魔剣士「お姫様の家出に付き合うことになった」【現在完結】

Naminagare-波流-

文字の大きさ
117 / 176
第九章【セントラル】

9-15 一次選考【5月2日公開】

しおりを挟む
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――10分後。
謎の行動を取ったブリレイなど知るわけもない魔剣士は、広場で人込みに揉まれていた。
多くの冒険者たちが、あれよあれよと集まり。辺りはパニックのように、とてつもない人だかりだった。

魔剣士(うぜぇぇぇっ!!何だこの人の量、選考会っつってもこんな中でやれなくねーか!!?)

前には人、斜めにも人、横も人、後ろ斜めも人、後ろも当然人。人、人、人のお祭り騒ぎ。

魔剣士(どうすんだよマジで、掲示板にも辿りつけねーし、受付けとかあったら間に合わなくなるんじゃねーの!!)

遥か前方、壇上脇の掲示板。そこに何か書いてあるわけだが、とてもじゃないが見ることは出来ない。

魔剣士(一体どうするのか……って、お?)

ふと、壇上に誰かが上っているのが見えた。
最初は選考会を受ける誰かかと思ったが、よく見ればクロスの服装をした騎士団の一人であることが分かった。

魔剣士(ありゃ騎士団の面子か……)

壇上に登った騎士団の男は、かなりゴツゴツとした顔つきに多くの切り傷、歴戦の戦士だと一目で分かる。
そして、壇上で注目を浴びた彼は、深呼吸をした後に口を大きく開き、大声で何かをしゃべり始めた。

クロスの男「……諸君ッ!!!」

魔剣士「…ッ!」

耳に"びりびり"と電撃を感じるほどの大声。魔力か何かで拡声させているのかと思ったが、魔法の感覚は無いし地声らしい。余りの大きさに、ザワついていた会場は一気に静まる。

リッター「私の名はアルト・リッター!現在におけるクロイツ騎士団の団長である!また、兵士長を兼任している!!」

魔剣士(……何?そういや以前の兵士長は確か亡くなったとか聞いたな。そうか、新任したのか…。つか、団長ってことはまさか闇魔法の使い手とかじゃ…)

リッター「うむ、うむ。諸君、静かに聞いてくれて助かるぞ、だぁーっはっはっはっ!!!!」

魔剣士(いっ……!)

また、びりびりと感じるほどの声量。いい加減に煩い。それに静かに聞いたわけではなく、声に驚いただけのこと。実際、次からは冒険者たちから攻撃的な言葉が飛ぶ。

「……おい、いい加減にうるせーぞ!!」

リッター「うん?」

「オメーの声に驚いただけだ、ボケェ!!」

リッター「おぉ、そうだったか!!だぁっはっはっはっはっ!!!」

「……だ、だからうるせぇーっての!!それより、団長サンが何の用だよ!!予定の時刻も過ぎてるし、いつになったら選考会は始まるんだ!!」

リッター「うん?……おぉ、忘れていた!それを伝えに来たのだ、だぁーっはっはっは!!!」

魔剣士(うるせぇぇぇっ!!)

とにかく笑い声、しゃべりが煩い。こんな男が今の団長だと、騎士団の質はたかが知れているなとも思う。
呆れる魔剣士だったが、次にリッターが選考会についての言葉を口にした時、その場の空気が変わる。

リッター「さて、まぁ良い諸君!!それよりも選考会についてだ!!」

魔剣士(お……)

リッター「これから君たちには、1次選考を行ってもらう!」

魔剣士(何すんだ?)

リッター「ルールは至極単純。まず、掲示板脇にいる机に並んだ選考用紙にサインすることだ!」

魔剣士(…ん?)

リッター「俺が指を鳴らした瞬間にスタートするぞ!!今は机に何もないが、すぐに用紙が現れる!!それにサインをし、ここにいる俺に持ってくるだけだ!!」

魔剣士(……ちょっと、待て)

ちょっと待て、ちょっとだけ待て。
今、何て言った?
掲示板の隣にある"選考用紙"……だと?

リッター「用紙がなければ2次選考は行えない。分かるな!?」

魔剣士から見て、掲示板は遥か先。いや、後ろにいる者たちからは更に遠く。

リッター「因みにだが、用意される用紙は32枚だけだ……」

―――はい?
ちょっと、本当に待て。何を言っている、あの男は!!

ザワつく人々、それは無いぜと罵倒が飛ぶ。だが、リッターは気にする様子なく続けた。

リッター「それと諸注意だ!俺が指を鳴らした先よりここで起きたことは"罪にならない"からな!!この意味は…分かるな!!だっはっはっはっ!!!」

魔剣士(―――そういう、ことか…!!)

これが、1次選考の意味。
つまりは、選考用紙の奪い合い。
100人以上…200人、300人にも、それ以上にもいる人数がたった32枚の用紙を奪うということ―――。

リッター「さぁ……!!」

壇上の上で、更に高く上げた右腕。指を構え、力を入れる。

リッター「開始だ」

"パチンッ…!"

魔剣士(始まった…のか……!)

弾けた音で、それは始まった。
壇上横の掲示板の隣、設置された机の上に"バサリ"と32枚の選考用紙が現れたと同時、冒険者たち一斉に飛びかかった。

魔剣士「うおっ!?」

後方から、隣でも、前方でも。
用紙から離れすぎているある者は高く空へ飛び上がり、ある者は縮地を、ある者は魔法の詠唱を始める。武器を構え、容赦なく斬りかかる者ですらいた。

魔剣士「やっぱりそういうこと…かよっ!!」

魔剣士は姿勢を低くし、縮地の構えを取る。
しかし次の瞬間、後ろから猛ダッシュする冒険者たちに背中を踏まれ、押しつぶされた。

魔剣士「ぷぎゅっ!」

ほぼ全員が、用紙を奪うために命を散らすばかりに憤慨し、戦い合い始めたのだ。
自然治癒が出来る魔剣士はまだ無事だったが、既に倒れて動かない者ですらいたことは戦慄すら覚える。

魔剣士「あ、あいだだだぁっ!!このやろ、死なないつってもいってんだぞコラ、おいっ!!あだだだぁっ!!!」

次々踏まれ、背中に着いた足跡はどんどん増えていく。

魔剣士(やっべ、このままじゃ1次選考に落ちる!どうすっか!!)

既に時間は1分以上経過。用紙はどんどん無くなっているに違いない。奪い合う殺し合いだってあるだろうが、今は1枚を取るのに必死にならなければ。

魔剣士(い、いっそのこと……)

超がつくほどの火炎をぶっぱなし、燃やしてやろうか。会場を火の海に包むことくらいなら余裕なのだから。

魔剣士(いや、しかしそんなことは…。マジでどうすっか、マジで……)

それでは他の奴らと一緒になる。出来るだけ、力を使いたくはない。そんなこんな、悩むうちにも時間は過ぎる。
魔剣士は倒れながら「うむむ」と唸っていたが、その時。まさか、やる奴はいると思っていたが、それは起きた。

"……ヒュオオオッ!!"

魔剣士「…ぐあっ!!?」

絶対零度、極氷化させる最上位魔法が、用紙が乗った机目がけて一直線に大きい"氷の道"を作ったのだ。勿論、そこにいた面子は"一部"を除き全員が凍結され、見るも無残に転ばされた冒険者は砕け散る。
魔剣士は身体半分を飲まれたものの、闇魔力による絶対無効化によって凍結されることはなかったが。

魔剣士「なっ……!」

やはりここは既に戦場なのだ。何をしても許されるのなら、乗らない手はないということだ。

魔剣士「…ッ!」

氷の道に呆気を取られて静かになる中、人間の氷塊を砕きながら歩く一人の男。彼が術者なのだろうか、背は小さ目で、全身をターバンのような布で覆っているが、薄っすらと見える眼は酷く冷たく鋭い。また、ボサっとした青色の髪の毛が良く目立っていた。
彼はそのまま進んでいくと思っていたのだが、何故か魔剣士の前で足を止めた。

「……あれ、おかしいな。どうして凍ってないの?」

声は高めで、子供のような印象を受けた。もしかしたら、背の小ささから本当に子供なのかもしれないが。

魔剣士「何だテメェ、お前がこんなことやったのか……!」

「何でも罪にならないって言ったじゃない…。ルールに従ってるだけだよ」

魔剣士「んだと…!お前な!」

何を言ってるのかと突っ込むが、彼は嫌そうな顔をして名前を述べた。

バンシィ「お前じゃない。バンシィって呼んで」
魔剣士「バンシィ?ンなこと知るかボケ!つーか、お前これはやりすぎだろう!!」
バンシィ「……煩いなぁ。ルールに従っただけでしょ、僕はもう行くから。何で君が凍らなかったのか不思議なんだけど」
魔剣士「お、おい!?コラァ!!」

サクサクと人の氷を踏み抜き、机に向かうバンシィ。一方で魔剣士は、踏まないように注意しながら彼を追った。

魔剣士「てめ、おい!!」
バンシィ「ちょっと止めてよ。僕の作った道だよ?」
魔剣士「道ってなお前、人殺しして……」
バンシィ「そんなの知らないよ。僕はルールに従うだけだから……」
魔剣士「あのな……!」

どうにも話が通じず、イラっとする。

バンシィ「それより…、話し相手になってる君は特別に良いとして。他の人は不快だって思うな……」
魔剣士「ん…」

話の最中でバンシィは作った道の前方、後方にそれぞれ手を伸ばすと、掌から白い魔力を蓄積させて一気に放出させた。
"ヒュオッ!!"
再び、氷結の風が吹き荒れて、氷の道に便乗しようとしていた面子を全て凍結させたのだった。

バンシィ「僕の道に乗らないで。そういうの、嫌いだから」
魔剣士「おま……!」

殺しを問わないことに驚き、無詠唱による最上位の氷結魔法に驚く。実力としてはかなり高いことが伺えた。

バンシィ「……で、何?あまり煩いのなら、お兄ちゃんも凍らせちゃうよ」
魔剣士「俺は凍らねーんだよ。つか、そんな人殺しをだな……」
バンシィ「あぁ煩い、煩いなぁ。僕はもう行くよ」

さくさく、さくさく。
人の氷像を蹴飛ばし、踏み、壊し、早歩きしながらバンシィは前へ前へと進む。

魔剣士「……こ、この野郎」

ピクピク、話しを聞かない相手に苛立ち、走って追い付き、隣で「話を聞けよ!」と突っ込んだ。

バンシィ「はぁ、何か用?」
魔剣士「お前子供だろ!?そんな冷酷に、そんなことしていいと思ってんのか!」
バンシィ「……子供かもしれないけど、冒険者だから。ルールに従ってるだけだってば」
魔剣士「そういうことじゃなく、倫理的にというかよ!あぁもう、何て言ったらいいんだ!」
バンシィ「お兄ちゃんてもしかして、バカ?」
魔剣士「あ…?あァ!!?」
バンシィ「バカは声が大きいんだよ、お兄ちゃん。あそこの壇上の人と一緒になるよ」
魔剣士「俺ぁあそこまで煩くねぇ!!」
バンシィ「…うわ、うるさーい」

そっと両耳を手で隠す。

魔剣士「おっまえ、本当に人をイラつかせる天才だな……」
バンシィ「僕にとってはお兄ちゃんが天災だよ」
魔剣士「……今、天才と天災をかけたのは分かったぞ。圧倒的にバカにしただろ」
バンシィ「お兄ちゃん、天才だね!」
魔剣士「こ、の、や、ろ……!!」

話を聞くが、話を聞かないバンシィ。こういったタイプが大嫌いだった魔剣士は、額にムカムカとしたマークをいくつか。

バンシィ「……特別に道を歩かせてあげたんだから。ほら、もう着くよ」
魔剣士「何だと、コラ……」
バンシィ「良かったね、まだ選考用紙はあるみたいだよ」
魔剣士「ん…」

バンシィが指さした方向、机の上には数枚の選考用紙が残されていた。というか、突然の凶悪な魔法に唖然とした面子が動けなかっただけということだが。

バンシィ「特別だよ、ほら……」

机に辿り着いた二人、バンシィは用紙を魔剣士の分も手に取って魔剣士へと渡した。

魔剣士「ど、どーも……」
バンシィ「うん。そんじゃあね……」

また片腕を伸ばし、壇上に向けて魔力を込める。さすがに分かったのか、冒険者たちは慌てて避けて道を開いた。

バンシィ「僕は氷が好きだから、折角だし……」

人がいようといまいと、強烈な氷気は放たれた。バキバキと音を立てて氷の道は形成されていき、壇上に直撃した氷波は団長リッターごと凍結させてしまったものと思ったが、何故か壇上周辺は凍結せずに直前でそこに見えない壁があるかのように、氷は空へ向かって走り、見事な氷壁を造り上げたのだった。

バンシィ「……あれ?」

首をかしげるバンシィ。すると、壇上にいたリッターが大声で笑いながら魔法を貶した。

リッター「ハッハッハッ!!お前の魔法なんざ、俺の片腕で止められるんだよ!!」
バンシィ「うそ……」
リッター「……100年早ぇ。お前みたいなクソガキ、その程度の魔法なんざ俺が100年前に通った道だ!!」
バンシィ「うそ…。僕の魔法がそんなことって……。有り得ないよ……」

魔剣士(……!)

あのリッターという男、やはり只者ではないらしい。自分が闇魔法を会得していなければ、遥か彼方にいた存在に、経験不足を痛感してしまう。だが、それに加えて変な違和感を感じた。

魔剣士(このバンシィって奴、どっかで見たような…。見たっつーか、似てるっつーか……)

幼いながら自身満々、敗れた時に本気で悔しがり、謎の解明を求めるあの感じ。どうにもどこかで拝見した気がしたが、今はどうでも良いと考えを捨てた。

リッター「だぁっはっは!さぁガキ、壇上へ上がってこれるか!お前が第一号か、うん!?」
バンシィ「笑わないで…、気分が悪いから……。ルールには従うけどさ……」

顔は隠れていたものの、その眼と上ずった声から本当に悔しがっているのは分かった。
バンシィはよろよろとしながらも、氷の道を歩き、誰にも邪魔されることなく1次選考の通過者第一号として壇上に上ったのだった。

魔剣士(……第一号だと。選考用紙は少ないのに、まだ上がってる奴がいないってことは…)

奪い合いの中で、どこかへ紛れているということだろうか。机の上にはあと数枚が残され、また、他に目に見えている選考用紙といえば。

魔剣士「……俺のだ!!?」

第一号が決定した瞬間、周りの冒険者たちは机の他、一斉に魔剣士へ目がけて突っ込んだ。彼らは屍となった氷塊など気にするわけなく踏み荒らし、魔剣士に拳、剣、銃、槍、斧、鎌、槌、弩、弓、あらゆる武器が容赦なく襲い掛かった。

魔剣士「うぉっ、やべぇぇっ!!」

瞬時にバレない程度に足の裏へ"風化"を展開。超速となった縮地で、一気に氷道を突き進む。

魔剣士「……がっ!!?」

……が、超速といえども目視と着いていける冒険者はいたらしい。
"ゴシャッ、ゴロゴロゴロッ!!"
どこからか伸ばされた武器に喉をひっかけ、空中で回転しながらボウリングのように群衆へと突っ込み、大勢の冒険者を空へと弾き飛ばしてしまった。

魔剣士「げほっ、げほげほっ!!くっそ……!!」

傷の一つがあることはないが、痛みと苦しみは酷くある。更に吹き飛ばした人間に怪我をさせたとか、そんなことを考えている暇もなし、一気に用紙を奪わんと周囲の冒険者は手を伸ばす。

魔剣士「くっ…!おらぁぁあっ!!」

身体を捻じりながら起き上がり、脚の外側に簡易な風魔力。強力な回転蹴りを放つ。

魔剣士「見様見真似…旋風ィィッ!!」

テイルの秘奥義、つむじを繰り出す魔剣士。風を帯びたコマのような回転は、辺りの敵を全て外側へと吹き飛ばす。
だが、一部の人間は空中で風の魔力を込めて足場を作り、再び突っ込んでくる。

魔剣士「選考会に来るだけある奴らもいるってこと…か……!よォッ!!」

両腕をクロスし、炎を宿す。両脚に風を宿したまま、空高く伸ばし、炎の竜巻が魔剣士を包み込んだ。
強力なものは目立ってしまうものの、しのご言っている場合ではない。しかし、人としての限界を見せるようにして能力は出来る限りセーブする。

魔剣士「近づけるか、この野郎ォ!!!」

自身の外部に円を描くようにして、炎の竜巻に轟音を唸らせる。猛烈な熱風に、飛び込もうとした冒険者たちは一瞬こそ怯むが、すぐに防御壁を展開し始める。

魔剣士(なんて奴らだよ…!本気でやったら殺しかねねーし、つか純度高すぎると突っ込んだ奴ら全員死んじまうかもしれねぇ!!やべぇッ!!)

………


一方、それを壇上から見下ろすリッターはバンシィの肩を叩いて笑っていた。

"ばんばんっ!!"

リッター「おーっ!見ろよ、おいおい!!あれ、やるじゃねぇか!!」
バンシィ「……痛い、……痛い、……痛い。叩かないで」
リッター「お前が第一号なんだからよ、ちったぁ俺の話に付き合え!」
バンシィ「だったら叩くのを止めて」
リッター「何だかアイツは面白いな。恐らく、別々の属性を具現化できるんだろうが…魔力も増大だろう。技量も高そうだな……!」
バンシィ「話を全く聞いていないね…。それに随分と面白そうだね」
リッター「そりゃそうだろう!だぁっはっはっはっ!!」

笑いながら、叩くことは止めない。
"ばんばんっ!"

バンシィ「……痛い」
リッター「あの仮面の男、良い腕をもってやがる。果たしてここまで来れるかねぇ……?」
バンシィ「それよりすごく痛い。貴方の力は強すぎるから……」
リッター「お?そうか…、すまんな!!」
バンシィ「あと煩い」
リッター「そう言うなって!今まで第一号で1次選考を突破した奴は全員が騎士団になってるんだから、お前も大丈夫だ!仲良くしようぜ!」
バンシィ「……別に。最初じゃなくても、僕は残ってたよ」
リッター「随分と自信家だなぁ、嫌いじゃないぜ!!」
バンシィ「……自信家。僕も"お兄ちゃん"も、よくそう言われてたっけ」
リッター「なんだ、兄貴がいるのか?」
バンシィ「……うん。双剣を使って戦う、バウンティハンターをしてるよ。今回の話も騎士団に所属したっていうお兄ちゃんに呼ばれて」
リッター「んあ、双剣?二つの剣ってことか?それで騎士団に所属…だと?」
バンシィ「うん」
リッター「な、なぬ…?いや、お前…、まさか……」

何かに気付くリッター。しかし、前方にて魔剣士が空高く飛び上がり風の足場を作ったのを見て、「あのガキ、また何かやるのか!?」と喜びの声を上げた。

バンシィ「わぁ、高いけど……」
リッター「おっ…!このままこっち来るんじゃねえか!?後ろからも追手が来てるしどうするんだ、オイ!!だぁっはっはっはっ!!?」

笑いながら、また叩いた。
"ばんばんっ!!"

バンシィ「……うるさ痛い。僕、君は嫌いだな…」


………

魔剣士「くっ、魔法同士で干渉しないように空に飛んだっつーのに……!」

それでも諦めない冒険者たちは、風魔力の足場で浮遊し蹴飛ばしながらグングンと魔剣士へ迫る。

魔剣士「め、面倒くせぇぇっ!!こうなりゃ、このままスピード勝負だオラァ!!」

更に脚に魔力を込めて、空中で"縮地"を決める。
こればかりは幾重にも重なる風の魔力と、複雑な技量が必要なために他の冒険者たちは追うことが出来なかった。

魔剣士「……っしゃあああっ!!」

そのまま、リッターの予想した通り壇上へと一気に突っ込む。
やがて他の面子よりも高速で、壇上に無事着地する……と思われた瞬間。その時、何故か魔剣士の身体はフワリという甘い香りが包み込み込んだ。

魔剣士「ぷぎゅっ…!?」

ついては、押し潰されんばかりの圧力を顔面に、息が止まる。
何が起きたのか全くわからなかった魔剣士は、ブルブルと暴れて、"何か"を弾き飛ばした。

魔剣士「ぶはっ!!な、なんじゃあ!?」

確かに着地は成功したはずなのにと、まさか敵に捕まったのかと、すかさず構えを取ったが、実際には。

リッター「おぉ、俺の肉体を弾き飛ばすとは…中々やるな!?」
魔剣士「……あ?」
バンシィ「あ、お兄ちゃんだ。おめでとう……」

超動体視力、超筋力を利用したリッターによって、熱い抱擁をされただけだったようだ。

魔剣士「……おぇぇっ!」
リッター「む、何故に吐く?」
魔剣士「テメェ…!い、今…俺を抱きしめ……!」
リッター「おう、確かに!その反応…お前は面白いな!大好きだぞ!!」
魔剣士「止めろォ!ふっざけんな、なんでちょっと良い匂いしてんだ…何か香水かつけてんのかテメェ!」
リッター「ナチュラルだ」
魔剣士「うぜぇぇ……!ぶっ殺すぞコラ!!」
リッター「あらやだ、酷いわねぇ」
魔剣士「ふざけんな止めろ、洒落にならねぇ」
リッター「……だははははっ!!!」
魔剣士「笑うんじゃねー!!」

バンシィ「うーん、楽しそうだね……」

魔剣士「楽しくねぇ!!」
リッター「楽しいぞ!!」

……全く、調子が狂う。
ひとまず1次選考に合格したということでいいのか、魔剣士はドっと腰を下ろした。


…………………………………
【謝罪について】
========
2016年5月1日頃より、9-22話が公開状態となっていると報告をいただき、当該の話は非公開とさせていただきました。
詳細については「第一章」上記「謝罪」よりご確認いただければ幸いです。
こちらの問題について、9-13,14,15話の公開および9-22話まで5月3日より1日間隔の更新を行わせていただきます。
何卒よろしくお願い申し上げます。
========
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...