3 / 7
ジョン、怒りの何とかかんとか
しおりを挟む
半裸の変態魔法使い擬き、もといジョン・Dは激怒した。必ず、自分達をこのよく分からない世界に連れてきた張本人を倒さねばならぬと決意した。
ジョンには人間が異世界に行く理屈などわからぬ。ジョンはただのMoEプレイヤーであり、同時に重度のドララー―念の為に補足すると、ドラゴンを愛する人種の事だ―である。MoEにログインすれば、ただひたすらに息子と形容するほどに熱を入れている白竜、MoEでは『聖アグナスの白竜』と呼ばれるレアドラゴンに愛を注いで過ごしていた。
その愛の注ぐ様は、もはや心血を注ぐと形容する事すらおこがましい。手に入れるまでに大金のリアルマネーを注ぎ、育てるのにもリアルマネーをありったけ注ぎ、着実にかつ素早く育て上げた。相方の関西弁の伊達男には「そういうのは無課金だからこそ愛が伝わるんだろうがJK」と妬みの孕んだ煽られ方をされたが、元より使い道が見出だせない金を貯めていたところで意味などなかったし、何よりもこの手の育成が非常に不得手であった。なればこそ、彼は我が子を育てる親のように、金を使う事を渋らなかった。
それが、今ではどうだ。
「オオオ…オオオ…!」
泣き崩れるジョンの前に鎮座するのは、彼と同じぐらいの大きさを誇る卵だ。
真っ白を通り越して目が痛くなるほど漂白なそれが、一体何の卵であるかなど、ジョンには分かりきった事だった。
脳裏に浮かぶのは、彼が苦心して、可能な限り限界まで育て上げた筈の白竜との思い出。
卵から孵したてで、今だ何も知らぬ無垢な瞳を向けてきた、赤子の頃。
不安定なよちよち歩きで、可愛らしいと思う反面、心を鬼にしてなんとか自分で歩かせ、その度に胸を痛めた幼少期。
度重なる練習の末に、ようやく飛べるようになった、成長期。
その背に跨り、空を飛ぶ爽快感を知った、成熟期。
長きに渡る育成の末に、限界まで成長させきった白竜の荘厳なる姿を見た時のあの感動は、今でも忘れられない。
「うおォォォーーー!!!」
その叫び、まさしく獣の咆哮。姿は奇人変人、あるいは変態のそれだが、その身から発する悲壮感は、遠巻きに見てもよく分かる。
周りが密林なのも相まって、見た目はさながら、戦場の真っ只中にいる兵士の如し。膝をつき、両手を振り上げ、天を仰ぐ体勢なのは、きっと何かの偶然だろう。そうに違いない。
「何やってんだアイツ…」
「精神的な不安、及び憤怒の感情が見受けられます。極めて不安定故、今接触するのは得策ではないかと」
そして、そんな野獣の嘆きを、やや離れた位置にある茂みから隠れて見守る影二つ。ヴィクターとマキナの二人だ。
マキナは、表情こそ変化に乏しいものの、怒号と共に泣き叫ぶこの珍妙不可思議な変態に危機感を感じ、マスターであるヴィクターに忠告するが、ヴィクターはと言えば、逆に呆れ果てていた。
それなりの付き合いがある故、ジョンの奇行、もとい嘆きを見ても、「なんだ、いつも通りか」と納得できてしまうのだ。…一応、ジョンの名誉の為に言わせてもらうと、彼は別にいつも嘆いているわけではないのであしからず。それを言うなら、ヴィクターの方がよほど嘆いているだろう。主にマキナがゲットできなかった頃は。嘆く様で言えば、今のジョンとどっこいどっこいと言ったところか。
「いや、大丈夫だって。なんやかんやで俺ら、まぁその、トモダチだし?」
「実に説得力に欠ける説明ですが…ここはマスターを信用すべきと判断します」
「そーそー、それでいいのよっと」
軽い調子でそんな風に返すと、ヴィクターは茂みから飛び出し、悠々とジョンの元へと歩いていく。
後に残されたマキナは、どこか虚ろなその赤い瞳で、ただ静かに事の成り行きをただ見守っていた。
それから程なくして、ヴィクターがマキナを引き連れている事を知ったジョンが、裏切られたと言わんばかりの形相で、しばらくの間怒り狂ってヴィクターをボコボコにし、それを止めようとマキナが過剰に対応しようとした結果、更なるカオスに陥ってしまったのは言うまでもない。
ジョンには人間が異世界に行く理屈などわからぬ。ジョンはただのMoEプレイヤーであり、同時に重度のドララー―念の為に補足すると、ドラゴンを愛する人種の事だ―である。MoEにログインすれば、ただひたすらに息子と形容するほどに熱を入れている白竜、MoEでは『聖アグナスの白竜』と呼ばれるレアドラゴンに愛を注いで過ごしていた。
その愛の注ぐ様は、もはや心血を注ぐと形容する事すらおこがましい。手に入れるまでに大金のリアルマネーを注ぎ、育てるのにもリアルマネーをありったけ注ぎ、着実にかつ素早く育て上げた。相方の関西弁の伊達男には「そういうのは無課金だからこそ愛が伝わるんだろうがJK」と妬みの孕んだ煽られ方をされたが、元より使い道が見出だせない金を貯めていたところで意味などなかったし、何よりもこの手の育成が非常に不得手であった。なればこそ、彼は我が子を育てる親のように、金を使う事を渋らなかった。
それが、今ではどうだ。
「オオオ…オオオ…!」
泣き崩れるジョンの前に鎮座するのは、彼と同じぐらいの大きさを誇る卵だ。
真っ白を通り越して目が痛くなるほど漂白なそれが、一体何の卵であるかなど、ジョンには分かりきった事だった。
脳裏に浮かぶのは、彼が苦心して、可能な限り限界まで育て上げた筈の白竜との思い出。
卵から孵したてで、今だ何も知らぬ無垢な瞳を向けてきた、赤子の頃。
不安定なよちよち歩きで、可愛らしいと思う反面、心を鬼にしてなんとか自分で歩かせ、その度に胸を痛めた幼少期。
度重なる練習の末に、ようやく飛べるようになった、成長期。
その背に跨り、空を飛ぶ爽快感を知った、成熟期。
長きに渡る育成の末に、限界まで成長させきった白竜の荘厳なる姿を見た時のあの感動は、今でも忘れられない。
「うおォォォーーー!!!」
その叫び、まさしく獣の咆哮。姿は奇人変人、あるいは変態のそれだが、その身から発する悲壮感は、遠巻きに見てもよく分かる。
周りが密林なのも相まって、見た目はさながら、戦場の真っ只中にいる兵士の如し。膝をつき、両手を振り上げ、天を仰ぐ体勢なのは、きっと何かの偶然だろう。そうに違いない。
「何やってんだアイツ…」
「精神的な不安、及び憤怒の感情が見受けられます。極めて不安定故、今接触するのは得策ではないかと」
そして、そんな野獣の嘆きを、やや離れた位置にある茂みから隠れて見守る影二つ。ヴィクターとマキナの二人だ。
マキナは、表情こそ変化に乏しいものの、怒号と共に泣き叫ぶこの珍妙不可思議な変態に危機感を感じ、マスターであるヴィクターに忠告するが、ヴィクターはと言えば、逆に呆れ果てていた。
それなりの付き合いがある故、ジョンの奇行、もとい嘆きを見ても、「なんだ、いつも通りか」と納得できてしまうのだ。…一応、ジョンの名誉の為に言わせてもらうと、彼は別にいつも嘆いているわけではないのであしからず。それを言うなら、ヴィクターの方がよほど嘆いているだろう。主にマキナがゲットできなかった頃は。嘆く様で言えば、今のジョンとどっこいどっこいと言ったところか。
「いや、大丈夫だって。なんやかんやで俺ら、まぁその、トモダチだし?」
「実に説得力に欠ける説明ですが…ここはマスターを信用すべきと判断します」
「そーそー、それでいいのよっと」
軽い調子でそんな風に返すと、ヴィクターは茂みから飛び出し、悠々とジョンの元へと歩いていく。
後に残されたマキナは、どこか虚ろなその赤い瞳で、ただ静かに事の成り行きをただ見守っていた。
それから程なくして、ヴィクターがマキナを引き連れている事を知ったジョンが、裏切られたと言わんばかりの形相で、しばらくの間怒り狂ってヴィクターをボコボコにし、それを止めようとマキナが過剰に対応しようとした結果、更なるカオスに陥ってしまったのは言うまでもない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、生命を懸けて鬩ぎ合い、幾度も涙を流す旅路の中で自分の在り方を探す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※基本週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開中(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる