13 / 31
13 王都へ行きさえすれば
しおりを挟む
今度は息苦しさではなく、心地よさに目が覚めた。
温かな温もりが傍らにあり、紫沫はその温もりへしがみついた。
「ふっ。シブキ、気付いたか?」
「ふぇ?」
情けない声が出て、目を開けると琅の顔があった。
「わっ。」
胸元に抱えられる体勢で琅に包まれていた紫沫は次の瞬間飛び起きて琅から身体を離した。
と同時に紫沫の頭が琅の顎に見事にぶつかり、アッパーカットを決めてしまった。
「いてぇっっ。」
「う~っ。」
石頭だと自分でも思っていた紫沫はぶつかった衝撃に顎を抑えて悶える琅の姿にアワアワと狼狽えた。
琅の耳は毛が逆立ち、ピクピクと震える姿にとても痛いのだと知れる。
「ご、ごめっ。大丈夫っ。」
「ううう~。」
未だ琅は顎をさすり、痛みを逃がしている。そんな琅の姿に申し訳なさそうに謝って紫沫は周りを見渡した。
「あ、あれ。ここって・・・。」
「おー、いてっ。シブキ、お前石頭だなぁ~。」
琅はやっと痛みが引いてきたのか、口を開けたり閉じたりして具合を確かめている。
「ああ、風呂場にずっといるわけにはいかないからな。取り合えず着替えさせて部屋まで連れてきた。」
琅の説明の通り、紫沫の格好はパジャマ代わりにしているローブ状の前合わせ服で、小柄な紫沫の足首まである長いワンピースのような服だった。
絹のような綿のような手触りで、思いの外柔らかく普段も着ていた程心地良いのだが、如何せん丈の長さが邪魔をして就寝着として利用している。
自分が気を失った後で身体を拭いて着替えさせて、その上抱えてここまで連れて来てくれてのだろう。
またしても迷惑をかけてしまった・・・。
そう思って落ち込みそうになった紫沫だったが、そう言えばどうして意識を失う事になったのか、と記憶を辿って琅との事を想い出した。
「あっ、ああっ。」
途端に顔にカーッと血が昇り、頬が信じられないぐらい熱くなった。
(ぼっ、僕っ。あっ、あんなっ事っ。琅とっ)
キスをしたのも初めてなら、他人と肌を合わせた事もなかった紫沫には刺激が強すぎた。
顎を摩るその大きな手が自分の肌に触れ、パカパカ開けている口元が自分のソレと合わさって舌を絡めあった。
思い出すだけで恥ずかしくて、琅の姿が直視出来ない。
紫沫はくるっと反対を向いて琅を視界から追い出すと、身体を丸めてとにかく小さく小さくなるように縮こまった。
「ぶっ。おまっ何だそれ。」
とにかく琅の姿を見たくなくて、思い付く限りで一番手っ取り早い逃げ方をしたのに、琅はそんな紫沫を見て笑うのだ。
「おっ、お構いなくぅ・・・。」
とにかく恥ずかしい。
あんな、誰にも見せた事のない痴態を眼前に晒して琅と一緒に果ててしまった。
脳裏には琅の艶めいた甘い声音が甦ってまるでもう一度耳元で囁かれているようだ。
「おーい。おーい、シブキ。」
「やっ、ほ、本当にお気遣いなくぅ・・・。」
どうにも顔を見れなくて伏せた状態でそう応えれば、琅はクスッと笑うと紫沫の脇腹に手を伸ばした。
「ひゃっぁんっ。」
紫沫のくすぐったがりの一番の急所である脇腹をそろりそろりと撫でられる。
その触れ方は甘い感覚を呼び起こすよりも先にこそばゆく、くすぐったくてしょうがない。
こちょこちょこちょ、こちょこちょこちょ
それは悪戯好きな年下の知り合いが誰彼構わず襲い掛かって笑いの渦に巻き込まれた時のように。
とにかくくすぐったくて我慢出来ない。
うずうずと沸き上がるくすぐったい感覚はどんなに頑張って琅の顔を見ないように臥せっていても一瞬にしてその牙城を崩した。
「ひゃっ、はははっは、ははっ、はははっ。やっ、やめっ、はははっ、ははっ。」
ゴロゴロと転がるように身を捩って琅の手から逃れようとする。
それでも執拗に追いかけてくる琅の手は何度も何度もこしょこしょと脇腹を撫で、紫沫を笑わせる。
「ひー、ひー、もっ、もうっやめっ。苦しいからっ、もう、やめっ。」
笑いながらギブアップのように両手を挙げて琅へ向き合う。
眼が覚めた時の恥ずかしさは今の笑いで霧散したようだった。
「ごめっ。もう降参。降参するからっ。」
紫沫の笑顔に琅もやっと手を止めて、正面から紫沫を見つめた。
「ん、大丈夫だな。何処か痛かったり辛かったりする所ないか?」
ドキン
そんなの反則だよ。
急に真面目な顔をして、僕の心配をしてくれるなんてさ。
誰かに心配される経験もあまり持たない紫沫にとって、琅の優しさは嬉しい反面少し不可解な物でもあった。
たまたま一緒に行動する事になった自分を琅がどうして心配するのだろうか、紫沫には分からない。
きっと親切で困っている人を放って置けない獣人なんだろう、と単純に素晴らしい人だ、と思う。
なのに、不意に示される優しさに紫沫の心臓はドキドキと音をたて始める。
それは今まで感じた事のないリズムを刻んでいて。
紫沫の胸をきゅうっとさせる。
その胸の痛みの原因は何なのか。
紫沫は原因を探るのが怖くて蓋をする。
今はまだいいよね。
琅と一緒に王都まで行って。
迷い人登録してもらって。
とにかくこの世界で自分1人で生活できるようにならないと。
今のまま琅に何でもかんでも全てを頼ってるようじゃ、琅に対して申し訳ないし、自分自身が何の価値もないように思えるから・・・。
宙ぶらりんな気持ちをそのままの状態にして、紫沫はこのまま流れに任せる道を選んだのだった。
***
次の日。朝早く宿屋を出た2人は、王都へ向かう最後の山道を登っていた。
ここは最後の難所と言われていて、賊や獰猛な獣たちが王都を襲わないように断崖絶壁のような場所が何か所か設けられている山だった。
琅が言うには、自分たちの力を過信していた獣人たちは数百年前その過信ゆえに敵からの侵入を許し、内部からの攻撃で壊滅状態に陥ったそうだ。
絶対絶命のピンチを救ったのは力の強い獣人の王でもなく。
大きな知恵を持つ魔力を持った獣人でもなく。
頭上から降ってきた一筋の雨だったそうだ。
雨は何日も何日も降り続き、見る間に大雨になった。
雨粒は土壌に染み渡り、木々を腐らせ、全てを押し流してしまった。
そんな木や土が染み込まず流れ落ちなかった場所が今も残る断崖絶壁の崖部分。
そして木々が生えそろっている場所が流された土が溜まって山となった場所。
土壌は敵も味方も同様に巻き込んで全てを流し、戦いは誰も勝者のいない終結を見た。
残ったのはただの平原のみで、辛うじて生き残った獣人や獣たちと話し合い棲み分けが行われた結果、今の状態に落ち着いたという事だ。
紫沫は元々この世界の住人ではないので、創世神話のような話を聞かされてもおとぎ話のようなイメージしか生まれなかったが、きっとこの世界に生きている獣人や獣たちのルーツはそこにあるのだろうと思った。
ルーツか・・・。
と、出生さえ本当の事を知らない紫沫は誇らしそうに紫沫に話して聞かせる琅の顔を見ながら一抹の寂しさを感じてもいた。
自分がどこに帰属するのか、元々あやふやだった事実が異世界に飛ばされた事で更にあやふやなものになってしまったように感じたからだ。
それでも王都に行きさえすれば。
迷い人として登録さえしてもらえば。
きっとこの先の自分の生き方が見えてくる。
そんな風に思う緊張で身体を強張らせていた紫沫は、琅が心配そうに様子を伺っていることに気付けないでいた。
紫沫の様子が気がかりではあったが、それでも声を掛けられなかったのは琅もまた宿屋での出来事を整理出来ていなかったからだ。
戯れに手を出した訳ではなく。
最初は純粋に溺れた紫沫に人工呼吸を施していただけのハズが。
艶めかしく緩く開けられた口と、湯で火照った肢体。
小柄ながらスラリと伸びやかな腕と赤く色づいた胸の小さな粒。
見た事もないピンク色の性器に興奮したのは確かで。
目の毒とばかりに急いでタオルで覆ったが一目見たあの映像は目に焼き付いてしまいどうにか襲わないように自制していたはずなのに。
自分の心配を冗談のように返された事に腹を立て。
泣きだした紫沫の様子に深い憐憫とほの暗い嗜虐性を刺激されて。
結局宥める目的がもっと深く感じさせてやりたくなって手をだしていた。
最後まで奪わなかった自分を褒めてやりたい位だが。
目を覚ました紫沫のあまりの狼狽ぶりに罪悪感が沸き上がってきて、無かった事のように接するしかなかった。
それが功を奏したのか、紫沫は以前のように自分の胸に身体を預けて馬に乗っている。
その信頼を損なう事は出来なかったが、少なくとも紫沫に対して純粋な欲望を感じている事は間違いなかった。
その存在を大切に思う気持ちはあった。でも、この気持ちがこの先変わって行くという確信は持てなくて結局何も言わずに王都に向かっている。
きっと王都に着きさえすれば。
紫沫の存在をこの場所に繋ぎ止めさえすれば。
そうしたらきっと紫沫に対する気持ちの正体も判明しているだろうと。
そんな風に思った琅は何も言わずに歩を進めた。
そんな2人の思惑を乗せて、馬はゆっくりゆっくりと歩を進めるのだった。
温かな温もりが傍らにあり、紫沫はその温もりへしがみついた。
「ふっ。シブキ、気付いたか?」
「ふぇ?」
情けない声が出て、目を開けると琅の顔があった。
「わっ。」
胸元に抱えられる体勢で琅に包まれていた紫沫は次の瞬間飛び起きて琅から身体を離した。
と同時に紫沫の頭が琅の顎に見事にぶつかり、アッパーカットを決めてしまった。
「いてぇっっ。」
「う~っ。」
石頭だと自分でも思っていた紫沫はぶつかった衝撃に顎を抑えて悶える琅の姿にアワアワと狼狽えた。
琅の耳は毛が逆立ち、ピクピクと震える姿にとても痛いのだと知れる。
「ご、ごめっ。大丈夫っ。」
「ううう~。」
未だ琅は顎をさすり、痛みを逃がしている。そんな琅の姿に申し訳なさそうに謝って紫沫は周りを見渡した。
「あ、あれ。ここって・・・。」
「おー、いてっ。シブキ、お前石頭だなぁ~。」
琅はやっと痛みが引いてきたのか、口を開けたり閉じたりして具合を確かめている。
「ああ、風呂場にずっといるわけにはいかないからな。取り合えず着替えさせて部屋まで連れてきた。」
琅の説明の通り、紫沫の格好はパジャマ代わりにしているローブ状の前合わせ服で、小柄な紫沫の足首まである長いワンピースのような服だった。
絹のような綿のような手触りで、思いの外柔らかく普段も着ていた程心地良いのだが、如何せん丈の長さが邪魔をして就寝着として利用している。
自分が気を失った後で身体を拭いて着替えさせて、その上抱えてここまで連れて来てくれてのだろう。
またしても迷惑をかけてしまった・・・。
そう思って落ち込みそうになった紫沫だったが、そう言えばどうして意識を失う事になったのか、と記憶を辿って琅との事を想い出した。
「あっ、ああっ。」
途端に顔にカーッと血が昇り、頬が信じられないぐらい熱くなった。
(ぼっ、僕っ。あっ、あんなっ事っ。琅とっ)
キスをしたのも初めてなら、他人と肌を合わせた事もなかった紫沫には刺激が強すぎた。
顎を摩るその大きな手が自分の肌に触れ、パカパカ開けている口元が自分のソレと合わさって舌を絡めあった。
思い出すだけで恥ずかしくて、琅の姿が直視出来ない。
紫沫はくるっと反対を向いて琅を視界から追い出すと、身体を丸めてとにかく小さく小さくなるように縮こまった。
「ぶっ。おまっ何だそれ。」
とにかく琅の姿を見たくなくて、思い付く限りで一番手っ取り早い逃げ方をしたのに、琅はそんな紫沫を見て笑うのだ。
「おっ、お構いなくぅ・・・。」
とにかく恥ずかしい。
あんな、誰にも見せた事のない痴態を眼前に晒して琅と一緒に果ててしまった。
脳裏には琅の艶めいた甘い声音が甦ってまるでもう一度耳元で囁かれているようだ。
「おーい。おーい、シブキ。」
「やっ、ほ、本当にお気遣いなくぅ・・・。」
どうにも顔を見れなくて伏せた状態でそう応えれば、琅はクスッと笑うと紫沫の脇腹に手を伸ばした。
「ひゃっぁんっ。」
紫沫のくすぐったがりの一番の急所である脇腹をそろりそろりと撫でられる。
その触れ方は甘い感覚を呼び起こすよりも先にこそばゆく、くすぐったくてしょうがない。
こちょこちょこちょ、こちょこちょこちょ
それは悪戯好きな年下の知り合いが誰彼構わず襲い掛かって笑いの渦に巻き込まれた時のように。
とにかくくすぐったくて我慢出来ない。
うずうずと沸き上がるくすぐったい感覚はどんなに頑張って琅の顔を見ないように臥せっていても一瞬にしてその牙城を崩した。
「ひゃっ、はははっは、ははっ、はははっ。やっ、やめっ、はははっ、ははっ。」
ゴロゴロと転がるように身を捩って琅の手から逃れようとする。
それでも執拗に追いかけてくる琅の手は何度も何度もこしょこしょと脇腹を撫で、紫沫を笑わせる。
「ひー、ひー、もっ、もうっやめっ。苦しいからっ、もう、やめっ。」
笑いながらギブアップのように両手を挙げて琅へ向き合う。
眼が覚めた時の恥ずかしさは今の笑いで霧散したようだった。
「ごめっ。もう降参。降参するからっ。」
紫沫の笑顔に琅もやっと手を止めて、正面から紫沫を見つめた。
「ん、大丈夫だな。何処か痛かったり辛かったりする所ないか?」
ドキン
そんなの反則だよ。
急に真面目な顔をして、僕の心配をしてくれるなんてさ。
誰かに心配される経験もあまり持たない紫沫にとって、琅の優しさは嬉しい反面少し不可解な物でもあった。
たまたま一緒に行動する事になった自分を琅がどうして心配するのだろうか、紫沫には分からない。
きっと親切で困っている人を放って置けない獣人なんだろう、と単純に素晴らしい人だ、と思う。
なのに、不意に示される優しさに紫沫の心臓はドキドキと音をたて始める。
それは今まで感じた事のないリズムを刻んでいて。
紫沫の胸をきゅうっとさせる。
その胸の痛みの原因は何なのか。
紫沫は原因を探るのが怖くて蓋をする。
今はまだいいよね。
琅と一緒に王都まで行って。
迷い人登録してもらって。
とにかくこの世界で自分1人で生活できるようにならないと。
今のまま琅に何でもかんでも全てを頼ってるようじゃ、琅に対して申し訳ないし、自分自身が何の価値もないように思えるから・・・。
宙ぶらりんな気持ちをそのままの状態にして、紫沫はこのまま流れに任せる道を選んだのだった。
***
次の日。朝早く宿屋を出た2人は、王都へ向かう最後の山道を登っていた。
ここは最後の難所と言われていて、賊や獰猛な獣たちが王都を襲わないように断崖絶壁のような場所が何か所か設けられている山だった。
琅が言うには、自分たちの力を過信していた獣人たちは数百年前その過信ゆえに敵からの侵入を許し、内部からの攻撃で壊滅状態に陥ったそうだ。
絶対絶命のピンチを救ったのは力の強い獣人の王でもなく。
大きな知恵を持つ魔力を持った獣人でもなく。
頭上から降ってきた一筋の雨だったそうだ。
雨は何日も何日も降り続き、見る間に大雨になった。
雨粒は土壌に染み渡り、木々を腐らせ、全てを押し流してしまった。
そんな木や土が染み込まず流れ落ちなかった場所が今も残る断崖絶壁の崖部分。
そして木々が生えそろっている場所が流された土が溜まって山となった場所。
土壌は敵も味方も同様に巻き込んで全てを流し、戦いは誰も勝者のいない終結を見た。
残ったのはただの平原のみで、辛うじて生き残った獣人や獣たちと話し合い棲み分けが行われた結果、今の状態に落ち着いたという事だ。
紫沫は元々この世界の住人ではないので、創世神話のような話を聞かされてもおとぎ話のようなイメージしか生まれなかったが、きっとこの世界に生きている獣人や獣たちのルーツはそこにあるのだろうと思った。
ルーツか・・・。
と、出生さえ本当の事を知らない紫沫は誇らしそうに紫沫に話して聞かせる琅の顔を見ながら一抹の寂しさを感じてもいた。
自分がどこに帰属するのか、元々あやふやだった事実が異世界に飛ばされた事で更にあやふやなものになってしまったように感じたからだ。
それでも王都に行きさえすれば。
迷い人として登録さえしてもらえば。
きっとこの先の自分の生き方が見えてくる。
そんな風に思う緊張で身体を強張らせていた紫沫は、琅が心配そうに様子を伺っていることに気付けないでいた。
紫沫の様子が気がかりではあったが、それでも声を掛けられなかったのは琅もまた宿屋での出来事を整理出来ていなかったからだ。
戯れに手を出した訳ではなく。
最初は純粋に溺れた紫沫に人工呼吸を施していただけのハズが。
艶めかしく緩く開けられた口と、湯で火照った肢体。
小柄ながらスラリと伸びやかな腕と赤く色づいた胸の小さな粒。
見た事もないピンク色の性器に興奮したのは確かで。
目の毒とばかりに急いでタオルで覆ったが一目見たあの映像は目に焼き付いてしまいどうにか襲わないように自制していたはずなのに。
自分の心配を冗談のように返された事に腹を立て。
泣きだした紫沫の様子に深い憐憫とほの暗い嗜虐性を刺激されて。
結局宥める目的がもっと深く感じさせてやりたくなって手をだしていた。
最後まで奪わなかった自分を褒めてやりたい位だが。
目を覚ました紫沫のあまりの狼狽ぶりに罪悪感が沸き上がってきて、無かった事のように接するしかなかった。
それが功を奏したのか、紫沫は以前のように自分の胸に身体を預けて馬に乗っている。
その信頼を損なう事は出来なかったが、少なくとも紫沫に対して純粋な欲望を感じている事は間違いなかった。
その存在を大切に思う気持ちはあった。でも、この気持ちがこの先変わって行くという確信は持てなくて結局何も言わずに王都に向かっている。
きっと王都に着きさえすれば。
紫沫の存在をこの場所に繋ぎ止めさえすれば。
そうしたらきっと紫沫に対する気持ちの正体も判明しているだろうと。
そんな風に思った琅は何も言わずに歩を進めた。
そんな2人の思惑を乗せて、馬はゆっくりゆっくりと歩を進めるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。
僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!
「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!
だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる