24 / 30
第24話 アンズと海へ
しおりを挟む「また出かけるのか? いいけどさ、新居を建てて、二人で日常生活を送るのもいいと思うよ?」
アンズが、座ってる俺の膝に、体をこすりつけながら言う。
蹴り飛ばしたい。
「いいじゃん! 温泉楽しかったからさ、今度は海に行こう、海に」
「えー! ヌカタ、水着姿の女の子に色目使わないかなあ。私も変化して水着きようかな。こういう体だから、心配なんだよな」
「そんなことしないって」
本当にしないわ! おまえ嫉妬深いから、海にいる女の子全員食べかねないだろうが! だいたい、人間を食べないって約束だって、この先も守ってくれるのかあやしいもんだ!
「でも、ヌカタが遊びに行きたいって言うならいいよ! もう! 私はインドアな人間より、アウトドアな方がいいけどさ、ヌカタみたいに落ち着きのない彼氏だと、大変だよ!」
俺だって、おまえみたいな狂ったスライムと一緒だと大変だよ!
腕がいいと評判の封じ師は、ネンスーという小さな町に住んでいると聞いた。
巨大で真っ白な翼をはやしたアンズにのり、一気に飛んだ。
俺はこのアンズが勿論死ぬほど嫌いだが、こういうときには非常に役に立つ。
ネンスーにつき、すぐ腕のいい封じ師に会いに行きたかったが、サイコ大福のアンズが「ヌカタ、海に行こう!」とほざくので、まず一緒に海に入りに行った。
当然水着姿の女性もいたが、殺されたらかわいそうなので、アンズをじっと見ていた。見たくもないのに。
「ちょっと、なに私をじぃっと見てるの? もう」
巨大な大福がかわいい声で喋るから、周りの人間がギョッとして見る。
「人間の姿になろうかな。ヌカタは色白と日焼けしてる女性、どっちが好み?」
こういうことを聞かれると、マジでむかつく。どっちも好きだが、お前が変化した女は、死ぬほど嫌いだよ。
だいたいさ、最近なんかなれなれしいんだよな。一度言ってやろうかな。
いやいや、だめだ。ほかに好きな人ができたんだとか言って、適当な女性を殺すかもしれない。やけ食いしちゃったよ、なんて言って、町の人口を半分にしちゃうかもしれない。
穏やかに行け。
奴隷状態から解放され、スキル封じ師に協力を仰げば、こんなサイコ大福始末できる。
落ち着け。
「アンズそのものが、俺は好きだよ。わかってるくせに」
うおォォォォォ! 自分で言いながら死にてえェェェェェェ! 何ばかなこと言ってんだよ! 気持ち悪いんだよ! いまどき大学生のバカップルでも、こんなこと言わないわ!
ああああ! はちみつを一気飲みしたいみたいな不快感があるわ! うえええええェェェェ!
「ヌカタ、もう、バカ」
ああ、そうだよ! 俺はバカだよ! だがな、大福! お前だって馬鹿だからな! こんなばからしいこと言って、うわああああ、この大福、ちょっと赤くなってる!
中身がちょっと透けてみるイチゴ大福みたいになってる!
なんでこんなバカを、照れさせなくちゃいけないんだよ!
最低だよ!
「愛してくれてるのはわかったよ。でも、ヌカタの浮気が心配だから、変化しておく」
コノハ・オオカミを大量に喰らって得た、変化の力を使った。
バカスライムのアンズは、160センチほどの、胸の大きな色白の美女に変化した。
桃色の水着を着て、俺に微笑む。
「どうかな。煽情的?」
なぁぁぁぁにが「煽情的?」だ、バカ!
そんなセリフ、昔の巨乳アイドルだって言わないわ!
「ああ、アンズはいつもきれいだよ。行こう」
「うん!」
畜生ォォォ! せっかくかわいい水着の女たちがいるのに、こんな化け物大福と海に入るなんて! でも、見た目はいいよなあ。
かわいいよ。胸も大きいよ。
でも、化け物サイコ大福なんだよなあ。
アンズの阿呆に付き合って、結局三時間も海で遊ばねばいけなかった。
アホなカップルがやってるのを見て、アンズは俺を砂に埋め始めた。顔だけ出して埋めて「キャハハハ」と楽しそうに笑うので、ぶっ殺したかったが、「もう、だしてくれよー」と情けない声を上げたら、もっと喜んだよ。
そばのホテルに宿をとり、アンズが「海の魔物でも食べてくるよ」と言うので、封じ師を訪ねることにした。
不安だなあ。
アンズが人間を食べなくなったことはいいが、モンスターを食べて、もっと強くなったらどうしよう。
だが何も食べるななんて言えないものなぁ。
さっさとスキル封じ師に話を聞いてもらうしかないな。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる