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第九章【セントラル】
9-14 隠された力(2)【5月2日公開】
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「―――教育してやる。」
喧嘩を売る態度のブリレイに、周囲の笑いは大きく、爆笑の渦に包まれた。
「はァ!?教育だァ!!?」
「何言ってんだこのオッサン、バカじゃねーの!」
「仲間に入れて欲しいなら素直に言えよ!ハッハッハ、ばーか!!」
罵倒の言葉が飛び交う中、ブリレイの細目が薄っすらと、眼光鋭く開かれた。首を軽くコキリと鳴らすと、一歩前に、短剣を構えた男の手前に立つ。
ブリレイ「……何を笑ってんだ。お前が武器を抜いた時から戦いは始まってんだぞ?」
呟くように小さく放った言葉。
だがその瞬間、男の腹部には"鈍い痛み"が走った。
「……いっ!?」
鋭い痛みに声を上げ、下を見ると、あろうことか腹部には自身の持っていた"短剣"が突き刺さっていた――…。
「は……、へ……?」
血が滲み出し、力が抜けて膝を崩す。
笑う男の顔はひきつり始め、「嘘だろ、嘘だろ」と連呼をし始めた。
「……何だ、どうした?」
ブリレイは冷たい声で、男を見下ろす。
「はっ、はっ……!お、まえ…何を……!俺、は…冗談で……!」
息があがり、熱くなり始める腹部と反して、眠気が襲うことに恐怖し始める。
「お前は冒険者の端くれなんだろう。ならば、抜いた剣と同時に喧嘩は始まった。それの結果がどうであれ、その覚悟はできていたんじゃないのか?」
「そ、そん…な……!」
「因みにヒールは無駄だ。俺の魔法は、お前の領域では越すことが出来ない」
「ま…ほう……!?」
男は、突如自分の持っていた短剣が自らを傷つけたことに、魔法が関わっているとようやく分かった。
……つまりのところ、それすら分からない男とブリレイの差は天地ほどにあるということで、そこだけは理解することが出来たが、時は既に遅く。
ブリレイ「さぁ、次の相手だ」
ブリレイが道を阻む次の相手を向いたと同時に、男の意識はプツリと途切れ、その場で崩れ落ちたのだった。
ブリレイ「楽に死ねると思うな。格上の相手に喧嘩を売って、首を狩られ燃やされることまでは…イメージできるだろう……?」
………
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――5分後。
魔剣士「なんだ…これ……」
わずかな時間、戦いを始めてからすぐに、店内にはとてつもない光景が広がっていた。
魔剣士「これが、アンタの…。シュトライトっつー男の実力なのか……」
店内奥より倒れる男たち。二人を囲んでいた全員が、ひとり残らずダウンし、山なりになる異様な光景。
また、奥のソファへと足を運んだブリレイは、行きも帰りも両脇に倒れる男たちの中心をウェイトレスの彼女と共に堂々とした態度で歩き、今は魔剣士の席へと戻っていた。
ブリレイ「やれやれですね。久々に戦闘用の魔法を使うと腰が疲れま…いたた……」
魔剣士「あのな、爺さんかよ」
ブリレイ「は、はは…そんな……」
魔剣士「ま…アンタも店員の女も何事もなかったようで良いんだけどよ……」
助け出したウェイトレスは怪我がないことを確認すると、ブリレイはスタッフルームにて休憩を取るように指示。一方、ブリレイはいつも通り丸メガネの分けた整髪に戻すと、あんな出来事の後だというのに平気な顔をしてコーヒーとケーキを楽しんでおり、それを他の客たちはそれを驚愕の目で、店員たちも何を訊くわけでもなく関わらないようそっぽを向いている。
魔剣士「……周りからケーキとコーヒー落ち着いて飲んでるの変わってるように見られてるぞ」
ブリレイ「あ、あはは…。しかし折角に用意していただいてものですので……」
魔剣士「はぁ…。ホントに変わってるなアンタは」
ブリレイ「よく言われました…はは……」
魔剣士「……まぁいいよ。それより、一体どうやったんだ?」
ブリレイ「はい?」
魔剣士「はい、じゃなくて。あの、アイツらを全員倒した方法だよ。何もしてなかっただろ、アンタ……」
―――"何も、していない"
魔剣士「俺から見たら、アンタの周りがバタバタと倒れていっただけだったぜ。どうやったんだ?」
―――"周りから見たら、何が起きたのかは分かっていなかった"
ブリレイ「それはですね……」
……自らを刺されたと思って痛みに悶えた最初の男。それを始めとして、首を狩られた、腕をもがれた、業火に燃やされた、そういった魔術に倒れたのが奥に倒れる者たちだったのだが、実は周りからは"ただブリレイの周りの男が悲鳴をあげて倒れている"ばかりにしか見えなかったのだ。
魔剣士「最初に刺されたー!みたいな奴から始まって、気付けば全員が悶えて倒れちまっただろ。……なんかの魔法か?」
ブリレイ「さすがですね。正解ですよ」
魔剣士「一体何をやったんだ。アンタのやったこと、俺には分からなかったんだが……」
ブリレイ「……僕は魔術師です。それは難しいことで単純なことです」
魔剣士「はぁ?分かりやすいように言ってくれよ」
ブリレイ「いえ、それはですね……。その、えーとですね……」
魔剣士(なんだ……?)
明らかに挙動がおかしい。普段ならクールにしゃべり切るところを、ごまかそうとしているように思えた。
魔剣士「……あのさぁ」
ブリレイ「は、はい」
何かを隠しているのなら、隠せないように言うだけである。
魔剣士「明日を救う為に、アンタは俺を試したんだろ?そんな、話をはぐらかそうとしてるのは分かるし…そりゃないんじゃねーの」
ブリレイ「う、あ……」
恐らく、これで秘密を暴露してくれるはずだ。逃げ道のない問いに、魔剣士の考えは正しかった。
ブリレイ「あまり、言えないことだったのですが……」
観念したのか、だが小声で、周りに聞こえないよう口を開いた。
ブリレイ「僕の魔法技術は覚えになっていますよね……?」
魔剣士「あぁ、両手で別属性をやれるやつ?」
ブリレイ「いえ、そちらではなく。そちらの仮面の技術のほうです」
魔剣士「……あっ、幻惑のほう?」
ブリレイ「えぇ、ですから……」
魔剣士「……あ!あぁぁっ!!」
ポンと手を叩き、ブリレイがどうやって彼らを倒したのかようやく分かった。
ブリレイ「詳細は周りに声が聞こえることで勘弁してほしいのですが、彼らを幻惑に掛け、精神から崩壊をさせたのです」
魔剣士「なっるほどなー…!」
ブリレイ「ですが、軽度のものにしておきましたから、目が覚めますので…ご安心下さい……」
魔剣士「ほーほーっ!そういうことか……!」
男が自らを刺殺してしまったことも、彼らが痛みに悶えたことも全て幻覚幻惑によるものだった。
魔剣士(なっるほどなー…。だけど、どこでかけてたんだ…幻惑魔法ってやつを……)
詳細は言えないということは、重々承知する。セントラルにいる以上、障子に目ありということで軽率な言葉は口にできないのだろう。
ブリレイ「……申し訳ありません。今はお話しできませんが、セントラルに出た際に必ず」
魔剣士「いや、分かってるよ。別に良いって」
ブリレイ「……お気遣い感謝します」
魔剣士「別に気遣いってほどじゃないんだけどな」
ブリレイ「ハハ…、いえいえ」
微笑しながら、ブリレイは残ったコーヒーを一気に飲み干した。
ブリレイ「……と、それではそろそろですか?」
魔剣士「ん?」
ブリレイ「色々やっているうちに、中央広場…壇上脇に掲示板が出されたようですよ」
魔剣士「おっ!?」
指をさした方向には、壇上の隣に巨大な掲示板のようなものが設置され、多くの冒険者たちがその周辺に集まっていた。
ブリレイ「少し今日は早いようですが、そろそろ集まったほうがいいかと思います」
魔剣士「わ、分かった!コーヒーなんか飲んでる場合じゃねーな、すぐ行くわ!」
ブリレイ「お気をつけてください。後で僕も謁見が済次第、顔を出しますので」
魔剣士「おう、了解!!」
魔剣士は席から慌てて立ち上がると、店の柵をピョンと越えて広場壇上のほうへと走っていった。
それを見たブリレイは「はは、どこか楽しそうにも見えますが…」と苦笑しつつも、その表情はすぐに真剣なものに変わり。
ブリレイ「まぁ良いでしょう、僕は僕ですることがありますからね」
魔剣士が消えたのを見計らい、ブリレイは腰を上げて丸メガネを光らせながら、どこへ行くのか店内に倒れる男たちをかき分けて"スタッフルーム"と書いてある部屋のドアノブを回した。
本来なら立っている他の店員が注意もするだろうが、状況が状況だけに見て見ぬ振りなものでいとも簡単に中へと入ることが出来た。。
ブリレイ「…」
中に入ったブリレイは、"ガチャリ"と鍵を閉める。
ブリレイ「さてと……」
辺りを見回し、部屋に休んでいる筈のウェイトレスの彼女がいないことを確認すると、あろうことか別室の"女性用更衣室"のドアを開いた。
ブリレイ「…」
躊躇なく開いた更衣室は、ほんのりとした香りが漂う。また、銀色のロッカーがいくつも重なっていることから、それだけでこの店が繁盛して店員が多いということが伺えた。
ブリレイはまた周囲を見渡し、目視できる範囲に彼女がいないことを確認すると、これまた躊躇せずに女性更衣室の奥へと足を踏み入れていく。
ブリレイ「……っと」
そして、更衣室に置いてある長椅子の上で、私服を着直してぐったりと寝込む彼女の姿を見つけると「いましたか」と呟いた。
ブリレイ「…」
寝込む彼女は、こちらに気付いてはいない様子で、確認したブリレイはズボンの裏ポケットからゆっくりと"短剣"を取り出し、彼女の首筋へと近づけた。
ブリレイ「……反応なし、ですか?」
それでも動かない彼女に、やれやれと口にしたものの、あろうことか、ブリレイはそのまま首を切るように刃を突き立てる。徐々にめり込む刃先、ツーっと鮮血が滴り落ちる。
すると、そこでようやく目を覚ました彼女は、この状況に驚き声を上げた。
ウェイトレス「……ひっ!!?」
ブリレイ「おっと、お目覚めですか」
起きた彼女に、ブリレイは短剣を引っ込める。
ウェイトレス「な、何を…!何をしてるんですか……!!」
ブリレイ「いえ、ちょっとばかし貴方に用事があったんですよ」
ウェイトレス「用事って…!今、ナイフを確かに…!」
ブリレイ「えぇ…、そりゃそうですよ」
ウェイトレス「何ですか…!あ、貴方もやっぱりさっきの男たちと同じように!!」
ブリレイ「ふむ、同じように…"乱暴"ですか?」
ウェイトレス「……ッ!!」
彼女の恐怖する言葉を簡単に口にするブリレイ。しかし、続けて出した言葉は形容しがたいものだった。
ブリレイ「それは――…違う。僕は貴方に乱暴をする気はない」
ウェイトレス「えっ?」
ブリレイ「ただ、貴方に死んでほしい。それだけですよ」
ウェイトレス「……今、なんて…?」
ブリレイは再び短剣を構え、一気に彼女への首に刃を突き立て、刃先を差し込む。
ウェイトレス「…っ!!」
先に与えたよりも確実に深く、首からは音を立てるようにして赤い血が舞ったことに、ブリレイは何ら反応はしない。
ウェイトレス「ど……し…て…」
溢れる血に、しゃべることすらままならない。温い返り血が、ブリレイの服を汚していく。
ブリレイ「……既に貴方は死すべき存在だった。僕の幻術の秘密に気付かれていた以上、生かすことは出来ないし、殺すしかない」
ウェイトレス「……ッ!!」
ブリレイ「僕の傍に来たのは間違いでしたね。残念です」
ウェイトレス「…っ」
…………
……
…
…………………………………
【謝罪について】
========
2016年5月1日頃より、9-22話が公開状態となっていると報告をいただき、当該の話は非公開とさせていただきました。
詳細については「第一章」上記「謝罪」よりご確認いただければ幸いです。
こちらの問題について、9-13,14,15話の公開および9-22話まで5月3日より1日間隔の更新を行わせていただきます。
何卒よろしくお願い申し上げます。
========
「―――教育してやる。」
喧嘩を売る態度のブリレイに、周囲の笑いは大きく、爆笑の渦に包まれた。
「はァ!?教育だァ!!?」
「何言ってんだこのオッサン、バカじゃねーの!」
「仲間に入れて欲しいなら素直に言えよ!ハッハッハ、ばーか!!」
罵倒の言葉が飛び交う中、ブリレイの細目が薄っすらと、眼光鋭く開かれた。首を軽くコキリと鳴らすと、一歩前に、短剣を構えた男の手前に立つ。
ブリレイ「……何を笑ってんだ。お前が武器を抜いた時から戦いは始まってんだぞ?」
呟くように小さく放った言葉。
だがその瞬間、男の腹部には"鈍い痛み"が走った。
「……いっ!?」
鋭い痛みに声を上げ、下を見ると、あろうことか腹部には自身の持っていた"短剣"が突き刺さっていた――…。
「は……、へ……?」
血が滲み出し、力が抜けて膝を崩す。
笑う男の顔はひきつり始め、「嘘だろ、嘘だろ」と連呼をし始めた。
「……何だ、どうした?」
ブリレイは冷たい声で、男を見下ろす。
「はっ、はっ……!お、まえ…何を……!俺、は…冗談で……!」
息があがり、熱くなり始める腹部と反して、眠気が襲うことに恐怖し始める。
「お前は冒険者の端くれなんだろう。ならば、抜いた剣と同時に喧嘩は始まった。それの結果がどうであれ、その覚悟はできていたんじゃないのか?」
「そ、そん…な……!」
「因みにヒールは無駄だ。俺の魔法は、お前の領域では越すことが出来ない」
「ま…ほう……!?」
男は、突如自分の持っていた短剣が自らを傷つけたことに、魔法が関わっているとようやく分かった。
……つまりのところ、それすら分からない男とブリレイの差は天地ほどにあるということで、そこだけは理解することが出来たが、時は既に遅く。
ブリレイ「さぁ、次の相手だ」
ブリレイが道を阻む次の相手を向いたと同時に、男の意識はプツリと途切れ、その場で崩れ落ちたのだった。
ブリレイ「楽に死ねると思うな。格上の相手に喧嘩を売って、首を狩られ燃やされることまでは…イメージできるだろう……?」
………
…
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―――5分後。
魔剣士「なんだ…これ……」
わずかな時間、戦いを始めてからすぐに、店内にはとてつもない光景が広がっていた。
魔剣士「これが、アンタの…。シュトライトっつー男の実力なのか……」
店内奥より倒れる男たち。二人を囲んでいた全員が、ひとり残らずダウンし、山なりになる異様な光景。
また、奥のソファへと足を運んだブリレイは、行きも帰りも両脇に倒れる男たちの中心をウェイトレスの彼女と共に堂々とした態度で歩き、今は魔剣士の席へと戻っていた。
ブリレイ「やれやれですね。久々に戦闘用の魔法を使うと腰が疲れま…いたた……」
魔剣士「あのな、爺さんかよ」
ブリレイ「は、はは…そんな……」
魔剣士「ま…アンタも店員の女も何事もなかったようで良いんだけどよ……」
助け出したウェイトレスは怪我がないことを確認すると、ブリレイはスタッフルームにて休憩を取るように指示。一方、ブリレイはいつも通り丸メガネの分けた整髪に戻すと、あんな出来事の後だというのに平気な顔をしてコーヒーとケーキを楽しんでおり、それを他の客たちはそれを驚愕の目で、店員たちも何を訊くわけでもなく関わらないようそっぽを向いている。
魔剣士「……周りからケーキとコーヒー落ち着いて飲んでるの変わってるように見られてるぞ」
ブリレイ「あ、あはは…。しかし折角に用意していただいてものですので……」
魔剣士「はぁ…。ホントに変わってるなアンタは」
ブリレイ「よく言われました…はは……」
魔剣士「……まぁいいよ。それより、一体どうやったんだ?」
ブリレイ「はい?」
魔剣士「はい、じゃなくて。あの、アイツらを全員倒した方法だよ。何もしてなかっただろ、アンタ……」
―――"何も、していない"
魔剣士「俺から見たら、アンタの周りがバタバタと倒れていっただけだったぜ。どうやったんだ?」
―――"周りから見たら、何が起きたのかは分かっていなかった"
ブリレイ「それはですね……」
……自らを刺されたと思って痛みに悶えた最初の男。それを始めとして、首を狩られた、腕をもがれた、業火に燃やされた、そういった魔術に倒れたのが奥に倒れる者たちだったのだが、実は周りからは"ただブリレイの周りの男が悲鳴をあげて倒れている"ばかりにしか見えなかったのだ。
魔剣士「最初に刺されたー!みたいな奴から始まって、気付けば全員が悶えて倒れちまっただろ。……なんかの魔法か?」
ブリレイ「さすがですね。正解ですよ」
魔剣士「一体何をやったんだ。アンタのやったこと、俺には分からなかったんだが……」
ブリレイ「……僕は魔術師です。それは難しいことで単純なことです」
魔剣士「はぁ?分かりやすいように言ってくれよ」
ブリレイ「いえ、それはですね……。その、えーとですね……」
魔剣士(なんだ……?)
明らかに挙動がおかしい。普段ならクールにしゃべり切るところを、ごまかそうとしているように思えた。
魔剣士「……あのさぁ」
ブリレイ「は、はい」
何かを隠しているのなら、隠せないように言うだけである。
魔剣士「明日を救う為に、アンタは俺を試したんだろ?そんな、話をはぐらかそうとしてるのは分かるし…そりゃないんじゃねーの」
ブリレイ「う、あ……」
恐らく、これで秘密を暴露してくれるはずだ。逃げ道のない問いに、魔剣士の考えは正しかった。
ブリレイ「あまり、言えないことだったのですが……」
観念したのか、だが小声で、周りに聞こえないよう口を開いた。
ブリレイ「僕の魔法技術は覚えになっていますよね……?」
魔剣士「あぁ、両手で別属性をやれるやつ?」
ブリレイ「いえ、そちらではなく。そちらの仮面の技術のほうです」
魔剣士「……あっ、幻惑のほう?」
ブリレイ「えぇ、ですから……」
魔剣士「……あ!あぁぁっ!!」
ポンと手を叩き、ブリレイがどうやって彼らを倒したのかようやく分かった。
ブリレイ「詳細は周りに声が聞こえることで勘弁してほしいのですが、彼らを幻惑に掛け、精神から崩壊をさせたのです」
魔剣士「なっるほどなー…!」
ブリレイ「ですが、軽度のものにしておきましたから、目が覚めますので…ご安心下さい……」
魔剣士「ほーほーっ!そういうことか……!」
男が自らを刺殺してしまったことも、彼らが痛みに悶えたことも全て幻覚幻惑によるものだった。
魔剣士(なっるほどなー…。だけど、どこでかけてたんだ…幻惑魔法ってやつを……)
詳細は言えないということは、重々承知する。セントラルにいる以上、障子に目ありということで軽率な言葉は口にできないのだろう。
ブリレイ「……申し訳ありません。今はお話しできませんが、セントラルに出た際に必ず」
魔剣士「いや、分かってるよ。別に良いって」
ブリレイ「……お気遣い感謝します」
魔剣士「別に気遣いってほどじゃないんだけどな」
ブリレイ「ハハ…、いえいえ」
微笑しながら、ブリレイは残ったコーヒーを一気に飲み干した。
ブリレイ「……と、それではそろそろですか?」
魔剣士「ん?」
ブリレイ「色々やっているうちに、中央広場…壇上脇に掲示板が出されたようですよ」
魔剣士「おっ!?」
指をさした方向には、壇上の隣に巨大な掲示板のようなものが設置され、多くの冒険者たちがその周辺に集まっていた。
ブリレイ「少し今日は早いようですが、そろそろ集まったほうがいいかと思います」
魔剣士「わ、分かった!コーヒーなんか飲んでる場合じゃねーな、すぐ行くわ!」
ブリレイ「お気をつけてください。後で僕も謁見が済次第、顔を出しますので」
魔剣士「おう、了解!!」
魔剣士は席から慌てて立ち上がると、店の柵をピョンと越えて広場壇上のほうへと走っていった。
それを見たブリレイは「はは、どこか楽しそうにも見えますが…」と苦笑しつつも、その表情はすぐに真剣なものに変わり。
ブリレイ「まぁ良いでしょう、僕は僕ですることがありますからね」
魔剣士が消えたのを見計らい、ブリレイは腰を上げて丸メガネを光らせながら、どこへ行くのか店内に倒れる男たちをかき分けて"スタッフルーム"と書いてある部屋のドアノブを回した。
本来なら立っている他の店員が注意もするだろうが、状況が状況だけに見て見ぬ振りなものでいとも簡単に中へと入ることが出来た。。
ブリレイ「…」
中に入ったブリレイは、"ガチャリ"と鍵を閉める。
ブリレイ「さてと……」
辺りを見回し、部屋に休んでいる筈のウェイトレスの彼女がいないことを確認すると、あろうことか別室の"女性用更衣室"のドアを開いた。
ブリレイ「…」
躊躇なく開いた更衣室は、ほんのりとした香りが漂う。また、銀色のロッカーがいくつも重なっていることから、それだけでこの店が繁盛して店員が多いということが伺えた。
ブリレイはまた周囲を見渡し、目視できる範囲に彼女がいないことを確認すると、これまた躊躇せずに女性更衣室の奥へと足を踏み入れていく。
ブリレイ「……っと」
そして、更衣室に置いてある長椅子の上で、私服を着直してぐったりと寝込む彼女の姿を見つけると「いましたか」と呟いた。
ブリレイ「…」
寝込む彼女は、こちらに気付いてはいない様子で、確認したブリレイはズボンの裏ポケットからゆっくりと"短剣"を取り出し、彼女の首筋へと近づけた。
ブリレイ「……反応なし、ですか?」
それでも動かない彼女に、やれやれと口にしたものの、あろうことか、ブリレイはそのまま首を切るように刃を突き立てる。徐々にめり込む刃先、ツーっと鮮血が滴り落ちる。
すると、そこでようやく目を覚ました彼女は、この状況に驚き声を上げた。
ウェイトレス「……ひっ!!?」
ブリレイ「おっと、お目覚めですか」
起きた彼女に、ブリレイは短剣を引っ込める。
ウェイトレス「な、何を…!何をしてるんですか……!!」
ブリレイ「いえ、ちょっとばかし貴方に用事があったんですよ」
ウェイトレス「用事って…!今、ナイフを確かに…!」
ブリレイ「えぇ…、そりゃそうですよ」
ウェイトレス「何ですか…!あ、貴方もやっぱりさっきの男たちと同じように!!」
ブリレイ「ふむ、同じように…"乱暴"ですか?」
ウェイトレス「……ッ!!」
彼女の恐怖する言葉を簡単に口にするブリレイ。しかし、続けて出した言葉は形容しがたいものだった。
ブリレイ「それは――…違う。僕は貴方に乱暴をする気はない」
ウェイトレス「えっ?」
ブリレイ「ただ、貴方に死んでほしい。それだけですよ」
ウェイトレス「……今、なんて…?」
ブリレイは再び短剣を構え、一気に彼女への首に刃を突き立て、刃先を差し込む。
ウェイトレス「…っ!!」
先に与えたよりも確実に深く、首からは音を立てるようにして赤い血が舞ったことに、ブリレイは何ら反応はしない。
ウェイトレス「ど……し…て…」
溢れる血に、しゃべることすらままならない。温い返り血が、ブリレイの服を汚していく。
ブリレイ「……既に貴方は死すべき存在だった。僕の幻術の秘密に気付かれていた以上、生かすことは出来ないし、殺すしかない」
ウェイトレス「……ッ!!」
ブリレイ「僕の傍に来たのは間違いでしたね。残念です」
ウェイトレス「…っ」
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【謝罪について】
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2016年5月1日頃より、9-22話が公開状態となっていると報告をいただき、当該の話は非公開とさせていただきました。
詳細については「第一章」上記「謝罪」よりご確認いただければ幸いです。
こちらの問題について、9-13,14,15話の公開および9-22話まで5月3日より1日間隔の更新を行わせていただきます。
何卒よろしくお願い申し上げます。
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