【完結】聖女ディアの処刑

三月

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楽しい思い出

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我慢すること1ヶ月。

大きな白い毛玉のような主神パパの肩もみをしたり、母神ママと一緒に夜の帳を針と糸で繕ったり、兄神あにの戦車を引く獅子の世話をしたり、姉神あねの大量のお買い物の荷物持ちをしたり、妹神いもうと弟神おとうとの面倒をみてクタクタになったり。

とにかく一生懸命お手伝いをした結果、やっとグルグルマップを見てもよいお許しが出た。

「さ~て、みんな元気にしてるかな~!……ん?……あれ?」

座標を確認し、移動して、拡大して、拡大して、拡大して。

「……ない?」

え?そんなはずないよね?

「えーと、国名で検索を……あ、どうしよう、思い出せない。人間の世界はしょっちゅう国名が変わっちゃうから勝手に『ディアランド』って呼んでたんだけど……本当の国名なんだったっけ?」

何度探しても見つからない。

それもそのはず。仮称ディアランドはとっくに無くなって、荒れ地に飲み込まれてしまっていたのだ。天の国の一日は人間の世界での一年ということを、ディアマンティアナはすっかり忘れていた。

「ま、まさか、ホントになくなっちゃったの!?どうして!?」

必死に探すうち、崩れたとんがり屋根が見つかった。見覚えがある。これは教会の尖塔だ。

ディアマンティアナの瞳が、みるみる潤む。

「ど、どうしよう……ッ!わたしのせいだ!わたしがみんなをほったらかしにしたから!ユースレス様!イルミテラ!みんな……ッ!!」

あの国での楽しかった思い出が次々よみがえる。

なんかめっちゃ怒ってくる祭主様。噛んでも噛んでも柔らかくならないパン。スプーンがすいすい動く具のないスープ。めっちゃ怒ってくる家庭教師。謎マナーの数々。自分に祈って自分で癒すという自作自演。いろんな土地。めっちゃ怒ってくる貴族。めっちゃ文句言ってくる人間たち。すぐにお尻を触ってくるユースレス様に、もうちょっと絡みたかった恋のライバル・イルミテラ。みんなが喜んでくれた最後の祝福。

それ楽しい思い出か?と疑問に思われるかもしれないが、ディアマンティアナにとっては楽しい思い出だ。だって、天の国にはどれも存在しないものだから。

「うえええん!うえええん!みんなーッ!ごめんねえーッ!!」

ディアマンティアナは大泣きし、そのうち疲れ果てて眠ってしまった。
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