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どうして・・・?
しおりを挟むオレは雨が嫌いだ。
小さな雨粒がどんどんと大きくなり、やがて打ち付けられるようなものに変わる。
風が吹けば更に強くなり、オレにとっては地獄でしかなかった。
暑い夜も、寒く凍りそうな日でも、雨が降れば外に出され雨に打たれる。
時折空が光り、大きな音が鳴り響く。
雨は嫌いだ。
大っ嫌いだ。
笑い声を背に、オレは膝を抱えて雨が終わるのを待ち、服が乾くまで・・・いや、あの人達が満足するまで、オレは入れてもらえない日々を過ごす。
お腹がすいても、寒くて手が悴んでも、感覚がなくなってきても・・・。
何度、まだーーーー、いや、うん、思い出さないでおこう。
ギュッとタオルケットを握り、雨の音が聞こえない隅へと移動する。
ここは雨の日でも空が明るい。
なぜか雲があってもなくても雨が降る。
太陽が3つあって、月も3つある。
ここは、あの場所とは違う。
周りの事も、オレの境遇も。
壁におでこをくっつけ、目を瞑る。
りゅるは優しい。
抑えきれない感情が鳴き声に変わっても、オレの抵抗も我儘も、全部受け止めてくれるから。
失いたくない。帰りたくない。
オレはーーーー。
目を開ければ、ニヤリと嫌な顔で笑う人と目が合った。
その人が持つ鈍く光るものが視界に入って、オレはりゅるの肩に手を置きスルリと腕から抜け出し、体を持ち上げる。
「クロ?!」
ドクリドクリと心臓がうるさい。
鈍く光るものが、りゅるに近寄ってくる。
雨は、嫌いだ。
かかと落としを嫌な顔の人の頭に落とし、そのまま地面へと叩きつける。
ドクリと強く心臓が鳴り、ズキンズキンと頭が痛む。
雨なんて、大っ嫌いだ。
りゅるの声が遠くに聞こえ、どんどんと視界が狭まって暗くなっていく。
ただ、雨の打ち付ける音だけが酷く耳に残った。
ーー、ーーー、ーー、ーーーー。
暗い世界の中には、オレと、もう1人。
「なぁ」
掠れたような、か細い声。
顔にモヤがかかったかのような誰かは、ただ、静かにこちらを見る。
わかってる、わかってるよ。
「「ーーーー」」
ああ、ほら、そうだろう。
オレは知ってる。
この場所も、アイツも。
だからこそ、オレはーーー。
ハッと目を覚ますと、白い天井と液体と管が見えた。
「クロ、クロ」
眉の下がったりゅるが、オレの名前を何度も呼ぶ。
握られた手を握り返し、顔をりゅるの方に向ける。
泣きそうな程に歪められた顔で頭を撫でてくれるりゅる。
何でそんな顔をしているの?
りゅると繋いでいない方の腕には管が繋がっていて、窓から見える空は暗く紅い月だけが見える。
どうしてオレ、ここで寝てるの?
何で手に包帯が巻かれてるの?
何で・・・どうして?
どうして・・・りゅるの腕も包帯が巻かれているの?
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