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大地が揺れて、古い蓋がズレる 1
しおりを挟む舞が子どもを授かった。四人でお祝いをした。ほんの数日見ない間に良助が男っぷりを上げていてちょっと誰だかわからないくらいだった。
舞は美那子と会うとたんに退行したけれど、それでもどことなく声のトーンは低まり、言葉も以前より少ない弾数で近くの的ばかり撃つらしかった。
二人の変化に対してこちらはどうであろうと考えると、そのようなことが以前よりどうでもよくなっているという変化に気づくばかりであった。
舞のおなかは見た目ではまだぜんぜんわからなかった。美那子はおのが性別に具わる根源的ななにかが嗅ぎ取りはしないかと眺め回したけれど、すでに報告を受けた先入観は消されなかった。
母親に手を引かれて歩いている小さな女の子がすれ違いざま舞に向かってばいばいと手を振った。舞は手を振り返して、
「最近よくばいばいされるの。きっとおなかにいるからだよ。わかるんだねェ」
「だけど舞は前からよくばいばいされてたね」
と美那子が言うと、舞は軽く唇を尖らせて、
「そうだけど、前とは違うの。微妙なニュアンスがね。今はおなかの赤ちゃんにばいばいするんだよ。わかるんだよ絶対。あたしたちはもう大人だからわからなくなったの」
「そんなことあるかね」と良助が言うと美那子が
「あると思うよ。私がお母さんのおなかにできた時にね、」と話し始めたが、「私ができた時」という言い方が舞と命子の気に入って腰を折られた。
また戻して、「お母さんはまだ気づいてなかったんだけど、うちの兄貴を保育所に迎えに行った時に、先生から『二人目ができたんじゃない?』って聞かれたんだって。兄貴がなんだか甘えん坊になったからわかったんだって。調べてみたらほんとに私ができてたの」
「不ッ思議」と言ってから舞はむつかしい顔で考え込んで、「小さい子だけわかるとかって、なんか企んでるような気がするね」
「なにを企んでるの」
「わかんないけど、こう人類がどんどん進歩して、でも生まれたばかりの子どもたちは――っていうか、あたしたちの中にもその部分はまだ残ってて、隠れてるの。それでひそかに会議してるんだけど、小さい子たちはそれを上手に隠せてないんだよ」
「会議はどういう結論になるの?」
「最後はもちろん、いきなり人類がぜんぶ乗っ取られて、めっちゃ平和になるの」
ところで良助は、最初から舞の説(子どもがおなかにばいばいするというもの)に、異性らしい感激を覚えていたのだったが、会話の成り行きで「そんなことあるかね」と疑問視する役回りになってしまったことを悔やんでいたとは、誰も知らないことだった。
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