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第3話 その2:仕事の厳しさと優しさに触れる夜。店長の手に宿る現場のリアル
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その後も、仕事の話が続いた。
「毎日、掃除や配達、花束作りと、仕事内容は同じことの繰り返し。やりがいを感じられず、つまらないと感じる人もいるし、いつになったら次のステップに進めるのか見えなくて不安になる人もいるのよね」と由香里さん。
僕は「時間をかけてじっくり教わっていければと思っています。ましてや今日は初日で、こんな歓迎会までしてもらったら、多少の嫌なことがあってもやり抜けられると思いますから、大丈夫ですよ」と答えた。
「それに、レジを打ってと言われても、レジ打ちや接客の仕方をしっかり教えてもらっていないと不安で辞めてしまう人もいるの」と由香里さん。
「高校時代に居酒屋でバイトしていたのでレジも接客も大丈夫です。今日、店長に『居酒屋じゃないからね!』って言われたので、トーンを抑えればいいかなと思っています」と僕。
「『三千円くらいでおすすめ品を適当に包んで』って言われて、見よう見まねで包んでるけど、本当にこの包み方でいいのか不安だし、基本的なところをしっかり教えてほしいって思ってる人が多いのよね」と由香里さん。
「僕は忙しい時に教えてもらうのは難しいと思っているので、追々で教えていただければと思っています」と僕。
「自然食品店で働くのは、お客様として見ていた綺麗な部分とのギャップを感じると思うの。実際は体力勝負の仕事が多いのよ。私が和也君を採用したのは、体力がありそうだったから。食品は生き物だから、それに合わせた環境が必要で、寒い冬でも温めるわけにはいかない。だから、とても寒い環境で仕事をすることになるの」と由香里さん。
「僕は高校時代にラグビーをやっていたので、夏も冬も関係なく練習してました。居酒屋の仕事も、表からは楽そうに見えるけど、お酒を飲んだお客さん相手だから、それはそれは大変でしたよ」
「そうなんだ」
「それに店内のグリストラップってわかります?」
「えっ、何それ?」
「調理で出た油脂と汚水を分離するドブの掃除は、油脂がこびりついていて臭いもすごくて、仕事はみんな大変でした。だから大丈夫です」と僕は言った。
でも本当は、由香里さんと一緒に働けることが一番の理由だった。この時点でそれを言うと誤解されそうだったので、言わなかった。
「母の日など花を贈るイベントの時は、一日中配達に回らなきゃいけないし、大きな観葉植物や二十キロもある野菜の箱を一人で運ばなきゃいけないこともある。その中でお客さんが来たら接客もしなきゃいけないから、本当に大変なのよ」と由香里さん。
「はい、その都度教えていただければ、僕は頑張りますから。期待してください!」と前のめりで答えた。
「これは今のうちに言っておかなきゃいけないことなんだけど、植物や野菜のアクや水で手が荒れるのよ」と言って、由香里さんは手を僕の前に差し出した。
僕はその手をそっと持ち、掌を擦ってあげて、フゥーと息を吹きかけた。そして両手の小指を絡めて、彼女の掌をマッサージした。
由香里さんは顔を赤らめて、照れていた。
それがまた、可愛かった。
つづく。
「毎日、掃除や配達、花束作りと、仕事内容は同じことの繰り返し。やりがいを感じられず、つまらないと感じる人もいるし、いつになったら次のステップに進めるのか見えなくて不安になる人もいるのよね」と由香里さん。
僕は「時間をかけてじっくり教わっていければと思っています。ましてや今日は初日で、こんな歓迎会までしてもらったら、多少の嫌なことがあってもやり抜けられると思いますから、大丈夫ですよ」と答えた。
「それに、レジを打ってと言われても、レジ打ちや接客の仕方をしっかり教えてもらっていないと不安で辞めてしまう人もいるの」と由香里さん。
「高校時代に居酒屋でバイトしていたのでレジも接客も大丈夫です。今日、店長に『居酒屋じゃないからね!』って言われたので、トーンを抑えればいいかなと思っています」と僕。
「『三千円くらいでおすすめ品を適当に包んで』って言われて、見よう見まねで包んでるけど、本当にこの包み方でいいのか不安だし、基本的なところをしっかり教えてほしいって思ってる人が多いのよね」と由香里さん。
「僕は忙しい時に教えてもらうのは難しいと思っているので、追々で教えていただければと思っています」と僕。
「自然食品店で働くのは、お客様として見ていた綺麗な部分とのギャップを感じると思うの。実際は体力勝負の仕事が多いのよ。私が和也君を採用したのは、体力がありそうだったから。食品は生き物だから、それに合わせた環境が必要で、寒い冬でも温めるわけにはいかない。だから、とても寒い環境で仕事をすることになるの」と由香里さん。
「僕は高校時代にラグビーをやっていたので、夏も冬も関係なく練習してました。居酒屋の仕事も、表からは楽そうに見えるけど、お酒を飲んだお客さん相手だから、それはそれは大変でしたよ」
「そうなんだ」
「それに店内のグリストラップってわかります?」
「えっ、何それ?」
「調理で出た油脂と汚水を分離するドブの掃除は、油脂がこびりついていて臭いもすごくて、仕事はみんな大変でした。だから大丈夫です」と僕は言った。
でも本当は、由香里さんと一緒に働けることが一番の理由だった。この時点でそれを言うと誤解されそうだったので、言わなかった。
「母の日など花を贈るイベントの時は、一日中配達に回らなきゃいけないし、大きな観葉植物や二十キロもある野菜の箱を一人で運ばなきゃいけないこともある。その中でお客さんが来たら接客もしなきゃいけないから、本当に大変なのよ」と由香里さん。
「はい、その都度教えていただければ、僕は頑張りますから。期待してください!」と前のめりで答えた。
「これは今のうちに言っておかなきゃいけないことなんだけど、植物や野菜のアクや水で手が荒れるのよ」と言って、由香里さんは手を僕の前に差し出した。
僕はその手をそっと持ち、掌を擦ってあげて、フゥーと息を吹きかけた。そして両手の小指を絡めて、彼女の掌をマッサージした。
由香里さんは顔を赤らめて、照れていた。
それがまた、可愛かった。
つづく。
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