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舞い上がっていた埃が沈み、新たに積もり始める 2
しおりを挟むある日命子が花の水やりにベランダへ出て、そのまましばし佇んでいるとおとなりのお姉さんもベランダへ出て来た気配であった。
サンダルのこすれる音がほぼ定期的にしているので洗濯物を干すか取り入れるかしているのだろうと察しられた。
挨拶に出向いた時には着古した校章つきのジャージ姿だった。一度郵便物を預かっておいてくれたのを届けに来てくれた際にはブラジャーもせずに薄いTシャツで、下はボクサーパンツといういでたちで現れたお姉さんであった。
命子は今から中へ戻ると物音で以て「こちらが出たから入るのか」と思われると嫌だったし、このまま息をひそめていてなにか、せきだのくしゃみだの出てしまって「なんだずっといたのか」と思われるのも嫌で、どうしようと迷っているうちに息をひそめ続ける恰好となり、唾を飲み込むのさえ我慢して静かにしていた。
たぶん命子には気づかずに干すか取り入れるかし続けていた。洗濯ばさみの音の順番的に取り入れているらしかった。
終わると煙草を吸うだろうか? よく煙草を吸っているお姉さんだった。網戸を開けてサンダルを鳴らし、今出て来たかのような音を立ててみたらどうだろうと思いついたけれど実行には移さなかった。
食器用洗剤を借りに来たこともあった。誰か訪ねて来た時に応対するのは美那子の役目だったけれど、その時は美那子がトイレに入っていたので命子が出た。(美那子は引っ越して以来トイレのダイヤが乱れていた。牛乳もとつぜんあからさまにダメになって、シリアルも豆乳で食べていた。)お姉さんはそのまま立ち話する姿勢で、命子をさっと全身見たあと、
「もう一人の人って、モデルさんかなにか?」
命子は渡した洗剤を見つめながら、
「化粧品の販売をしてます」
「ふうん。どこの?」
それでブランド名を言うと、
「へえ。高いから使わないけど、やっぱりいいの?」
それからどのように話したか、命子はあとで美那子に教えたはずだけれども今自分ではほとんど覚えていなかった。同居人のおじさんについて、旦那じゃないのよと言っていたことは覚えている。美那子と命子のことをどのように判断しているかわからなかったけれど、詮索する気はなさそうだった。
ようやく煙草を吸い終わったお姉さんが中へ入ったので、じつは入ったふりをして聞き耳を立てているのではなかろうかとしばらく疑ったあと、命子も入った。寝ころんで本を読んでいた美那子が命子のぐったりした様子を見て、なにか言い出すのを待っていた。命子も美那子がなにか言い出すのを待っていた。
やがて命子は言葉を交わさないまま美那子のとなりに寝ころび、一緒に読み始めたけれど、美那子が向こう向きに転がって締め出されたので、仕返しに掃除機をかけた。
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