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ume_musubi

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 翌週の火曜日。午後二時を回った頃くらいに、僕は気付く。
 バニラ味のマカロンが、ない……。
 そういえば午前中に珍しくマカロンを大量買いして行った客がいたんだった。フレーバーは六種類あるのだが、バニラ味だけ一つも在庫がない。
 焦って厨房の冷蔵庫を見に行くが、冷蔵庫にも在庫はなかった。でも今更焦ってもどうすることも出来ない。
 二時半になる頃、店の扉がカランコロンと控えめなベルの音を立てて開く。あの子だ、二週間ぶりのあの子の笑顔――。
「こんにちは」
 彼女は今日も一直線にショーケースの前まで来る。マカロンの陳列に指を指そうとして、その動きを止めた。
「……あの、すみません。今日バニラ味切らしてて」
「そう、ですか」
 それほどショックでもなさそうな彼女の表情にほっとした。うーんじゃあ、と彼女はカロンの陳列に再度目を落とす。
 ――「男だろ」
 不意に昨日の雄二の言葉を思い出した。そうだ、僕は……男だぞ。なけなしの勇気を振り絞って、僕は口を開く。
「あのっ、バニラはないんですけど、代わりにピスタチオってやつオススメです! ナッツ系なんですけど、バニラみたいに甘くて濃厚で美味しいですよ」
 しまった、早口で言いきってしまった。挙動不審な奴って思われたかも。ああ、もう自分が嫌になる。
 しかし彼女ははんなりとはにかみ、「じゃあピスタチオ一つ」と言って照れた様に笑った。
 ……幸せだ。彼女の笑顔が、僕の幸せ。
 改めて考えると、彼女とどうにかなりたいなんておこがましかったかもしれない。
 僕は彼女のこの笑顔が見れるだけでいい。
 まあ、出来ることなら週に一回、ほんの数分なんて言わずに、毎日でも見ていたいが。
「ありがとうございました。また来てください」
 僕と三木さんに会釈する彼女を見送ったあと、僕はエプロンのポケットに手を突っ込んだ。中に仕込んでいた手紙を握り締めて、渡せなかったなと苦笑する。
 それでよかったのかもしれない。
 もしこんなものを渡してしまったら、気まずくなってしまって、彼女は二度と店に来てくれなくなるかもしれない。それだけは避けたい。

 彼女が帰ってしばらくして、鼻歌を歌いながらショーケースのガラスを拭いていると、珍しいことに三木さんからこんな風に声をかけられた。
「……ねえ、まーちゃん。今日閉店したあと時間ありますか?」
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