前の闇魔法の状況から、それが嘘ではないと分かった」
魔剣士「……お、おう?」
アサシン「お前たちはセントラルの世界戦争に赴くつもりなのか。このセントラルの姫と共に、覚悟を持って」
魔剣士「ま、まぁ……」
アサシン「……そうか。分かった」
魔剣士「……おう?」
アサシン「猶予をやろう。お前たちのその"平和への欲"が本物ならば、それを見せるが良い」
魔剣士「ど、どういうことだ……?」
アサシン「砂国、王城の王室にて待つ。それまでこの二人の姫の命、預かっておく」
魔剣士「は!?」

アサシンが指をパチンと鳴らすと、話の間ずっとひざまずいていた盗賊団の一人、ミハリは気絶したテイルを抱えた。

魔剣士「お、おいっ!!?」
アサシン「案ずるな。今は手を出さないと今は約束をしておこう」
魔剣士「そういう問題じゃねぇだろうが!ふ、ふざけんじゃねぇっ!!」
アサシン「愛する欲か、平和への欲か、強さの欲か。お前の覚悟と欲を見せるがいい」
魔剣士「な、何を!」
アサシン「……散しろ」

その号令を口にした瞬間、辺りにいた殺気、闇の気配は一瞬にして消え去った。
それはつまり、アサシン盗賊団の一切がその場から消えたということである。

―――無論、二人の姫も一緒に。

魔剣士「なっ……!」
猛竜騎士「魔剣士……」
魔剣士「ざ…ざけんな…!おい……!」
猛竜騎士「魔剣士、落ち着け」
魔剣士「テ、テメェのせいで……!白姫…は……!!」

全身を震わせる魔剣士は、今にも猛竜騎士に対し剣を振り下ろす勢いだった。

猛竜騎士「落ち着けと言うのが分からんのか。アサシンも考える時間が欲しかったということだ」
魔剣士「考える時間って何だコラ……!」
猛竜騎士「アサシン盗賊団が滅ぼされた理由は何だ?」
魔剣士「知るか…!殺す…ぞ……猛竜騎士…!」
猛竜騎士「……数十年前。"セントラル"の十字軍によって滅されたんだ」
魔剣士「!!」

―――そう。
かつて、アサシン盗賊団を滅ぼしたのは現セントラル王の父親であり白姫の祖父、"グラン"によって統制された"セントラル"の十字軍によるものだった。

猛竜騎士「だから、アイツらもその恨みを晴らすチャンスだと考えたんだ」
魔剣士「…!」
猛竜騎士「だが、戦争の世界となるのも悪くはない。だからすぐに答えは出せないと思い、考える時間のために一度引き上げたんだ」
魔剣士「…だからと言って、白姫を危険に合わせるわけにはいかねぇだろうが!!」
猛竜騎士「じゃあ聞くが、ここでお前が村を破壊する勢いで暴れたとして…お前がアイツに勝てたか?俺がアイツに勝てたか?」
魔剣士「う、くっ…!?そ、それは……!」

言わなくても分かってる。
恐らく、無理だろう。……いや、絶対に無理だった。

猛竜騎士「俺らが暴れて殺されれば、それこそ白姫は一人になる。これが最善の策じゃなかったら、どうしたというんだ?」
魔剣士「……くっそ…が…!」
猛竜騎士「少なくとも、彼らが砂国の王城で待つといったのは本当だろう。俺らも、そこへ急ぐしかない」
魔剣士「……分かったよ」
猛竜騎士「それにもしかしたら、この戦争に強い味方が出来るんじゃないかとも…そう思ってたりもするがな」
魔剣士「は…?オッサン、もしかして…アサシンを仲間にしようとしてんのか……?」
猛竜騎士「そう簡単に仲間になる連中じゃないだろう。テイルにとっては仇に近いし、そう上手くはいかん」
魔剣士「……当然だろうが」
猛竜騎士「とにかく成るように成る。それだけだ。今は砂国へ向かうしかないだろう?」
魔剣士「……分かったよ。行くしかねぇんだな…!」
猛竜騎士「その通りだ」
魔剣士「く、くそが……!」

再び、身体を震わす魔剣士。

猛竜騎士「…どうした、怖いのか。お前らしくもない」
魔剣士「あァ!?誰がだよ!!」
猛竜騎士「随分と、震えてるなと思ってな」
魔剣士「…武者震いだよ」
猛竜騎士「ほう?」

魔剣士「クソが…クソがぁぁ……!」
魔剣士「アサシン、次は俺の拳でテメェの顔面…弾き飛ばしてやるからな!!コラァァアアッ!!!」

その声は既に遥か先の道、気絶した白姫を抱き抱え、黒馬に跨い砂国へと走るアサシンの耳へと届いていた。

アサシン「……その欲、面白く思うぞ」
アサシン「俺に対する熱意の強さ、その欲は強く感じた。あとは行動を見せてみるがいい……」

…………
……


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