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舞い上がっていた埃が沈み、新たに積もり始める 4
しおりを挟む海沿いをしばらく東へ進み、鉄橋を渡って、大きな倉庫が立ち並ぶ埋め立て地に入った。詰所の前に停まると、終わるころにまた迎えに来ると言って社長は帰って行った。
階段をカンカン上って詰所に入り、貴重品を置いて貸し出された軍手をつけた。外へ出てラジオ体操をし、トラックの盛んに行き来する広い道路をぞろぞろ歩いて倉庫に入った。
その巨大な冷蔵庫の中で、積み上げられた段ボールの束を断ち切ってはベルトコンベヤーに乗せて金属探知機に通し、元通り積み上げて束ね直してはフォークリフトに託して、それを延々続けた。浮浪者然とした老人たちはだらだら働き、若者たちは半数ほどが荒々しく猛烈に動き回って、半数ほどはだらだら働いていた。
誰も美那子と命子に話しかけて来なかった。命子はあちこちの作業で休みなく床に散るゴミ屑を邪魔にならないように拾って回った。それだけを仕事にしているのは命子のほかにももう一人、耳のみならず鼻や唇や眉にもピアスをつけた若者がいたけれど、一言も会話しなかった。
一度休憩をはさみ、昼になると詰所へ戻った。大鍋のカレーをすくっていいのはオタマ二杯までということだった。食べ終わって昼休みの残り時間、若者たちはわりにバラバラで、誰かと電話したり、べたつくテーブルに突っ伏して眠ったりしていた。老人たちは集まって、あちこちのソープランドについて考究していた。
帰りの車の中で社長からまた明日も来てくれと言われた。それで次の日も行った。二日目の帰りにホームセンターへ行って自前の作業服と軍手と安全靴を買い、ヘルメットと頭のあいだにはさむ手ぬぐいを買った。
三日目から風邪の治ったとなりのおじさんが一緒に車で事務所まで送ってくれて、事務所からは社長のセダンで詰所へ通った。おじさんはぎゅう詰めワゴン車を運転していた。
四日目は違う埋め立て地で、上司に当たる会社の若者たちから怒号が飛んでいた。この若者たちは全員たいへん猛烈に働いていた。老人たちは怒号を無視して猥談し、ぐちゃぐちゃに崩れたために捨てられた段ボールからバナナを取り出して勝手に食べていた。命子は老人たちがいなくなると段ボールを引きずって片づけた。
休憩時間、上司に当たる会社の若者たちが話しかけて来るのを避けて、美那子と命子は隅っこにいた。美那子が缶コーヒーを飲みながら、
「あんがいやってけそうね」と言った。「三日坊主の壁は越えたわ」
命子は瞳を輝かせたと思うと一転して陰り、
「――でも美那子さんは、百貨店に戻ったほうが給料も高いし、危なくないし、ケバくならないよ。ここにいたらケバくなるよ」
それから美那子の未来のすがたを探してあちこち見回した。その時はいなかったけれど、違う事務所から同じ詰所に通っている女性が三人ばかりいる、その中の一人のことを思い浮かべて言っていた。美那子はかぶりを振って、
「もう少し慣れて落ち着いたら、フォークリフトの免許取るよ。そしたら給料も上がるし、それにケバくなったっていいじゃんか」
「フォークリフトなんて足りてるよ」
「私のほうが効率上げられるって証明すればいいの。明らかにダメな人いるじゃん。人間的に。あれから横取りしてやるわ」
「新米がそんな出過ぎた真似したら、やられちゃうかも」
「その時はその時で作戦立てましょ。大丈夫、勝ちゃいいのよ」
などと言ってのける、そのような気概は帰宅すれば即座になくなる儚いものと知りつつも、ここで働いているあいだは不可欠なカラ元気なのだった。
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