高嶺の上司の優しいCommand

久乃り

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その9

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 コマンドを受け、山本は踵をかえして自分のデスクに戻った。扉が閉まったのを確認すると、芝崎課長は洗面器に入った洗濯物を手洗いした。刺激の少ない洗濯洗剤を使い、優しくすすいだら、芝崎課長が自分のポケットマネーで購入した洗濯機で脱水をする。そうして小さな小物干しに干してから芝崎課長は自分のデスクに戻るのだった。



「山本くんは、あれでなかなかいい形をしていたな」

 夜になり、自宅でグラスを片手に芝崎課長はパソコンのモニターを見つめる。見ているのは通販のサイトで、取り扱う商品は下着だ。芝崎課長は部下たちのお仕置きのために自腹で購入していたのである。もちろん、一人一人の部下のために最適なお仕置き用下着をそろえる。

「山本くんは、やはりサイズはLで正解でしたね、なかなか腰回りがしっかりしていました」

 本日のお仕置きを思い返し、次回のお仕置き用の下着を見繕う。

「山本くんはPlayなれしていないようですから……お仕置きが続きそうですね」

 芝崎課長はそう言って、嬉しそうにショッピングを終了した。メール便だから、最短で届けば明後日だ。もちろん、お届先は会社である。届いたら、女子社員たちにセクハラと言われないよう、給湯室で一人水通しをするのだ。もちろん、それは部下たちが退社した後に、である。



「山本くん。《Stand》それから《Come》」

 またしても芝崎課長に呼ばれた山本を、同僚たちは憐れみを込めた目で見ていた。二人そろって給湯室に消えていくのを見届けると再び業務を開始する。

「鍵をかけて、それから《Strip》もちろん下だけだよ」

 スラックスをおろし、テーブルの上にたたんでおくと、山本は両手を脇につけて直立した。

「《Good》」

 そう言ったけれど、芝崎課長はそれ以上山本を褒めることをしない。ただ黙って山本の下着を眺めているだけだ。

「山本くん」
 
「はい」

 すぐさま山本は返事をした。Commandはない。だが、芝崎課長からはGlareが出されていた。それを感じ取り山本は緊張していた。
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