囚愛-shuai-

槊灼大地

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囚愛Ⅲ《エリックside》

囚愛Ⅲ《エリックside》10

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「―…私が雅様を愛する度に、あなたが生きていることに感謝してしまう。雅彦様があなたを守ってくださったことにも」




雅様にとって雅彦様の死はタブーなのに…



「私は…雅彦様を守れなかった。私が死ぬべきだったのに。幸せになってはいけないのに…雅様がいてよかった、と思う度に生きている自分の存在が憎らしくなるのです」




幼少期から、雅様はあの時のことを思い出すと過呼吸になり震えてしまう。




4歳の雅様は、雅彦様が目の前で射殺されたあの時の光景を鮮明に覚えていた。



日によってはフラッシュバックが起こり、ショックで声が数十日出せなくなることもあった。




日本にきてからダンスを習い始め、数年かけて普通に声が出せるようになった。




だから皆、雅様の前では避けてきた話題。





「《―…エリックの…せいじゃないよ。父さんは…俺を庇ったから》」




雅様はあの時と同じように、呼吸を乱して、少し体を震わせ英語で返してきた。



「《違います。私のせいです。私がスイスに行かなかったから》」


「《違うよ。俺が…ギャングに絡まれたから…》」




違うと言い聞かせても、落ち着くには時間がかかる。



雅彦様の死から20年近く経とうとしていても、こうなってしまう可能性はあったのに。



私は雅様を抱きしめて背中をさする。



「《思い出させてしまってごめんなさい雅様。あれは私のせいです》」



私が肯定してしまったら、雅様が責任を感じてしまう。



あなたにそんな辛い想いをさせてはいけない。



「《雅様…大丈夫…大丈夫ですから…ゆっくり呼吸をしてください》」



「《ごめんエリック…ずっと苦しめて…俺のせい…何も知らずに…ごめん…》」



「《雅様。大丈夫ですから。深呼吸をしてください。もう今日は一緒に寝ましょう》」



「《…ごめん…俺…ごめん…》」



「《大丈夫です。私が傍にいますから。明日もあなたの声が聞けますように―…》」



数年ぶりにあの台詞を言いながら、泣き止まない雅様の背中を優しく擦る。



泣きながら震える雅様を抱きしめながら、お互い眠りについた。













目が覚めると、目の前には見慣れた光景があった。




ベッドの上?
私は寝たのか?




テリーが酔いつぶれて、雅様と飲み比べて…途中からの記憶が全くない。





ガンガンする頭と、痛い体を起こして辺りを見渡す。






―…なんだこの残骸は




全裸…秘部にぬるりとした精液らしきもの、身体中にあるキスマーク、乱れているシーツ。




シャワーを浴びながら痛い頭をフルに回転させ、予想した出来事を正解にするためにテリーが寝ているリビングへ向かった。




リビングのソファーですやすやと寝ているテリーに馬乗りになり、叩き起こす。




「ん…エリック?」



テリーは何事だと驚いた顔をしていたが、私はまだ眠け眼のテリーをドイツ語で淡々と問いかける。



「“テリー、何も言わずに私の言葉にイエスと言ってくれ。イエス以外は認めない”」


「“どうした?”」


「“昨晩、私を抱き潰したな?イエス以外は認めない。イエスと言え。イエスだな?”」



「“言えるかぁー!”」



昨日アルは予定があるからダンス大会が終わってからは帰宅していた。



飲んでいたのはテリー、雅様、私だけだ…



「“お前じゃないとしたら誰だ…”」


「“そんなの決まって…”」


「“そうか…強姦魔が窓から侵入したんだな。私は寝込みを教われたのか。何か盗まれていないか確認しないと”」



施錠はしている。


セキュリティもきちんとしている。



セキュリティを突破できるハッカー集団でもいたのか…



「”おいおいそんなわけあるか”」


「“だとしたらおかしい。なぜ私がこんな状態なのか”」


「“どう考えても雅様だろ”」


雅様だと?
あり得ない。
あり得てはいけない。




「おはよー!」


「“おはようございます雅様”」



テリーと会話をしていると、雅様がリビングへ来て冷蔵庫から牛乳を取り出して飲み始めた。



そんな雅様に朝食を用意するべく、テリーがキッチンへと向かう。



3人分の軽めの朝食を用意している途中でテリーは私に近づき、座っている雅様を指差し耳元で言う。




「“ほら見ろよ。雅様の首筋にもキスマークがついてる”」


「“強姦魔は雅様も襲ったのか…警察を呼ぼうテリー。これは事件だ”」


「“いい加減認めたらどうだエリック?”」


「“有り得てはいけない…”」



ニヤニヤしながらテリーは再び朝食の準備をし始めた。



私はコーヒーを淹れて、雅様の対面に座った。




「エリック、二日酔い?」


「ええ。頭が痛いですし、酔いつぶれてからの記憶がありません」


「何も覚えてないの?」


「はい、全く覚えておりません」


「俺も何も覚えてないんだ」




笑顔で私を見つめながらトーストを食べる雅様から、私は目が離せなかった。




一体昨夜なにがあったのだろうか。




雅様も私も、記憶がないせいかお互いその話題には触れることなく1日が終わった。


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