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糖度11*戦う女!
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楽しかったゴールデンウィークが終わり、通常通りの職場。
綾美は行き当たりばったり旅行だったらしいけれど、『スマホで検索しながらの電車旅もスリルがあって楽しかったよ』と言っていた。
デスクの上には、職場の皆からのお土産がバラエティ豊かに並んでいる。
甘いものが苦手な日下部さんは、自分の分を誰にも見つからないように私のバックに密かに入れた。
そんな楽しい雰囲気を壊すかの様に、休み明けから一週間後に事件が起きた。
あと僅かで定時時間となるのだが、先程まで仕事どころではなかった。
何故かと言うと私事の事件が2件起きていて、時は遡り、今日の朝の出来事───・・・・・・
出勤したら、私のデスクのパソコンの画面に怪文書が貼られていたのだ。
"秋葉は日下部部長と副社長の二人と付き合っていて二股している"とパソコンで打たれた文字の怪文書。
そんな事実はないので、即剥がしてゴミ箱へ捨てた。
企画開発部の皆の所にも貼られていた様だった。
日下部さんも機嫌が悪く「ふざけやがって」と言いながら、ゴミ箱に捨てていた。
午後になり、お昼から戻ると送信者不明な企画開発部の私宛に届いたメール。
"会議室を私物化して密会している"
「ゆかりちゃん…こないだのボードを傷つけた犯人なんじゃない?」
隣のデスクから佐藤さんが心配そうに声をかけてきた。
佐藤さんにも届いたらしい。
もしかしたら日下部さんにも綾美にも、企画開発部以外にも届いているのかもしれない。
すぐ様、「気にすんな」と言って日下部さんに肩を叩かれ、綾美にも慰められた。
やっぱり届いているんだ、皆に・・・。
更に15分後、
"副社長を上手く騙して社長に取り入って貰おうとする女は辞めさせろ"
というメールが届く。
顔色は真っ青になり、仕事どころではない。
こんなメールをされても事実無根なんだから、堂々としていれば良い。
でも、ダメージは大きくて心は悲鳴をあげ始めている。
「秋葉さん、気にしなくていいよ。秋葉さんがそんな人じゃないって皆分かってるから」
「協力して犯人捕まえよう!」
皆が声をかけてくれるけれど、震えが止まらない。
怖い。
怪文書よりもメールは履歴も残るし、不特定多数に送る事も出来る。
有澄にも日下部さんにも多大な迷惑と心労をかけているのは、確かだ。
どうしよう・・・、どうしよう。
顔の見えない相手に対して、何にも太刀打ち出来ない。
連鎖が大きくなる前に何とかしなくちゃいけないのに・・・何にも浮かばない。
「秋葉、早退するか?内容は事実と異なるが、ほとぼりが冷めるまで自宅待機。仕事は自宅でして良し!データ持ち出し可とする。責任は俺が取るから!」
日下部さんのデスクから声が聞こえたと思ったら、早退届けの用紙を手に持ち、チラつかせている。
心配そうに私を見て、上司印のところに印鑑を押してくれたので後は記入するのみ。
早退すれば逃げる事になり、何の解決策にもならない。
しかし、どうして良いかも分からないので従うまま、早退届けに記入しようとした時、誰かが企画開発部に入って来た。
「お疲れ様です」
皆が驚きを隠せず、ざわめき始めたのは副社長である有澄が入って来たからだった。
「秋葉さん、借りますね」
「え…!?ちょっと!?」
真っ先に私の元に向かい、ヒョイっと軽々しく私を持ち上げて企画開発部を立ち去る。
「降ろして!」
「エレベーターに乗ったらね」
咄嗟の出来事に顔が真っ赤になっていて、耳まで熱い。
バタバタと抵抗して降りようとするが、可愛い顔していても力は男性だから思う様に振り解けない。
「ど、どこ行くの?」
「俺の部屋。今、相良も居ないから」
俺の部屋って、"副社長室"!
めちゃくちゃ職権濫用してる。
「職権濫用したら、また言われちゃう…」
「言わせない。もう誰にも、ゆかりを傷つけさせない」
「有澄にもメールが届いたの?」
「流石に副社長のパソコンのアドレスは知らないだろうから届かなかったけど、秘書課に届いた。相良は送り主を捜索中」
エレベーターに乗っても手を繋がれて、逃げ出す事は出来ない状況。
有澄、少しイライラしてる。
唇を軽く咬み、伏し目がちな目が何かを睨みつけている様な表情に見える。
副社長室の扉を開けると、ふわりと紅茶の匂いがした。
「ゆかり専用のアールグレイ、俺が入れてみた。ギリギリ5分、あと少しでヤバかったね」
ティーポットの脇には砂時計、ティーカップセット2つ。
サラサラと落ちていく5分計の砂時計は、椅子に座った時には砂が落ちきっていた。
お客様用のソファーに並んで座ると、有澄がカップに紅茶を注ぐ。
大好きなアールグレイの香りが広がり、隣には有澄もいるし、安心感で心が浄化していく。
ひと口、アールグレイを口に含むとポロポロと涙が溢れ出す。
「ごめんなさい…あり、とにも、くさか、べさんにも、迷惑かけ、ちゃ…う…」
綾美は行き当たりばったり旅行だったらしいけれど、『スマホで検索しながらの電車旅もスリルがあって楽しかったよ』と言っていた。
デスクの上には、職場の皆からのお土産がバラエティ豊かに並んでいる。
甘いものが苦手な日下部さんは、自分の分を誰にも見つからないように私のバックに密かに入れた。
そんな楽しい雰囲気を壊すかの様に、休み明けから一週間後に事件が起きた。
あと僅かで定時時間となるのだが、先程まで仕事どころではなかった。
何故かと言うと私事の事件が2件起きていて、時は遡り、今日の朝の出来事───・・・・・・
出勤したら、私のデスクのパソコンの画面に怪文書が貼られていたのだ。
"秋葉は日下部部長と副社長の二人と付き合っていて二股している"とパソコンで打たれた文字の怪文書。
そんな事実はないので、即剥がしてゴミ箱へ捨てた。
企画開発部の皆の所にも貼られていた様だった。
日下部さんも機嫌が悪く「ふざけやがって」と言いながら、ゴミ箱に捨てていた。
午後になり、お昼から戻ると送信者不明な企画開発部の私宛に届いたメール。
"会議室を私物化して密会している"
「ゆかりちゃん…こないだのボードを傷つけた犯人なんじゃない?」
隣のデスクから佐藤さんが心配そうに声をかけてきた。
佐藤さんにも届いたらしい。
もしかしたら日下部さんにも綾美にも、企画開発部以外にも届いているのかもしれない。
すぐ様、「気にすんな」と言って日下部さんに肩を叩かれ、綾美にも慰められた。
やっぱり届いているんだ、皆に・・・。
更に15分後、
"副社長を上手く騙して社長に取り入って貰おうとする女は辞めさせろ"
というメールが届く。
顔色は真っ青になり、仕事どころではない。
こんなメールをされても事実無根なんだから、堂々としていれば良い。
でも、ダメージは大きくて心は悲鳴をあげ始めている。
「秋葉さん、気にしなくていいよ。秋葉さんがそんな人じゃないって皆分かってるから」
「協力して犯人捕まえよう!」
皆が声をかけてくれるけれど、震えが止まらない。
怖い。
怪文書よりもメールは履歴も残るし、不特定多数に送る事も出来る。
有澄にも日下部さんにも多大な迷惑と心労をかけているのは、確かだ。
どうしよう・・・、どうしよう。
顔の見えない相手に対して、何にも太刀打ち出来ない。
連鎖が大きくなる前に何とかしなくちゃいけないのに・・・何にも浮かばない。
「秋葉、早退するか?内容は事実と異なるが、ほとぼりが冷めるまで自宅待機。仕事は自宅でして良し!データ持ち出し可とする。責任は俺が取るから!」
日下部さんのデスクから声が聞こえたと思ったら、早退届けの用紙を手に持ち、チラつかせている。
心配そうに私を見て、上司印のところに印鑑を押してくれたので後は記入するのみ。
早退すれば逃げる事になり、何の解決策にもならない。
しかし、どうして良いかも分からないので従うまま、早退届けに記入しようとした時、誰かが企画開発部に入って来た。
「お疲れ様です」
皆が驚きを隠せず、ざわめき始めたのは副社長である有澄が入って来たからだった。
「秋葉さん、借りますね」
「え…!?ちょっと!?」
真っ先に私の元に向かい、ヒョイっと軽々しく私を持ち上げて企画開発部を立ち去る。
「降ろして!」
「エレベーターに乗ったらね」
咄嗟の出来事に顔が真っ赤になっていて、耳まで熱い。
バタバタと抵抗して降りようとするが、可愛い顔していても力は男性だから思う様に振り解けない。
「ど、どこ行くの?」
「俺の部屋。今、相良も居ないから」
俺の部屋って、"副社長室"!
めちゃくちゃ職権濫用してる。
「職権濫用したら、また言われちゃう…」
「言わせない。もう誰にも、ゆかりを傷つけさせない」
「有澄にもメールが届いたの?」
「流石に副社長のパソコンのアドレスは知らないだろうから届かなかったけど、秘書課に届いた。相良は送り主を捜索中」
エレベーターに乗っても手を繋がれて、逃げ出す事は出来ない状況。
有澄、少しイライラしてる。
唇を軽く咬み、伏し目がちな目が何かを睨みつけている様な表情に見える。
副社長室の扉を開けると、ふわりと紅茶の匂いがした。
「ゆかり専用のアールグレイ、俺が入れてみた。ギリギリ5分、あと少しでヤバかったね」
ティーポットの脇には砂時計、ティーカップセット2つ。
サラサラと落ちていく5分計の砂時計は、椅子に座った時には砂が落ちきっていた。
お客様用のソファーに並んで座ると、有澄がカップに紅茶を注ぐ。
大好きなアールグレイの香りが広がり、隣には有澄もいるし、安心感で心が浄化していく。
ひと口、アールグレイを口に含むとポロポロと涙が溢れ出す。
「ごめんなさい…あり、とにも、くさか、べさんにも、迷惑かけ、ちゃ…う…」
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