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「なあ正樹、ちょっと話があるんだけど」
ある日の夕食後、自室に戻ろうとした僕に父が声をかけてきた。
「正樹は火曜日は、大学の授業は取ってないんだったよな」
「取ってないっていうか、午前で終わるけど。何?」
父がリビングにかかっているカレンダーに目をやり、苦い顔をして言う。
「来週の火曜日なんだけどな、業者に材料を取りに行かないといけないんだけど。父さんは他県まで出張パティシエというか、とにかくその日はいないんだよ。で、午後二時に納品なんだけど、その時間は母さんも出かけてるらしくてさ。申し訳ないんだけど、お前行って来てくれないか」
「え、なんで僕が。三木さんに行かせりゃいいじゃん」
「馬鹿、三木さんも居なくなったら誰がデコレーションの文字書いたりすんだよ。お前出来ないだろ」
よりによって火曜日のその時間かよ、と僕は悪態をついた。しかしどう抗うことも出来ない。
「頼むわ。その日小遣い多めに払うし」
「……交通費もよろしく」
そう言う訳で、僕は渋々父の頼みを引き受けたのだった。
「ただいまー」
翌週の火曜日、僕が店に帰って来たときには午後四時を回っていた。
ああ、今日もあの子来たんだろうな、とため息を吐きながら荷物を降ろすと、そんな僕の気持ちを察した三木さんがレジカウンターに立ったまま僕に手招きをした。
なになに、と僕が彼女の元に行くと、彼女はすました顔で「今日もあの女の人来てましたよ」と言った。
「ふうん、で? 今日もマカロン買ってったの?」
大して興味がないような風を装ってはみたが、実際は聞きたい。ちゃんと。詳しく。彼女の話を、今日の彼女の様子を。
「です。今日もバニラ味のマカロン一つだけ買って、あと――」
三木さんは少し言うか迷ったような顔をして、間を置いてから、
「まーちゃんが居ないからか、厨房を覗いてましたよ。あなたのこと探してたのかも」
ある日の夕食後、自室に戻ろうとした僕に父が声をかけてきた。
「正樹は火曜日は、大学の授業は取ってないんだったよな」
「取ってないっていうか、午前で終わるけど。何?」
父がリビングにかかっているカレンダーに目をやり、苦い顔をして言う。
「来週の火曜日なんだけどな、業者に材料を取りに行かないといけないんだけど。父さんは他県まで出張パティシエというか、とにかくその日はいないんだよ。で、午後二時に納品なんだけど、その時間は母さんも出かけてるらしくてさ。申し訳ないんだけど、お前行って来てくれないか」
「え、なんで僕が。三木さんに行かせりゃいいじゃん」
「馬鹿、三木さんも居なくなったら誰がデコレーションの文字書いたりすんだよ。お前出来ないだろ」
よりによって火曜日のその時間かよ、と僕は悪態をついた。しかしどう抗うことも出来ない。
「頼むわ。その日小遣い多めに払うし」
「……交通費もよろしく」
そう言う訳で、僕は渋々父の頼みを引き受けたのだった。
「ただいまー」
翌週の火曜日、僕が店に帰って来たときには午後四時を回っていた。
ああ、今日もあの子来たんだろうな、とため息を吐きながら荷物を降ろすと、そんな僕の気持ちを察した三木さんがレジカウンターに立ったまま僕に手招きをした。
なになに、と僕が彼女の元に行くと、彼女はすました顔で「今日もあの女の人来てましたよ」と言った。
「ふうん、で? 今日もマカロン買ってったの?」
大して興味がないような風を装ってはみたが、実際は聞きたい。ちゃんと。詳しく。彼女の話を、今日の彼女の様子を。
「です。今日もバニラ味のマカロン一つだけ買って、あと――」
三木さんは少し言うか迷ったような顔をして、間を置いてから、
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