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第八章【東方大地】
8-27 ダメージ
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―――現実世界、王室。
魔剣士が完全に葬られた、葬ったものと思っていたアサシンと猛竜騎士は、睨み合っていた。
アサシン「さて、終わりだ」
猛竜騎士「終わったのか…。何もかも……」
アサシン「砂の姫、覇王の姫、共に滅ぶが良い。闇の使い手のもとへ、せめてもの情けだ」
猛竜騎士「……」
アサシン「一瞬で屠ろう」
猛竜騎士「…っ」
"終わった"
魔剣士を失い、これ以上惨めな最期を遂げることはない。
せめて、それを受け入れて、素直な死を受け入れよう。
猛竜騎士は武器を捨て、白姫とテイルに頭を下げると、正座し、アサシンへ振り返り直した。
アサシン「諦めるか」
猛竜騎士「……アサシン、これから死に行くものの頼みを聞いてはくれないか」
アサシン「言うだけ聞こう」
猛竜騎士「すまない。せめて、俺の命は自由に奪うが良い。しかし、この二人は丁重に生かしてくれないか?」
アサシン「それは我がままというものだ」
猛竜騎士「俺の最期の欲だ。これから死に行く者の頼みとして、この欲を聞いてくれる事は出来ないか」
アサシン「……最期の欲か」
彼にとって、"欲"は生きている意志そのもの。その話題に、食いついた彼はつい暴風化した身体を解き、"人間"へと戻る。
しかし、これが大いなる油断になるとは思わなかっただろう。
アサシン「お前の欲に興味はない。あの若き使い手の命が潰えた今、お前らに価値はない」
猛竜騎士「最期の望み、欲に答えられないほどお前は小さい人間なのか?」
アサシン「黙れ」
猛竜騎士「…」
アサシン「俺にどうこう意見出来る立場か?」
猛竜騎士「……すまない、失言だったな」
アサシン「やはり、消えてもらう他はない」
猛竜騎士「…っ」
再び、片腕を上げ、猛竜騎士へと狙いを定める。
猛竜騎士「…」
覚悟を決め、目を瞑る。
アサシン「一瞬で楽にしてやることが、お前たちへの手向けだ」
一撃で楽になれるよう、今までよりも強く魔力を込める。全てが終わる。その時を待つ猛竜騎士。
アサシン「…」
猛竜騎士「…」
だが、暴風魔法を具現化する寸前。それは、起きる。
魔剣士が投げた、悪あがきにも見えた片手剣。
氷結属性により天井へと張り付いていたそれは、先ほど、魔剣士がアサシンの攻撃を受ける際に突っ込んだ時のバラけた身体の一部との"奇跡"が起こる。
アサシンの背側の床に落ちていた、魔剣士の"片腕"が、火炎の昇華のように燃え上がるように消えた際、天井に張り付いていた氷結を溶解させたのだ。
"シュワッ……"
氷が溶け、剣が落ちる。
そして、闇魔法のねっとりとした魔剣士の片腕から飛散した魔力へ"着火剤"のように掠った。
氷結魔法に固められていた片手剣には、充分たる魔剣士の魔力が宿っていた。
だから、本体の一部の魔力に触れた時、かつて北方大地の研究所で見せたように――…。
魔剣士「……ッ!!」
魔法として、魔法化した、魔剣士の身体が、復活するには充分過ぎるエネルギーだった。
魔剣士「ア…サ……シンッ―――――ッ!!!」
アサシン「何っ…!?」
猛竜騎士「……魔剣士!!?」
魔剣士の存在に気付いた時には遅く、自身を魔法化するのも間に合わず、火炎化していた強烈な"火炎剣"が肩から腰にかけて斬撃を浴びた。
アサシン「ゆ、油断ッ……!」
大いなる油断。
アサシン「だが、これしき……」
即座に暴風化し、治癒を行おうと動く。
しかし、準備が整っていた魔剣士の技の速度に追いつくことが出来なかった。
魔剣士「あっ…あぁぁぁあああァァアッ!!!!」
切り裂いた傷に、火炎化した腕で触れて、魔力を込める。
零距離での大爆発が起き、アサシンの身体は回転しながら吹き飛ばされた。飛び散る身体、苦痛に顔を歪ませるアサシンだったが、半身が魔法化していたためか、復元する様子を見せる。
魔剣士「油断はしねェ!!終わらせるんだよォォッ!!」
今度は剣を握り、吹き飛んだ身体のパーツを更に粉微塵にするよう振りかざす。
闇魔力の込められた剣術に、アサシンの身体はそれに耐えることが出来ない。
魔剣士「この野郎がぁぁあああっ!!」
散りのようになってしまった肉体だったが、彼の属性は"風"。
微塵となったように見えたが、どんな細かくとも僅かな魔力があれば……。
アサシン「無駄だ…!」
突如、部屋を覆うような風が吹いたかと思うと、魔剣士の背後に"アサシン"が復活して現れる。まだ…終わらないのか。
魔剣士「ちィッ!!」
危うい!即座に振り向き、剣を振う。
風と闇魔法の無敵たる力に意味のないことだと思ったが、何故か魔剣士の剣を"物理的"に防いだアサシンは圧され、後ずさりした。
アサシン「ぐっ…!?」
魔剣士「おっ?」
予想外な反応に、魔剣士の攻撃が止まる。すると、何故彼が怯んだのかはすぐに分かった。
アサシン「うぐっ…!ゲホッ!!」
彼の口から、黄金の魔力が吐き出された。
また、治りきっていない肩から腰の傷口からは、血液ではなく黄金魔力"が滴り落ちていたのだ。
魔剣士(……闇魔法同士の衝突で、俺の斬撃と拳で爆発させた時に入れた闇魔力が増大過ぎて、奴の体内でダメージを与えたのか…!)
アサシン「き、貴様ァ……!」
魔剣士「……無敵だと思った身体だが、一定量以上の魔力には耐えられないらしいな…!?」
アサシン「どうやって姿を消していた…!気配も何もかも、完全に死んでいたはずだ……!」
魔剣士「ククッ、言わなかったか?」
アサシン「何をだ……!」
魔剣士「俺は不死身なんだよ。何度殺されても、死なない存在なの。知ってたはずでしょーが、ハハハハッ!!」
魔剣士(割とシャレにならないシャレなんだがな……)
大笑いし、膝をついたアサシンを見下す。
また、想定外な事態、予想以上のダメージに、アサシンの静かな口調は失われていた。
アサシン「ふざけるな…!俺がこんな……!」
アサシン「……うっ!うぐっ…!ゲホッ…!ゴホゴホッ!!」
アサシンの身体から止めどなく溢れる、黄金の魔力。
人間状態の彼に斬撃を加え、半ば魔力化していたところへ魔剣士の大爆発を受けたことで、彼の体内に"攻撃"を行う魔力が蓄積されたことがダメージとなっているようだった。
魔剣士「…」
その様子を見て無言で見下ろしていた魔剣士。ふと、そこへ猛竜騎士が近づいてきたことが分かると、「よぉ、オッサン」とニコやかな笑みを見せた。
猛竜騎士「魔剣士、お前……!」
魔剣士「どうやら生き返っちまったみてぇだ」
猛竜騎士「生きてるんだよな…!お前、生きてるんだよな!?」
魔剣士「やめろ、ホモくせぇ」
猛竜騎士「どうしてだ…!お前を察知することも出来なかったのは、本当に死んでいたからじゃないのか!?」
魔剣士「マジで俺は不死身なんだよなぁ……。まっ、ウィッチのおかげで助かっちまったって言うか……」
猛竜騎士「何だと!?」
魔剣士「俺の身体に宿した生命の幹、そこにウィッチの記憶の意識が眠ってたんだ。精神世界とやらで、喝を入れられちまった」
猛竜騎士「お前の中に…ウィッチが……生きているのか……?」
魔剣士「記憶の意識であって本人じゃねぇとか言ってたけど、あのウザさは間違いなくウィッチだったわ」
猛竜騎士「そうか…。アイツはやっぱり、見守っていてくれたんだな……」
魔剣士「感動するところかもしれねぇけど、俺にとっては見られたくないところまで全部見られてたみたいで最悪だったぜ……」
猛竜騎士「そうか、そうか……」
魔剣士「それと、ウィッチとの出会いで、面白いことも知っちまったぜ」
猛竜騎士「面白いことだと?」
魔剣士はアサシンの首に剣を突きつける。
アサシン「…ッ!」
魔剣士「コイツ、アサシンじゃねぇよ」
猛竜騎士「……アサシンじゃないだと?」
魔剣士「いや、正確に言えばアサシンではあるんだが……」
猛竜騎士「どういう…意味だ……?」
アサシン「…」
魔剣士「……数十年前、十字軍との決戦で敗北したアサシンはさ、本当は死んでいたんだよ」
魔剣士「それを看取った若い団員がいて、そいつに命を懸けて与えたのが闇魔法だったってわけだ」
猛竜騎士「……な、なるほど!そうだったのか…。それをウィッチに教えられたのか?」
魔剣士「アサシンの魔力を受けて、その中に眠ってた記憶のアサシンと会ったんだ。それを見たウィッチが考察した結果だが……」
予測とはいえ、その答えで間違いはないだろう。魔剣士は憐れむような目で、アサシンを見つめた。
アサシン「その目で…俺を見るな……!」
魔剣士「お前は悲しい奴だよ。確かにお前は精神的な話で言えばアサシンの人格が乗っ取ってるのと一緒だが、本物のアサシンはもっと男らしかったぜ……」
アサシン「ッ!!」
魔剣士「人格、意識、その口調は似てはいるが本人には及ばない。本当のお前は、本物のアサシンに精神世界で抗い続けているんじゃないのか?」
アサシン「……違う、違う、違う…!俺はアサシンだ…!俺がアサシンだ!」
魔剣士「違う!お前は乗っ取られているだけだ……!」
アサシン「ち、違う…!」
魔剣士「じゃあ何で若さに対してあそこまで激怒したんだ!その身体になって、死ねないことを恨んでいたんじゃないのか!」
猛竜騎士(…!)
アサシン「そ、それは…!」
頭を抱え、悶える様子を見せる。
やはり、彼の中には二人の人格が芽生えているのかもしれない。
魔剣士「だけど、終わらせるためには……」
"チャキンッ……"
構えていた剣に、黄金の魔力を込める。弱っている今、これ以上のチャンスはない。
魔剣士「同じ闇魔法の使い手として、俺が殺してやる」
アサシン「…」
魔剣士「殺すしかない」
アサシン「……やっと、死ねるのか?」
魔剣士「……何?」
アサシン「違う、やめろ。俺はまだ…死ねない……」
魔剣士「!」
アサシン「殺してくれ。…違う、死ねない。…違う、助かりたい。…違う、違う、違う、違う!」
魔剣士「どうした……?」
アサシン「違う、違う、違う違う違う違う違う違うっ!!!」
魔剣士「……不味いッ!?」
何か危険を感じた魔剣士は、剣を勢いよく振り下ろし、その首を刎ねた…刎ねるはずだったのに。
"…ガシッ!"
魔剣士「うっ!?」
寸でのところで、剣は止められる。
アサシン「……俺は、死ねない。セントラルを掌握する迄…」
"ザワッ……!"
魔剣士「こ、この…雰囲気は……まさか……」
―――遅かったのか。
今、アサシンの意識が全てを飲み込んだようだった。
―――現実世界、王室。
魔剣士が完全に葬られた、葬ったものと思っていたアサシンと猛竜騎士は、睨み合っていた。
アサシン「さて、終わりだ」
猛竜騎士「終わったのか…。何もかも……」
アサシン「砂の姫、覇王の姫、共に滅ぶが良い。闇の使い手のもとへ、せめてもの情けだ」
猛竜騎士「……」
アサシン「一瞬で屠ろう」
猛竜騎士「…っ」
"終わった"
魔剣士を失い、これ以上惨めな最期を遂げることはない。
せめて、それを受け入れて、素直な死を受け入れよう。
猛竜騎士は武器を捨て、白姫とテイルに頭を下げると、正座し、アサシンへ振り返り直した。
アサシン「諦めるか」
猛竜騎士「……アサシン、これから死に行くものの頼みを聞いてはくれないか」
アサシン「言うだけ聞こう」
猛竜騎士「すまない。せめて、俺の命は自由に奪うが良い。しかし、この二人は丁重に生かしてくれないか?」
アサシン「それは我がままというものだ」
猛竜騎士「俺の最期の欲だ。これから死に行く者の頼みとして、この欲を聞いてくれる事は出来ないか」
アサシン「……最期の欲か」
彼にとって、"欲"は生きている意志そのもの。その話題に、食いついた彼はつい暴風化した身体を解き、"人間"へと戻る。
しかし、これが大いなる油断になるとは思わなかっただろう。
アサシン「お前の欲に興味はない。あの若き使い手の命が潰えた今、お前らに価値はない」
猛竜騎士「最期の望み、欲に答えられないほどお前は小さい人間なのか?」
アサシン「黙れ」
猛竜騎士「…」
アサシン「俺にどうこう意見出来る立場か?」
猛竜騎士「……すまない、失言だったな」
アサシン「やはり、消えてもらう他はない」
猛竜騎士「…っ」
再び、片腕を上げ、猛竜騎士へと狙いを定める。
猛竜騎士「…」
覚悟を決め、目を瞑る。
アサシン「一瞬で楽にしてやることが、お前たちへの手向けだ」
一撃で楽になれるよう、今までよりも強く魔力を込める。全てが終わる。その時を待つ猛竜騎士。
アサシン「…」
猛竜騎士「…」
だが、暴風魔法を具現化する寸前。それは、起きる。
魔剣士が投げた、悪あがきにも見えた片手剣。
氷結属性により天井へと張り付いていたそれは、先ほど、魔剣士がアサシンの攻撃を受ける際に突っ込んだ時のバラけた身体の一部との"奇跡"が起こる。
アサシンの背側の床に落ちていた、魔剣士の"片腕"が、火炎の昇華のように燃え上がるように消えた際、天井に張り付いていた氷結を溶解させたのだ。
"シュワッ……"
氷が溶け、剣が落ちる。
そして、闇魔法のねっとりとした魔剣士の片腕から飛散した魔力へ"着火剤"のように掠った。
氷結魔法に固められていた片手剣には、充分たる魔剣士の魔力が宿っていた。
だから、本体の一部の魔力に触れた時、かつて北方大地の研究所で見せたように――…。
魔剣士「……ッ!!」
魔法として、魔法化した、魔剣士の身体が、復活するには充分過ぎるエネルギーだった。
魔剣士「ア…サ……シンッ―――――ッ!!!」
アサシン「何っ…!?」
猛竜騎士「……魔剣士!!?」
魔剣士の存在に気付いた時には遅く、自身を魔法化するのも間に合わず、火炎化していた強烈な"火炎剣"が肩から腰にかけて斬撃を浴びた。
アサシン「ゆ、油断ッ……!」
大いなる油断。
アサシン「だが、これしき……」
即座に暴風化し、治癒を行おうと動く。
しかし、準備が整っていた魔剣士の技の速度に追いつくことが出来なかった。
魔剣士「あっ…あぁぁぁあああァァアッ!!!!」
切り裂いた傷に、火炎化した腕で触れて、魔力を込める。
零距離での大爆発が起き、アサシンの身体は回転しながら吹き飛ばされた。飛び散る身体、苦痛に顔を歪ませるアサシンだったが、半身が魔法化していたためか、復元する様子を見せる。
魔剣士「油断はしねェ!!終わらせるんだよォォッ!!」
今度は剣を握り、吹き飛んだ身体のパーツを更に粉微塵にするよう振りかざす。
闇魔力の込められた剣術に、アサシンの身体はそれに耐えることが出来ない。
魔剣士「この野郎がぁぁあああっ!!」
散りのようになってしまった肉体だったが、彼の属性は"風"。
微塵となったように見えたが、どんな細かくとも僅かな魔力があれば……。
アサシン「無駄だ…!」
突如、部屋を覆うような風が吹いたかと思うと、魔剣士の背後に"アサシン"が復活して現れる。まだ…終わらないのか。
魔剣士「ちィッ!!」
危うい!即座に振り向き、剣を振う。
風と闇魔法の無敵たる力に意味のないことだと思ったが、何故か魔剣士の剣を"物理的"に防いだアサシンは圧され、後ずさりした。
アサシン「ぐっ…!?」
魔剣士「おっ?」
予想外な反応に、魔剣士の攻撃が止まる。すると、何故彼が怯んだのかはすぐに分かった。
アサシン「うぐっ…!ゲホッ!!」
彼の口から、黄金の魔力が吐き出された。
また、治りきっていない肩から腰の傷口からは、血液ではなく黄金魔力"が滴り落ちていたのだ。
魔剣士(……闇魔法同士の衝突で、俺の斬撃と拳で爆発させた時に入れた闇魔力が増大過ぎて、奴の体内でダメージを与えたのか…!)
アサシン「き、貴様ァ……!」
魔剣士「……無敵だと思った身体だが、一定量以上の魔力には耐えられないらしいな…!?」
アサシン「どうやって姿を消していた…!気配も何もかも、完全に死んでいたはずだ……!」
魔剣士「ククッ、言わなかったか?」
アサシン「何をだ……!」
魔剣士「俺は不死身なんだよ。何度殺されても、死なない存在なの。知ってたはずでしょーが、ハハハハッ!!」
魔剣士(割とシャレにならないシャレなんだがな……)
大笑いし、膝をついたアサシンを見下す。
また、想定外な事態、予想以上のダメージに、アサシンの静かな口調は失われていた。
アサシン「ふざけるな…!俺がこんな……!」
アサシン「……うっ!うぐっ…!ゲホッ…!ゴホゴホッ!!」
アサシンの身体から止めどなく溢れる、黄金の魔力。
人間状態の彼に斬撃を加え、半ば魔力化していたところへ魔剣士の大爆発を受けたことで、彼の体内に"攻撃"を行う魔力が蓄積されたことがダメージとなっているようだった。
魔剣士「…」
その様子を見て無言で見下ろしていた魔剣士。ふと、そこへ猛竜騎士が近づいてきたことが分かると、「よぉ、オッサン」とニコやかな笑みを見せた。
猛竜騎士「魔剣士、お前……!」
魔剣士「どうやら生き返っちまったみてぇだ」
猛竜騎士「生きてるんだよな…!お前、生きてるんだよな!?」
魔剣士「やめろ、ホモくせぇ」
猛竜騎士「どうしてだ…!お前を察知することも出来なかったのは、本当に死んでいたからじゃないのか!?」
魔剣士「マジで俺は不死身なんだよなぁ……。まっ、ウィッチのおかげで助かっちまったって言うか……」
猛竜騎士「何だと!?」
魔剣士「俺の身体に宿した生命の幹、そこにウィッチの記憶の意識が眠ってたんだ。精神世界とやらで、喝を入れられちまった」
猛竜騎士「お前の中に…ウィッチが……生きているのか……?」
魔剣士「記憶の意識であって本人じゃねぇとか言ってたけど、あのウザさは間違いなくウィッチだったわ」
猛竜騎士「そうか…。アイツはやっぱり、見守っていてくれたんだな……」
魔剣士「感動するところかもしれねぇけど、俺にとっては見られたくないところまで全部見られてたみたいで最悪だったぜ……」
猛竜騎士「そうか、そうか……」
魔剣士「それと、ウィッチとの出会いで、面白いことも知っちまったぜ」
猛竜騎士「面白いことだと?」
魔剣士はアサシンの首に剣を突きつける。
アサシン「…ッ!」
魔剣士「コイツ、アサシンじゃねぇよ」
猛竜騎士「……アサシンじゃないだと?」
魔剣士「いや、正確に言えばアサシンではあるんだが……」
猛竜騎士「どういう…意味だ……?」
アサシン「…」
魔剣士「……数十年前、十字軍との決戦で敗北したアサシンはさ、本当は死んでいたんだよ」
魔剣士「それを看取った若い団員がいて、そいつに命を懸けて与えたのが闇魔法だったってわけだ」
猛竜騎士「……な、なるほど!そうだったのか…。それをウィッチに教えられたのか?」
魔剣士「アサシンの魔力を受けて、その中に眠ってた記憶のアサシンと会ったんだ。それを見たウィッチが考察した結果だが……」
予測とはいえ、その答えで間違いはないだろう。魔剣士は憐れむような目で、アサシンを見つめた。
アサシン「その目で…俺を見るな……!」
魔剣士「お前は悲しい奴だよ。確かにお前は精神的な話で言えばアサシンの人格が乗っ取ってるのと一緒だが、本物のアサシンはもっと男らしかったぜ……」
アサシン「ッ!!」
魔剣士「人格、意識、その口調は似てはいるが本人には及ばない。本当のお前は、本物のアサシンに精神世界で抗い続けているんじゃないのか?」
アサシン「……違う、違う、違う…!俺はアサシンだ…!俺がアサシンだ!」
魔剣士「違う!お前は乗っ取られているだけだ……!」
アサシン「ち、違う…!」
魔剣士「じゃあ何で若さに対してあそこまで激怒したんだ!その身体になって、死ねないことを恨んでいたんじゃないのか!」
猛竜騎士(…!)
アサシン「そ、それは…!」
頭を抱え、悶える様子を見せる。
やはり、彼の中には二人の人格が芽生えているのかもしれない。
魔剣士「だけど、終わらせるためには……」
"チャキンッ……"
構えていた剣に、黄金の魔力を込める。弱っている今、これ以上のチャンスはない。
魔剣士「同じ闇魔法の使い手として、俺が殺してやる」
アサシン「…」
魔剣士「殺すしかない」
アサシン「……やっと、死ねるのか?」
魔剣士「……何?」
アサシン「違う、やめろ。俺はまだ…死ねない……」
魔剣士「!」
アサシン「殺してくれ。…違う、死ねない。…違う、助かりたい。…違う、違う、違う、違う!」
魔剣士「どうした……?」
アサシン「違う、違う、違う違う違う違う違う違うっ!!!」
魔剣士「……不味いッ!?」
何か危険を感じた魔剣士は、剣を勢いよく振り下ろし、その首を刎ねた…刎ねるはずだったのに。
"…ガシッ!"
魔剣士「うっ!?」
寸でのところで、剣は止められる。
アサシン「……俺は、死ねない。セントラルを掌握する迄…」
"ザワッ……!"
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―――遅かったのか。
今、アサシンの意識が全てを飲み込んだようだった。
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