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第9話 その4:予期せぬ夜の出来事、揺れる視線と心の距離
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麻衣子さんの聡明で清楚な印象とはあまりにもかけ離れた出来事に、僕も由香里さんも言葉を失っていた。
僕「……」
由香里さん「……」
二人とも顔を真っ赤にして、しばらく沈黙が続いた。
「とりあえず、麻衣子さんを部屋に運びましょう」と僕が小声で言う。
「そっ、そうね……」と由香里さんも動揺を隠せない様子だった。
細くしなやかな麻衣子さんをそっと抱き上げ、寝室のベッドに運び込んだ。
服を脱がせるわけにもいかないので、そのまま掛け布団をかけて、由香里さんは「じゃあ、帰ろうか?」と言った。
「大丈夫ですかね? 麻衣子さんは」と僕が心配そうに言う。
「え?……大丈夫だと思うけど……」と由香里さんも少し不安げな表情を浮かべた。
確かに、あの状態で一人にしておくのは心配だった。
「じゃあ、少し様子を見てから帰りましょうか」と僕が提案する。
「うん、そうね」と由香里さんは頷いた。
◇◆◇
その時だった。
寝室から、微かに女性の声が聞こえてきた。
「あっ、イイ、イクぅ~ッ!」
由香里さんと僕は、思わず顔を見合わせた。
まさか……と思いながらも、声の出所は麻衣子さんの寝室からのようだった。
二人とも心臓が高鳴るのを感じながら、音を立てないようにそっとソファから立ち上がり、寝室のドアの前まで静かに歩いた。
部屋は間接照明で照らされていて、完全な暗闇ではなかった。
ドアはわずかに開いていて、由香里さんはそっと隙間から中を覗いた。
「あん、イッちゃう!」
由香里さんは絶句した。
そこには、キャミソール姿でベッドに横たわりながら、夢の中で誰かに語りかけるように声を漏らしている麻衣子さんの姿があった。
「卓也……イッちゃうよ……」と、彼女は誰かの名前を呼びながら、うわ言のように繰り返していた。
男も夢精する時があるから女性もそう言うのがあるんだと僕は思っていた。
由香里さんは、驚きと戸惑いの入り混じった表情で、しばらくその場から動けなかった。
麻衣子さんの痴態を目の当たりにして由香里さんは動揺を隠せなかった。
僕は少し離れた場所から、彼女の様子を見守っていた。
由香里さんには、覗き見の趣味などない。
けれど、これは予期せぬ出来事であり、彼女の中で何かが揺れていた。
「麻衣子……どうしたの……」と由香里さんが小さくつぶやいた。
その声には、驚きだけでなく、どこか切なさや複雑な感情が混じっていた。
僕はそっと近づいて、「由香里さん、戻りましょう」と声をかけた。
彼女はゆっくりと頷き、寝室のドアを静かに閉めた。
その夜、僕たちは麻衣子さんの意外な一面に触れたことで、少しだけ距離を縮めたような気がした。
人は誰しも、表に出さない顔を持っている。
それを知った時、驚きとともに、相手への理解が深まることもあるのだと、僕は感じていた。
つづく。
僕「……」
由香里さん「……」
二人とも顔を真っ赤にして、しばらく沈黙が続いた。
「とりあえず、麻衣子さんを部屋に運びましょう」と僕が小声で言う。
「そっ、そうね……」と由香里さんも動揺を隠せない様子だった。
細くしなやかな麻衣子さんをそっと抱き上げ、寝室のベッドに運び込んだ。
服を脱がせるわけにもいかないので、そのまま掛け布団をかけて、由香里さんは「じゃあ、帰ろうか?」と言った。
「大丈夫ですかね? 麻衣子さんは」と僕が心配そうに言う。
「え?……大丈夫だと思うけど……」と由香里さんも少し不安げな表情を浮かべた。
確かに、あの状態で一人にしておくのは心配だった。
「じゃあ、少し様子を見てから帰りましょうか」と僕が提案する。
「うん、そうね」と由香里さんは頷いた。
◇◆◇
その時だった。
寝室から、微かに女性の声が聞こえてきた。
「あっ、イイ、イクぅ~ッ!」
由香里さんと僕は、思わず顔を見合わせた。
まさか……と思いながらも、声の出所は麻衣子さんの寝室からのようだった。
二人とも心臓が高鳴るのを感じながら、音を立てないようにそっとソファから立ち上がり、寝室のドアの前まで静かに歩いた。
部屋は間接照明で照らされていて、完全な暗闇ではなかった。
ドアはわずかに開いていて、由香里さんはそっと隙間から中を覗いた。
「あん、イッちゃう!」
由香里さんは絶句した。
そこには、キャミソール姿でベッドに横たわりながら、夢の中で誰かに語りかけるように声を漏らしている麻衣子さんの姿があった。
「卓也……イッちゃうよ……」と、彼女は誰かの名前を呼びながら、うわ言のように繰り返していた。
男も夢精する時があるから女性もそう言うのがあるんだと僕は思っていた。
由香里さんは、驚きと戸惑いの入り混じった表情で、しばらくその場から動けなかった。
麻衣子さんの痴態を目の当たりにして由香里さんは動揺を隠せなかった。
僕は少し離れた場所から、彼女の様子を見守っていた。
由香里さんには、覗き見の趣味などない。
けれど、これは予期せぬ出来事であり、彼女の中で何かが揺れていた。
「麻衣子……どうしたの……」と由香里さんが小さくつぶやいた。
その声には、驚きだけでなく、どこか切なさや複雑な感情が混じっていた。
僕はそっと近づいて、「由香里さん、戻りましょう」と声をかけた。
彼女はゆっくりと頷き、寝室のドアを静かに閉めた。
その夜、僕たちは麻衣子さんの意外な一面に触れたことで、少しだけ距離を縮めたような気がした。
人は誰しも、表に出さない顔を持っている。
それを知った時、驚きとともに、相手への理解が深まることもあるのだと、僕は感じていた。
つづく。
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