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第1章 始動の翼
廻り出す世界2
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「…これは…酷いな…!」
「…冗談にしちゃ、笑えねぇにも程があるぞ…!」
登山客に安らぎを与えるはずの広場は、見る影もなく変わり果てていた。
万緑のカーペットの様に生え揃っていた芝生は、何処も切り裂かれているか叩き潰されているかで、大変に痛々しい。今や視界を占める色の割合は、草に覆われていた土壌の方が完全に勝っており、焼け野原を連想する荒らされようである。
さらに広場の至る所に、月面のクレーターを連想させる窪みも数々できている。浅めの穴ですら階段1つ分は高低差があり、最も深い物に至っては、雑草や枝を被せればすぐさま落とし穴にできる始末であった。
極め付けに衝撃的だったのは、何人もの人間がうつ伏せになっている点だ。
皆一様に血溜まりに沈んでいて、微動だにしない。
死人が出ているか否かは判然としないが、血液の臭いが立ち込めており、呼吸をするのも憚られた。
「…ふざけた真似しやがって…誰がやりやがったんだ…!!」
青く澄み渡る空の下で描き出された惨劇に、腸を煮えくり返らせた。
「…風刃、あそこにいる連中見てみろ。」
「どこの連中?」
惨憺たる現場を目にして明らかに気分を害した兄が、無言のまま顎で前方を指し示す。
そこには、10匹から成る集団がたむろしていた。
体格はいずれも、肥え過ぎでもなければ痩せ過ぎでもない、平均的な肉付き。身長は1匹だけが俺よりも低く、それ以外の9匹はこちらと同じか、やや高い。
顔に染みや皺が見当たらないので、若い者なら10代後半、年長者でも30代前半またはその手前というところであろうか。
それだけなら、傷害沙汰の現場で談笑している不謹慎な連中で終わっていたところだが、事態は明らかに生易しくない。
何せ10人組は、全員揃って肌が土気色をしている。
その上、目や耳は鋭く尖っており。
しかも、額からは角が生えていた。
「変異種…!」
その答えに至るのは、至極簡単だった。
凡百の人間では有り得ない、小鬼の様な容貌をしたあの一団は、紛れもなく俺や兄の同類だ。
「…おまけにあいつら、ナイフまで持ってるぞ。」
「え、ナイフ…!?」
兄の一声で、ようやく気が付いた。
確かに小鬼の団体は、各人が刃渡り10センチのナイフを所持している。
おまけにそれらの刀身は、夥しい数の草の破片と、痛々しさに満ちた赤い液体で彩られていた。
「こいつらの仕業か…!!」
「間違いなく、な…!」
頭に血を上げている最中にも、小鬼の集団の会話が耳に届く。
「イヤー、結構ハデにやっチまっタな。」
「エエ…何ダカ、元旦那トやったケンカを思い出スワ。」
「ハハっ、こンな血の色尽くしになるまでヤッたのかヨ?」
「別れ際にやッてたそウネ…元旦那さん、危ウく死んじゃうとコロだったラしいワよ。」
「ヘエ、ソンなことガあったノカ?そリャあ、惜しいモン見逃しチマッタなァ。」
「まったくダわ。危うく死ヌところダッタっテことは、要スルに生きテたわけデしょ?」
「ホントに死んでタラ、すっ飛んデ駆けつケタのにナ!」
「傷だラケになっテ死んダ人の苦しそうナ顔って、超ウケるもんネ~!」
「ぎャはハははは!!!」
「随分良い趣味した奴らだな…!!」
「…!!!」
何の罪も無い人間達を斬りつけておきながら悪びれる様子もなく、濁り切った声で笑い転げる小鬼の団体を見ている内に、右手を握り締めていた。
爪が掌に刺さって痛みを感じても、なお構わずに、力一杯。
そして、足は理屈で決断するよりも早く、小鬼の集団に接近し。
「おい、てめぇら!!!」
口は脳内で言葉を考えるよりも先に、奴等へ怒声を浴びせていた。
「ア?何ダ、オまえ?」
「てめぇらが、やったんだな…。」
「エ?アタシタチが、何をやッたっテ?」
「ここで倒れてる連中全員、てめぇらが斬りつけたんだろ!!!」
夥しい裂傷をこさえた人間達を右手で指し、喉を壊さんばかりの大声で叫ぶ。
「アア?だッタラ、何だっテんダ?」
「何なんだ、じゃねぇだろうが!!何でこんな真似しやがった!!!」
「ケケ…探し物ノタめダよ。」
「探し物、か。何を探してたら、周りの人間がこんなに血みどろになるんだろうな?」
兄も静かな怒気を発しながら、小鬼の集団を非難した。
「悪いけド、ソイツは秘密にさせテもらいたイナア。」
「ソウそウ。探し物ノ邪魔にナル奴は、少ないホうがイいカラね。」
「お兄サン達がアタシ達を手伝っテくれるなラ、教えてアゲてモいいけドネ。」
「ほざけ!!誰がてめぇらなんかに手を貸すか!!!」
「お前達と違って、探し物のついでで人を切りつけるような趣味はないんでな!」
兄弟揃って、小鬼の集団を拒絶する。
下卑た悦楽のために無辜の人間を斬りつける連中になど、どんな理由があろうと味方できるはずもない。
「そうかイ…なラ、このまま帰すッテノも無理な相談だよナあ。」
「ソりゃそウダ!面倒なトこ見られチマったんダかラナ!」
「ネえ、この2人モ斬っちゃいマショウよ!」
「アア、ソウダな!さっきノ奴ラだけジャ斬り足りなかったカラ、ちょうドいいや!」
「せっかクダカら目一杯苦しんデ死んデヨね、お兄サン達!」
10匹の集団は揃ってナイフを構えると、一斉に襲い掛かって来た。
「風刃、お前は逃げてろ。こいつらは兄ちゃんが片付けてやる。」
不意に兄が静かに、それでいて力強い口調で、突飛な台詞を吐き出す。
「何言ってんだ!1人じゃ色々面倒だろ―」
「馬鹿。雑魚がいても役に立たないから逃げろって言ってるんだよ。さっさと帰って、家で大人しくゲームでもやってろ。」
思わず兄の身を案じたが、打ち返されたのは嘲りだらけの戦力外通告だった。
「何だとこの野郎…!!!!!」
小鬼の一団の存在をすっかり忘却し、兄相手に怒りを燃え上がらせる。
「どうしたノ、お兄サン達!逃げモ隠れもシナイなんて、珍しいワネ!」
「死ぬ覚悟がデキタのか!それジャ、お望み通りバラバラにしてヤルぜ!!」
ナイフを手にした10匹の小鬼達は、直立不動の兄弟に、接触寸前まで迫っていた。
「誰が…誰が役立たずの雑魚じゃ、ボケーーーーー!!!!!」
しかし、俺が渾身の力を込めた右手の拳を地面に叩き付けると、状況は一変する。
「グアあーーーーーーーー!!!」
「きャアアアア!!!」
殴りつけた箇所から突風が巻き起こり、あと僅かでこちらを切り裂くはずだった10本のナイフは、装備者共々吹き飛んだ。
「どうだ!これでも俺が雑魚だって思うか!?」
右手を握り拳にしたまま嘴の下で得意気な笑みを浮かべ、兄を見やった。
こちらの真横に陣取っていたため、突風の被害を受けておらず、腹立たしい事に埃すらも付着していない。
「おお、随分都合よく奇跡が起きたな!いやー、偶然って怖いもんだ!」
「奇跡でも偶然でもねぇよ!必然だ、必然!!」
「うん、確かに。兄ちゃんが手伝ってやらなかったら、あんな風起こせなかったよな。」
「いや、俺1人で起こせましたが?」
「だから、あの風起こせたのも、お前が兄ちゃんのありがたい言葉に逆切れしたからだろ。せっかくこの優しい兄上様が大事な弟を想って言ってやったのに、お前って奴は…。」
「…てめぇ、俺をこき使いやがったな!!」
「はっはっは。文句も言わずによく働いてくれる弟がいて、兄ちゃんは嬉しいぞ!」
「ふざけんな畜生!!!」
腕組みしつつ憎らしい笑い声を発する兄に何度も殴りかかったが、いずれもすんでのところでかわされ、徒労に終わった。
「グうう…何だ、今の…!?」
「テメエ、何シヤガッた…!?」
「…まだ動けたのか。しぶとい野郎共だな…。」
突風に弾かれ、樹木で背中を強打しながらも身体を起こした小鬼の一団に、辟易する。
どうやら始末を付けるには、最低でももう一撃は見舞ってやる必要がありそうだ。
「お兄サン、質問したノ聴こえナカッタ?今、何シタのって、訊いたンだケド!」
群れの中の1匹が、苛立ちを露わに詰め寄ってきた。
「何やったって言われてもな。俺が地面を殴ったら、てめぇらが吹っ飛んだだけだろ。」
「だかラ、どうしテあんナことデキるのッテ訊いテルのヨ!!」
その問いに対して、答えは1つだった。
「悪いが、そいつは秘密だ。手品の種を知ってる奴は、少ねぇ方がいいからな。」
小鬼の集団を小馬鹿にするように、奴らの言い回しを真似ながら、黙秘を貫く。
「まあ…てめぇらがした事を死んで詫びるなら、墓前に教えてやらないでもねぇけどな。」
「ぐウウ…こノ野郎…!!」
「ナメやがっテ…!!」
ほんの数分前まで上機嫌でいた小鬼の一団が、不快感にまみれた面持ちとなる。
「さっさト死ネよ!!」
1匹の男が助走を付けて、ナイフを全力で振り下ろして来た。
ただ、こちらが右手を開いて巻き起こした強風の方が、遥かに速く決まる。
「グっ…があアーーーーーーーーー!!!」
男は後方に飛ばされ、進路上にあった樹に後頭部を打ち付けると、そのまま崩れ落ちた。
ごく僅かに身体が震えているが、復帰できる気配はない。
「ふう、やっと1匹片付いたな…。」
「頑張れ!まだ9匹残ってるぞ!」
「少しは手伝え、このボケナス!!」
「嫌だ、めんどい。」
「そう言うとは思ったけどな!」
怠惰な兄との口喧嘩を早々と打ち切り、残る9匹の小鬼達に向き直った。
「…で、てめぇらはどうする?まだやるか?尻尾巻いて逃げるか?…まあ、どっちでも好きにすれば良いが、てめぇらみてぇなクズ共には―」
喋りながら両の手を拳に固めて力を集中し、一団を睨みつける。
「容赦加減は一切しねぇぞ!!!」
背中の翼を動かし、小鬼達を狙って飛び掛かった。
「…冗談にしちゃ、笑えねぇにも程があるぞ…!」
登山客に安らぎを与えるはずの広場は、見る影もなく変わり果てていた。
万緑のカーペットの様に生え揃っていた芝生は、何処も切り裂かれているか叩き潰されているかで、大変に痛々しい。今や視界を占める色の割合は、草に覆われていた土壌の方が完全に勝っており、焼け野原を連想する荒らされようである。
さらに広場の至る所に、月面のクレーターを連想させる窪みも数々できている。浅めの穴ですら階段1つ分は高低差があり、最も深い物に至っては、雑草や枝を被せればすぐさま落とし穴にできる始末であった。
極め付けに衝撃的だったのは、何人もの人間がうつ伏せになっている点だ。
皆一様に血溜まりに沈んでいて、微動だにしない。
死人が出ているか否かは判然としないが、血液の臭いが立ち込めており、呼吸をするのも憚られた。
「…ふざけた真似しやがって…誰がやりやがったんだ…!!」
青く澄み渡る空の下で描き出された惨劇に、腸を煮えくり返らせた。
「…風刃、あそこにいる連中見てみろ。」
「どこの連中?」
惨憺たる現場を目にして明らかに気分を害した兄が、無言のまま顎で前方を指し示す。
そこには、10匹から成る集団がたむろしていた。
体格はいずれも、肥え過ぎでもなければ痩せ過ぎでもない、平均的な肉付き。身長は1匹だけが俺よりも低く、それ以外の9匹はこちらと同じか、やや高い。
顔に染みや皺が見当たらないので、若い者なら10代後半、年長者でも30代前半またはその手前というところであろうか。
それだけなら、傷害沙汰の現場で談笑している不謹慎な連中で終わっていたところだが、事態は明らかに生易しくない。
何せ10人組は、全員揃って肌が土気色をしている。
その上、目や耳は鋭く尖っており。
しかも、額からは角が生えていた。
「変異種…!」
その答えに至るのは、至極簡単だった。
凡百の人間では有り得ない、小鬼の様な容貌をしたあの一団は、紛れもなく俺や兄の同類だ。
「…おまけにあいつら、ナイフまで持ってるぞ。」
「え、ナイフ…!?」
兄の一声で、ようやく気が付いた。
確かに小鬼の団体は、各人が刃渡り10センチのナイフを所持している。
おまけにそれらの刀身は、夥しい数の草の破片と、痛々しさに満ちた赤い液体で彩られていた。
「こいつらの仕業か…!!」
「間違いなく、な…!」
頭に血を上げている最中にも、小鬼の集団の会話が耳に届く。
「イヤー、結構ハデにやっチまっタな。」
「エエ…何ダカ、元旦那トやったケンカを思い出スワ。」
「ハハっ、こンな血の色尽くしになるまでヤッたのかヨ?」
「別れ際にやッてたそウネ…元旦那さん、危ウく死んじゃうとコロだったラしいワよ。」
「ヘエ、ソンなことガあったノカ?そリャあ、惜しいモン見逃しチマッタなァ。」
「まったくダわ。危うく死ヌところダッタっテことは、要スルに生きテたわけデしょ?」
「ホントに死んでタラ、すっ飛んデ駆けつケタのにナ!」
「傷だラケになっテ死んダ人の苦しそうナ顔って、超ウケるもんネ~!」
「ぎャはハははは!!!」
「随分良い趣味した奴らだな…!!」
「…!!!」
何の罪も無い人間達を斬りつけておきながら悪びれる様子もなく、濁り切った声で笑い転げる小鬼の団体を見ている内に、右手を握り締めていた。
爪が掌に刺さって痛みを感じても、なお構わずに、力一杯。
そして、足は理屈で決断するよりも早く、小鬼の集団に接近し。
「おい、てめぇら!!!」
口は脳内で言葉を考えるよりも先に、奴等へ怒声を浴びせていた。
「ア?何ダ、オまえ?」
「てめぇらが、やったんだな…。」
「エ?アタシタチが、何をやッたっテ?」
「ここで倒れてる連中全員、てめぇらが斬りつけたんだろ!!!」
夥しい裂傷をこさえた人間達を右手で指し、喉を壊さんばかりの大声で叫ぶ。
「アア?だッタラ、何だっテんダ?」
「何なんだ、じゃねぇだろうが!!何でこんな真似しやがった!!!」
「ケケ…探し物ノタめダよ。」
「探し物、か。何を探してたら、周りの人間がこんなに血みどろになるんだろうな?」
兄も静かな怒気を発しながら、小鬼の集団を非難した。
「悪いけド、ソイツは秘密にさせテもらいたイナア。」
「ソウそウ。探し物ノ邪魔にナル奴は、少ないホうがイいカラね。」
「お兄サン達がアタシ達を手伝っテくれるなラ、教えてアゲてモいいけドネ。」
「ほざけ!!誰がてめぇらなんかに手を貸すか!!!」
「お前達と違って、探し物のついでで人を切りつけるような趣味はないんでな!」
兄弟揃って、小鬼の集団を拒絶する。
下卑た悦楽のために無辜の人間を斬りつける連中になど、どんな理由があろうと味方できるはずもない。
「そうかイ…なラ、このまま帰すッテノも無理な相談だよナあ。」
「ソりゃそウダ!面倒なトこ見られチマったんダかラナ!」
「ネえ、この2人モ斬っちゃいマショウよ!」
「アア、ソウダな!さっきノ奴ラだけジャ斬り足りなかったカラ、ちょうドいいや!」
「せっかクダカら目一杯苦しんデ死んデヨね、お兄サン達!」
10匹の集団は揃ってナイフを構えると、一斉に襲い掛かって来た。
「風刃、お前は逃げてろ。こいつらは兄ちゃんが片付けてやる。」
不意に兄が静かに、それでいて力強い口調で、突飛な台詞を吐き出す。
「何言ってんだ!1人じゃ色々面倒だろ―」
「馬鹿。雑魚がいても役に立たないから逃げろって言ってるんだよ。さっさと帰って、家で大人しくゲームでもやってろ。」
思わず兄の身を案じたが、打ち返されたのは嘲りだらけの戦力外通告だった。
「何だとこの野郎…!!!!!」
小鬼の一団の存在をすっかり忘却し、兄相手に怒りを燃え上がらせる。
「どうしたノ、お兄サン達!逃げモ隠れもシナイなんて、珍しいワネ!」
「死ぬ覚悟がデキタのか!それジャ、お望み通りバラバラにしてヤルぜ!!」
ナイフを手にした10匹の小鬼達は、直立不動の兄弟に、接触寸前まで迫っていた。
「誰が…誰が役立たずの雑魚じゃ、ボケーーーーー!!!!!」
しかし、俺が渾身の力を込めた右手の拳を地面に叩き付けると、状況は一変する。
「グアあーーーーーーーー!!!」
「きャアアアア!!!」
殴りつけた箇所から突風が巻き起こり、あと僅かでこちらを切り裂くはずだった10本のナイフは、装備者共々吹き飛んだ。
「どうだ!これでも俺が雑魚だって思うか!?」
右手を握り拳にしたまま嘴の下で得意気な笑みを浮かべ、兄を見やった。
こちらの真横に陣取っていたため、突風の被害を受けておらず、腹立たしい事に埃すらも付着していない。
「おお、随分都合よく奇跡が起きたな!いやー、偶然って怖いもんだ!」
「奇跡でも偶然でもねぇよ!必然だ、必然!!」
「うん、確かに。兄ちゃんが手伝ってやらなかったら、あんな風起こせなかったよな。」
「いや、俺1人で起こせましたが?」
「だから、あの風起こせたのも、お前が兄ちゃんのありがたい言葉に逆切れしたからだろ。せっかくこの優しい兄上様が大事な弟を想って言ってやったのに、お前って奴は…。」
「…てめぇ、俺をこき使いやがったな!!」
「はっはっは。文句も言わずによく働いてくれる弟がいて、兄ちゃんは嬉しいぞ!」
「ふざけんな畜生!!!」
腕組みしつつ憎らしい笑い声を発する兄に何度も殴りかかったが、いずれもすんでのところでかわされ、徒労に終わった。
「グうう…何だ、今の…!?」
「テメエ、何シヤガッた…!?」
「…まだ動けたのか。しぶとい野郎共だな…。」
突風に弾かれ、樹木で背中を強打しながらも身体を起こした小鬼の一団に、辟易する。
どうやら始末を付けるには、最低でももう一撃は見舞ってやる必要がありそうだ。
「お兄サン、質問したノ聴こえナカッタ?今、何シタのって、訊いたンだケド!」
群れの中の1匹が、苛立ちを露わに詰め寄ってきた。
「何やったって言われてもな。俺が地面を殴ったら、てめぇらが吹っ飛んだだけだろ。」
「だかラ、どうしテあんナことデキるのッテ訊いテルのヨ!!」
その問いに対して、答えは1つだった。
「悪いが、そいつは秘密だ。手品の種を知ってる奴は、少ねぇ方がいいからな。」
小鬼の集団を小馬鹿にするように、奴らの言い回しを真似ながら、黙秘を貫く。
「まあ…てめぇらがした事を死んで詫びるなら、墓前に教えてやらないでもねぇけどな。」
「ぐウウ…こノ野郎…!!」
「ナメやがっテ…!!」
ほんの数分前まで上機嫌でいた小鬼の一団が、不快感にまみれた面持ちとなる。
「さっさト死ネよ!!」
1匹の男が助走を付けて、ナイフを全力で振り下ろして来た。
ただ、こちらが右手を開いて巻き起こした強風の方が、遥かに速く決まる。
「グっ…があアーーーーーーーーー!!!」
男は後方に飛ばされ、進路上にあった樹に後頭部を打ち付けると、そのまま崩れ落ちた。
ごく僅かに身体が震えているが、復帰できる気配はない。
「ふう、やっと1匹片付いたな…。」
「頑張れ!まだ9匹残ってるぞ!」
「少しは手伝え、このボケナス!!」
「嫌だ、めんどい。」
「そう言うとは思ったけどな!」
怠惰な兄との口喧嘩を早々と打ち切り、残る9匹の小鬼達に向き直った。
「…で、てめぇらはどうする?まだやるか?尻尾巻いて逃げるか?…まあ、どっちでも好きにすれば良いが、てめぇらみてぇなクズ共には―」
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