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第九章【セントラル】
9-8 静かな時間(2)
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――― 一方、猛竜騎士側。
猛竜騎士「……入るに入れないだろうが、さすがに」
ブリレイ「ハハ、若いということです。僕の部屋でしばらくはくつろいで下さい」
先ほど外出していた二人は、部屋に戻ろうとしたところで二人の気配と声を聴いてしまい、一度ブリレイの部屋に腰を降ろしていた。
猛竜騎士「……しかし、目の前であのようにされるといくら俺でも参っていう話だ」
ブリレイ「あの歳で恋に興味を持たない理由がありませんよ」
猛竜騎士「そうかもしれんがな……」
ブリレイ「今が楽しい時だと思いますので」
猛竜騎士「……それは分かっているが、二人は"それ"を分かっているのか」
ブリレイ「それ、ですか?」
猛竜騎士「現実は重い。世界が平和になったとしても、アイツらは……」
ブリレイ「……結ばれない存在、ですか」
猛竜騎士「…」
いずれ訪れるであろう身分の格差は、二人にとって耐えがたいものとなる。戦いの終わりは旅の終わり。旅の終わりは、二人にとっての別れとなることを意味していた。
ブリレイ「……確かに、そうかもしれませんけど、ですが…」
猛竜騎士「ん……」
ブリレイはニッコリと笑いながら言う。
ブリレイ「二人は冒険者ですから、壁を越えることに努力は惜しまないと思いますよ」
猛竜騎士「何?」
ブリレイ「っと、申し訳ありません生意気に。ですが、若者同士、出会ったことを運命としていければ良いなと…そう思ったんです」
猛竜騎士「どういうことだ……?」
ブリレイ「フフ、ですから冒険者である二人にとって、格差なんて壁を越えて結ばれる日が来るのではないかと言うことです」
猛竜騎士「……っ!」
―――なるほど。
全く持って、冒険者という気質を忘れるところだった。自分が応援せず、どうするのか。
猛竜騎士「……確かにその通りかもしれないな。仲間である俺が信じてやらなくて、どうするってことか……」
ブリレイ「えぇ、応援してあげることが一番です。それに、猛竜騎士さんも知らずにそうなってほしいと願っているんじゃないでしょうか?」
猛竜騎士「む……」
ブリレイ「こんな風に気づかないように二人の時間を作ってあげていることが、何よりの証拠だと思いますよ」
猛竜騎士「あ、あぁ……」
そう言われると、確かにそうかもしれない。この男は本当に人の心にズカズカと入り込む。
ブリレイ「……さてと、どうしましょうか」
猛竜騎士「何だ?」
ブリレイ「折角の二人の時間、あまり早過ぎるのは失礼でしょう」
猛竜騎士「とは言うがな、所詮まだそういう意味は持たないだろう。いや、持たれても困るんだが」
ブリレイ「まさか、興味を持たない理由はありませんよ」
猛竜騎士「まだまだ子どもだ」
ブリレイ「そう思っているのは…。いや、既に大事に想っている証拠だとは思いますが……」
猛竜騎士「……んん?」
ブリレイ「人は不思議です。ひと時の安らぎが、繋がりが、温かいものだと知ることが、深層的な部分で気づいてしまうものだと」
猛竜騎士「生々しい言葉はやめろ…。ちょっとした親の気分になる、それは……」
ブリレイ「フフッ、親のようなものだと思いますが」
猛竜騎士「例え俺はそう思っていたとしても、アイツらにとっては俺は兄貴分な程度だ。親とは到底思えないだろうさ」
ブリレイ「案外、そう考えている本人とは異なるものだと思いますよ」
猛竜騎士「バカ言え、俺はそこまで歳をくっちゃいないつもりだ」
ブリレイ「どちらも本当の親を失っている存在に、長い旅を通して親に似た感情を抱くのはなんら不思議ではないと…そう思いますが」
猛竜騎士「あの二人と旅をしてきたからこそ分かるんだ。俺は兄貴分であって、親じゃない……というか、そんな話じゃないだろうが!」
ブリレイ「あっ…、そ、そうでしたねすみません……!」
ハハハと笑いながら、ブリレイは外出した時に買ってきた袋をドンと机に置いた。
ブリレイ「お詫びというわけではないですが、少し早い気もしますが時間を作ってあげましょうよ」
猛竜騎士「何だこれは…?」
ブリレイ「袋詰めの葡萄酒ですよ。魔法衣を使ったもので、量もそれなり」
猛竜騎士「いつの間に買ってきたんだこんなもの……」
ブリレイ「も、申し訳ない」
猛竜騎士「やれやれ…」
元々、猛竜騎士たちが外に出たのは冒険者が集う村に張り出される朝一の"依頼掲示板"を受けに行ったからのことだった。
ブリレイの監視は当たり前のこと、魔剣士の二日酔いを懸念して、依頼の中に肉体疲労の回復効果をもたらす素材があれば軽く取ってやろうと、朝早くから出かけていたのだ。
ブリレイ「どのみち、猛竜騎士さんの用意された別の二日酔いの治癒素材で頭痛は回復していたようですし」
猛竜騎士「だからといって、朝から乾杯をするか?」
ブリレイ「時間はありますよ」
猛竜騎士「お前、一応はセントラルと氷山帝国を繋ぐ遣使なのに、のんびりしていていいのか…?」
ブリレイ「嵐があったわけですし、その辺は問題ないかと。……いえ、あまり遅すぎるのは両国にとって良くないんですが」
猛竜騎士「おいおい、それじゃ……」
ブリレイ「しかし以前に数日の遅れをしましたが、問題は無く。それに、若い冒険者の時間を邪魔するほど…野暮じゃありません。仮にもあの二人は、世界を担う存在なのですから」
猛竜騎士「……そうか。…いや、しかしだな…うんむむ…!」
ブリレイ「ハハハ、猛竜騎士さんの考えはすっかり親のそれと一緒じゃないですか」
猛竜騎士「な、何?」
ブリレイ「冒険者らしくなら、自由を掲げてこそ。これからの未来に、ひと時の安らぎも与えることが親の仕事だと思いますよ」
ブリレイは二つ酒袋のうち一つを"ドン"と猛竜騎士の前に置くと、別の袋から燻したピーナツと干された魚を並べた。
猛竜騎士「……朝から酒盛りか。嫌いではないが…」
ブリレイ「時間を潰すには、一番よろしいかと。酔う人間なら別ですが、嗜む程度なら問題はないかなと思いまして」
猛竜騎士「フン…」
猛竜騎士は酒袋をつかむと、机の中央上で「…んっ」、ブリレイに乾杯の合図を出す。
ブリレイ「ありがとうございます」
猛竜騎士「仕方なかろう。…ただ、昼までだ。決してのんびりし過ぎることが出来ないというのは承知だろう?」
ブリレイ「分かっております。僕は二人のお時間を作ってあげたかっただけですから」
猛竜騎士「どうなっても知らんからな」
ブリレイ「ハハ…、それでは失礼して……」
"乾杯……"
宿部屋で始まった小さな飲み会。
昨晩ほどの豪勢さは無かったが、ブリレイとの会話にわずかな心を許し始めていた猛竜騎士は、お互いの若い頃の話で盛り上がり、自分の部屋へ戻ったのは14時を過ぎてからだった。
………
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――そして約4時間後、14時過ぎ。
つい話し込み過ぎた猛竜騎士はそろそろ次の村へと向かうため、魔剣士の部屋をノックして中を確かめたところだった。
猛竜騎士「……魔剣士、入るぞ」
別段、普通に入ることもできたが、ブリレイの会話でどうにも突然に部屋へ入るのが申し訳なかったらしい。
魔剣士「……うーい」
すると、中から魔剣士ののっそりとした声。
猛竜騎士は「そろそろ出発するぞ」と平常を装いつつも緊張気味にドアを開けた。
……だが。
魔剣士「……オッサン、おっせぇぞオラァーッ!!」
猛竜騎士「ぬぐぅあっ!?」
油断していたためか、魔剣士の猛烈な蹴りが腹部へとヒットし、猛竜騎士は酒の入った身体もあってその場に崩れ落ちた。
猛竜騎士「お…ま…え……!」
魔剣士「おせぇからの天誅だ、ボケ」
猛竜騎士「おまえ…な…!誰のためを思って……!」
魔剣士「……あ?」
と、言いにくい言葉に急いで口を閉じる。
猛竜騎士「あ、いや。というか…し、白姫はどう…した……?」
魔剣士「ん、あ……!?」
猛竜騎士「いや、白姫は…どこだと……」
魔剣士「そ、それなら…!そ、そこで寝ちまった…よ……。そうだ、オッサンが遅いから寝ちまったんだよ!」
猛竜騎士「んお……、そうなのか……?」
魔剣士「あ、あぁ!!そういうことだよっ!!」
猛竜騎士「そ、そうか…。すまなかったな……?」
魔剣士「あ、まぁ…いい…ぞ……」
どこかぎこちない二人。ふとベッドに目を向けると、確かに白姫はすやすや眠っていた。
猛竜騎士「…」
今すぐ悶々と聞きたいことが浮かぶが、何も無いものと信じて会話を続ける。
猛竜騎士「……で、魔剣士」
魔剣士「な、何だよ」
猛竜騎士「そろそろ出発の準備をしたいんだが、白姫を起こしてもいいか……?」
魔剣士「……そ、そりゃいいだろ…」
猛竜騎士「そ、そうか……」
ぎこちない会話をしつつ、猛竜騎士は白姫に近づくと肩を軽く揺すって「白姫、起きるんだ」と声をかけた。
白姫「むにゃ……?」
すると、すぐに目を覚ました白姫だったが、ボヤけていたのか「あ、魔剣士……」と言ったあとで、「私が、その…ごめんね…」と呟いた。
猛竜騎士「……ん?」
白姫「だから、私がその……」
猛竜騎士「白姫、俺だぞ」
白姫「にゃ…?」
猛竜騎士「よーく見てくれるか」
白姫「…」
猛竜騎士「…」
白姫「……あっ」
猛竜騎士「おはよう」
白姫「も、ももも、猛竜騎士さんっ!!?」
魔剣士と勘違いしていたことに気付いた白姫。慌ててキョロキョロと辺りを見回し、他にブリレイの姿を確認すると顔を赤くして布団の中に潜り込んだ。
猛竜騎士「お、おいおい……」
白姫「あうぅ…ごめんなさいっ!ちょっと着替えてから行きますーっ!!」
猛竜騎士「そ、そうか……」
白姫「は、はい!ですからっ!!」
猛竜騎士「わ、わかった…!退散するから落ち着け……」
彼女の迫力に思わず回れ右、魔剣士を残してブリレイと二人で部屋の外へと出たのだった。
猛竜騎士「……どう思う」
ブリレイ「あー、いえ…。意見する立場には……」
猛竜騎士「参った、いや…わからないが……」
ブリレイ「しかし出会ってもう数か月にもなりますし、恋をしているなら、彼らの歳で何ら変なことでは」
猛竜騎士「…確かにもうすぐ白姫は16、17にもなるか…。いや、だがなぁ……」
ブリレイ「本当に親の感覚、ですね」
猛竜騎士「……はぁ」
例え1年に満たずとも、彼らの過ごしてきた時間はあまりにも常人より遥かに濃いものだった。
命の駆け引き、死を体感し、国の終わりを見て、互いの信頼も強く結ばれている。
猛竜騎士「それは恋をする心も、言葉にせずとも…ってか……」
白姫とて、最初からそんな心があったとは思えない。
今までの時間が、魔剣士の瞳を通じて彼女に対する想いが本物だと知って、いつしか惹かれていたのだろう。
ブリレイ「それでも、まだ?」
猛竜騎士「……認めるさ。認めざるを得ないのはわかっている」
ブリレイ「何が不満なんでしょうか」
猛竜騎士「……不満はないさ」
ブリレイ「では、何故……」
猛竜騎士「不満ではなく、不安があったというのが正しいか……」
ブリレイ「…不安ですか?」
猛竜騎士「さっきも言ったが、どうしても俺は彼らの格差を乗り切れるような未来が見えなかった。俺が信じず、どうするのかって話だが」
ブリレイ「ですから、それは……」
猛竜騎士「……それは、俺の体験からだ」
ブリレイ「体験?」
猛竜騎士は目を閉じて、彼女の姿を思い浮かべた。
猛竜騎士「俺には愛する女性がいた。しかし、それは手に届かず、失われた存在になった。平気な顔をしていても、もう手を握れない彼女を想い、今もずっと後悔している……」
ブリレイ「……それが、あの二人だと?」
猛竜騎士「まさか、そんな重いことにはならないと信じてる。だが、この辛さの可能性がある限りはどうしても…同じ思いをさせたくないとばかり……」
自分は、思いの外、人間が出来ちゃいない。
彼女が生きていた時に離れた悲しみも、永久の別れになった悲しさもずっと残っている。
だから、大事な仲間になった今だからこそ、この思いをさせたくないと、心の奥底で思っていた。
猛竜騎士「互いを知る度に悲しみは深くなる。大事だからこそ、俺の考えが間違っていると思っていても、深い関係にはしたくなかったんだ……」
それが彼の本音だった。
ブリレイ「……猛竜騎士さん」
しかし、彼の言葉に諭されて、今はわかっている。
猛竜騎士「いや分かってる。今の白姫の表情や、魔剣士の顔を見て分かったよ。アイツらだって、自分の位置もわかって、必死だったんだと……」
ブリレイ「えぇ…、そうですね……」
猛竜騎士「冒険者ならそれを乗り越えてこそ。幸せな時に水を差すような真似はしないさ」
ブリレイ「……それがいいと思います」
猛竜騎士「あぁ……」
人知れず考えていた悩みを、ふとしたことからブリレイにぶつけた猛竜騎士だったが、意外と悪い気はしなかった。
そして、魔剣士と白姫は旅支度を整え、廊下に現れる。
魔剣士「おう、オッサン」
猛竜騎士「……魔剣士」
魔剣士「あ?」
猛竜騎士「俺は応援してやる。仲間として、祝福し、何もかも幸せになるように動いてやろうとは思う」
魔剣士「……何の話だ?」
猛竜騎士「だが、しかし。お前が間違った方向なんだと思った時には、無理にでもそれを止めるからな。分かったか?」
魔剣士「あ…?だから何の話だって……」
猛竜騎士「いいから、そういうことだ」
魔剣士「……ンだよ一体…?」
勝手に納得する猛竜騎士に、不満げな魔剣士。近くで見ていた白姫はキョトンとしていた。
白姫「どうしちゃったんだろ、猛竜騎士さん……」
ブリレイ「んー、彼なりに考えがあったんでしょうが、その整理がついたんだと思いますよ」
白姫「…どういうことですか?」
ブリレイ「仲間だからこそ話せないこともある。他人だから話せることがある。そういうことです」
白姫「うー…?」
ブリレイ「僕としては少し、出会って数日とはいえ…ある意味で仲間でないと思われていることは寂しくもありますが…ハハ……」
白姫「……え?いえ、ブリレイさんは仲間ですよ!」
ブリレイ「お、おや……?」
白姫「ですから、仲間じゃないなんて言わないでください!」
ブリレイ「白姫さん……」
思いがけない一言に、微笑んでしまうブリレイ。
ブリレイ「本当にお優しい方だ。願わくば、貴方のような指導者がこの国の民を救わんことを……」
白姫「……ブリレイさん?」
ブリレイ「あ、いえ…。何でもありませんよ、それよりも出発するらしいので急ぎましょうか」
白姫「はい、そうですねっ!」
一体、彼の真意はどこにあるのか。
ブリレイは裏切っているのか、敵なのか。今の彼らにとって、願わくば、ブリレイが敵でないことを祈るばかりである。
猛竜騎士(……警戒は解けることはないがな)
冒険者たちの集う村でひと時の休憩が出来た三人は、いよいよ中央大地の首都、セントラルへと改めて出発した。
到着まで、あと数日―――…。
…………
……
…
――― 一方、猛竜騎士側。
猛竜騎士「……入るに入れないだろうが、さすがに」
ブリレイ「ハハ、若いということです。僕の部屋でしばらくはくつろいで下さい」
先ほど外出していた二人は、部屋に戻ろうとしたところで二人の気配と声を聴いてしまい、一度ブリレイの部屋に腰を降ろしていた。
猛竜騎士「……しかし、目の前であのようにされるといくら俺でも参っていう話だ」
ブリレイ「あの歳で恋に興味を持たない理由がありませんよ」
猛竜騎士「そうかもしれんがな……」
ブリレイ「今が楽しい時だと思いますので」
猛竜騎士「……それは分かっているが、二人は"それ"を分かっているのか」
ブリレイ「それ、ですか?」
猛竜騎士「現実は重い。世界が平和になったとしても、アイツらは……」
ブリレイ「……結ばれない存在、ですか」
猛竜騎士「…」
いずれ訪れるであろう身分の格差は、二人にとって耐えがたいものとなる。戦いの終わりは旅の終わり。旅の終わりは、二人にとっての別れとなることを意味していた。
ブリレイ「……確かに、そうかもしれませんけど、ですが…」
猛竜騎士「ん……」
ブリレイはニッコリと笑いながら言う。
ブリレイ「二人は冒険者ですから、壁を越えることに努力は惜しまないと思いますよ」
猛竜騎士「何?」
ブリレイ「っと、申し訳ありません生意気に。ですが、若者同士、出会ったことを運命としていければ良いなと…そう思ったんです」
猛竜騎士「どういうことだ……?」
ブリレイ「フフ、ですから冒険者である二人にとって、格差なんて壁を越えて結ばれる日が来るのではないかと言うことです」
猛竜騎士「……っ!」
―――なるほど。
全く持って、冒険者という気質を忘れるところだった。自分が応援せず、どうするのか。
猛竜騎士「……確かにその通りかもしれないな。仲間である俺が信じてやらなくて、どうするってことか……」
ブリレイ「えぇ、応援してあげることが一番です。それに、猛竜騎士さんも知らずにそうなってほしいと願っているんじゃないでしょうか?」
猛竜騎士「む……」
ブリレイ「こんな風に気づかないように二人の時間を作ってあげていることが、何よりの証拠だと思いますよ」
猛竜騎士「あ、あぁ……」
そう言われると、確かにそうかもしれない。この男は本当に人の心にズカズカと入り込む。
ブリレイ「……さてと、どうしましょうか」
猛竜騎士「何だ?」
ブリレイ「折角の二人の時間、あまり早過ぎるのは失礼でしょう」
猛竜騎士「とは言うがな、所詮まだそういう意味は持たないだろう。いや、持たれても困るんだが」
ブリレイ「まさか、興味を持たない理由はありませんよ」
猛竜騎士「まだまだ子どもだ」
ブリレイ「そう思っているのは…。いや、既に大事に想っている証拠だとは思いますが……」
猛竜騎士「……んん?」
ブリレイ「人は不思議です。ひと時の安らぎが、繋がりが、温かいものだと知ることが、深層的な部分で気づいてしまうものだと」
猛竜騎士「生々しい言葉はやめろ…。ちょっとした親の気分になる、それは……」
ブリレイ「フフッ、親のようなものだと思いますが」
猛竜騎士「例え俺はそう思っていたとしても、アイツらにとっては俺は兄貴分な程度だ。親とは到底思えないだろうさ」
ブリレイ「案外、そう考えている本人とは異なるものだと思いますよ」
猛竜騎士「バカ言え、俺はそこまで歳をくっちゃいないつもりだ」
ブリレイ「どちらも本当の親を失っている存在に、長い旅を通して親に似た感情を抱くのはなんら不思議ではないと…そう思いますが」
猛竜騎士「あの二人と旅をしてきたからこそ分かるんだ。俺は兄貴分であって、親じゃない……というか、そんな話じゃないだろうが!」
ブリレイ「あっ…、そ、そうでしたねすみません……!」
ハハハと笑いながら、ブリレイは外出した時に買ってきた袋をドンと机に置いた。
ブリレイ「お詫びというわけではないですが、少し早い気もしますが時間を作ってあげましょうよ」
猛竜騎士「何だこれは…?」
ブリレイ「袋詰めの葡萄酒ですよ。魔法衣を使ったもので、量もそれなり」
猛竜騎士「いつの間に買ってきたんだこんなもの……」
ブリレイ「も、申し訳ない」
猛竜騎士「やれやれ…」
元々、猛竜騎士たちが外に出たのは冒険者が集う村に張り出される朝一の"依頼掲示板"を受けに行ったからのことだった。
ブリレイの監視は当たり前のこと、魔剣士の二日酔いを懸念して、依頼の中に肉体疲労の回復効果をもたらす素材があれば軽く取ってやろうと、朝早くから出かけていたのだ。
ブリレイ「どのみち、猛竜騎士さんの用意された別の二日酔いの治癒素材で頭痛は回復していたようですし」
猛竜騎士「だからといって、朝から乾杯をするか?」
ブリレイ「時間はありますよ」
猛竜騎士「お前、一応はセントラルと氷山帝国を繋ぐ遣使なのに、のんびりしていていいのか…?」
ブリレイ「嵐があったわけですし、その辺は問題ないかと。……いえ、あまり遅すぎるのは両国にとって良くないんですが」
猛竜騎士「おいおい、それじゃ……」
ブリレイ「しかし以前に数日の遅れをしましたが、問題は無く。それに、若い冒険者の時間を邪魔するほど…野暮じゃありません。仮にもあの二人は、世界を担う存在なのですから」
猛竜騎士「……そうか。…いや、しかしだな…うんむむ…!」
ブリレイ「ハハハ、猛竜騎士さんの考えはすっかり親のそれと一緒じゃないですか」
猛竜騎士「な、何?」
ブリレイ「冒険者らしくなら、自由を掲げてこそ。これからの未来に、ひと時の安らぎも与えることが親の仕事だと思いますよ」
ブリレイは二つ酒袋のうち一つを"ドン"と猛竜騎士の前に置くと、別の袋から燻したピーナツと干された魚を並べた。
猛竜騎士「……朝から酒盛りか。嫌いではないが…」
ブリレイ「時間を潰すには、一番よろしいかと。酔う人間なら別ですが、嗜む程度なら問題はないかなと思いまして」
猛竜騎士「フン…」
猛竜騎士は酒袋をつかむと、机の中央上で「…んっ」、ブリレイに乾杯の合図を出す。
ブリレイ「ありがとうございます」
猛竜騎士「仕方なかろう。…ただ、昼までだ。決してのんびりし過ぎることが出来ないというのは承知だろう?」
ブリレイ「分かっております。僕は二人のお時間を作ってあげたかっただけですから」
猛竜騎士「どうなっても知らんからな」
ブリレイ「ハハ…、それでは失礼して……」
"乾杯……"
宿部屋で始まった小さな飲み会。
昨晩ほどの豪勢さは無かったが、ブリレイとの会話にわずかな心を許し始めていた猛竜騎士は、お互いの若い頃の話で盛り上がり、自分の部屋へ戻ったのは14時を過ぎてからだった。
………
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――そして約4時間後、14時過ぎ。
つい話し込み過ぎた猛竜騎士はそろそろ次の村へと向かうため、魔剣士の部屋をノックして中を確かめたところだった。
猛竜騎士「……魔剣士、入るぞ」
別段、普通に入ることもできたが、ブリレイの会話でどうにも突然に部屋へ入るのが申し訳なかったらしい。
魔剣士「……うーい」
すると、中から魔剣士ののっそりとした声。
猛竜騎士は「そろそろ出発するぞ」と平常を装いつつも緊張気味にドアを開けた。
……だが。
魔剣士「……オッサン、おっせぇぞオラァーッ!!」
猛竜騎士「ぬぐぅあっ!?」
油断していたためか、魔剣士の猛烈な蹴りが腹部へとヒットし、猛竜騎士は酒の入った身体もあってその場に崩れ落ちた。
猛竜騎士「お…ま…え……!」
魔剣士「おせぇからの天誅だ、ボケ」
猛竜騎士「おまえ…な…!誰のためを思って……!」
魔剣士「……あ?」
と、言いにくい言葉に急いで口を閉じる。
猛竜騎士「あ、いや。というか…し、白姫はどう…した……?」
魔剣士「ん、あ……!?」
猛竜騎士「いや、白姫は…どこだと……」
魔剣士「そ、それなら…!そ、そこで寝ちまった…よ……。そうだ、オッサンが遅いから寝ちまったんだよ!」
猛竜騎士「んお……、そうなのか……?」
魔剣士「あ、あぁ!!そういうことだよっ!!」
猛竜騎士「そ、そうか…。すまなかったな……?」
魔剣士「あ、まぁ…いい…ぞ……」
どこかぎこちない二人。ふとベッドに目を向けると、確かに白姫はすやすや眠っていた。
猛竜騎士「…」
今すぐ悶々と聞きたいことが浮かぶが、何も無いものと信じて会話を続ける。
猛竜騎士「……で、魔剣士」
魔剣士「な、何だよ」
猛竜騎士「そろそろ出発の準備をしたいんだが、白姫を起こしてもいいか……?」
魔剣士「……そ、そりゃいいだろ…」
猛竜騎士「そ、そうか……」
ぎこちない会話をしつつ、猛竜騎士は白姫に近づくと肩を軽く揺すって「白姫、起きるんだ」と声をかけた。
白姫「むにゃ……?」
すると、すぐに目を覚ました白姫だったが、ボヤけていたのか「あ、魔剣士……」と言ったあとで、「私が、その…ごめんね…」と呟いた。
猛竜騎士「……ん?」
白姫「だから、私がその……」
猛竜騎士「白姫、俺だぞ」
白姫「にゃ…?」
猛竜騎士「よーく見てくれるか」
白姫「…」
猛竜騎士「…」
白姫「……あっ」
猛竜騎士「おはよう」
白姫「も、ももも、猛竜騎士さんっ!!?」
魔剣士と勘違いしていたことに気付いた白姫。慌ててキョロキョロと辺りを見回し、他にブリレイの姿を確認すると顔を赤くして布団の中に潜り込んだ。
猛竜騎士「お、おいおい……」
白姫「あうぅ…ごめんなさいっ!ちょっと着替えてから行きますーっ!!」
猛竜騎士「そ、そうか……」
白姫「は、はい!ですからっ!!」
猛竜騎士「わ、わかった…!退散するから落ち着け……」
彼女の迫力に思わず回れ右、魔剣士を残してブリレイと二人で部屋の外へと出たのだった。
猛竜騎士「……どう思う」
ブリレイ「あー、いえ…。意見する立場には……」
猛竜騎士「参った、いや…わからないが……」
ブリレイ「しかし出会ってもう数か月にもなりますし、恋をしているなら、彼らの歳で何ら変なことでは」
猛竜騎士「…確かにもうすぐ白姫は16、17にもなるか…。いや、だがなぁ……」
ブリレイ「本当に親の感覚、ですね」
猛竜騎士「……はぁ」
例え1年に満たずとも、彼らの過ごしてきた時間はあまりにも常人より遥かに濃いものだった。
命の駆け引き、死を体感し、国の終わりを見て、互いの信頼も強く結ばれている。
猛竜騎士「それは恋をする心も、言葉にせずとも…ってか……」
白姫とて、最初からそんな心があったとは思えない。
今までの時間が、魔剣士の瞳を通じて彼女に対する想いが本物だと知って、いつしか惹かれていたのだろう。
ブリレイ「それでも、まだ?」
猛竜騎士「……認めるさ。認めざるを得ないのはわかっている」
ブリレイ「何が不満なんでしょうか」
猛竜騎士「……不満はないさ」
ブリレイ「では、何故……」
猛竜騎士「不満ではなく、不安があったというのが正しいか……」
ブリレイ「…不安ですか?」
猛竜騎士「さっきも言ったが、どうしても俺は彼らの格差を乗り切れるような未来が見えなかった。俺が信じず、どうするのかって話だが」
ブリレイ「ですから、それは……」
猛竜騎士「……それは、俺の体験からだ」
ブリレイ「体験?」
猛竜騎士は目を閉じて、彼女の姿を思い浮かべた。
猛竜騎士「俺には愛する女性がいた。しかし、それは手に届かず、失われた存在になった。平気な顔をしていても、もう手を握れない彼女を想い、今もずっと後悔している……」
ブリレイ「……それが、あの二人だと?」
猛竜騎士「まさか、そんな重いことにはならないと信じてる。だが、この辛さの可能性がある限りはどうしても…同じ思いをさせたくないとばかり……」
自分は、思いの外、人間が出来ちゃいない。
彼女が生きていた時に離れた悲しみも、永久の別れになった悲しさもずっと残っている。
だから、大事な仲間になった今だからこそ、この思いをさせたくないと、心の奥底で思っていた。
猛竜騎士「互いを知る度に悲しみは深くなる。大事だからこそ、俺の考えが間違っていると思っていても、深い関係にはしたくなかったんだ……」
それが彼の本音だった。
ブリレイ「……猛竜騎士さん」
しかし、彼の言葉に諭されて、今はわかっている。
猛竜騎士「いや分かってる。今の白姫の表情や、魔剣士の顔を見て分かったよ。アイツらだって、自分の位置もわかって、必死だったんだと……」
ブリレイ「えぇ…、そうですね……」
猛竜騎士「冒険者ならそれを乗り越えてこそ。幸せな時に水を差すような真似はしないさ」
ブリレイ「……それがいいと思います」
猛竜騎士「あぁ……」
人知れず考えていた悩みを、ふとしたことからブリレイにぶつけた猛竜騎士だったが、意外と悪い気はしなかった。
そして、魔剣士と白姫は旅支度を整え、廊下に現れる。
魔剣士「おう、オッサン」
猛竜騎士「……魔剣士」
魔剣士「あ?」
猛竜騎士「俺は応援してやる。仲間として、祝福し、何もかも幸せになるように動いてやろうとは思う」
魔剣士「……何の話だ?」
猛竜騎士「だが、しかし。お前が間違った方向なんだと思った時には、無理にでもそれを止めるからな。分かったか?」
魔剣士「あ…?だから何の話だって……」
猛竜騎士「いいから、そういうことだ」
魔剣士「……ンだよ一体…?」
勝手に納得する猛竜騎士に、不満げな魔剣士。近くで見ていた白姫はキョトンとしていた。
白姫「どうしちゃったんだろ、猛竜騎士さん……」
ブリレイ「んー、彼なりに考えがあったんでしょうが、その整理がついたんだと思いますよ」
白姫「…どういうことですか?」
ブリレイ「仲間だからこそ話せないこともある。他人だから話せることがある。そういうことです」
白姫「うー…?」
ブリレイ「僕としては少し、出会って数日とはいえ…ある意味で仲間でないと思われていることは寂しくもありますが…ハハ……」
白姫「……え?いえ、ブリレイさんは仲間ですよ!」
ブリレイ「お、おや……?」
白姫「ですから、仲間じゃないなんて言わないでください!」
ブリレイ「白姫さん……」
思いがけない一言に、微笑んでしまうブリレイ。
ブリレイ「本当にお優しい方だ。願わくば、貴方のような指導者がこの国の民を救わんことを……」
白姫「……ブリレイさん?」
ブリレイ「あ、いえ…。何でもありませんよ、それよりも出発するらしいので急ぎましょうか」
白姫「はい、そうですねっ!」
一体、彼の真意はどこにあるのか。
ブリレイは裏切っているのか、敵なのか。今の彼らにとって、願わくば、ブリレイが敵でないことを祈るばかりである。
猛竜騎士(……警戒は解けることはないがな)
冒険者たちの集う村でひと時の休憩が出来た三人は、いよいよ中央大地の首都、セントラルへと改めて出発した。
到着まで、あと数日―――…。
…………
……
…
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そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
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