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#07 星の降る夜
しおりを挟む──冬の夜に。
「明日も寒いみたいだ。あったかくして寝なさい。」
小父さんは柔らかい口調で言った。テーブルの上には残ったお酒も、淹れて呉れたばかりの温かい珈琲も在る。
「星を、もう少し。」
「ああ。それも良いさ。燃料も、問題無いね。」
赤々と燃えるストーブにはさっき燃料を入れたばかりだ。酔いは、結構回っている。けれど、このまま転がって眠っても大丈夫な環境がある。
「本当に、もう少しだけ。」
「好きにし給え。酒が足りないなら言って呉れれば持って来るし、取りに来て呉れても良いよ。」
時計の針は十時を少し回っていた。眠る時間としては悪くない。
「明日の朝食は和食にして下さい。今夜の酒は、もう、大丈夫です。」
「そうかい。じゃあ、私達も眠るよ。また、明日。」
「はい。お休みなさい。」
「お休み。」
溜め息がストーブの熱で溶けてゆく。嗚呼、私の日常もこんな風なら良いのに。嘘と虚飾を嫌っている訳ではない。上辺を繕うのは人の常だ。ならば、最後まで。
「って言われてもねぇ?」
できないのが人間だった。窓辺に移動すると、何やら温かい固まりがすり寄って来た。
「にゃぁ。」
この子にはできるのだろうな。
「なんだい、小父さんと一緒に行かなかったのか?」
愛らしく小首を傾げる。
「はいはい。良いよ。もう寝る? 私は星を見るから、どっちにしても電気は消すね。」
小父さんが整えて呉れたベッドに猫を預けて、星を見上げに窓辺へ戻った。酒と珈琲と、迷ったけれど少しだけ残っている酒にした。
「こんな星の夜は、か。」
猫がベッドで呼んでいる。少し笑った。そうだね。酒に酔った頭で星は結べない。言葉さえまともに紡げないだろう。簡単に片付けてベッドへ向かう。
けれど、では、さて。だね。君はどんな夢を見せて呉れるのだろう? 猫は少しだけ迷惑そうに鳴いた。
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