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 その時にちょうど王座の間の扉がギシギシと音を立て始めた。
 魔物たちが扉を突き破ろうとして体当たりしているのだ。
 ついに何度めかの体当たりで扉は打ち壊された。
 魔物たちは一直線に王冠を狙って走ってくる。
 僕は剣を構えて何度も深呼吸をした。

 大丈夫、彼らは決して強くはない。
 ちゃんと避けて、剣を突き立てればなにも問題はない。

 自分に活を入れてから、僕は大量に押し寄せてくる魔物たちに斬りかかった。
 最初の数匹は僕でも倒すことが出来た。
 しかし彼らはあまりにも数が多い。
 すぐに四方を囲われてしまった。

 逃げ場を失った僕が全方位から襲いくる魔物に絶望しかけた時、頭から血を流したアルンが王座の間に飛んできた。

「うぉぉらぁあああ!」

 雄叫びを上げながら、アルンは次々と魔物を消し去っていく。
 彼の戦う姿を見て、僕は両親が死んだ時のことを思い出した。

 あの時も王座の間は魔物で溢れかえり、両親は僕と王冠を守って瀕死状態だった。
 父の王冠を魔物が奪おうと手を伸ばした時、どこからともなく傷だらけのアルンが飛んできて魔物を蹴散らし始めたのだ。
 その時、僕は初めて誰かを心の底から美しいと思った。

「陛下! 無事ですか!」

 アルンは血だらけの顔で叫んだ。

「僕は大丈夫。アルンこそ、頭に怪我してるんでしょ? 無理しないで……」
「いま無理しないで、いつ無理するんですか。必ず私が朝までお守りしますから、離れないでください」

 それからアルンは僕の側から離れず、朝まで魔物たちと戦い続けた。
 僕もへなちょこな剣術で必死に魔物を倒し続けた。

 やがて、この小さな国に朝がやってくる。
 太陽の光に気がついた魔物たちは、逃げるように城を去っていった。
 きっとあの大きな鏡の玄関から、元の世界へ帰るのだろう。

 ようやく城に静寂が訪れた。
 僕は急いで比較的清潔そうな布を探してアルンの手当をした。

「陛下、兵士は私以外全滅です。大工も何人かやられました」
「うん……、明日になったら彼らのお墓を作ろうね」

 こうなるだろうと思ってはいたが、赤い夜は何度経験しても辛いものだった。

「今日はもう眠ろう。そしてまた始めるんだ。金貨をあつめて、兵士を雇って、魔物を倒す。その繰り返しを」
「はい、陛下」

 二人は手をつないで王座の間に寝転がり、冷たい床の上で目を閉じた。



 ある日、武器探しの旅に行っていた商人が城に戻ってきた。
 彼が言うには、はるか西方に大きな鏡を粉砕した大砲があるという。
 僕はさっそく溜め込んだ金貨をすべて商人に渡し、それを買ってくるように言いつけた。
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