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12 炬燵

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 寒くなってくると隙間風の入ってくる自分のボロアパートより大学図書館の方が居心地がよくなった。客から連絡が入らない限り僕は閉館ギリギリまでそこにいて本を読んだ。
 僕はカスだが本の中にもカスがいたし文豪は大体カスだと思った。それでもこうして何かを遺したのだから称賛されるカスなのだろう。
 僕は違う。自分では何も生み出すことができないしそのつもりもなかった。子供なんてもってのほかで、まともに愛されたことのない僕が育児ができるはずはないとハナから諦めていた。
 それでも子供自体は嫌いではなかった。コンビニのレジに菓子を持ってきたらシールを貼って渡してやったし、手を振られたら振り返した。
 その日は蒼士が手ぶらで現れて、コーヒーを飲ませろと言ってきたので、もはや彼専用になっていたマグカップに入れて出してやった。

「美月んち……寒っ」
「文句言うなら来るなや」
「こたつでも買えば?」
「こたつか……」

 調べてみると案外安く手に入ることがわかったし、蒼士が金を出してくれるというので購入した。

「俺が買ってんから俺が最初に入る権利がある」
「はいはい」

 なぜか頭から潜ったのでこいつはバカなんだなと思いながらどうなるのか見ていた。全身すっぽりと入ってしまってしばらく様子を伺っていたら、ぷはぁと首だけ出してきた。

「美月、突っ込めよ」
「えっ、突っ込み待ちやったん? 僕突っ込まれる方やけど?」
「やかましいわ」

 僕も反対側に足を突っ込んだ。あったかい。そのままタバコを吸うといい気分だ。なかなか出られなくなってしまって、蒼士を見るとうつ伏せになってうとうとしかけていた。

「蒼士、寝たら風邪ひくで」
「ほな目ぇ覚めるようなことしようや……」

 蒼士はスマホの画面を見せてきた。

「これやりたい」
「四十八手かよ」

 要するにこたつに入ってする背面座位か。僕は蒼士を勃たせてまたがった。いつもとは違う部分にこすれてこれはこれでいい。

「ふぅ……美月、ええ匂い……」

 蒼士は僕の首筋をかいできた。僕は机に手をついてゆっくりと動かした。熱源にあたらないようにしようと思うとけっこう苦労した。

「美月ぃ……」
「コラ、そこ触るな」

 後ろから服越しに胸を揉まれたのだが手はふさがっていた。仕方なく我慢した。

「はよいってくれるか……」
「嫌や。もっと美月を感じたい」

 本当に蒼士は長い。僕も疲れてきたので動かすのをやめると蒼士が下から突いてきた。

「熱っ! やめぇや!」
「ごめんごめん」

 汗もかいてきたしとっとと終わらせよう、とガンガン腰を振った。蒼士は耳元でじっとりと喘いできて顔が見えない分不気味だった。

「美月っ……」

 ようやく達してくれて僕はこたつから抜け出した。喉が乾いたのでコップに入れた水道水を一気に飲み干した。

「なぁなぁ美月、こたつのんにはもういっこ体位があって」
「やらへん」
 
 蒼士は本格的に僕のことを動くし喋る玩具か何かと思っているのだろうか。なら僕もぞんざいに扱うまでだけど。スマホを確認すると直人から連絡が来ていた。

「蒼士、直人来たいって」
「ほなついでに三人分のメシ買ってきてもらおうなぁ」
「まだ居座る気か?」

 直人はコンビニのビニール袋を二つこたつに置くと空いたところから入ってきた。

「ぬくいなぁ……男三人やと狭いけど」

 僕たちは直人の買ってきた弁当を分けて食べた。直人はやる気満々でこちらに来たはずなのだが蒼士がいたせいかこたつのせいなのか机の上にアゴを乗せてのんびりし始めた。
 僕もタバコを吸う以外は何もする気にならなかった。三人とも黙りこくって時間が過ぎていき、ついには蒼士のイビキが聞こえてきた。

「美月、蒼士寝てしもたな」
「もう放っとくわ。直人、する?」
「しよか……」

 ベッドに移動して直人のものをしごいた。彼は後ろからするのが好きなので四つん這いになった。蒼士のイビキがうるさいし隣からもどんちゃん騒ぎが聞こえてくるし相変わらず雰囲気というものがない。

「美月、お疲れさん。これ今回の」
「んっ」

 直人が去った後、蒼士をどうしたものかと長い間見下ろしていた。サングラスをかけたままだったので外してやると無駄に整った顔が出てきた。
 寝てても美人は美人だな、と頬を指でツンツンしてみたが全く反応はなかった。他人の家でこれだけ爆睡できるのだからお気楽な奴である。僕は風呂に入り電気を消してベッドで寝た。
 起きると蒼士は何回もくしゃみをして鼻をズルズルいわせていた。

「あかん、頭痛い……」
「はよ帰れ」

 蒼士を追い出し、バイトまで時間はあったがこたつに入ると終わるなと思ったので我慢した。
 それからというもの、蒼士が僕の部屋に入り浸ることが多くなった。彼はこりたのかこたつの中で眠りはしなかったが、勝手に延長ケーブルを買ってきてスマホを充電しながらいじるようになった。
 僕も蒼士がいることに慣れてきて構わず客を取ったしそうしている間にクリスマスがやってきた。
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