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「あーラーメンうめぇ。で、相談って?」
深夜十一時。高校からの付き合いの友達と、近所のラーメンチェーン店に来ている。
「いやさあ、あの……雄二ってナンパしたことある?」
僕の問いかけに雄二は顔色一つ変えずに「何十回」と答えた。
「夏の海でだろ、秋の山で、冬はスノボー行ったときとか。それも一日に何人も声かけるから、あんま覚えてねえや」
「……へえ。成功したことあんの?」
「そりゃあ数こなしてっからね。何人かの可愛い子ちゃんは喰ったよ」
下品な奴だ、とラーメンを啜りながら僕は思う。夕食を済ませた後だったが、深夜に食べるラーメンはまた格別だ。
「成功したときってどんな風にナンパした?」
「成功も失敗も全部同じ様に、可愛いですね、連絡先交換しましょ、って。ノリいい子はすぐ食いついてくるし、駄目な子は駄目で深追いしない。連絡先交換出来ても飯にすら行かなかった子もいたし、一発目からホテル行けた子も……」
「もういい」
得意げに話す雄二の言葉を遮り、僕はスープをれんげで掬って口に運んだ。
「何? まーちゃん。ナンパしたい子でも出来たの?」
「ナンパっつーか、普通に好きなだけだけど……」
「へえ、どこの子? いくつ? 名前は?」
知らない。
あの子がどこに住んでいて、歳はいくつで、どこの学校に行っているのか、……名前すらも。
それでいて僕が彼女に声をかけようものなら、それはナンパに当たるのだろう。けれど、なんというかもっとこう……大切な気持ちで臨みたいというか。決して誰でも良かったとか、遊びなんかじゃないんだ。
「まーちゃんが恋って珍しいな。高二で付き合ってた子と別れてから、浮いた話一つでもあったっけ」
「ないな。だから困ってる……」
本気で悩む僕の様子に気付いたのか、雄二は真剣な顔つきになる。真面目な話となると親身になって考えてくれるから、僕はこいつのことが好きだ。
「面識は? 話したことはあるの?」
「僕の家のケーキ屋の常連客でさ。業務的なことを一言、二言」
「名前も年齢も知らないって」
「ああ」
「世間話は」
「したことないな」
尋ねられたことに一つ一つ返事をしながら、あ、と僕は思い出す。
「そういえば一度だけ、目が合ったときに……同時に前髪を耳にかけたことがあって。そのとき、斜め分け一緒ですね……って言われた」
はあああー?、と雄二が僕の顔を覗き込む。
「それだけえ? お前、それ、もう……天気の話とかなんでもいいから話題振れよ! それでも男かよ」
「うっせえな、それすら出来ないくらい好きなんだよ!」
心底呆れるわ、と言われ、僕も自分を卑下する。
駄目なんだ。あの子を前にすると、どうしても言葉が出てこない――。
「よし分かった。言葉が駄目なら、手紙でいけよ」
「手紙?」
今時古風な、と思ったが、案外いい手かもしれない。手紙なら渡すだけだし、伝えたいこともきちんと整理した上で伝えられる。
「連絡先書いてさ。よかったらメールしましょーって。実際にデートにこぎつけることが出来たらちゃんと喋れるかもしれないじゃん。気持ち伝えるのはそれからってことで」
「……いい案だな」
「だろ? じゃあ、それで――」
その日は早々に解散し、家に帰ると僕はすぐ机に向かった。
深夜十一時。高校からの付き合いの友達と、近所のラーメンチェーン店に来ている。
「いやさあ、あの……雄二ってナンパしたことある?」
僕の問いかけに雄二は顔色一つ変えずに「何十回」と答えた。
「夏の海でだろ、秋の山で、冬はスノボー行ったときとか。それも一日に何人も声かけるから、あんま覚えてねえや」
「……へえ。成功したことあんの?」
「そりゃあ数こなしてっからね。何人かの可愛い子ちゃんは喰ったよ」
下品な奴だ、とラーメンを啜りながら僕は思う。夕食を済ませた後だったが、深夜に食べるラーメンはまた格別だ。
「成功したときってどんな風にナンパした?」
「成功も失敗も全部同じ様に、可愛いですね、連絡先交換しましょ、って。ノリいい子はすぐ食いついてくるし、駄目な子は駄目で深追いしない。連絡先交換出来ても飯にすら行かなかった子もいたし、一発目からホテル行けた子も……」
「もういい」
得意げに話す雄二の言葉を遮り、僕はスープをれんげで掬って口に運んだ。
「何? まーちゃん。ナンパしたい子でも出来たの?」
「ナンパっつーか、普通に好きなだけだけど……」
「へえ、どこの子? いくつ? 名前は?」
知らない。
あの子がどこに住んでいて、歳はいくつで、どこの学校に行っているのか、……名前すらも。
それでいて僕が彼女に声をかけようものなら、それはナンパに当たるのだろう。けれど、なんというかもっとこう……大切な気持ちで臨みたいというか。決して誰でも良かったとか、遊びなんかじゃないんだ。
「まーちゃんが恋って珍しいな。高二で付き合ってた子と別れてから、浮いた話一つでもあったっけ」
「ないな。だから困ってる……」
本気で悩む僕の様子に気付いたのか、雄二は真剣な顔つきになる。真面目な話となると親身になって考えてくれるから、僕はこいつのことが好きだ。
「面識は? 話したことはあるの?」
「僕の家のケーキ屋の常連客でさ。業務的なことを一言、二言」
「名前も年齢も知らないって」
「ああ」
「世間話は」
「したことないな」
尋ねられたことに一つ一つ返事をしながら、あ、と僕は思い出す。
「そういえば一度だけ、目が合ったときに……同時に前髪を耳にかけたことがあって。そのとき、斜め分け一緒ですね……って言われた」
はあああー?、と雄二が僕の顔を覗き込む。
「それだけえ? お前、それ、もう……天気の話とかなんでもいいから話題振れよ! それでも男かよ」
「うっせえな、それすら出来ないくらい好きなんだよ!」
心底呆れるわ、と言われ、僕も自分を卑下する。
駄目なんだ。あの子を前にすると、どうしても言葉が出てこない――。
「よし分かった。言葉が駄目なら、手紙でいけよ」
「手紙?」
今時古風な、と思ったが、案外いい手かもしれない。手紙なら渡すだけだし、伝えたいこともきちんと整理した上で伝えられる。
「連絡先書いてさ。よかったらメールしましょーって。実際にデートにこぎつけることが出来たらちゃんと喋れるかもしれないじゃん。気持ち伝えるのはそれからってことで」
「……いい案だな」
「だろ? じゃあ、それで――」
その日は早々に解散し、家に帰ると僕はすぐ机に向かった。
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