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24 料理

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 僕が僕のことを語る前に、自分の話をした方がいいかもしれないからと、ベッドの中で蒼士は初めて付き合った女の子のことを話してくれた。
 高校一年生の時で、同級生だったらしい。性に関心の高かった蒼士はすぐに彼女とやったみたいだが、その途端に興味が薄れてしまったのだとか。

「女の子とやった感想は……あれっ、こんなもんかぁ、って感じでな。思えばその子のこと、最初からそんなに好きでもなかったんかもしれへんなぁ……」

 次々と相手を変えてみたが、それでも蒼士は見つけられなかった。女の子が手に堕ちると、すっと熱が引いてしまったのだとか。

「前も言ったと思うけど、違う自分がよそから見てるみたいでな。よくできたAVかなぁって気がしてた。ヤリ逃げの蒼士とは呼ばれてたで」
「……似合うなぁ」
「コラ」

 さっぱりした付き合いで満足することにした蒼士は、何人かセフレをキープしておいて、気を紛らせていたのだとか。高校三年生になり、受験勉強に忙しくなってからは、その子たちとも自然と縁が切れたらしい。

「美月と初めてやった時もさぁ、ただの客でおろうと思ってん。いつからやろなぁ……俺だけ見てほしいって思うようになったんは……」

 蒼士は僕の手をさすった。

「ほな……そのうち僕にも飽きるんちゃうの」
「飽きひんよ。絶対最後まで幸せにする」
「口だけなら何とでも言える」
「行動で示すから。これからわからせたる」

 その自信は一体どこから来るものなのだろう。まだ油断できないと思った僕は口をつぐんだ。そして、ろくに何も食べていないことに気付き要求した。

「何か食べたい」
「どっか行く?」
「しんどい」
「ピザでも頼もか」

 こたつに入ってどのピザにしようか二人で決めた。その時に、蒼士は辛いものが苦手だということがわかった。唐辛子やチョリソーなんかは乗っていない、ガッツリ肉系のピザにした。

「……蒼士って、食べるもん他には何が苦手?」
「梅干しとか納豆とか無理やなぁ。卵はアレルギーってわけやないねんけど、しっかり火ぃ通さんと嫌やな。美月は?」
「虫以外なら大体いける」
「これから二人で旨いもんたくさん食おうや」

 空きっ腹にピザは重かったのか、すぐ手が止まってしまった。蒼士がぺろりと残りを平らげた。タバコを吸って、しばらく何も話さずぼおっとしていた。
 蒼士がこたつの中で僕の股間をふにふにと足で押してきた。

「やめぇや」
「……する?」
「もうちょいしてから」

 蒼士はうつ伏せになり、スマホをいじりだした。僕のスマホは充電が切れかけていたので繋いで放置していた。

「なぁ……美月。夕飯作ったろうか?」
「料理できんの?」
「多少は」
「包丁もまな板もフライパンも無いで」
「ほなそれも買ってくる。ちょっと待ってててや」

 蒼士はキッチンを確認した。本当に何もないのだ。辛うじて電子レンジがあるくらい。蒼士はスマホで何やらメモをしてから出ていき、僕はベッドに移動して天井を眺めた。
 袖をめくって傷痕を晒した。今はともかく夏はどうしようか。バカなことをしたと悔やんだがもう遅い。せめて繰り返さないようにしよう、とそっと線を撫でた。
 うとうと寝てしまったのだが、香ばしい匂いで目が覚めた。

「あ、美月。起きたんか。ちょうどよかった、もうちょいでできるで」

 こたつの上には鍋が置かれていて、フタを取ると中身が味噌汁だとわかった。蒼士に近寄ると、フライパンで何かを炒めていた。

「これ何?」
「豚の生姜焼。簡単やで」

 僕は炊飯器すら持っていなかったのだが、パックの米を買ってきてくれていたみたいだ。電子レンジで温められていた。あっという間に食卓が整えられ、手際のよさに驚いてしまった。

「いただきます……」

 豚肉からかじりついた。肉汁があふれ、生姜の味と絡まり米が進んだ。味噌汁もすすってみた。大根とワカメが入っており、まろやかな味わいで、僕は夢中になって完食した。

「僕、手作りの味噌汁とか初めてや……」
「どうやった?」
「旨かった。めっちゃ旨かった」

 洗い物も蒼士任せ。僕はタバコを吸いながら待った。僕ができることは何だろうか。結局一つしかなかった。

「蒼士ぃ……脱ぎぃや……」

 蒼士を仰向けにさせていじくった。といっても、触れるか触れないかくらいの弱い力で。蒼士の顔を見ながら、ゆっくりと進めていった。

「んっ……美月っ……何かもどかしい……」
「強くしてほしい?」
「うん……」

 蒼士の弱いところがわかってきたので、舌を使って丹念に舐めた。足の付け根をべろりとねぶってやると、蒼士はぴくんと反応した。

「いっつも僕のこと可愛いって言うけどさぁ……蒼士も可愛いよなぁ……」
「あはっ、嬉しいなぁ……」

 それから上に乗って動いた。焦らしていたせいか、普段より早く蒼士は達した。

「好き……好きやで、美月……」

 たっぷりとキスをして、僕は精一杯の感謝を伝えた。今はこれだけしか返せることがない。それでも何もないよりマシだろう、と僕は蒼士の胸に耳をつけ、まだ早鐘を打つ鼓動を聞いた。

 
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