縁日ヶ丘物語

尼子猩庵

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手繰り戻して恩師の洋館 4

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 アカマツ林との境界はつるばらの這う鉄の柵で区切られてあったが、その柵の手前、裏庭の奥隅に煉瓦の壁が建っていて、道はそこまで伸びていた。

 近づいて見上げた。窓のない二階建てくらいの巨大な四角柱であった。ぐるりと回ってみると木の扉がついているので鍵穴から中を覗いた。

 向こうの壁が見えるきりなので、取っ手に手をかけて引くと、アーチ型の扉は開いた。それは煉瓦の壁で囲まれた四角な庭園だった。

 中からは空がことさら青かった。地面の石畳が軽く苔むしていた。四方の隅には大きさの違う色々の壺がずらりと並べ置かれて、そこから伸びたつる草が壁の内側に這っていた。中央に石造りの丸い池があり、かすかにちょろちょろ水音がしているのを覗くと、どのように引いているのかゆるやかな流れの中にヒレのたいそう長い巨大な紅白の金魚が一尾泳いでいた。

 美那子がかわゆく愛でて「コメットだ」とつぶやいた。「こんなに大きくなるんだねェ」

 池からは常時少量の水があふれ出し、石畳の模様に沿うて四隅の溝へ注ぎ込んでいた。わりに深い溝には青メダカが泳いでいた。

 ベンチに並んで腰かけた。壁のつる草が黄色い花を咲かせていた。

 日が傾いてお屋敷に戻ると、安喜子さんは起きていて、花房のかたちをした薄明るいシャンデリアが灯されていた。それから手料理をふるまってくれた。手伝わせてはくれなかったので大人しく座ってご馳走になった。

 思いのほか「和」な夕飯に舌鼓を打ち、デザートに果樹園からとれたサクランボをいただいて、いつしかブランデーなど飲みながら、安喜子さんが話し始めた。


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