【完結】聖女ディアの処刑

三月

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3度めの警報 ※王子主軸

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あの日もいつも通り。
食堂と呼ぶのもおこがましい掘っ立て小屋で、硬いパンと豆のスープという味気ない昼食をとっていた。

そうしたら、その日3度目の警報が鳴ったのだ。
最初の2ヶ月は、音を聞くだけで吐きそうだったが大分慣れた。

越境してきたのは連日現れる、渡りの翼竜。

二本足で空を飛ぶただのトカゲだと周囲は言うが、ユースレスには地獄から来た化物にしか見えなかった。青黒くぬめる鱗に、毛細血管の這う被膜、草刈り鎌ほどもある鉤爪、縦に割れた瞳孔、鋭い不揃いの牙。

あんなものが繁殖期の春を過ぎ、産卵の夏を越えれば、さらに増えるという。

初めて見た夜は、飛行している姿を遠視鏡で観測しただけなのに、恐ろしくて眠れなかった。それでも警報同様、毎日見ていれば少しずつ慣れてくる。

翼竜は、一頭ずつ対空砲で迎え撃ち、死角は回転式速射機でカバー。地面に撃ち落とすことができれば、銃剣や槍で一斉に突き殺すという原始的な方法で退治する。
ただ、仲間がやられるのを見て、向こうも学習をしている。大砲は砦の中でも12基しかなく弾込めに時間がかかること。連続で弓を吐き出す速射機は飛距離と威力が弱いことを理解し始めている。

「あのケダモノめらは、なかなか悪知恵が働きますな。ま、人間ほどじゃないでしょうが」

嫌味かと思ってユースレスが落ち込むと、辺境伯は慌てて弁解してきた。言葉はキツいが、本人に悪気はないようだ。厳しく指導を付けてもらううちに、それが分かってきた。

実の父である王には甘やかされることが多かったユースレスにとって、怒鳴られ、鍛錬させられ、それでも最後に「まあ、よくやった方でしょう」と認められるのは新鮮だった。

恰好だけの旗頭だが、なんとか辺境伯の役に立ちたいと思うようになった。

――そんなこと考えるんじゃなかった。
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