異世界嫁探し紀行 ※ただし人外に限る

Mr.K

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ジョン、怒りの何とかかんとか

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 半裸の変態魔法使い擬き、もといジョン・Dは激怒した。必ず、自分達をこのよく分からない世界に連れてきた張本人を倒さねばならぬと決意した。
 ジョンには人間が異世界に行く理屈などわからぬ。ジョンはただのMoEプレイヤーであり、同時に重度のドララー―念の為に補足すると、ドラゴンを愛する人種の事だ―である。MoEにログインすれば、ただひたすらに息子と形容するほどに熱を入れている白竜、MoEでは『聖アグナスの白竜』と呼ばれるレアドラゴンに愛を注いで過ごしていた。
 その愛の注ぐ様は、もはや心血を注ぐと形容する事すらおこがましい。手に入れるまでに大金のリアルマネーを注ぎ、育てるのにもリアルマネーをありったけ注ぎ、着実にかつ素早く育て上げた。相方の関西弁の伊達男には「そういうのは無課金だからこそ愛が伝わるんだろうがJK」と妬みの孕んだ煽られ方をされたが、元より使い道が見出だせない金を貯めていたところで意味などなかったし、何よりもこの手の育成が非常に不得手であった。なればこそ、彼は我が子を育てる親のように、金を使う事を渋らなかった。

 それが、今ではどうだ。

「オオオ…オオオ…!」

 泣き崩れるジョンの前に鎮座するのは、彼と同じぐらいの大きさを誇る卵だ。
 真っ白を通り越して目が痛くなるほど漂白なそれが、一体何の卵であるかなど、ジョンには分かりきった事だった。

 脳裏に浮かぶのは、彼が苦心して、可能な限り限界まで育て上げた筈の白竜との思い出。

 卵から孵したてで、今だ何も知らぬ無垢な瞳を向けてきた、赤子の頃。

 不安定なよちよち歩きで、可愛らしいと思う反面、心を鬼にしてなんとか自分で歩かせ、その度に胸を痛めた幼少期。

 度重なる練習の末に、ようやく飛べるようになった、成長期。

 その背に跨り、空を飛ぶ爽快感を知った、成熟期。

 長きに渡る育成の末に、限界まで成長させきった白竜の荘厳なる姿を見た時のあの感動は、今でも忘れられない。

「うおォォォーーー!!!」

 その叫び、まさしく獣の咆哮。姿は奇人変人、あるいは変態のそれだが、その身から発する悲壮感は、遠巻きに見てもよく分かる。
 周りが密林なのも相まって、見た目はさながら、戦場の真っ只中にいる兵士の如し。膝をつき、両手を振り上げ、天を仰ぐ体勢なのは、きっと何かの偶然だろう。そうに違いない。



「何やってんだアイツ…」
「精神的な不安、及び憤怒の感情が見受けられます。極めて不安定故、今接触するのは得策ではないかと」

 そして、そんな野獣の嘆きを、やや離れた位置にある茂みから隠れて見守る影二つ。ヴィクターとマキナの二人だ。
 マキナは、表情こそ変化に乏しいものの、怒号と共に泣き叫ぶこの珍妙不可思議な変態に危機感を感じ、マスターであるヴィクターに忠告するが、ヴィクターはと言えば、逆に呆れ果てていた。
 それなりの付き合いがある故、ジョンの奇行、もとい嘆きを見ても、「なんだ、いつも通りか」と納得できてしまうのだ。…一応、ジョンの名誉の為に言わせてもらうと、彼は別にいつも嘆いているわけではないのであしからず。それを言うなら、ヴィクターの方がよほど嘆いているだろう。主にマキナがゲットできなかった頃は。嘆く様で言えば、今のジョンとどっこいどっこいと言ったところか。

「いや、大丈夫だって。なんやかんやで俺ら、まぁその、トモダチだし?」
「実に説得力に欠ける説明ですが…ここはマスターを信用すべきと判断します」
「そーそー、それでいいのよっと」

 軽い調子でそんな風に返すと、ヴィクターは茂みから飛び出し、悠々とジョンの元へと歩いていく。
 後に残されたマキナは、どこか虚ろなその赤い瞳で、ただ静かに事の成り行きをただ見守っていた。

 それから程なくして、ヴィクターがマキナを引き連れている事を知ったジョンが、裏切られたと言わんばかりの形相で、しばらくの間怒り狂ってヴィクターをボコボコにし、それを止めようとマキナが過剰に対応しようとした結果、更なるカオスに陥ってしまったのは言うまでもない。
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